部屋干しをすると洗濯物が乾く。当たり前のことですが、乾いた分の水は消えていません。部屋の空気の中に移っただけです。この当たり前が、住まいのカビ問題では見落とされがちです。
この記事では、部屋干しの水分がどこへ行くのか、どのくらいの量なのか、そして部屋干しをやめずにカビを防ぐにはどうするかを整理します。
結論
- 洗濯物が乾く=室内の湿度が上がる、です。これは避けられない物理です。乾かしたければ、その分の水を外へ出す仕組みが要ります。
- 問題は「干している間」ではなく「乾いたあと」です。移った水分が室内に留まり続けると、部屋の中でいちばん冷たい面や空気の動かない場所に集まります。
- 部屋干しをやめる必要はありません。除湿と組み合わせるだけで、条件は成立しなくなります。
洗濯物から出る水は、どこへ行くのか
洗濯機で脱水した衣類には、まだ水が残っています。それが乾いていく過程で、水は水蒸気になって部屋の空気の中へ移動します。
空気が抱えられる水蒸気の量には上限があり、その上限は温度で変わります。温度が下がると上限も下がるので、抱えきれなくなった分が水に戻ります。これが結露です。
つまり部屋干しをした部屋では、夜になって気温が下がったタイミングで、窓や壁の表面に水が出やすくなります。朝、窓がびっしり濡れている家は、前夜に何をしていたかを振り返ると原因が見えることがあります。
「部屋干しの部屋」ではなく「家の中のどこか」に出る
ここが厄介な点です。カビは、干した部屋に出るとは限りません。
水蒸気は空気とともに家じゅうを移動します。そして、家の中でいちばん条件の悪い場所で水に戻ります。北側の部屋、押入れの奥、使っていない部屋、外壁に面したクロゼット。リビングで干していたのに、和室の押入れにカビが出る。この経路をたどっていることがあります。
「原因になりそうなことをしていない部屋にカビが出た」という相談は珍しくありません。発生源と発生場所が離れるのが、湿気の厄介なところです。
それでも部屋干しをやめなくてよい理由
花粉、雨、防犯、生活時間。部屋干しには理由があります。やめることを勧めるより、水の出口をつくるほうが現実的です。
やることは3つです。
- 干す部屋を締め切って、除湿機かエアコンの除湿を回す。これが最も確実です。部屋を閉じることで、水蒸気が家じゅうへ広がるのを止め、その場で水として回収します。除湿機のタンクに溜まる水が、そのまま「出ていくはずだった量」です。
- 浴室乾燥がある家は、浴室で干す。浴室は元から水を扱う前提の空間で、換気扇の能力も高い。居室で干すより設計と噛み合っています。
- 扇風機を当てる。乾く時間が短くなれば、室内に水蒸気が留まる時間も短くなります。除湿と併用すると効率が上がります。
逆にやってはいけないのは、締め切った部屋で除湿せずに干すことです。水蒸気の逃げ場がないまま、部屋の湿度だけが上がります。
湿度の目安
厚生労働省の建築物環境衛生管理基準では、相対湿度を40%以上70%以下に保つこととされています。部屋干し中に70%を超えるのは避けにくいので、見るべきは干し終わったあとに70%以下へ戻るかです。
戻らないなら、その部屋には水が溜まり続けています。冬に窓が結露する、押入れがかび臭い、といった症状が出る前の段階で、湿度計は先に教えてくれます。
なお、2003年7月1日以降に着工した住宅には24時間換気が義務づけられており、建築基準法施行令第20条の8で住宅等の居室は0.5回/hの換気回数が定められています。この換気が止まっている家では、部屋干しの水分の逃げ道が一つ減っていることになります。スイッチを確認してみてください。
季節で変わる注意点
- 梅雨:最も条件が厳しい時期です。外気が高湿度なので窓を開けても乾きません。締め切って除湿の一択です。
- 夏:温度が高いぶん空気が水を抱えられるので、湿度としては上がりにくく感じます。ただしカビにとっては温度条件も揃うので、油断できません。
- 冬:加湿目的で部屋干しをする方がいますが、これは結露を増やす行為でもあります。窓際やサッシまわり、外壁側の壁の下部を確認してください。
よくある質問
Q. 部屋干し用の洗剤を使えばカビは防げますか。
A. 洗濯物の臭い対策と、部屋の湿度は別の問題です。洗剤で室内の水蒸気量は変わりません。
Q. 除湿機のタンクの水は、どのくらい溜まりますか。
A. 洗濯物の量と機種によりますが、溜まった水の量がそのまま「室内に放出されずに済んだ量」です。目に見える形で確認できます。
Q. エアコンの冷房でも代わりになりますか。
A. 冷房でも除湿はされますが、設定温度に達すると運転が弱まり除湿も止まります。湿度を狙うなら除湿運転か除湿機のほうが確実です。
まとめ
部屋干しは、洗濯物の水を部屋の空気に移し替える作業です。移した水をどこへ出すかを決めておけば、カビの条件にはなりません。
そして、カビが出た場所と原因の場所は一致しないことがあります。押入れのカビの原因が、リビングの部屋干しだった——この見立てができるかどうかで、対策の当たり外れが変わります。
参考資料(一次情報)
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」(相対湿度40%以上70%以下、温度18℃以上28℃以下ほか)
- 建築基準法施行令第20条の8(機械換気設備の必要換気回数:住宅等の居室0.5回/h。シックハウス対策として平成15年7月1日施行)












