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エアコンから黒い粒が落ちる・カビ臭い。自分で掃除できますか?|どこまで自分で、どこから業者か

編集:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら)|本記事の数値は公的機関の資料にもとづいています。当社は医療機関ではありません。体調に関する判断は医療機関にご相談ください。

読者からの質問

冷房をつけると黒い粒が吹き出し口から落ちてきます。カビ臭さもあります。市販のスプレーで内部まで自分で掃除して大丈夫でしょうか。それとも業者に頼むべきですか。(30代・賃貸マンション)

結論から書きます。フィルターと、手の届く表面までは自分で掃除できます。熱交換器より奥(送風ファン・ドレンパン・電装部まわり)は、市販スプレーで自分で洗わないほうがよい、というのが公的機関の資料から読み取れる線引きです。

黒い粒が落ちてくる段階は、送風ファンやその周辺にカビの集落が育ち、風で剥がれて飛んでいる状態です。フィルターを洗っても粒は止まりません。そこで「奥まで自分でやろう」と考える方が多いのですが、製品評価技術基盤機構(NITE)は、内部洗浄による事故を具体的に公表して注意を呼びかけています。

この記事では、質問への答えを「どこまで自分で/どこから業者か」「自分でやる範囲の正しい手順」「掃除のあとに再発させない使い方」の順に整理します。数値はすべて公的機関の公開資料にもとづき、当社の推測は書きません。

この記事で分かること

  • エアコンの中で「自分で掃除してよい場所」と「やめたほうがよい場所」の線引き
  • 黒い粒とカビ臭が出る仕組み(どこにカビがいるのか)
  • フィルターと表面の掃除手順、公的機関が示す掃除の頻度
  • 市販スプレーによる内部洗浄で実際に起きている事故
  • 掃除のあとにカビを再発させない使い方(湿度・送風・換気)
  • 業者に頼む判断の目安と、依頼前に確認しておくこと

1. 結論:答えは3つに分かれる

表1 質問への答えの要約
質問 答え 根拠
自分で掃除できる? フィルターと、見える面(パネル・ルーバー・吹き出し口の手前)まではできる 環境再生保全機構・東京都・資源エネルギー庁がいずれも家庭でのフィルター清掃を前提にしている
市販スプレーで内部まで洗ってよい? おすすめしない。洗浄液が電気部品に付着して出火した事故がNITEに報告されている NITE 2020-06-25 報道発表(2015〜2019年度で20件)
黒い粒が落ちる状態は? 内部(送風ファン周辺)にカビが育っている段階。フィルター掃除だけでは止まらないことが多い 後述の仕組み(結露する部品の位置)

つまり「自分でやれる範囲は決まっていて、黒い粒はその範囲の外から来ている」というのが、この質問のいちばん大事なところです。自分でやれることをやり切ったうえで、残った部分を業者に頼む、という順番になります。

2. 黒い粒とカビ臭は、どこから来ているのか

エアコンの冷房は、室内の空気を熱交換器(アルミの薄い板が並んだ部分)で冷やして戻す仕組みです。空気が冷やされると、含んでいた水蒸気が水になって熱交換器に付きます。これが「除湿」の正体で、文部科学省のカビ対策マニュアルQ&Aでも、空調機の冷却部は結露で除湿する機構であるため元来カビが繁殖しやすい、と説明されています。

結露した水は、熱交換器の下のドレンパン(受け皿)に落ち、ドレンホースから外へ排出されます。ところが、運転を止めた直後の内部は「濡れていて、暗くて、風が止まっている」状態です。カビが育つ条件(水分・栄養・温度・酸素)のうち、水分がそろい、ほこりが栄養になります。

表2 エアコン内部の場所別の条件
場所 濡れ方 ほこりの量 カビの育ちやすさ 自分で掃除
フィルター ほぼ乾いている 多い(最初に捕まえる) 低い〜中 できる
熱交換器(フィン) 冷房中は常に濡れる フィルターを抜けた細かいほこり 高い 手を出さない(変形・感電・洗浄液の事故)
送風ファン(筒状の羽根) 運転停止後も湿る 風に乗った細かいほこりが付く 高い(黒い粒の主な発生源) 分解が必要=業者
ドレンパン 水が常にたまる 沈んだほこり 高い 分解が必要=業者
吹き出し口・ルーバー 風が当たり乾きやすい 少ない 中(内部から飛んだ胞子が付く) できる(表面のみ)

黒い粒は、送風ファンやその周辺で育った集落が、運転の風で剥がれて飛んでいるものです。フィルターの手前ではなく、フィルターの奥から出てきます。だからフィルターを洗っても粒は止まりません。

