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ZEBと施設のカビ|非住宅の建物で何が起きるのか

ここまでは住宅の話が中心でした。連載「省エネ住宅時代のカビ」の最終回は、非住宅の建物 ― オフィスビル、商業施設、学校、病院、宿泊施設に目を向けます。ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)が進むなかで、施設のカビはどう考えればよいのでしょうか。

1. なぜ非住宅でZEBが求められるのか

環境省のZEB PORTALによれば、業務部門からのCO2排出量は、2019年度時点で我が国全体の約2割を占めています。さらに1990年度以降の経済成長(実質GDPが28%増加)に対して、産業部門からのCO2排出量は24%減少したにも関わらず、業務部門からのCO2排出量は48%増と大幅に増加しているとされています。

2021年10月に閣議決定された地球温暖化対策計画では、2030年度に温室効果ガス排出量を2013年度比46%削減という中期目標が示され、業務部門はエネルギー起源CO2排出量を同年度比51%削減という、家庭部門の66%に次いで厳しい目標が設定されています。建築物については2030年に目指すべき姿として、新築される建築物についてはZEB基準の水準の省エネルギー性能が確保されていることを目指すとされています。

図1 なぜ非住宅でZEBが求められるのか(出典:環境省 ZEB PORT
図1 なぜ非住宅でZEBが求められるのか(出典:環境省 ZEB PORTAL「ZEB普及目標とロードマップ」/MIST工法®カビバスターズ本部)

なお、非住宅については中・大規模(300㎡以上)のものに以前から省エネ基準への適合義務が課されており、令和4年の改正で小規模非住宅にも対象が拡大されます(第8回参照)。

2. 施設は、住宅と条件の出方が違う

建物の規模が大きくなると、カビの出方も変わります。系統が長く、人の目が届かない区画が増えるためです。

図2 施設で条件がそろいやすい場所(出典:文部科学省「カビ対策マニュアル
図2 施設で条件がそろいやすい場所(出典:文部科学省「カビ対策マニュアル」/国土交通省 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」/MIST工法®カビバスターズ本部)

表1 住宅と施設で変わる点

観点 住宅 非住宅の施設
気づく人 住んでいる人が日々目にする 利用者の申し出や、点検の巡回で初めて分かることが多い
空調 個別のエアコンが中心 中央方式・ダクト系統。長い経路に目視の機会が少ない
区画 押し入れ、床下、小屋裏 地下階、機械室、書庫、天井裏、シャフト
基準 建築物環境衛生管理基準は目安として参照 特定建築物では同基準が適用される。ただし測定7項目にカビは含まれない
影響 居住者と家族 利用者・従業員・入居テナントに及ぶ。営業への影響もある

出典:厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」、文部科学省「カビ対策マニュアル」、国土交通省 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」

3. 空調は「結露させる装置」でもある

文部科学省のカビ対策マニュアルには、空調機の冷却ファンは結露させて除湿する機構で、元来カビが繁殖しやすいと書かれています。これは住宅のエアコンでも施設の空調機でも同じです。違うのは規模と、点検の頻度です。

省エネ性能を高めた建物では、外皮の断熱が良くなるぶん、空調の運転条件も変わります。冷やしすぎない、外気導入量を確保する、といった運転の設計が、そのまま結露とカビの条件に効いてきます。夏型結露は、冷房した室内側で起きる現象です。

4. 施設側で仕組みにしておくこと

図3 施設側で仕組みにしておくこと(出典:厚生労働省「建築物環境衛生管理
図3 施設側で仕組みにしておくこと(出典:厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」/文部科学省「カビ対策マニュアル 実践編・Q&A」/MIST工法®カビバスターズ本部)

表2 記録として残しておきたいもの

記録の種類 内容 使いどころ
温湿度 測定点を固定して継続的に記録する(相対湿度40〜70%、温度18〜28℃) 季節・運転条件との関係を見る
空調の点検 冷却コイル、ドレンパン、フィルターの状態と清掃日 系統ごとの傾向が見える
申し出 においや体調に関する申し出を、日時・場所とともに残す 発生源の絞り込み
発生の記録 発生した日時・場所・状態と写真 再発かどうかの判断、工事範囲の検討
除菌だけでは終わらない
文部科学省の資料には、除菌だけでは十分な処置とならず、環境を改善しない限りカビ被害が繰り返されるという趣旨の記載があります。施設では清掃の契約が定期的に入っている分、「清掃したのにまた出る」という形で表面化しがちです。水の出所と空調の運転条件まで戻って考える必要があります。

5. まとめ ― 連載を終えて

  • 業務部門のCO2は全体の約2割。1990年度以降で48%増と伸びが大きく、2030年度に51%削減という目標が置かれている
  • 施設は系統が長く、点検されない区画がある。気づくのは利用者の申し出や巡回のときになりやすい
  • 空調は結露させて除湿する機構。省エネ運転の設計が、そのままカビの条件に効いてくる
  • カビは法定の測定項目ではない。だからこそ、温湿度・点検・申し出を記録として残す仕組みが要る
連載「省エネ住宅時代のカビ」全10回
第1回 省エネ住宅とカビ/第2回 夏型結露とは何か/第3回 気密・通気・換気の役割分担/第4回 C値・UA値・ηA値をカビ目線で読む/第5回 窓の断熱とカビ/第6回 温暖化とカビ/第7回 エルニーニョと住まい/第8回 省エネ基準の適合義務化とカビ/第9回 断熱改修でカビを増やさないために/第10回 ZEBと施設のカビ(本記事)

施設の空調系統や区画ごとの状況を把握したい場合は、カビ菌検査や現地調査もご相談いただけます。処置の考え方はMIST工法®のページを、施工事例は施工実績をご覧ください。費用は建物の状態によって変わるため、現地調査のうえでのお見積りとなります。