保育園、幼稚園、高齢者施設からのご相談は、住宅とは少し性格が違います。「取れるかどうか」よりも「どこまでやるべきか」「開けたまま進められるか」が問われます。今回は、抵抗力の弱い方がいる場所での考え方を整理します。
結論|同じカビでも、許容できる範囲が変わる
カビの性質そのものは、住宅でも施設でも変わりません。変わるのは、そこにいる方の条件と、施設としての説明責任です。
国立健康危機管理研究機構の感染症情報提供サイト(IASR)では、アスペルギルス属は環境中に広く存在し、胞子や分生子が空気中に浮遊して吸入により感染すること、免疫不全の患者で発症しやすいことが説明されています。健康な方にはただちに問題にならない量でも、条件によっては配慮が必要になるということです。
体調や既往に関する判断は医療機関の領域です。この記事は建物の環境管理についての説明であり、診断や治療の助言ではありません。ご心配がある場合は、施設の嘱託医や主治医にご相談ください。

施設の種類で、参照する基準が違う
湿度の目安ひとつをとっても、根拠となる基準は施設によって異なります。学校や幼稚園では文部科学省の学校環境衛生基準が相対湿度30%以上80%以下としており、特定建築物では厚生労働省の建築物環境衛生管理基準が40%以上70%以下としています。
注意したいのは、上限80%という数字を「そこまでは大丈夫」と読まないことです。カビは相対湿度70%を超えると増えやすくなり、収蔵環境では常に60%以下が求められています。基準の上限は、カビ対策としての安全域ではありません。

施設に多い発生場所
| 場所 | 起きていること |
|---|---|
| プール・水遊び場まわり | 水と日陰。乾く時間が短い |
| 屋外の遊具 | 雨がかりと日陰。木部と接合部に出やすい |
| 寝具・布団の収納 | 使用後の湿気がこもり、空気が動かない |
| 配膳室・給湯室 | 水と温度。清掃はされるが乾く時間が短い |
| 北側の保育室・居室 | 壁面が冷え、家具の裏で空気が止まる |
| 浴室・脱衣所(高齢者施設) | 使用頻度が高く、換気が追いつかない |
当社の公開事例では、三重県の幼稚園の遊具の除カビを約105,000円・工期3日間で行った例を紹介しています。屋外の遊具は、素材と接合部の状態によって作業の中身が変わります。
開所しながら進めるために
施設では、長期間閉めることが難しい場合がほとんどです。そのため、利用のない時間帯を先に洗い出し、区画と動線を決め、素材ごとの手順を決めておくという設計が重要になります。工程を分けず短納期で終える組み方は、この条件と相性がよい部分です。

あわせて、施工後の点検を職員の方が続けられる形にしておくことも大切です。どこを、どのくらいの頻度で見るのか。これを渡さないと、次に気づくのは同じ状態になってからになります。
次回予告
次回は屋外に出ます。公共施設や遊具、屋外設備のカビをどう扱うのかを説明します。
参考にした情報
- 文部科学省「学校環境衛生基準」
- 文部科学省「カビ対策マニュアル 基礎編/実践編」
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」
- 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト IASR「アスペルギルス症」
- 株式会社せら「公共施設・屋外設備のカビ対策」 https://sera.jp/public












