「昔よりカビが出やすくなった気がする」。現場でよく聞く言葉です。気候の変化とカビの関係は、感覚だけで語ると根拠のない話になりがちですが、気温そのものは気象庁が長期にわたって記録しています。連載「省エネ住宅時代のカビ」第6回は、その数字から出発します。
1. 日本の年平均気温は、100年あたり1.44℃上昇している
気象庁の「日本の年平均気温」によれば、日本の年平均気温は、様々な変動を繰り返しながら上昇しており、長期的には100年あたり1.44℃の割合で上昇しています。特に1990年代以降、高温となる年が頻出していますとされています。統計開始は1898年です。
2025年の平均気温の基準値(1991〜2020年の30年平均値)からの偏差は+1.23℃で、統計開始以降3番目に高い値でした。上位5年は次のとおりです。

表1 偏差が大きかった年(1〜5位)
| 順位 | 年 | 基準値からの偏差 |
|---|---|---|
| 1位 | 2024年 | +1.48℃ |
| 2位 | 2023年 | +1.29℃ |
| 3位 | 2025年 | +1.23℃ |
| 4位 | 2020年 | +0.65℃ |
| 5位 | 2019年 | +0.62℃ |
出典:気象庁「日本の年平均気温」。基準値は1991〜2020年の30年平均値
上位3年が直近3年に並んでいます。「昔と違う」という感覚には、記録上の裏づけがあると言えます。
2. 気温が上がると、カビの条件はどう動くか
カビの生育条件については、これまでの連載で扱ってきたとおりです。東京都保健医療局の資料では多くのカビが育つのは10〜30℃、環境再生保全機構の資料ではカビの増殖に適した条件は温度25〜35℃・湿度70〜90%とされています。ダニについては、室温20℃以上・湿度60%以上だと繁殖しやすいとされています。
気温が上がれば、これらの条件に入る期間は長くなります。ただ、住まいの側でより直接的に効いてくるのは、暑さへの対応として何をするかのほうです。

3. 冷房が増えると、冷える面も増える
国総研の資料には、夏季、熱中症患者の発生は住宅内が最も多いので、特に高齢者は、積極的なエアコンの使用が必要ですと書かれています。これは健康を守るうえで重要な指摘です。
同時に、冷房を使うということは、室内側の面を冷やすということでもあります。第2回で扱ったとおり、夏型結露は室内をエアコンで冷房した際、夏季に水分を大量に含んだ屋外空気が温度の低い床下で水滴になる現象と定義されています。暑さ対策と結露対策は、同じ場所で交差します。
だからこそ国総研は、断熱性能を高くする必要があると続けています。断熱が効いていれば、同じ室温を保つのに極端な設定にする必要がなく、面の温度差も抑えられます。
4. 暑い時代の住まいで、押さえておくこと

表2 やることの順番
| 順番 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 日射を遮る | 入る熱が減れば、冷房を強くする必要が減る。ηA値が小さいほど日射熱を遮蔽できる |
| 2 | 断熱を確認する | 同じ室温を保つのに、極端な設定にしなくて済む |
| 3 | 湿度を基準の範囲に保つ | 相対湿度40〜70%、温度18〜28℃ |
| 4 | 床下・壁内を見る | 夏型結露は見えない場所で進む |
| 5 | 記録を残す | 季節との関係が見えると、原因の切り分けが進む |
熱中症の観点から、エアコンの使用は積極的に必要とされています。カビの心配があるからといって冷房を控えるのではなく、日射・断熱・湿度・換気の側で調整するのが順番です。体調の判断は医療機関の領域であり、この記事は住環境の情報です。
5. まとめ
- 日本の年平均気温は100年あたり1.44℃の割合で上昇。上位3年は2024年・2023年・2025年
- カビやダニの生育条件に入る期間は長くなる方向にある
- より直接効くのは冷房の使い方。冷房は必要だが、冷える面が増えることも意味する
- 順番は、日射を遮る→断熱を確認する→湿度を基準内に保つ→見えない部位を見る
床下や壁内の状況が気になる場合は、カビ菌検査や現地調査もご相談いただけます。処置の考え方はMIST工法®のページをご覧ください。費用は建物の状態によって変わるため、現地調査のうえでのお見積りとなります。












