「防カビ塗料を使っているのに生えた」「防カビ仕様のクロスにしたのに黒くなった」というご相談をいただくことがあります。製品が悪いという話ではありません。混ぜ込む方式と後から塗る方式では、届く場所と入れられる量が違うためです。今回はその違いを説明します。
結論|混ぜ込み型は「面」、後付け型は「線と隙間」に強い
防カビ性能をうたう塗料や建材は、製造や施工の段階であらかじめ薬剤を含ませる方式です。面として均一に仕上がる一方で、製品としての性能や色に影響するため、入れられる量には制約があります。
当社のQ&Aでは、従来は薬品を混ぜ込んだ塗料・接着剤を塗ることでカビ予防としてきたが、製品に少量の防カビ剤しか混入できず、効果はとても低いものだったと説明しています。そのうえで、MIST工法®では、コンクリートとクロス糊の隙間、壁と塗料の隙間といった細かい部分に、多量の防カビ剤を混入した特殊な防カビ剤溶液を塗布できるため、長期間にわたるカビ予防が可能だとしています。

カビは「面」より先に「線」から出る
現場で見ていると、カビが最初に出てくるのは面の真ん中ではなく、材が変わる境目や隙間、そして冷える面です。文部科学省のカビ対策マニュアルのQ&Aでも、収納では壁から10cm離すこと、床上20〜30cmは湿気だまりになりやすいこと、最下段は床上75〜120cmの位置より相対湿度が5%以上高いことが示されています。

つまり、面としての防カビ性能が確保されていても、線と隙間が抜けていれば、そこから始まります。これが「防カビ仕様にしたのに生えた」の中身であることは少なくありません。
| 方式 | 届く範囲 | 入れられる量 | 更新のタイミング |
|---|---|---|---|
| 防カビ塗料 | 塗った面 | 製品性能の制約を受ける | 塗り替え時 |
| 防カビ建材・クロス | その材の面 | 製品性能の制約を受ける | 張り替え時 |
| 接着剤への混入 | 接着面 | ごく少量 | 施工時のみ |
| 後付けの防カビ処理 | 面+隙間・取り合い部 | 必要量を配分できる | 必要に応じて実施 |
順番を間違えると、性能は生かせない
もうひとつ重要なのが順番です。既存のカビが残ったまま防カビ仕様の材で仕上げると、下にカビを閉じ込めることになります。当社のQ&Aでは、カビが残ったまま塗り重ねることを「カビに新たな栄養源を与えるようなもの」と表現し、除カビ・塗装・防カビ処理という順番で進めるのが本来の建物維持だと説明しています。

新築でも「生えない」とは言えない
新築だから安心とは限りません。人が快適に暮らせる環境は、カビにとっても条件がよい環境です。厚生労働省の建築物環境衛生管理基準は相対湿度40〜70%、温度18〜28℃を求めていますが、この範囲はカビが増えられる範囲と重なります。当社のQ&Aでも、カビの発生を100%防ぐことはできないと明記したうえで、施工方法と定期的な管理によって限りなくゼロに近づけることは可能だとしています。
建材や塗料の防カビ性能は、あくまで条件のひとつです。カタログの数値を比べる前に、その部屋で水がどこに集まるのか、乾く経路があるのかを確認してください。
次回予告
次回は、見落とされやすい「空気中のカビ」を取り上げます。浮遊しているカビをどう扱うのか、施工の前後で何が変わるのかを説明します。
参考にした情報
- 株式会社せら「Q&A」 https://sera.jp/faq
- 株式会社せら「MIST工法®とは」 https://sera.jp/mist
- 文部科学省「カビ対策マニュアル Q&A/実践編」
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」












