既存の住宅を断熱改修するとき、多くは家全体ではなく一部から始めます。リビングだけ、窓だけ、床下だけ。予算や工期を考えれば自然な進め方です。ただ、部分的に断熱すると、温度差が「別の場所へ移る」ことがあります。連載「省エネ住宅時代のカビ」第9回は、改修とカビの関係を整理します。
1. 部分間欠の暖房で起きること
国土交通省 国土技術政策総合研究所の資料には、暖房の範囲や時間についてこう書かれています。
結露は、空気に含まれている水蒸気が露点以下の冷たい部分に触れて液水になる現象ですので、暖房している部屋の空気が暖房していない部屋へ移動し、露点温度より低く冷えたガラスなどに触れて結露が生じることがあります。また、断熱性能が低い住宅の場合、夜間など暖房を切ることにより、内装や壁内などの温度が外気の影響により下がり、露点温度以下に達して結露を生じることもあります。
そしてこのように部分間欠では、地域によっては結露が発生しやすい状況になることがありますと続きます。同資料は、高気密・高断熱により、省エネルギー性を高め、住宅全体の温度差を時間的にも場所的にも少なくし、結露・カビ・ダニ・ヒートショックなどの発生を防ぐことが重要としています。

ここから読み取れるのは、改修は「暖かい部屋を増やす工事」であると同時に、温度差をどこに残すかを決める工事でもある、ということです。
2. 改修で押さえる3点
国総研は具体的な対策として、外皮に通気層を設けること、室内側に防湿層を設けること、そして施工の連続性を挙げています。

表1 3点の中身
| 項目 | 示されている内容 |
|---|---|
| 通気層 | 壁内に通気層を設けることにより、壁内に流入した湿気や雨水を排出させることも可能になる。夏季は外装からの日射熱を排出させる効果もある。防水対策としても効果がある |
| 防湿層 | 室内の湿った空気が壁内・床下・小屋裏へ流入すると結露の要因となる。防湿層により水蒸気の流入量を抑制でき、内部結露が発生しにくくなる。天井・床下なども防湿が必要 |
| 寒冷地の注意 | 透湿抵抗の低い断熱材を使用する場合は、断熱材と一体となっていない別張りとなる防湿シートの設置が推奨される |
| 施工の連続性 | 断熱気密の施工の基本は、外壁・天井・床下などを隙間なく連続して住宅全体を包むこと。誤った施工方法も見受けられるとされる |
| 外壁の構法 | サイディングなどの乾式外壁はほとんど通気構法。モルタルなどの湿式外壁は直張り構法が多いが、通気構法もあるので検討を、とされる |
出典:国土交通省 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」
3. 断熱を足しても、水は止まらない
改修の相談でとくにお伝えしたいのがこの点です。すでにカビが出ている場所に断熱材を足しても、水の出所が漏水や雨水の浸入であれば、状況は変わりません。むしろ、断熱材で覆うことで内部の状態が見えなくなり、発見が遅れることがあります。
国総研も、部位内結露について発見が遅れるうえに乾燥しにくく、最も厄介な水分供給現象の一つとしています。改修の前に、いま出ている水がどこから来ているのかを切り分けておく意味は大きいと言えます。
4. 改修の前後で確認しておくこと

表2 改修の順番
| 順番 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | いま出ている水の出所を特定する | 漏水・雨水なら、断熱では止まらない |
| 2 | 既存のカビの範囲を記録する | 改修後に再発したとき、同じ場所かどうかが判断材料になる |
| 3 | 断熱・気密の連続性を計画に入れる | 隙間なく連続して包むことが基本とされる |
| 4 | 通気層・防湿層の扱いを確認する | 湿気を出す道と、入れない層の両方が要る |
| 5 | 改修後に温湿度と壁面を見る | 結露する場所が移動していないかを確かめる |
カビのある部位を解体・撤去すると、粉じんが飛散します。文部科学省の資料では、噴霧器は胞子を吹き飛ばして汚染を広げるとされ、区画と大気の清浄化、呼吸用保護具が挙げられています。範囲が広い場合は、改修工事の工程に除去の段取りを組み込んでおくと、住みながらの工事でも影響を抑えやすくなります。
5. まとめ
- 部分間欠の暖房では、地域によっては結露が発生しやすい状況になることがあるとされる
- 改修は温度差をどこに残すかを決める工事でもある
- 押さえるのは通気層・防湿層・連続性の3点。寒冷地では別張りの防湿シートが推奨される場合がある
- 断熱を足しても水は止まらない。改修前に水の出所を切り分ける
改修の前に状況を把握しておきたい場合は、カビ菌検査や現地調査もご相談いただけます。処置の考え方はMIST工法®のページをご覧ください。費用は建物の状態によって変わるため、現地調査のうえでのお見積りとなります。