図1 手前ほど自分で、奥ほど専門業者の領域。黒い粒は主に3〜4の場所から出てくる

3. 自分でやる範囲:フィルターと表面の手順

家庭でできる範囲の掃除は、次の手順です。公的機関の資料は「フィルターを掃除する」ことまでは共通して勧めており、その先の内部洗浄には踏み込んでいません。

  1. 電源プラグを抜く。リモコンで止めるだけでは内部に通電が残る機種があります。
  2. 前面パネルを開け、フィルターを外す。ほこりが舞うので、床に新聞紙などを敷き、マスクをつけます。
  3. 掃除機でほこりを吸う。表側(空気の入る側)から吸うと、目に詰まりにくくなります。
  4. 水洗いする。ぬるま湯で、裏側からシャワーをかけて押し出す向きで流します。落ちにくい油汚れは中性洗剤を薄めて使い、よくすすぎます。
  5. 完全に乾かしてから戻す。湿ったまま戻すと、フィルター自体がカビの温床になります。日陰で乾かします。
  6. パネル・ルーバー・吹き出し口の見える面を拭く。固く絞った布で拭き、乾いた布で仕上げます。奥に布や指を入れないでください。

フィルターを月1〜2回掃除すると、資源エネルギー庁の試算(2.2kW機)では年間31.95kWh、金額にして約990円の電気代の節約になるとされています。カビ対策と省エネは同じ作業です。

表3 公的機関が示すエアコン掃除の頻度
資料 示している頻度 目的
環境再生保全機構「室内環境」 年2回+使用開始直前に掃除。その後は毎週 ぜん息・アレルギーの環境整備
東京都保健医療局 アレルギー情報navi. フィルターは年3〜4回。冷暖房の変わり目に アレルゲン(ダニ・カビ)対策
資源エネルギー庁 省エネポータル フィルターを月1〜2回清掃 省エネ(年31.95kWh・約990円)
図2 資料により頻度は違う。目的が違うためで、多い方に合わせれば両方を満たす

頻度が資料ごとに違うのは、目的が違うからです。アレルギー対策の資料はこまめに、省エネの資料は月単位で示しています。迷ったら多いほう(冷房期は毎週〜2週に1回)に合わせれば、どちらの目的も満たします。

4. 市販スプレーで内部を洗うと、何が起きるのか

「エアコン洗浄スプレー」は薬局やホームセンターで手に入ります。ただし、製品評価技術基盤機構(NITE)は2020年6月25日の報道発表で、2015〜2019年度に内部洗浄に関わる事故を20件把握していると公表し、注意を呼びかけました。

事故の起き方は共通しています。洗浄液が熱交換器だけでなく、内部の電気部品や配線の端子に付着し、ほこりと湿気が加わってトラッキング(電気の通り道ができて発熱する現象)を起こし、発火・発煙に至る、という流れです。

図3 洗浄液が電気部品に付着→トラッキング→発火。NITEは内部洗浄をメーカーや専門業者に相談するよう求めている
表4 内部洗浄のやり方別リスク
やり方 リスク 公的資料の見解
フィルター・表面の掃除 低い。感電を避けるためプラグを抜く 各機関が家庭での実施を前提
市販スプレーで熱交換器を洗う 洗浄液が電装部に付着→出火の事故報告。フィンの変形 NITE:内部洗浄はメーカー・専門業者に相談
高圧洗浄機・水を直接かける 電装部の浸水。基板の故障 取扱説明書で禁止されている機種がある
分解して送風ファンを洗う 組み立て不良・配線の破損・感電 専門業者の領域

もう1つ見落とされがちな点があります。スプレーの洗浄液は、すすぎ切れずに熱交換器やドレンパンに残ることがあります。残った液と汚れが、次のカビの栄養になる可能性は否定できません。「一時的ににおいが消えたが、数週間で戻った」という相談は、この状態で起きています。

5. 掃除のあとに再発させない使い方

内部を業者に洗ってもらっても、使い方が同じなら同じ場所にカビは戻ります。公的機関の資料から、家庭でできる予防を整理します。

表5 再発させない使い方
対策 やること 根拠
室内の湿度を60%以下に 除湿・換気で60%を超えないようにする。湿度計を1つ置く 東京都 アレルギー情報navi.(湿度60%以下)/厚労省 建築物環境衛生管理基準(40〜70%)
運転停止後に内部を乾かす 冷房停止後に送風(または内部クリーン機能)で内部を乾かす。多くの機種に機能がある 結露した水分を残さない(文科省Q&A:冷却部は結露で除湿する機構)
天気のよい日に換気 窓を開けて室内のほこり・胞子を外へ出す 東京都 アレルギー情報navi.(天気のよい日の換気がもっとも有効)
加湿器との併用に注意 ぜん息・アレルギーのある家庭では加湿器は厳禁とされている 環境再生保全機構「室内環境」
フィルターを定期的に 表3の頻度で 各機関

送風運転にかかる電気代について、公的機関の公表値は見つかりませんでした(要追加調査)。ただし、圧縮機を動かさない送風は冷房より消費電力が小さい運転モードです。停止前に30分〜1時間の送風を習慣にすると、内部の水分が残りにくくなります。

