新しい連載「カビと健康の関係」を全5回でお届けします。初回は、いちばん相談の多いアレルギーの話です。症状の原因を判断できるのは医療機関という前提は変わりませんが、住まい側でできることには、公的機関が示している具体策があります。
要点を3つ。
- カビは室内アレルゲンの一つ。ただしぜん息では、ダニが特に重要とされています。
- カビとダニは、似た環境で増えます。だから湿度を下げる対策は、両方に効きます。
- カビは殺菌してもアレルゲンとしては残ります。「乾いたから大丈夫」ではありません。
1. 室内アレルゲンの中でのカビの位置

アレルギーポータル(厚生労働省委託事業)は、成人のぜん息の悪化因子としてダニやペットの毛、カビなどの室内アレルゲンを挙げ、なかでもダニ対策が重要であるとしています。
一方、独立行政法人環境再生保全機構は、吸入アレルゲンが気管支ぜん息の原因として最も重要であるとしたうえで、カビもまた重要なアレルゲンであると説明しています。室内環境の項では、カビ(特にアスペルギルスとアルテルナリア)についてぜん息重症化との関係が明らかになっていると位置づけられています。
整理すると、こうなります。主役はダニ。ただしカビは、重症化のほうに関わる。どちらか一方をやればいい、という関係ではありません。
2. カビとダニは、同じ湿度で増える

環境再生保全機構は、カビの増殖に適した条件を温度25〜35℃、湿度70〜90%とし、ダニと類似した環境で繁殖すると説明しています。厚生労働省の建築物環境衛生管理基準が定める相対湿度40〜70%、温度18〜28℃と重ねると、位置関係がはっきりします。
ここが実務的に重要な点です。ダニ対策として湿度を下げることは、そのままカビ対策になります。逆もまた同じ。連載「カビの基礎知識」の第2回から第4回で扱ったとおり、カビの4条件のうち実際に断てるのは水分だけでした。アレルギー対策としての室内環境整備は、カビ対策とほぼ同じ方向を向いています。
表1 室内アレルゲン別の対策と、共通する部分
| 対象 | 示されている対策 | カビ対策と共通するか |
|---|---|---|
| ダニ | こまめな掃除機かけ、寝具の管理(60℃以上の熱の利用)、湿度を下げる | 湿度を下げる部分は共通 |
| カビ | 十分な換気、こまめな掃除、加湿器は使わない、部屋干しを避ける | そのままカビ対策 |
| エアコン | 年2回、使用開始直前に掃除し、その後は毎週掃除する | 共通(連載第7回の「空調機内部」) |
| ペット由来 | 新たに飼い始めるのを避ける、居室の清掃 | 共通しない |
出典:アレルギーポータル(厚生労働省委託事業)成人のぜん息、独立行政法人環境再生保全機構「悪化因子の対策 室内環境を見直しましょう」をもとに作成。
環境再生保全機構は、カビ・ダニ対策として加湿器は厳禁、極端な乾燥状態のときを除いて洗濯物の部屋干しはやめるとしています。乾燥対策と湿度対策は、目的が逆を向くことがあります。どちらを優先するかは、実際の湿度を測ってから判断するのが確実です。
3. 「死んでいるから大丈夫」ではない
連載でも繰り返し触れてきた点です。文部科学省「カビ対策マニュアル」実践編は、カビ胞子は殺菌してもアレルゲンであるため、吸入量をできる限り抑制することが必要だとしています。同マニュアルのQ&Aも、防護用品の項で死んでいてもアレルゲンとして問題になると明記しています。
つまり、アレルギーの観点では殺菌したかどうかより、取り除けたかどうか、そして舞い上げなかったかどうかが問われます。掃除のときにスプレーで吹き飛ばす、乾いた状態でこすって粉を舞わせる、といった扱いは避けたいところです。
4. 症状と、受診の目安

表2 症状の特徴(アレルギー性鼻炎の場合)
| 項目 | 説明されている内容 | 住まい側の手がかり |
|---|---|---|
| 主な症状 | くしゃみ、透明な水様性の鼻水、鼻づまり | 特定の部屋で強くなるかを記録する |
| 感染症との違い | 鼻水が無色で粘り気がなくサラサラしている | 季節や場所との関係を見る |
| 通年性の原因 | ダニやホコリなどが原因で1年を通して症状が出る | 湿度と清掃の状態を確認する |
出典:アレルギーポータル(厚生労働省委託事業)アレルギー性鼻炎の記述をもとに作成。診断は医療機関によります。
アレルギーポータルは、勉強や仕事、家事に集中できなかったり、よく眠れなかったりするなど生活に支障が出た場合は治療を検討すべきとしています。またぜん息については、横になれないほどの息苦しさ、皮膚が青紫色になる、意識がはっきりしないといった状態はすぐに医療機関を受診すべき状態として挙げられています。この点は、住まいの対策と切り離して考えてください。
5. 住まい側の進め方
- 測る:まず相対湿度が40〜70%に入っているか。部屋ごとに差があります。
- 減らす:加湿器を止める、部屋干しを見直す、換気を確保する。
- 取り除く:見えているカビは、舞い上げないように取り除く。エアコンは使用開始前に掃除する。
- 記録する:症状が強くなる時間帯・場所と、そのときの温湿度。医療機関に相談する際の材料になります。
順番を「取り除く」から始めると、条件が残ったままなので戻ります。連載「カビの基礎知識」最終回で引用したとおり、文部科学省のマニュアルは除菌だけでは十分な処置とはならず、環境を改善していかない限りカビ被害が繰り返されると述べています。
まとめ
- カビは室内アレルゲンの一つ。ぜん息ではダニが特に重要とされ、カビは重症化との関係が指摘されている。
- カビとダニは似た環境で増えるため、湿度対策は両方に効く。
- カビは殺菌してもアレルゲンとして残る。舞い上げないことが大切。
- 生活に支障が出ている場合は治療の検討を。息苦しさが強い場合はすぐ受診。
次回・第2回は「室内の湿度と体調|結露が起きる家で何が起きているか」です。
お住まいのどこにどれだけカビがあるのかは、現地確認と必要に応じた検査で把握できます。ご家族の体調面の心配があってお急ぎの場合も、まずは範囲の把握からご相談ください。
あわせてお読みください:カビと健康|アレルゲンと日和見感染の基礎、受診を考えるべきサイン/カビが育つ4つの条件/掃除で落ちるカビ・落ちないカビ
【参考・出典】アレルギーポータル(厚生労働省委託事業)「成人のぜん息」「アレルギー性鼻炎」、独立行政法人環境再生保全機構「ぜん息などの情報館」(悪化因子の対策 室内環境を見直しましょう/小児ぜん息Q&A アレルゲン)、文部科学省「カビ対策マニュアル」実践編・Q&A、厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」(空気環境の調整)。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療の助言ではありません。症状や体調に関するご心配は医療機関にご相談ください。費用や工法は現地調査のうえで判断します。












