「カビが発生しやすい場所」を1位から7位まで順番に紹介していた記事を、1本にまとめ直しました。順位そのものより大事なのは、なぜその場所に出るのかと、どこから手を付けると効率がよいかです。7か所すべてに共通する原因は3つしかありません。
結論:順位は「水分・栄養・止まった空気」が揃う度合いで決まる
- 1位はお風呂。温度・水分・皮脂という栄養が毎日そろう、家の中で唯一の場所です。ここを乾かせているかどうかが、家全体のカビ対策の水準を表します。
- 2位以下は「空気が動かない場所」の順です。寝室・押入れ・和室・玄関・家具の裏・床下は、いずれも湿った空気が入ってきて、出ていかない場所です。温度が特別に高いわけではありません。
- 対策は上位から順にやる必要はありません。手を付けやすいのは3位の押入れと6位の家具の裏です。物を減らして隙間をつくるだけで、条件の1つ(止まった空気)が外れます。
なお、この順位は当社が現場で見てきた発生の多さと、カビが育つ条件(温度・水分・栄養・時間)が揃いやすい度合いをもとに整理したものです。統計調査の結果ではありません。住まいの構造や地域によって、順位が入れ替わることは普通にあります。
1位 お風呂|条件が毎日そろう唯一の場所
浴室はカビの条件が毎日そろいます。入浴中の温度は人の体温前後で、壁・床・天井は水滴で濡れ、皮脂や石けんカスという栄養が付着します。ほかの場所ではどれか1つが欠けるのに、浴室だけは全部そろいます。
見落とされやすいのは天井です。壁や床は掃除しても、天井は手が届かないので放置され、そこから胞子が落ちてきて壁や床に再発します。天井を拭かない限り、床をいくら磨いても繰り返します。
対策の中心は「乾かす」ことです。入浴後に壁と床を水で流して汚れを落とし、水気を切り、換気扇を回します。浴槽にお湯を張ったままにすると、湯気が出続けて浴室全体が乾きません。不要なら抜いてください。風呂イスや洗面器、シャンプーボトルの底も、床に置いたままだと水が切れずにカビます。浮かせる、または浴室の外に出します。
浴室には強い塩素系の洗浄剤を使うことが多く、酸性の洗剤と混ざると有毒なガスが発生します。国民生活センターが2026年3月に「まぜるな危険」の事故について注意喚起を出しています。同時に使わない、換気しながら使う、の2点は守ってください。
2位 寝室|人が出す水分が寝具に溜まる
寝室は温度も湿度も浴室ほど高くありません。それでも2位に入るのは、人が長時間いて、水分を出し続けるからです。就寝中の汗と呼気の水分は、寝具とマットレスに吸われます。そこにフケや皮脂という栄養が加わります。
もう1つの理由は、就寝中は無防備に呼吸していることです。カビが生えている部屋で8時間過ごすことは、ほかのどの部屋より長い時間、胞子を吸い込む可能性があるということです。WHOは2009年の室内空気質ガイドラインで、湿気やカビのある建物と呼吸器症状のリスク上昇の関連を示しています。
対策は寝具の乾燥です。布団は湿度の低い日に干す、干せないマットレスは布団乾燥機で水分を飛ばす、洗えるものは洗う。ベッド下の収納は湿気がこもりやすいので、詰め込まず、ときどき開けて乾かします。壁に付けたベッドの裏側は、次の「家具の裏」と同じ問題を抱えます。
3位 押入れ・クローゼット|扉が空気を止める
押入れとクローゼットは、扉を閉めると空気の出入りがほぼなくなります。梅雨から夏は湿った空気が入ったまま止まり、冬は外壁側の面が冷えて結露します。原因が季節で違うので、対策も違います。詳しくは衣類のカビ|押入れ・クローゼットで起きる理由と、収納・換気の順番にまとめています。
共通して効くのは「減らす → 隙間をつくる → 動かす」の順番です。中身を減らし、下と奥にすのこを入れて空気の通り道をつくり、ハンガーは指1本分あける。クリーニングのビニールカバーは外して収納します。除湿剤や防カビ剤は、この順番の最後です。
4位 和室(畳)|畳は湿気も汚れも吸う
畳は水分を吸いやすく、表面の目にはホコリや皮脂が入り込みます。特に張り替えたばかりの畳は、い草が新しく水分をよく吸うため、最初の梅雨に出やすくなります。布団を敷きっぱなしにすると、寝具の水分が畳に移り、畳の裏で条件が揃います。
畳のカビを塩素系の漂白剤で拭くのは避けてください。畳表が脱色し、目地に薬剤が残ります。消毒用エタノールで拭き、乾かし、目に残った胞子を掃除機で吸う、という手順が基本です。畳の具体的な手順と、やってはいけないことは家庭でできる畳のカビ退治にあります。
5位 玄関|濡れた靴と日当たりの悪さ
玄関は北側に配置されることが多く、日が当たりにくい場所です。雨の日に濡れた靴、汗を吸った靴がそのまま下駄箱に入ると、扉つきの箱の中で押入れと同じことが起きます。
