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都道府県別|建物のカビと気温・湿度・降水量の関係

「うちの地域はカビやすいのか」——よく受ける質問です。感覚では語れるものの、比べる物差しがないと答えようがありません。

そこで、気象庁が公表している平年値(1991〜2020年の30年平均)を使い、47都道府県の県庁所在地の観測地点について、気温・湿度・降水量を一覧にしました。そのうえで、カビの条件が揃う月がどれだけあるかを都道府県ごとに数えています。

結論

  1. 湿度が高いのは、日本海側と東北です。年平均湿度の1位は富山県(76%)。青森・福井・島根が75%で続きます。逆に最も低いのは群馬県の62%でした。
  2. 日本海側は、冬のほうが湿度が高い。富山は1月82%に対して8月77%、福井は1月82%に対して8月73%。東京(1月51%/8月74%)とは正反対の形をしています。
  3. 雨が多い=カビやすい、ではありません。年降水量と年平均湿度の相関はr=0.33で、関係はごく弱い。降水量だけを見ても地域のカビリスクは判断できません。

使ったデータと、指標の定義

データは気象庁「過去の気象データ検索」平年値(1991〜2020年)です。各都道府県の県庁所在地にある気象台の値を使っています(埼玉県は熊谷、滋賀県は彦根、北海道は札幌)。

そのうえで、この記事では次の指標を置きました。

  • 要注意月数=月平均気温が20℃以上、かつ月平均湿度が70%以上の月の数(0〜12)

70%という数字は、厚生労働省の建築物環境衛生管理基準が定める相対湿度の上限(40%以上70%以下)から取っています。20℃は、住宅で問題になるカビの多くが活発になる温度帯の下限です。

この指標は公的な基準ではありません。地域どうしを同じ物差しで比べるために、この記事で定義したものです。実際のカビの発生は建物の構造と住まい方に大きく左右されるので、数字が小さい地域でもカビは出ます。

47都道府県 一覧

都道府県 観測地点 年平均気温(℃) 年平均湿度(%) 年降水量(mm) 要注意月数
北海道 札幌 9.2 69 1,146.1 2
青森県 青森 10.7 75 1,350.7 2
岩手県 盛岡 10.6 74 1,279.9 2
宮城県 仙台 12.8 71 1,276.7 3
秋田県 秋田 12.1 73 1,741.6 3
山形県 山形 12.1 74 1,206.7 4
福島県 福島 13.4 69 1,207 4
茨城県 水戸 14.1 74 1,367.7 4
栃木県 宇都宮 14.3 70 1,524.7 4
群馬県 前橋 15.0 62 1,247.4 4
埼玉県 熊谷 15.4 65 1,305.8 4
千葉県 千葉 16.2 68 1,454.7 4
東京都 東京 15.8 65 1,598.2 4
神奈川県 横浜 16.2 67 1,730.8 4
新潟県 新潟 13.9 72 1,845.9 4
富山県 富山 14.5 76 2,374.2 4
石川県 金沢 15.0 70 2,401.5 4
福井県 福井 14.8 75 2,299.6 4
山梨県 甲府 15.1 64 1,160.7 3
長野県 長野 12.3 72 965.1 4
岐阜県 岐阜 16.2 66 1,860.7 3
静岡県 静岡 16.9 68 2,327.3 4
愛知県 名古屋 16.2 66 1,578.9 3
三重県 16.3 67 1,612.9 4
滋賀県 彦根 15.0 74 1,610 4
京都府 京都 16.2 65 1,522.9 0
大阪府 大阪 17.1 63 1,338.3 1
兵庫県 神戸 17.0 65 1,277.8 3
奈良県 奈良 15.7 68 1,365.1 4
和歌山県 和歌山 16.9 66 1,414.4 3
鳥取県 鳥取 15.2 74 1,931.3 4
島根県 松江 15.2 75 1,791.9 4
岡山県 岡山 15.8 69 1,143.1 3
広島県 広島 16.5 67 1,572.2 2
山口県 下関 17.0 69 1,712.3 4
徳島県 徳島 16.8 67 1,619.9 4
香川県 高松 16.7 67 1,150.1 4
愛媛県 松山 16.8 67 1,404.6 4
高知県 高知 17.3 69 2,666.4 5
福岡県 福岡 17.3 68 1,686.9 4
佐賀県 佐賀 16.9 70 1,951.3 4
長崎県 長崎 17.4 71 1,894.7 4
熊本県 熊本 17.2 70 2,007 4
大分県 大分 16.8 69 1,727 4
宮崎県 宮崎 17.7 74 2,625.5 6
鹿児島県 鹿児島 18.8 70 2,434.7 5
沖縄県 那覇 23.3 73 2,161 7

