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カビない家づくり|設計と施工で決まる5つのポイントと、住宅性能表示制度の見方

 

「カビない家づくり」「建築家から見た家のカビ」「マンション内でのカビ」の3本をまとめ直しました。カビは住み方だけで決まるものではありません。設計と施工の段階で、カビが出やすい家と出にくい家はかなりの部分が決まっています。これから建てる方、買う方、そして今の家のカビが「住み方のせいなのか、家のせいなのか」を知りたい方に向けて書いています。

結論:カビない家は「冷たい面をつくらない」「水分の逃げ道をつくる」「乾く前に閉じない」の3つで決まる

  1. 冷たい面をつくらない。結露は湿度ではなく表面温度で起きます。断熱の切れ目、窓の性能、北側の壁。冷たい面が少ない家ほど結露が減り、冬のカビが減ります。
  2. 水分の逃げ道をつくる。床下の換気、小屋裏の換気、壁の中の通気層、そして居室の24時間換気。家のどこにも「入った水分が出られない場所」をつくらないことです。
  3. 乾く前に閉じない。コンクリートの余剰水、雨に濡れた木材、湿った断熱材。建設中に濡れたものを乾く前に壁や床で塞ぐと、新築1〜2年目のカビになります。

昔の家がカビに強かった理由と、今の家の条件

日本の伝統的な家は、湿気の多い気候と共生する形をしていました。高い床下、深い軒、土壁、開口部の多さ。隙間だらけで冬は寒かった代わりに、水分はどこにも溜まらず抜けていきました。

今の家は気密性と断熱性が高く、冬は暖かく夏は涼しくなりました。しかし空気が動かなくなった分、水分の逃げ道を設計で意図的につくる必要が出てきました。これができている家とできていない家の差が、カビの差になります。建築の側がカビを「住む人の責任」と考えていた時代もありましたが、現在は法令と住宅性能表示制度の両方で、設計側の責任範囲が明確になっています。

法令が定めている最低限

建築基準法とその施行令は、カビや腐朽に直接関わる項目をいくつか定めています。

  • 床下の高さと換気(施行令第22条):木造の床の高さは直下の地面から45cm以上。外壁の床下部分には、壁の長さ5m以下ごとに面積300cm²以上の換気孔を設け、ねずみの侵入を防ぐ設備をつける(床下をコンクリートで覆う場合などは適用外)。
  • 居室の換気(施行令第20条の8):住宅の居室には換気回数0.5回/h以上の機械換気設備を設置する。平成15年(2003年)7月施行。詳しくは換気とカビ
  • 土台や柱の防腐・防蟻(施行令第49条):構造耐力上主要な部分である柱、筋かい、土台のうち地面から1m以内の部分には、有効な防腐措置を講じ、必要に応じて白蟻等の害を防ぐ措置を講じる。

これらは最低限の基準です。基準を満たしていても、換気孔の前に物を置けば床下の空気は止まりますし、24時間換気のスイッチを切れば居室の換気はなくなります。

住宅性能表示制度で「カビに関わる性能」を読む

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)にもとづく住宅性能表示制度では、第三者機関が住宅の性能を等級で評価します。カビと関係が深いのは次の2つです。

劣化対策等級(構造躯体等):柱や土台などが長持ちするための対策の程度を示します。等級3は「通常想定される自然条件及び維持管理条件の下で3世代まで伸長するために必要な対策」が講じられていること、等級2は同じく2世代です(1世代は25〜30年)。木造で等級3を取るには、床下の防湿・換気、土台の防腐防蟻、小屋裏の換気、基礎の高さなどの対策が求められます。つまり劣化対策等級が高い家は、水分の逃げ道が設計されている家です。

断熱等性能等級:外壁や窓の断熱性能を示します。断熱性能が高いほど室内側の壁や窓の表面温度が下がりにくく、結露が起きにくくなります。ただし断熱が高い家ほど気密も高いので、換気とセットで考える必要があります。

これらの等級は、設計住宅性能評価書・建設住宅性能評価書として書面で確認できます。新築を検討するときは、価格や間取りと同じ重さで、この2つの等級を確認することをお勧めします。

設計と施工で見るべき5つのポイント

① 断熱の切れ目をつくらない

断熱材が入っていない部分、途切れている部分は、そこだけ表面温度が下がり結露します。壁と床の取り合い、窓まわり、コンセントボックスの裏、外壁に面した押入れの壁。図面上は断熱されていても、施工で隙間ができることがあります。結露とカビの関係はカビと結露にまとめています。