6. 業者に頼む判断の目安

次のどれかに当てはまれば、内部洗浄を業者に頼む段階です。

表6 業者に頼む判断の目安
サイン 意味 対応
吹き出し口から黒い粒が落ちる 送風ファン周辺に集落がある 分解洗浄(業者)
フィルターを洗ってもカビ臭が消えない においの発生源はフィルターの奥 分解洗浄(業者)
吹き出し口の奥をのぞくと黒い点々が見える ファンの羽根に付着している 分解洗浄(業者)
運転中に水が垂れる ドレンパン・ホースの詰まり(汚れの蓄積) 詰まり除去(業者)。放置すると天井・壁の水濡れ→壁のカビへ
エアコン周りの壁や天井にシミ・カビ 結露水や漏水が建材に及んでいる 建材側の調査が必要。カビバスターズの領域

依頼するときは、「分解して送風ファンとドレンパンまで洗うか」「電装部を養生(保護)するか」「作業後に試運転するか」の3点を確認してください。NITEの注意喚起は、このうち電装部の保護がされていない洗浄で事故が起きていることを示しています。

なお、エアコン本体の洗浄と、エアコン周辺の壁・天井に広がったカビは、別の問題です。エアコンを洗ってもカビ臭が消えない場合、壁の中や天井裏に発生源があることがあります。この段階は建材の調査が必要で、当社の加盟店が現地調査を行う領域です。

7. 賃貸の場合に気をつけること

質問者は賃貸マンションです。備え付けのエアコンは設備(貸主の所有物)で、分解や内部洗浄で故障させると修理費用の負担が問題になります。市販スプレーで内部を洗って故障した場合も同じです。

  • フィルターと表面の掃除は入居者の日常の手入れの範囲です。
  • 内部洗浄を希望する場合は、先に管理会社に相談してください。貸主側で手配する物件もあります。
  • 黒い粒や水漏れが出ている状態は、設備の不具合として写真と日付を残して報告しておくと、退去時の話が整理しやすくなります。
  • 賃貸のカビと費用負担については、賃貸のカビは誰の負担か|国土交通省ガイドラインが示す分かれ目で整理しています。

8. よくある質問

Q1. エアコンのカビは体に害がありますか?

環境再生保全機構の資料は、カビをぜん息の原因となる吸入アレルゲンの1つとして挙げ、カビがアレルゲンである人はできるだけエアコンを使わない、使う場合は年2回と使用開始直前に掃除し、その後毎週掃除するよう求めています。症状の有無や原因の判断は医療機関の領域です。当社は医療機関ではありません。

Q2. 冷房を使わない季節も掃除は必要ですか?

東京都の資料は冷暖房の変わり目のフィルター掃除を勧めています。暖房は結露しにくいので内部は乾きますが、フィルターのほこりは増えます。シーズン前とシーズン後に1回ずつが目安になります。

Q3. 「内部クリーン」機能があれば掃除は要りませんか?

内部クリーンは運転停止後に内部を乾かす機能で、ほこりを取る機能ではありません。乾かすことでカビの条件(水分)を減らせますが、フィルターの掃除は別に必要です。

Q4. 内部洗浄は何年に1回が目安ですか?

公的機関が示した内部洗浄の周期は見つかりませんでした(要追加調査)。使用時間・部屋の湿度・ほこりの量で差が大きいため、表6のサインが出たときを目安にするのが現実的です。

9. まとめ

  • フィルターと見える面までは自分で。熱交換器より奥は手を出さない。
  • 黒い粒は送風ファン周辺から出てくる。フィルター掃除では止まらない。
  • 市販スプレーの内部洗浄は、洗浄液が電装部に付いて出火した事故がNITEに20件報告されている。
  • 掃除のあとは、湿度60%以下・停止前の送風・天気のよい日の換気で再発を防ぐ。
  • エアコン周りの壁や天井にまでカビが及んでいたら、建材側の調査が必要。

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連載「知恵袋Q&A ― 読者の質問に答える」

全10回、毎朝7時に公開します。

  1. 第1回(9/20)エアコンから黒い粒が落ちる・カビ臭い。自分で掃除できますか?(この記事)
  2. 第2回(9/21)加湿器はカビの原因になりますか?使ってはいけない?
  3. 第3回(9/22)布団・マットレス・枕にカビ。捨てるしかない?
  4. 第4回(9/23)除湿機・エアコン除湿・換気、どれが一番カビに効く?
  5. 第5回(9/24)台所用漂白剤でカビは取れますか?薄め方は?
  6. 第6回(9/25)カビ取り剤を吹きかけても落ちません。なぜですか?
  7. 第7回(9/26)塩素系が使えない場所はどうすればいい?
  8. 第8回(9/27)酸素系漂白剤はカビに効きますか?
  9. 第9回(9/28)詰め替え・業務用・100円ショップ、どれが得ですか?
  10. 第10回(9/29)場所別・いちばん安く済むカビ取りの組み合わせは?
  11. 第11回(9/30)やってはいけない「格安カビ取り」は?

参考資料(一次情報)