靴は乾いてから下駄箱に入れる、これが一番効きます。すぐにしまう必要があるときは、丸めた新聞紙を靴に入れて水分を吸わせます。下駄箱の扉は、ときどき開けて空気を入れ替えてください。玄関のたたきに水を流して掃除したあとは、乾かしてから靴を戻します。
6位 家具の下・裏側|壁との隙間に冬の結露が出る
家具の裏は掃除がしにくくホコリが溜まり、空気が動きません。ここまでは押入れと同じですが、家具の裏にはもう1つ、冬の結露という原因があります。家具が壁に密着していると、その部分の壁は室内の暖かい空気に触れず、外気に冷やされたままになります。そこに室内の水蒸気が触れて結露し、壁紙の裏でカビが育ちます。
対策は家具の置き方です。外壁に面した壁、とくに北側の壁に大きな家具を密着させないこと。どうしても外壁側に置くときは、壁から5cm程度離し、家具の底にも隙間をつくって、冷えた空気が抜ける道を確保します。結露のしくみと対策の順番はカビと結露にまとめています。
7位 床下|見えないので発見が遅れる
床下は日常的に目に入らないため、発見が遅れます。地面からの湿気、雨水の浸入、配管の漏水、基礎断熱の施工不良など、原因は多岐にわたります。建築基準法施行令第22条は、木造の床の高さを直下の地面から45cm以上とし、外壁の床下部分には壁の長さ5m以下ごとに面積300cm²以上の換気孔を設けることを定めています(床下をコンクリートで覆う場合などは適用外)。この基準が守られていても、換気孔の前に物が置かれていれば空気は動きません。
床下の原因の見分け方と、点検のポイントは床下のカビ|原因の見分け方と、建築基準法が定める床下の基準を参照してください。新築の場合はコンクリートの余剰水が原因になることもあります。
ランキング外だが多い場所
7か所に入っていませんが、相談として多いのがエアコンの内部(結露水とホコリ)、冷蔵庫のパッキンや野菜室、窓のサッシとカーテン(結露)、壁紙の裏です。いずれも原因はこのページの7か所と同じで、「水分が供給され続ける」か「空気が止まっている」かのどちらかです。
7か所に共通する対策の優先順位
場所ごとの話を1つにまとめると、やることは3つです。
- 水分の供給を止める。浴室の湯気、寝具の汗、濡れた靴、結露。それぞれ元を断つか、出たらすぐ乾かします。
- 空気を動かす。扉を開ける、家具を離す、すのこを入れる、サーキュレーターを回す。空気が動けば湿度は局所的に高くなりません。
- 栄養を減らす。ホコリと皮脂の掃除です。ゼロにはできませんが、減らせば育つ速さが落ちます。
厚生労働省の建築物環境衛生管理基準は、相対湿度を40%以上70%以下に保つことを定めています。部屋の真ん中の湿度計が60%でも、押入れの奥や家具の裏は80%を超えていることがあります。気になる場所には、その場所に湿度計を置いて測ってください。家全体の基本的な対策は家庭でできるカビ対策の基本にまとめています。
よくある質問
Q. 順位が高い場所から対策すべきですか。
A. いいえ。効果が出やすい順は、手を付けやすい順です。押入れの中身を減らす、家具を壁から離す、の2つは今日できて、条件を1つ外せます。浴室は毎日の習慣なので、続く形を先につくります。
Q. 防カビ剤や除湿剤を置けば足りますか。
A. 空気が止まったままの場所に置いても、効く範囲は限られます。先に空気を動かし、水分の供給を減らしてから、補助として使うと効果が出ます。
Q. 家のどこにもカビが見えないのにカビ臭いのはなぜですか。
A. 見えていない場所、つまり6位の家具の裏、7位の床下、壁紙の裏、エアコン内部のいずれかで育っている可能性があります。臭いは発生源があるサインです。順に確認してください。
まとめ
カビが発生しやすい場所は、お風呂・寝室・押入れ・和室・玄関・家具の裏・床下の7か所です。順位を決めているのは温度ではなく、水分の供給と、空気の停滞です。この2つのどちらかを外せば、その場所の順位は下がります。手を付けやすい場所から、隙間をつくり、乾かし、掃除する。それだけで7か所のうちの多くは条件が揃わなくなります。
床下や壁の裏など、目に見えない場所で広がっているときは、表面の掃除では止まりません。その場合は原因の調査からになります。
参考資料(一次情報)
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」(相対湿度40%以上70%以下、温度18℃以上28℃以下)
- 建築基準法施行令 第22条(居室の床の高さ及び防湿方法)
- 国民生活センター「住宅用塩素系洗浄剤の使い方-まぜるな危険!浴室などで事故が発生しています-」2026年3月18日公表
- WHO「WHO guidelines for indoor air quality: dampness and mould」2009年
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