「壁のカビは取ったのに、部屋に入ると空気が違う気がする」というご相談があります。カビは見えている場所だけにいるわけではありません。空気中を漂っている胞子=浮遊カビをどう扱うかで、仕上がりの体感も再発のしやすさも変わります。今回はこの見えない相手について説明します。
結論|浮遊カビは「測る・封じる・水を断つ」の順でしか扱えない
浮遊カビは目で見えず、拭き取ることもできません。だからこそ、感覚ではなく検査で量をつかむこと、作業中に舞い上げない段取りにすること、そして最後に発生源となる水の条件を断つことの3つが順番どおりに必要になります。順番を入れ替えると、かえって空気中のカビを増やしてしまうことがあります。
文部科学省「カビ対策マニュアル」は、カビの胞子は殺菌してもアレルゲンとして残ると説明しています。「殺す」ことと「空気から減らす」ことは別の作業だという前提を、まず共有させてください。

空気の法定基準に「カビ」の項目はない
建築物衛生法にもとづく厚生労働省の建築物環境衛生管理基準は、特定建築物の空気環境について測定項目と基準値を定めています。ただし、その中にカビという項目はありません。カビが問題にならないという意味ではなく、法令の測定項目としては別枠だということです。
| 項目 | 基準値 | カビとの関係 |
|---|---|---|
| 浮遊粉じんの量 | 0.15mg/m³以下 | 粉じんの重さの測定。胞子を種類ごとに数えるものではない |
| 温度 | 18℃以上28℃以下 | カビが増えられる温度域と重なる |
| 相対湿度 | 40%以上70%以下 | 上限70%は、カビにとっては十分に増えられる湿度 |
| 気流 | 0.5m/秒以下 | 空気が動かない場所ができると、そこが弱点になる |
| ホルムアルデヒドの量 | 0.1mg/m³以下 | 化学物質の指標。カビ臭とは別の話 |
| カビ | (項目なし) | 測りたいなら、別途カビ菌検査を行う必要がある |
つまり「法定の空気環境測定に合格している」ことは、「カビがいない」ことの証明にはなりません。カビの量を知りたいのであれば、カビを対象にした検査を別に行う必要があります。
どう測るのか|落下菌検査と同定検査
当社の公開情報では、カビ菌検査として落下菌検査と同定検査を挙げています。落下菌検査は、浮遊している菌の種類と量をレベルで表示するものです。同定検査は、寒天スタンプで採取したものを培養し、顕微鏡で観察して種類を確定させます。一般の建物内でカビ菌検査を実施したのは、MISTグループが最初でした。
検査は数字を出すこと自体が目的ではありません。どの部屋が高いのか、施工の前後で下がったのか、そして水の出所と結びつくのかを読むための材料です。

手順を間違えると、かえって飛ぶ
文部科学省「カビ対策マニュアル」は、薬剤を噴霧器で散布するとカビの胞子を吹き飛ばして汚染を広げるおそれがあると注意しています。また、除湿を進めると乾燥した胞子が飛散しやすくなるため、区画を分けて大気の清浄化と併せて行う必要があるとも記載されています。
「とりあえず消毒液を撒く」「まず除湿機を回す」という自己流の初動が、空気中のカビを増やす方向に働いてしまうのはこのためです。作業の順番そのものが、浮遊カビの量を左右します。

作業中は、生きているカビであればカビ毒、死んでいてもアレルゲンとして影響しうるため、呼吸用保護具が必要とされています。広い範囲に出ている場合、ご自身での作業はおすすめできません。
MIST工法®では、浮遊カビをどう位置づけているか
当社の公開情報では、MIST工法®の特徴として、霧状にした除カビ専用剤が素材の深部まで浸透すること、こすらずに処理できること、仕上げに防カビ剤を塗布すること、そして浮遊カビへの対処を挙げています。表面を削り落とす発想ではなく、内部と空気を含めて扱うという考え方です。
現地調査から検査、除カビ、防カビ処理、そして環境改善のアドバイスまでを一つの流れで行うのは、この3つの居場所を別々の業者で分担すると、順番が崩れやすいからでもあります。
カビの発生を100%防ぐことはできません。当社のQ&Aでも同様に明記しています。施工方法と定期的な管理によって、限りなくゼロに近づけることを目標とお考えください。
次回予告
次回は、安全性をどう確かめるのかを取り上げます。排水試験や毒性試験という考え方が、現場の何を保証しているのかを説明します。
参考にした情報
- 株式会社せら「MIST工法®とは」 https://sera.jp/mist
- 株式会社せら「カビ菌検査」 https://sera.jp/kabikensa
- 株式会社せら「Q&A」 https://sera.jp/faq
- 文部科学省「カビ対策マニュアル 実践編/Q&A」
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」












