乾燥果実、インスタントコーヒー、ベーカリー製品は、商品によって保存方法や開封後の扱いが異なります。「乾いているから安全」「EUの規制が変わったから手元の商品は危険」と一律に判断せず、食品の表示と公的な情報を確認しましょう。
この記事では、オクラトキシンA(OTA)の科学的評価とEUの規制を区別し、家庭での保存・異常時の対応、食品と建物それぞれの相談先を整理します。
OTAとは:カビとカビ毒を区別する
OTAは、一部のカビがつくるかび毒の一種です。カビが生育することと、特定のかび毒が含まれることは同じ意味ではありません。食品の色や臭いだけでOTAの有無や量を判定することはできません。
農林水産省は、かび毒の中には熱に強く、通常の加工・調理で十分に減らないものがあると説明しています。カビの生えた食品を加熱すれば食べられる、表面だけ取り除けばよい、とは考えないでください。食品として意図的に使用されるカビと、保存中に意図せず生じたカビも区別します。
EFSAの2020年評価とEU規制の時点
欧州食品安全機関(EFSA)は2020年5月13日の公表資料で、以前の評価で設定した耐容週間摂取量(TWI)に代わり、ばく露マージン(MOE)を用いてOTAのリスクを評価したと説明しています。これは「耐容一日摂取量を引き下げる動き」という説明とは異なります。科学的なリスク評価と、食品中の最大基準値を定める規制も分けて読む必要があります。
EUはOTAを含む食品汚染物質について最大基準値を設けています。2022年の規則(EU)2022/1370では一部食品のOTA最大基準値が見直され、その後、食品汚染物質の規則は(EU)2023/915へ整理されました。本記事は、これらを今後始まる一律の「再スクリーニング予定」として扱いません。
EU向けに輸出・販売する事業者は、対象食品の区分、原材料の割合、適用時点、改正や経過措置を公式法令で確認してください。乾燥果実・コーヒー・ベーカリー製品を一つの区分や同一数値で扱うことはできません。ここでは未照合の現行数値を一覧にせず、個別商品の適法性や安全性の判定も行いません。EUの基準を、そのまま日本国内の一律の義務や家庭での廃棄基準として説明することも避けます。

食品の種類だけで保存方法を決めない
レーズン・乾燥イチジクなど
乾燥の程度や包装、原材料、開封後の指定は商品ごとに異なります。白い付着物を見つけても、色・形や甘い香りだけで糖の結晶とカビを確実に見分けようとせず、不明な場合は食べずにメーカーへ確認してください。
コーヒー・粉末食品
湿った器具を入れないなど、商品に記載された扱い方を守ります。固まりや変色があっても、それだけでOTA汚染と断定はできません。いつ開封し、どのように保存したかを添えてメーカーへ相談してください。
パン・菓子などのベーカリー製品
水分や具材、包装が異なるため、すべてを長期保存できる「乾きもの」と考えないでください。保存温度と期限を確認し、開封後の案内があれば従います。冷蔵・冷凍の可否も個別の表示やメーカー案内を確認します。
家庭での保存と点検
- 購入時に包装の破損、期限、保存条件を確認する。
- 未開封と開封後の条件を区別し、開封日を分かるようにする。
- 移し替えや乾燥剤の追加は一律に行わず、食品・包装の指定を確認する。
- 表示された保存条件を守り、使う量に合わせて在庫を管理する。
- 濡れ、変色、異臭、包装の異常に気づいたら使用を止めて確認する。
部屋の湿度だけで、食品の水分活性やかび毒の量は分かりません。「湿度70%を超えたらすべて危険」「一定湿度以下なら安全」といった一律の線引きはしません。また、外観に異常がないことだけでかび毒がないと保証することもできません。自主回収など、商品について公表された情報がある場合はその案内に従ってください。
カビを見つけた場合・食べた後に心配な場合
農林水産省の家庭向け食中毒予防の案内では、カビの生えた食品は捨てるよう説明しています。確認のために味見をしたり、加熱や水洗いで食用に戻そうとしたりしないでください。市販品の異常を相談する場合は、商品名、期限、ロット、購入先、写真、保存状況を記録し、現物の扱いもメーカーや保健所の案内に従います。
食後の体調や健康への影響が心配な場合は医療機関へ相談してください。摂取した食品、量や時刻、症状などを伝えます。記事や食品の写真から、OTAによる症状かどうかを診断することはできません。
食品事業者が確認する範囲
事業者は、仕入れ先の仕様、保存・輸送条件、ロット、受入れ・在庫の記録を確認し、異常品の使用・出荷について食品衛生の担当者や所管の窓口へ相談してください。必要な試験は、対象となるかび毒と食品、採取計画、試験方法に応じて検討します。建物の表面に付いたカビの検査を、食品中のOTA分析の代わりにすることはできません。
海外の制度変更を理由に、個別に確認していない商品や産地全体を危険と断定したり、検査の実施予定を事実として紹介したりしないことも大切です。
食品の相談と建物のカビ相談の分担
食品そのものの状態や保存方法は製造・販売元へ、食品衛生上の問題は地域の保健所などへ、健康上の相談は医療機関へ確認してください。
せらへの相談は、保管室や厨房などの壁・天井・床に生じたカビ、濡れ、結露、漏水など建物側の状況が対象です。食品の可食判定やOTA分析、食品ロットの出荷判定とは分けてご相談ください。建物についても、点検や除カビの対象範囲、原因修理・補修交換の担当、養生や利用再開の条件、費用内訳を個別に確認します。
参考資料・更新内容
2026年10月17日更新:評価方式と規制の時点、食品ごとの保存条件、食品・健康・建物の相談範囲を整理しました。元の公開日と既存イラストは保持しています。
