「冬の寒い時期には、カビは生えないのでは」という質問を、毎年いただきます。答えは「生えます。しかも場所が変わります」です。夏は空気が湿ってカビが出る季節、冬は面が冷えてカビが出る季節で、原因が違うだけです。
この記事では、冬にカビが出る仕組みを結露と暖房の2つから整理し、冬に出やすい場所、そして冬ならではの対策の順番をまとめます。
結論
- 冬のカビは「空気が湿っている」からではなく「面が冷えている」から出ます。部屋の湿度計が低くても、窓や北側の壁の表面では条件が成立します。
- 暖房と生活で出る水蒸気が、冷たい面に集まります。石油・ガスの開放型暖房、加湿器、室内干し、入浴。冬の室内は自分たちで水蒸気を足しています。
- 対策の第一手は除湿ではなく「冷たい面をなくす」ことです。順番を間違えると効きません。
冬のカビは、なぜ出るのか
温度は「育つ速さ」を決めるだけ
カビが育つ条件は温度・水分・栄養・時間の4つです(カビが育つ条件)。温度は育つ速さを決める要素であって、冬の室温(暖房で15〜25℃)は、カビにとって十分な温度です。冷蔵庫の中でさえ育つのですから(冷蔵庫のカビ)、暖房の効いた部屋で止まる理由はありません。
水分は「結露」として供給される
冬の外気は乾いています。気象庁の平年値では、東京の1月の平均相対湿度は51%で、8月の74%より大幅に低い。ここから「冬は乾燥している=カビは出ない」という思い込みが生まれます。
しかし、暖房で温めた室内の空気は水蒸気を多く抱えられるため、生活で出る水蒸気(調理、入浴、室内干し、加湿器、人の呼吸)をため込みます。この空気が、外気で冷やされた窓ガラスや北側の壁、押入れの外壁側に触れると、その面だけで湿度100%に達し、水になります。これが結露で、部屋の湿度計が40%でも起きます。仕組みはカビと結露|湿度ではなく温度差の問題に詳しく書いています。
日本海側は、冬のほうが湿度が高い
「冬は乾燥している」は、太平洋側の話です。気象庁の平年値では、富山の1月の平均相対湿度は82%で、8月の77%より高い。福井も1月82%に対して8月73%。日本海側では、冬こそ湿度が高く、結露と湿気の両方でカビが出ます(都道府県別の気候とカビ)。
冬にカビが出やすい場所
冬のカビは「特定の冷たい面」に出ます。夏のように部屋全体に広がるのではなく、場所が決まっています。
- 窓のパッキン・サッシの溝:結露水がたまり続ける場所。もっとも早く黒くなります。
- 窓の下の壁・カーテンの裾:結露水が伝って落ちる先です。カーテンが窓に触れていると、カーテンの裏がカビます。
- 北側の部屋の外壁側の壁、とくに下のほう:冷たい空気は下にたまるため、壁の下部が先に冷えます。
- 家具の裏:壁と家具のあいだで空気が動かず、壁面が冷えたまま。春に家具を動かして初めて気づくことが多い場所です。
- 押入れ・クローゼットの外壁側:布団が壁に密着していると、布団の裏側だけがカビます(衣類のカビ|押入れ・クローゼット)。
- 玄関ドアの内側・下駄箱:金属のドアは冷えやすく、結露します。
冬の水蒸気の出どころ
冬の室内では、暮らし方そのものが水蒸気の供給源です。どれかを減らせば、結露は減ります。
- 開放型の暖房(石油ファンヒーター・ガスファンヒーター・石油ストーブ):燃料を燃やすと水蒸気が出ます。灯油1Lを燃やすと約1Lの水が水蒸気として室内に出るとされています。エアコンや電気ヒーターは水蒸気を出しません。
- 加湿器:厚生労働省のインフルエンザQ&Aでは、乾燥しやすい室内で加湿器などを使い50〜60%の湿度を保つことが挙げられていますが、それ以上に上げると結露が増えます。湿度計を見ながら使ってください。
- 室内干し:洗濯物1回分の水分は、そのまま室内に出ます(洗濯物の室内干しがカビを発生させる)。
- 入浴・調理:換気扇を回すことで外に出せます。浴室のドアを開けたままにすると、水蒸気が居室へ流れます。
冬の対策:順番が大切
1. 冷たい面をなくす
もっとも効きます。窓なら断熱シート・内窓・厚手のカーテン(ただし窓に触れさせない)。壁なら家具を5cm以上離す。押入れならすのこで布団を壁から離す。結露の原因は湿度ではなく表面温度なので、ここを変えない限り止まりません。
2. 空気を動かす
冷たい面の近くで空気が止まっていると、そこだけ冷えて結露します。サーキュレーターで壁や窓に沿って風を流すだけで、表面温度が上がり結露が減ります。
3. 水蒸気を減らす
開放型暖房を減らす、加湿器の設定を下げる、室内干しに扇風機を当てる、入浴・調理時は換気扇。
4. 換気する
住宅の居室には建築基準法施行令第20条の8により0.5回/hの機械換気が求められています。24時間換気を冬に止めている家が多いのですが、止めると水蒸気の出口がなくなります。寒くても止めないでください。
毎朝の結露拭きは「4番目」
結露を拭くのは大切ですが、それは出てしまった水の後始末です。拭く量が減らないなら、1〜3のどれかが足りていません。
よくある質問
Q. 部屋の湿度は40%なのに、窓がびしょ濡れです。
A. それが結露の性質です。湿度は部屋の中央の温度で測った値で、窓の表面はもっと冷えています。冷えた面の近くだけ、局所的に湿度100%になっています。除湿機を置いても、窓の表面温度が変わらなければ結露は続きます。
Q. 冬に加湿器を使うと、カビが増えますか。
A. 湿度50〜60%の範囲であれば、冷たい面がなければ問題になりにくいです。ただし、加湿器を窓や外壁側の壁の近くに置くと、その面で結露します。部屋の中央寄りに置き、湿度計で60%を超えないようにしてください。加湿器のタンクや内部のカビにも注意が必要です。
Q. 冬のカビは、春になれば自然に消えますか。
A. 消えません。乾燥すると活動は止まりますが、菌糸と胞子は残り、梅雨に条件が戻れば再び育ちます。冬に出たカビは、春のうちに取り除いてください。
まとめ
冬もカビは生えます。原因は湿気ではなく結露で、暖房と生活で出た水蒸気が、窓・北側の壁・家具の裏・押入れの外壁側といった冷たい面に集まります。対策の順番は「冷たい面をなくす → 空気を動かす → 水蒸気を減らす → 換気する」で、結露拭きは後始末です。日本海側では冬のほうが湿度が高いことも覚えておいてください。
※当社は医療機関ではありません。体調に関することは医療機関にご相談ください。
参考資料(一次情報)
- 気象庁 過去の気象データ 1991〜2020年平年値(東京1月51%・8月74%、富山1月82%・8月77%、福井1月82%・8月73%)
- 厚生労働省「インフルエンザQ&A」(乾燥しやすい室内では加湿器などを使って適切な湿度50〜60%を保つ)
- 厚生労働省 建築物環境衛生管理基準(相対湿度40〜70%、温度18〜28℃)
- 建築基準法施行令 第20条の8(住宅等の居室の必要換気回数0.5回/h、平成15年7月1日施行)
- WHO室内空気質ガイドライン 2009(湿気・カビ)












