MIST工法®の説明でいちばん誤解されやすいのが「専用剤」という言葉です。特別な液体を一本持っていて、それを吹けば終わる、というイメージを持たれることがあります。実際は逆で、現場ごとに条件を確認して調整することが前提になっています。今回はその中身を説明します。
結論|使用する製品と対象素材・作業条件を確認する
当社のMIST工法®では、素材とカビの発生状況に合わせて専用剤や処理方法を検討します。「専用剤」という名称だけでは、使用する製品や対象素材、作業条件は分かりません。見積りの際には、使用剤の資料と適用範囲を確認してください。
確認するのはpHだけではありません。素材の種類、塗装や表面仕上げ、濡れや劣化、製品の指定濃度・使用方法を照合します。pHを素材に合わせれば傷めないという一律の判断はせず、必要に応じて試験施工で仕上がりを確認します。
なぜ現場ごとに変える必要があるのか
理由は単純で、素材が違うからです。木材とコンクリートでは、水を含んだときの挙動も、表面の性質も違います。和紙や意匠面のように、少しの負担でも戻せない対象もあります。同じ強さで一律に処理すれば、ある現場では足りず、別の現場では過剰になります。
- 素材・仕上げ・劣化と、過去の補修履歴。
- 発生場所・範囲・濡れの経緯。外観だけで内部を判断しない。
- 漏水・結露など水分経路と、必要な調査。
- 残したい仕上げと、試験施工・補修・交換の相談範囲。
もうひとつの理由は、カビ側の状態が一定でないことです。文部科学省のカビ対策マニュアル基礎編では、カビが生育できる最低の水分活性は種類によって異なり、好乾性のカビでは0.65、青カビでは0.83、黒麹カビでは0.88、クモノスカビでは0.94といった値が示されています。同じ「カビ」でも条件が違うということは、現場によって置かれている状況も違うということです。
薬剤の名称や液性だけでは判断できない
- 製品の適用素材・濃度・使用方法を確認する。
- 素材の仕上げや傷みによって、試験施工などを検討する。
- 液性や水圧の区分だけで、効果や無変色を保証しない。
現在の当社Q&Aでは、素材や仕上げ、劣化の状態に応じて方法を検討し、すべての素材で変色や影響がないと約束するものではないとご案内しています。使用剤の酸性・アルカリ性や洗浄の水圧だけで、素材への影響の有無を決めることはできません。
製品が指定する素材や使い方と現物の状態を照合し、養生、換気、洗い流し、乾燥、利用再開の条件を相談します。残したい仕上げや過去の補修がある場合も、施工前にお知らせください。
| 調整する項目 | 何に合わせるか | 確認しておくこと |
|---|---|---|
| 水素イオン濃度(pH) | 製品の適用素材・仕上げ・使用方法 | pHだけで無変色を判断しない |
| 処理の対象範囲 | 確認できた発生範囲と下地の状態 | 外観だけで内部の状態を確定しない |
| 工程の繰り返し回数 | 素材の状況と汚れの層 | 継続・中止・追加作業の条件と費用 |
| 洗い流しの水圧 | 建材・仕上げ・劣化と製品の使用条件 | 洗い流しの可否、排水、乾燥条件 |
工程と確認範囲を現場に合わせて調整する
- 水分原因の調査・修理と、必要な開口・撤去を相談する。
- 適用条件を確認して清掃・除カビ・乾燥の工程を調整する。
- 補修・防カビ・仕上げの範囲と、養生・換気・利用再開条件を確認する。
- 担当者、確認方法、日程、追加費用を共有する。
黒ずみにはカビ、汚れ、変色など複数の原因があり、外観だけで内部の状態や処理できる深さを確定できません。木材の劣化や仕上げを確認し、必要に応じた試験施工、点検のための開口、建材の補修・交換を含めて対象範囲を検討します。
工程を繰り返せば必ず素材への負担が減るとは限りません。処理の回数や中止・追加作業の判断条件、乾燥と仕上がりの確認方法、追加費用を施工前に相談してください。
調整しても変えられないもの
除カビ・防カビの施工と、漏水や結露など水分原因への対応は分けて確認します。原因修理や必要な開口・撤去と、清掃・除カビ・乾燥を現場に合わせて調整し、ふさぐ仕上げの前に状態を確認します。原因改善工事や補修・交換の担当範囲、費用も見積りで共有してください。
次回予告
次回は、酸性・アルカリ性の区分だけで素材への影響を決めず、製品の適用条件や試験施工を確認する考え方を説明します。
参考にした情報
- 株式会社せら「MIST工法®とは」 https://sera.jp/mist
- 株式会社せら「Q&A」素材への影響・施工条件
- 株式会社せら「神社仏閣のカビ取り・復元処理」 https://sera.jp/shrines
- 文部科学省「カビ対策マニュアル 基礎編」(生育に必要な最低水分活性)
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」