出典:気象庁「過去の気象データ検索」平年値(1991〜2020年)より作成。観測地点は各都道府県の県庁所在地の気象台(埼玉=熊谷、滋賀=彦根、北海道=札幌)。

読み取れること① 湿度が高いのは日本海側と東北

年平均湿度の上位は、富山76%、青森・福井・島根75%、岩手・山形・茨城・滋賀74%。日本海側と東北・北関東に集中しています。

下位は群馬62%、大阪63%、山梨64%、埼玉・東京・京都・兵庫65%。内陸の盆地と、大都市圏です。

全国平均は69.4%でした。建築物衛生法の上限である70%を、年平均で超えている県が20県あることになります。

読み取れること② 日本海側は「冬のほうが湿度が高い」

ここが、この一覧でいちばん実務的に効く点です。

  • 富山:1月82% / 8月77%
  • 福井:1月82% / 8月73%
  • 東京:1月51% / 8月74%

太平洋側の感覚では「カビ=梅雨と夏」ですが、日本海側では冬こそ湿度が高い。雪と曇天が続き、外気の湿度が下がりません。そこへ暖房で室温を上げれば、カビが育つ条件の温度側も満たされます

日本海側にお住まいの方が「冬に押入れがカビた」と言うのは、例外ではなく地域の標準的な現象です。

読み取れること③ 雨の多さと湿度は、ほとんど関係がない

年降水量の上位は高知2,666mm、宮崎2,626mm、鹿児島2,435mm、石川2,402mm、富山2,374mm。下位は長野965mm、岡山1,143mm、北海道1,146mmです。

ところが、年降水量と年平均湿度の相関係数を計算するとr=0.33。ほとんど関係がありません。石川は降水量4位ですが湿度は70%、逆に茨城は降水量1,368mmと平均以下ながら湿度74%です。

雨は「降って、流れて、終わる」もの。湿度は「その場に留まる水分の量」です。カビにとって効くのは後者で、そこを混同すると対策を外します。

読み取れること④ ピークは7月。8月ではない

月平均気温20℃以上かつ湿度75%以上(要注意より厳しい条件)を満たす地点数を月別に数えると、次のようになりました。

  • 6月:19地点/7月:34地点/8月:21地点/9月:17地点/10月:1地点

最も厳しいのは7月で、8月はむしろ減ります。8月は気温が上がるぶん、相対湿度としては下がる地点が多いからです。「夏本番の8月が一番危ない」という感覚は、データ上は必ずしも正しくありません。

そして9月にも17地点が該当します。秋口はカビ対策の意識が緩む時期ですが、条件はまだ残っています。

読み取れること⑤ 京都と大阪は、暑いのに要注意月が少ない

要注意月数が最も少ないのは京都府(0か月)、次いで大阪府(1か月)です。どちらも年平均気温は16〜17℃台と高いのに、湿度が65%・63%と低い。

逆に最も多いのは沖縄県7か月、宮崎県6か月、高知県・鹿児島県5か月。南に行くほど期間が長くなります。

ここから言えるのは、暑さではなく湿度で決まるということです。「暑い地域だからカビやすい」ではありません。

自分の地域をどう読むか

表の見方を3段階で。

  • 要注意月数が4か月以上:年の3分の1がカビの条件下にあります。梅雨前と秋口の年2回、点検の習慣をつける価値があります。
  • 年平均湿度が70%以上:建築物衛生法の上限を年平均で超えています。除湿を「梅雨だけの道具」ではなく常備品として考える地域です。
  • 冬の湿度が夏より高い(日本海側):対策の主戦場が冬になります。暖房と結露の組み合わせに注意してください。

ただし繰り返しになりますが、これは屋外の気象条件です。実際にカビが出るかどうかは、断熱・気密・換気・住まい方で決まります。数字の小さい地域でも、条件の悪い部屋は条件の悪いままです。

よくある質問

Q. 自分の県の観測地点が県庁所在地と違う地域に住んでいます。参考になりますか。
A. 県内でも山間部と沿岸部では差があります。傾向をつかむ目安としてお使いください。気象庁のサイトでは市町村単位の観測地点も公開されています。

Q. 要注意月数が0の京都なら、カビ対策は不要ですか。
A. いいえ。これは屋外の平年値であり、室内の湿度とは別です。浴室・押入れ・北側の部屋といった局所の条件は、地域に関係なく発生します。

Q. 平年値はいつ更新されますか。
A. 気象庁の平年値は10年ごとに更新されます。現行は1991〜2020年の値です。

まとめ

地域ごとのカビのかかりやすさは、気温でも降水量でもなく、湿度で決まります。そして日本海側では、その山が冬に来ます。

この表は、自分の地域が「いつ」「どのくらいの期間」条件下に置かれるかを知るためのものです。時期が分かれば、対策を打つタイミングが決まります。年中身構える必要はありません。

参考資料(一次情報)

  • 気象庁「過去の気象データ検索」平年値(1991〜2020年)— 各都道府県の県庁所在地の気象台における月平均気温・月平均相対湿度・月降水量
  • 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」(相対湿度40%以上70%以下、温度18℃以上28℃以下ほか)

※本記事の「要注意月数」は、地域間を同じ条件で比較するために当社が定義した指標であり、公的な基準ではありません。