② 窓の性能を落とさない

家の中で最も冷たい面は窓です。単板ガラスとアルミサッシの窓は、冬に結露水が流れ落ちます。複層ガラスと樹脂または複合サッシにすることで、窓面の結露は大きく減ります。北側の窓ほど重要です。

③ 床下と小屋裏に空気の通り道を確保する

床下は法令の換気孔に加え、換気孔が塞がれない配置(デッキや花壇、物置を換気孔の前に置かない)が必要です。基礎断熱の場合は床下が室内と同じ扱いになるため、床下にも換気の経路を設ける必要があります。当社が現場で見る新築のカビ相談で多いのは、この基礎断熱の床下です。小屋裏は軒天や棟の換気口で空気を抜きます。床下の原因の見分け方は床下のカビを参照してください。

④ 建設中の水分を乾かしてから閉じる

コンクリートは固まった後も余剰水を放出し続けます。新築1〜2年目に出るカビの多くは、この余剰水が原因です(コンクリートの余剰水とカビ)。木材や断熱材が雨に濡れたまま壁で塞がれると、壁の中で乾かないままカビます。工期を優先して乾燥を待たない現場があることを知っておいてください。上棟後の雨対策と、閉じる前の含水率の確認を施工者に求めることができます。

⑤ 換気の経路を図面で確認する

24時間換気は、給気口から排気口まで空気が流れる経路があってはじめて機能します。扉を閉めた部屋にアンダーカット(扉の下の隙間)や給気口がなければ、その部屋の空気は動きません。図面で、各居室の給気と排気がどこにあるかを確認してください。

マンションのカビは「北側・角部屋・低層階」に集中する

マンションは木造住宅と条件が違います。躯体がコンクリートで熱容量が大きく、一度冷えると温まりにくいこと、窓が少なく気密性が高いこと、そして隣の住戸に囲まれているかどうかで壁の温度が変わることです。

カビの相談が多いのは、北側の部屋、角部屋(外気に接する壁が2面ある)、1階や最上階(床下または屋上に接する)です。外気に接する面が多いほど冷たい面が増え、結露が増えます。同じ間取りでも、中住戸と角住戸ではカビの出方が違います。

対策は木造と同じで、冷たい面に家具を密着させない、窓の結露を放置しない、24時間換気を止めない、外壁側の押入れに詰め込まない、です。新築マンションの1〜2年目はコンクリートの余剰水も加わります。賃貸の場合、カビの負担が誰になるかは賃貸のカビは誰の負担かにまとめています。

よくある質問

Q. 高気密・高断熱の家はカビやすいと聞きました。
A. 断熱が高いこと自体はカビを減らします(冷たい面が減るため)。問題は気密が高いのに換気が足りない場合です。高気密・高断熱と24時間換気はセットであり、換気を止めると水分の逃げ道がなくなります。

Q. 新築なのにカビが出ました。欠陥ですか。
A. 新築1〜2年目はコンクリートの余剰水と建設中の水分で、条件が揃いやすい時期です。2年を過ぎても同じ場所に出続ける場合は、断熱の切れ目や換気経路の問題が疑われます。場所と時期を記録して施工者に相談してください。

Q. 中古住宅を買うとき、カビについて何を確認すればいいですか。
A. 床下と小屋裏を実際に見ることです。床下の換気孔が塞がれていないか、土台に変色や湿りがないか、小屋裏に雨漏りの跡がないか。住宅性能評価書や既存住宅状況調査(インスペクション)の報告書があれば、劣化対策に関する項目を確認してください。

まとめ

カビない家は、冷たい面をつくらず、水分の逃げ道を設計し、乾く前に閉じない家です。法令の最低基準と住宅性能表示の劣化対策等級・断熱等性能等級を確認し、設計図で断熱の連続性と換気の経路を見る。これから建てる方も、今の家のカビに悩む方も、原因が「住み方」なのか「家」なのかを切り分ける手がかりになります。家の側に原因がある場合、表面の掃除では止まりません。

参考資料(一次情報)

  • 建築基準法施行令 第22条(居室の床の高さ及び防湿方法)、第20条の8(換気設備の技術的基準)、第49条(外壁内部等の防腐措置等)
  • 住宅の品質確保の促進等に関する法律にもとづく住宅性能表示制度「劣化対策等級(構造躯体等)」(等級3=3世代、等級2=2世代、1世代は25〜30年)/一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
  • 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」(相対湿度40%以上70%以下)