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MIST工法®とは何か|「削らない・こすらない」カビ取りが、仕上がりと再発をどう変えるのか

カビ取りの見積書を並べると、金額よりも先に「何をする工事なのか」が読み取りにくいことがあります。削るのか、塗るのか、薬剤で分解するのか。処理の種類が違えば、仕上がりも、その後の再発の起きかたも変わります。この連載では、私たちが使っているMIST工法®がどういう技術で、一般的な処理と何がどう違うのかを、27回に分けて順番に説明していきます。初回は全体像です。

結論|MIST工法®は「削って落とす」ではなく「分解して洗い流す」処理

先に結論から書きます。MIST工法®は、対象素材に合わせて水素イオン濃度(pH)を調整した専用剤を霧状に使い、カビと汚れを分解してから水で洗い流す除カビ技術です。こすったり削ったりしないため、素材本来の表面を残したまま処理できます。そのうえで、仕上げに防カビ剤による予防処理を行います。

ここで大事なのは、この違いが「見た目の好み」の話ではないという点です。表面を削れば新しい面が露出し、塗りつぶせば塗膜の下が見えなくなります。どちらも、その後に起きることが変わります。つまり処理方法の選択は、仕上がりと同時に、次に何が起きるかの選択でもあります。

カビの黒ずみに対する処理は、大きく3種類に分けられる

現場で行われている処理は、細かな手法の違いを一度脇に置くと、次の3つの考え方に整理できます。

図1|カビの黒ずみに対する3つの処理の考え方。MIST工法®は3つ目の「分解して洗い流す」に立つ。
図1|カビの黒ずみに対する3つの処理の考え方。MIST工法®は3つ目の「分解して洗い流す」に立つ。
表1|3つの考え方の比較(一般的な整理)
考え方 主な手段 素材への影響 見えなくなるもの
削る・研磨する 研磨、高圧洗浄など 表層が失われる 削られた分の素材
覆う・塗りつぶす 塗料、パテなど 塗膜で覆われる 塗膜の下の状態
分解して洗い流す 薬剤による分解と洗浄 こすらなければ表層は残る —

なお、塗り替えそのものが悪いという意味ではありません。当社のQ&Aでも、美観の調整と防水効果の補修は本来必要なものだと説明しています。問題になるのは、カビが残ったまま塗り重ねてしまう順番です。除カビ・塗装・防カビ処理という順番で進めることが、建物の維持という観点では本来の形だと考えています。

MIST工法®の流れ|「都度調整」が前提にある

MIST工法®の特徴としてまず挙げたいのは、専用剤を現場ごとに調整することです。カビの繁殖状況と対象物の状態を見たうえで、その素材に合う水素イオン濃度に合わせます。あらかじめ決まった一種類の薬剤をすべての現場に使うのではなく、木材には木材の、コンクリートにはコンクリートの条件に合わせるという考え方です。

図2|MIST工法®の基本的な流れ。調査から防カビ処理までを一連の工程として設計している。
図2|MIST工法®の基本的な流れ。調査から防カビ処理までを一連の工程として設計している。

噴霧した専用剤は素材の深部にまで浸透し、菌糸と汚れを分解します。分解されたものは水で洗い流します。このとき水圧を上げて削り落とすことはしません。当社のQ&Aでも、従来の処理剤には酸性液が多く用いられてきたのに対し、MIST工法®で使う薬剤はアルカリ性であり、水圧も低いため素材を削る心配がないと説明しています。

なぜ「素材を傷めない」が、再発の話につながるのか

素材を傷めないという言い方は、一見すると仕上がりや美観の話に聞こえます。しかし現場で見ていると、これは再発の話でもあります。理由は2つあります。

1つ目は、削った面が新しい受け皿になることです。カビは有機物だけを栄養にするわけではありません。文部科学省のカビ対策マニュアルでも、材質からカビかどうかを判断することはできず、ガラスや陶器のようにカビの栄養源にならない材質でも、手の汚れやホコリがあればカビは発生すると説明されています。表面が荒れて汚れが溜まりやすくなれば、その分だけ条件は整いやすくなります。

2つ目は、状態が見えなくなることです。塗りつぶした場合、その下で何が起きているかは外から確認できません。次に異変に気づくのは、塗膜の表面まで症状が出てきたときになります。

図3|処理の性格の違い。どちらが優れているかではなく、その後に何が残るかが変わる。
図3|処理の性格の違い。どちらが優れているかではなく、その後に何が残るかが変わる。

安全性は「試験で確認する」もの

人がいる建物で薬剤を使う以上、安全性の説明は避けて通れません。MIST工法®で使用する溶液は、工業排水試験に準じた分析試験にかけ、周辺環境に対して安全性に問題なしとの試験結果を受けています。抵抗力の弱い小さなお子様や高齢の方が利用される施設でも使えるようにという前提で設計されている薬剤です。

薬剤の安全性は「安全だと言っている」ことではなく「どの試験を受けたか」で判断すべき性質のものです。工法を比較するときは、試験の種類と結果を確認できるかどうかを見てください。これは当社に対しても同じです。

それでも「カビをゼロにする」とは言えない

最後に、この連載を通して繰り返し書くことになる前提を先に置いておきます。日本は温暖湿潤な気候であり、人が快適に暮らせる環境はカビにとっても条件のよい環境です。厚生労働省の建築物環境衛生管理基準は、相対湿度を40〜70%、温度を18〜28℃に保つことを求めていますが、この範囲はカビが増えられる範囲とも重なっています。当社のQ&Aでも、カビの発生を100%防ぐことはできないと明記しています。

文部科学省のカビ対策マニュアル実践編には、除菌だけでは十分な処置とはならず、環境を改善しない限りカビ被害が繰り返されるという趣旨の記載があります。私たちが除カビと防カビ処理に加えて、現地環境を調査して原因を分析する防カビアドバイスを用意しているのは、この前提に立っているからです。工法は原因を消す道具ではなく、原因を断つための一手だと考えています。

次回予告

次回は、この3つの処理をもう一段掘り下げます。削る処理・覆う処理には何ができて何ができないのか、そしてMIST工法®がなぜ「分解」を選んでいるのかを、素材ごとの事情から説明します。

参考にした情報

  • 株式会社せら「MIST工法®とは」 https://sera.jp/mist
  • 株式会社せら「サービス内容と料金」 https://sera.jp/service
  • 株式会社せら「Q&A」 https://sera.jp/faq
  • 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」(相対湿度40〜70%、温度18〜28℃)
  • 文部科学省「カビ対策マニュアル 実践編/基礎編」

カビの原因調査・カビ菌検査・MIST工法®による除カビと防カビ処理については、MIST工法®とは/カビ菌検査/サービス内容と料金 をご覧ください。現地の状況によって最適な方法は変わりますので、お問い合わせよりご相談ください。