スタッフが更新しています

スタッフブログ

ロゴ
ホーム > スタッフブログ > 乾燥熟成肉・熟成チーズ表面のカビとOTA汚染リスク|意図したカビと意図しないカビの違い、日本・EUの基準の現状、熟成庫の管理

乾燥熟成肉・熟成チーズ表面のカビとOTA汚染リスク|意図したカビと意図しないカビの違い、日本・EUの基準の現状、熟成庫の管理

 

※この記事は2026年9月に、農林水産省・東京都保健医療局・文部科学省の公開情報と、EUの食品汚染物質規則(Commission Regulation (EU) 2023/915)をもとに内容を全面的に見直しました。個別の研究報告の数値は本文に載せていません。

乾燥熟成肉(ドライエイジングビーフ、生ハム、サラミ)や熟成チーズは、表面にカビが育つことを前提にした食品です。そこで問われるのが、「そのカビは意図したものか、意図しないものか」、そして「かび毒オクラトキシンA(OTA)のリスクはどう管理するか」です。結論から言うと、意図したカビと意図しないカビは見た目で区別しにくく、肉製品・チーズのOTAには日本にもEUにも個別の基準値がない。だから管理は熟成庫の温湿度・空気・表面の3つと、記録に寄ります

この記事で分かること

  • 意図したカビ(スターター)と意図しないカビ(環境由来)の違い
  • オクラトキシンAとは何か、産生カビ、毒性、国際分類
  • 日本・コーデックス・EUの基準値の現状(肉製品・チーズには基準がない)
  • 熟成庫の管理:温湿度・空気・表面の3つと記録
  • 家庭で熟成肉やチーズに想定外のカビが出たときの考え方

1. 結論:見た目で区別できない、基準がない、だから熟成庫の管理と記録

要点 内容 根拠
意図したカビと意図しないカビは、見た目では区別しにくい 色はほとんど胞子の色で、色から種類は断定できない。製造者が把握しているかどうかが分かれ目 東京都保健医療局「食品衛生の窓」
OTAを産生するのはペニシリウム属・アスペルギルス属の一部 P. verrucosum、A. ochraceus、A. carbonarius、A. niger など。腎毒性、IARC 2B 農林水産省 OTAリスクプロファイル
肉製品・チーズのOTAに日本・EUとも個別基準はない 日本はOTAの基準値なし。EU 2023/915の付属書に肉製品・チーズのOTAの行はない(当社確認範囲) 農林水産省、EU 2023/915

2. 意図したカビと、意図しないカビ

図1 分かれ目は「製造者が把握しているか」。色や見た目では断定できない

東京都保健医療局のカビQ&Aは、ペニシリウム属には約150種があり、Penicillium camemberti はチーズ用に使われる一方、かび毒(オクラトキシン)をつくる種もあると説明しています。白カビチーズや一部の熟成肉では、製造者が菌株を選び、温湿度を管理して表面にカビを育てます。これが「意図したカビ」です。

一方、熟成庫の壁・棚・空気には野生のカビの胞子が常にあります。東京都のQ&Aは、カビは湿度70%以上・温度10〜30℃で発生しやすいとしており、熟成庫はまさにこの条件です。着地した胞子が製品の表面で育ったものが「意図しないカビ」で、この中にオクラトキシンAをつくる種が含まれ得ます。問題は、色はほとんど胞子の色であり、色から種類を断定する公的な整理がないことです。見た目で「これは意図したカビだ」と言い切れる根拠は、製造者側の管理記録にしかありません。

3. オクラトキシンAとは

農林水産省のリスクプロファイルによると、オクラトキシンAは Penicillium verrucosum、Aspergillus ochraceus、A. carbonarius、A. niger などが産生し、多くの動物で腎毒性が認められ、ラットで発がん性が認められているが作用機構や遺伝毒性は不明で、IARCはグループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)としています。JECFAの暫定耐容週間摂取量は100ng/kg体重、食品安全委員会の耐容一日摂取量は非発がん毒性で16ng/kg体重、発がん性で15ng/kg体重です。汚染されやすい食品として、穀類とその製品、コーヒー、干しぶどう、ワイン、ビール、ココアなどが挙げられています。

農林水産省は、かび毒は通常の加工・調理で十分に減少しないものがあるとしています。表面のカビを削っても、かび毒が内部に移っていればなくなりません。

4. 基準値の現状

図2 肉製品・チーズのOTAに個別基準はない。だから事業者の管理記録が説明の材料になる
区分 OTAの基準 肉製品・チーズ
日本 基準値なし(全食品)。農林水産省が実態調査とリスクプロファイルを公表 基準なし
コーデックス 小麦・大麦・ライ麦 5μg/kg 対象外
EU(2023/915) 未加工穀類5.0、焙煎コーヒー3.0、インスタントコーヒー5.0、ワイン2.0、干しぶどう8.0、ココアパウダー3.0、乾燥ハーブ10.0μg/kg など 付属書に肉製品・チーズのOTAの行はない(当社が確認した範囲)

「基準がない」は「管理しなくてよい」ではありません。基準がないからこそ、熟成庫の温湿度記録と、意図しないカビを見つけたときの記録が、事業者が自分で説明できる唯一の材料になります。EUの規則は改正されるため、最新の本文を確認してください。

