「高気密の家は息苦しい」「気密を上げると家が傷む」。こうした話を耳にすることがあります。実際のところ、国土交通省 国土技術政策総合研究所の資料はこれをはっきり否定しています。連載「省エネ住宅時代のカビ」第3回は、気密・通気・換気という3つの言葉を、それぞれの仕事に分けて整理します。
1. 3つは、別々の仕事をしている
国総研の「省エネと結露」には、次のように書かれています。
「高気密」と聞くと、息苦しく耐久性が低くなると思われる方がいらっしゃいますが、「気密」、「通気」、「換気」は何れも重要な役割を担い、並行して機能する必要があり、何れかが欠けても住宅の耐久性に影響を及ぼすことが考えられます。
それぞれの役割は、同じ資料で次のように説明されています。

表1 3つの役割
| 言葉 | 担っている役割 | カビとの関係 |
|---|---|---|
| 気密 | 室内の水蒸気を、換気部分以外の屋外側の外皮へ侵入させないようにして内部結露を防ぎ、躯体や下地材などの劣化を未然に防ぐ | 壁の中で結露させない=見えない場所でカビが育つ条件をつくらない |
| 換気 | 換気口から屋外の空気を床下、室内、小屋裏などへ取り入れたり、排出させたりする | 湿った空気を持ち出す。よどみをつくらない |
| 通気 | 通気層により壁内や屋根内などの湿気を排出したり、雨水の浸入を防止したりする | 入ってしまった湿気を外へ逃がす。夏型結露でも効いてくる |
出典:国土交通省 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」
整理すると、気密は「入れない」、通気は「出す」、換気は「入れ替える」。方向も対象も違う3つの仕事です。混同されやすいのは、どれも「空気と湿気」を扱うからでしょう。
2. 「高気密=息苦しい」ではない
同じ資料には、換気が十分であれば、高気密の住宅であっても息苦しくなりませんし、住宅の耐久性を確保するために必要となりますと書かれています。むしろ、気密性が高い場合、室内が計画通り換気され、カビや結露の原因となりやすいよどみを防ぐことも可能となるとされています。
逆に気密性が低い場合、室内の換気が適切にコントロール出来ない場合があります。隙間から入る空気は、設計者が意図した経路を通りません。給気口から入って排気口へ抜けるはずの流れが、隙間で短絡してしまうと、部屋の奥の空気は動かないままになります。

3. 結局、施工がすべてになる
国総研は、高気密、高断熱は、施工時に隙間無く住宅全体をすっぽりと包み込むようにして、はじめて実現しますと述べています。そして外皮平均熱貫流率(UA値)については、この値は計算値であり、施工時に隙間が多いと所定の断熱性能を発揮することが困難となり、結露の要因ともなり得ます。施工状態も確認して下さいと明記しています。
カビの相談で伺うと、性能の高い住宅でも局所的に結露している例があります。原因が施工にあるのか、使い方にあるのか、設備の不具合なのかは、現地で水の出所をたどらないと分かりません。ただ、こうした前提を知っておくと、確認すべきことの順番が見えてきます。
4. 住まい手が今日確認できること

表2 暖房器具と水蒸気
| 種類 | 水蒸気の発生 | 必要な対応 |
|---|---|---|
| 石油・ガスファンヒーター等(FF式を除く) | 燃焼に伴って多量の排気ガスや水蒸気を発生する。灯油1Lの燃焼で1.13kgの水蒸気が放出されるとされる | 頻繁な換気が必要とされる |
| エアコン・床暖房 | 電気を使用するものは、一般的に水蒸気を発生させない | — |
| 加湿器 | 意図的に水蒸気を加える | 相対湿度が高すぎると結露やカビのリスクが高くなるとされる |
出典:国土交通省 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」。同資料では、厚生労働省の資料をもとに適切な湿度として50〜60%が紹介されています
国総研の資料には「(24時間換気システムの電源は、切らないようにしましょう)」と括弧書きで明記されています。寒い・音が気になるという理由で止めてしまうと、気密の高い住宅ほど空気が動かなくなります。気になる場合は、風量の調整や給気口の位置の見直しを先に検討してください。
5. まとめ
- 気密は「入れない」、通気は「出す」、換気は「入れ替える」。3つは別の仕事で、並行して機能する必要がある
- 換気が十分なら高気密でも息苦しくならない。むしろよどみを防げるとされる
- 気密が低いと、換気を計画どおりにコントロールできない場合がある
- UA値は計算値。施工の隙間は所定性能を妨げ、結露の要因になり得る
壁内や小屋裏、床下の状況が気になる場合は、カビ菌検査や現地調査もご相談いただけます。処置の考え方はMIST工法®のページをご覧ください。費用は建物の状態によって変わるため、現地調査のうえでのお見積りとなります。












