古い家の梁や、寺社の木部、無垢材の床。黒ずんでくると「汚れなのか、カビなのか、それとも木が傷んだのか」が分からず、そのままになりがちです。今回は木の黒ずみの正体と、削らずに落とすという考え方を説明します。
結論|黒ずみの多くはカビ。ただし「木が傷む」腐朽菌とは別物
当社のQ&Aでは、木の黒ずみは汚れを栄養にしてカビが繁殖した現象だと説明しています。木そのものが黒い成分に変わったわけではなく、表面についた汚れとカビが重なって黒く見えている状態です。
一方で、触ると柔らかい、指で押すと崩れるという場合は、腐朽菌が関わっている可能性があります。こちらは木材の成分そのものを分解するため、見た目の問題ではなく強度の問題になります。カビと腐朽菌を同じ言葉で扱わないことが、最初の分かれ道です。

カビと腐朽菌は、食べているものが違う
国土交通省が示している木材利用の留意事項では、腐朽菌は木材の栄養成分であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどに、温度20〜35℃、水分、酸素が加わることで生育すると整理されています。対してカビは、温度25〜30℃と木材表面が濡れる状態、そして木材表面に付着した塵埃が条件として挙げられています。
同じ資料では、構造用集成材について、含水率が長期間継続的または断続的に19%を超える環境を厳しい環境として区分しています。木のカビも腐朽も、突き詰めれば「濡れている時間の長さ」の問題だということです。

削って落とす方法の、失うもの
黒ずみを取る方法として一般的なのが、サンダーやブラシで削る、あるいは強い漂白剤で脱色するというやり方です。短時間で白くなりますが、木の場合は代償があります。
| 方法 | 見た目 | 素材への影響 | 再発への効き方 |
|---|---|---|---|
| 研磨して削る | 表層ごと除去され白くなる | 木目や面の風合いが変わる。彫刻や仕上げは戻せない | 内部に入った菌糸が残れば再発する |
| 塩素系で脱色する | 短時間で白くなる | 木部の変色や毛羽立ち、金物の腐食が起きうる | 色が抜けただけで、菌が残る場合がある |
| 分解して落とす | 汚れとカビを分解して落とす | 削らないため木目や彫刻を残せる | 仕上げの防カビ処理と併せて時間を稼ぐ |
| 表面を塗りつぶす | 覆い隠される | 内部の状態が見えなくなる | 原因が残れば下で進行する |
文部科学省の「カビ対策マニュアル」は、カビの色素や着色した胞子の除去は困難で、変色は元に戻らない場合があると説明しています。白くすることと、カビを無くすことは同じではありません。
MIST工法®の順番|菌を先に、汚れを後に
当社の神社仏閣向けの公開情報では、汚れを分解する前に菌糸を退治しておくと、汚れも分解しやすくなると説明しています。削らず、こすらず、素材に合わせた水素イオン濃度の専用剤で処理し、仕上げに防カビ剤を塗布するという流れです。木材だけでなく、和紙にも対応します。
文化財や社寺の場合、削れないという制約が先にあります。その制約から考えると、「落とす」よりも先に「増やさない」「壊さない」が来る、という順番になります。

黒ずみが広い、押すと柔らかい、雨漏りの跡があるといった場合は、見た目の処理だけでは判断できません。まず水の出所を特定してください。構造に関わる場合は建築側の判断も必要になります。
次回予告
次回は、削れない対象そのものを取り上げます。神社仏閣や文化財の復元で、何を守りながら作業しているのかを説明します。
参考にした情報
- 株式会社せら「Q&A」 https://sera.jp/faq
- 株式会社せら「神社仏閣のカビ対策」 https://sera.jp/shrines
- 株式会社せら「MIST工法®とは」 https://sera.jp/mist
- 国土交通省「木材を利用した官庁施設の適正な保全に資する整備のための留意事項」資料編
- 文部科学省「カビ対策マニュアル 基礎編」