5. 熟成庫の管理:温湿度・空気・表面

図3 温湿度・空気・表面の3つを記録する。庫内の壁や棚の黒い点は環境由来のサイン
  1. 温湿度を記録する。熟成に必要な温湿度は製品ごとに違います。大事なのは「いつもと違う」を検知できることで、食品衛生法施行規則 別表第17は必要に応じた温湿度管理と、計器類の点検・記録を求めています。
  2. 空気を動かす。熟成庫の隅・棚の裏・扉の内側は空気が滞り、意図しないカビが出やすい場所です。文部科学省のカビ対策マニュアルも、風が通りにくい隅と、床に近い高さを注意点に挙げています。送風と製品の配置で偏りをなくします。
  3. 表面を見る。製品側は、色ムラ・想定外の色(緑・黒・ピンク)・想定外の場所。庫内側は、壁・天井・棚・扉のパッキンの黒い点。庫内のカビは環境由来の胞子が多いサインです。
  4. 庫内清掃は噴霧しない。マニュアルは噴霧が胞子を吹き飛ばして汚染を広げるため不可としています。拭き取りで行い、塩素系は金属の腐食と製品への混入に注意します。厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルは、床面と床から1mまでの内壁は1日1回以上、天井と1m以上の内壁は1月1回以上の清掃を目安としています。
  5. 意図しないカビは記録して外す。見つけた製品は隔離し、日時・場所・写真を記録します。庫内のどこから来たかを探すことが再発防止になります。
  6. 原料側の管理状況を確認する。原料の肉・乳の供給元で、保管の温湿度とカビの記録がどう管理されているかを確認しておくと、自社の説明材料になります。

6. よくある質問

Q. 熟成肉の表面のカビは削れば食べられますか。

製造者が管理した「意図したカビ」を工程で除去するのは製造の一部です。しかし、家庭で買ったあとに想定外の色や場所にカビが出た場合、それが意図したものかは判断できず、かび毒は通常の加工・調理で十分に減らないため、農林水産省は、カビの生えた食品はもったいなくても捨てるよう案内しています。当社が個別の食品の安全性を判断することはできません。

Q. 白カビチーズの白いカビと、冷蔵庫で生えた白いカビは同じですか。

色から種類を断定することはできません。製造者が管理した表面のカビと、購入後に別の場所(切り口・包装の内側)に出たカビは別物と考えてください。冷蔵庫の保管については冷蔵庫のカビにまとめています。

Q. 熟成庫の壁や天井にカビが出ています。

環境由来の胞子が多いサインで、製品の「意図しないカビ」の発生源になります。別表第17は内壁・天井・床の清潔維持と換気・温湿度管理を求めています。営業を止めずに処置する順番は飲食店のカビ取りと同じです。

Q. OTAの検査は自分でできますか。

かび毒の定量は分析機関の領域です。当社の検査は、熟成庫の浮遊カビの量と種類を調べるもので、環境側の管理に使います。製品のかび毒は食品分析機関に依頼してください。

7. まとめ

熟成肉・チーズの表面のカビは、意図したものと意図しないものが見た目で区別しにくく、意図しないカビの中にはオクラトキシンAをつくる種が含まれ得る。肉製品・チーズのOTAに日本にもEUにも個別基準はない。だから管理は、熟成庫の温湿度・空気・表面を記録し、意図しないカビは記録して外し、庫内の壁や棚のカビは環境のサインとして処置する、に寄ります。

熟成庫・食品工場の環境カビは、量と種類を数字に

MIST工法®カビバスターズ本部では、熟成庫・工場の浮遊カビの量と種類を調べる検査と、操業を止めない工程での処置を行っています。意図しないカビが繰り返す庫内の原因調査にご利用ください。

参考資料

  • 農林水産省「食品安全に関するリスクプロファイルシート オクラトキシンA」(2014年:P. verrucosum・A. ochraceus・A. carbonarius・A. niger/腎毒性/IARC 2B/JECFA PTWI 100ng/kg bw/食安委 TDI 16・15ng/kg bw/汚染食品)
  • 農林水産省「いろいろなかび毒」(OTA 日本 基準なし/コーデックス 小麦・大麦・ライ麦5μg/kg)、「かびとかび毒についての基礎的な情報」(通常の加工・調理で十分に減少しない/もったいなくても捨てる)
  • 東京都保健医療局「食品衛生の窓」カビQ&A(ペニシリウム約150種/P. カマンベルティはチーズ用/色はほとんど胞子の色/湿度70%以上・10〜30℃)
  • Commission Regulation (EU) 2023/915, Annex I(OTAの品目別最大基準値。肉製品・チーズの行は記載なし)
  • 厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」(清掃頻度)、食品衛生法施行規則 別表第17(温湿度管理・計器類の点検と記録)、文部科学省「カビ対策マニュアル」(噴霧器不可/隅と床に近い高さ/記録)

※本記事は公的機関・EU規則の公開情報をもとに一般的な情報を提供するもので、個別の食品の安全性や法令適合を判断するものではありません。基準値は改正されることがあるため、最新の規則本文と所管官庁の情報を確認してください。当社は食品衛生の検査機関・医療機関ではありません。