執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関・学会の公開資料にもとづいています。
「室内の空気にカビはどれくらい浮いていれば多いのか」。この疑問に、住宅について目安を示しているのが、日本建築学会の環境基準「微生物による室内空気汚染に関する設計・維持管理規準・同解説(AIJES-A0002-2013)」です。
今回は施設別シリーズの第1回として、住宅の浮遊真菌(空気中のカビ)の目安を、一次資料をもとに整理します。
この記事で分かること
- 住宅の浮遊真菌の目安「1,000 CFU/m³以下」の意味
- 1,000を超えたときに見る「I/O比(室内÷屋外)」
- CFUという単位と、測り方の基本
- 数値が高かったときに住まいで確かめること
1. 結論:住宅は「1,000 CFU/m³以下」、超えたら「I/O比2以下」かを見る
- 日本建築学会の規準では、住宅の浮遊真菌について1,000 CFU/m³以下を維持管理の目安としています。
- 1,000 CFU/m³を超えた場合は、屋外の濃度と比べたI/O比(室内濃度÷屋外濃度)が2以下であるかを確認します。
- I/O比が2を大きく超える場合は、屋外からの流入ではなく、室内にカビの発生源がある可能性を考えます。
この値は、規準の解説にあるとおり設計・維持管理のための参考値で、「これを超えたら病気になる」という境目の値ではありません。法律で義務付けられた基準でもありません。
2. 住宅の規準値
| 項目 | 目安 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 浮遊真菌濃度 | 1,000 CFU/m³以下 | 居室の空気中のカビの量 |
| 1,000 CFU/m³を超えた場合 | I/O比 2以下 | 室内÷屋外。外気の影響か、室内の発生かを見分ける |
2013年の第2版で、住宅については前版で示されていなかった真菌の維持管理規準が新たに提案されました。
規準づくりに関わった研究者は、1,000 CFU/m³を超える住宅と、子どものアレルギー疾患の割合に関係が見られた国内の調査などを根拠にしていると説明しています。また、一般的な居室の浮遊真菌は100〜1,000 CFU/m³程度に収まることが多いとも紹介されています。
3. CFUとI/O比とは
CFU(コロニー形成単位)
空気を一定量吸い込んで培地(寒天)に当て、培養して生えてきたカビの集落(コロニー)の数を数えたものです。「CFU/m³」は空気1立方メートルあたりの数を表します。生きていて増えることのできる胞子などを数えるため、死んだ胞子や、培地で育ちにくい種類は数に入らない点に注意が必要です。
I/O比
Indoor(室内)とOutdoor(屋外)の比です。カビの胞子は屋外にも常にあり、季節や天気で大きく変わります。同じ日に室内と屋外を測って比べることで、室内の数値が高い理由が「外から入ったもの」なのか「家の中で増えているもの」なのかを判断しやすくなります。
4. 実際の住宅ではどうか
仙台市内の応急仮設住宅を調べた研究(柳ら、日本建築学会技術報告集 2016年)では、夏期にはほぼすべての調査住宅で1,000 CFU/m³を超え、I/O比も1を大きく上回ったと報告されています。結露やカビの発生が起きやすい住まいでは、規準を超えることが珍しくないことが分かります。
5. 数値が高かったときに住まいで確かめること
- 目に見えるカビ:窓まわり、押し入れ・クローゼットの奥、家具の裏、浴室・洗面所
- 見えない場所:エアコン内部、壁紙の裏、床下、天井裏
- 湿度:室内の相対湿度が高い状態が続いていないか(目安として40〜60%)
- 結露と水もれ:冬の結露、配管や雨の侵入
- 換気:24時間換気が止まっていないか、給気口が閉じていないか
測定は、測る時間・場所・天気で結果が変わります。1回の数値だけで判断せず、屋外と同時に測る、複数の部屋で測ることが大切です。
6. よくある質問
Q. 1,000 CFU/m³を超えたら健康に害がありますか?
この値は設計・維持管理のための参考値で、超えたら必ず健康被害が出るという境目ではありません。ただし、体質によってはカビがアレルギーなどの原因になることがあると言われています。症状がある場合は医療機関に相談し、住まいではカビの発生源と湿気を減らしてください。
Q. I/O比が2を超えたら何を疑えばいいですか?
室内でカビが増えている可能性があります。エアコン内部、押し入れやクローゼット、壁紙の裏、床下など、見えない場所も含めて発生源を探します。
Q. 自分で浮遊カビを測ることはできますか?
正確な数値を出すには、決まった量の空気を吸引して培養する測定器と培養の手順が必要です。当社ではカビ菌検査として、室内と屋外の測定・分析を行っています。
7. まとめ
- 住宅の浮遊真菌は1,000 CFU/m³以下が日本建築学会の維持管理の目安
- 超えたらI/O比2以下かを確認し、室内の発生源を見分ける
- 規準は参考値。数値とあわせて、湿度・結露・見えない場所を確かめる
次回は病院の規準を取り上げます。病院では部屋の種類によって、より厳しい値が示されています。
住まいの空気のカビが気になる方は、お問い合わせまたはフリーダイヤル 0120-052-127 へご相談ください。
参考資料(一次情報)
- 日本建築学会「微生物による室内空気汚染に関する設計・維持管理規準・同解説(AIJES-A0002-2013)」 2013年第2版。事務所・学校・住宅・病院・高齢者福祉施設など8施設の設計規準値と維持管理規準値。住宅の真菌の維持管理規準を新たに提案
- 柳宇ほか「仙台市内の応急仮設住宅における室内真菌汚染の実態」日本建築学会技術報告集 22巻51号(2016) 夏期にほぼ全住宅で1,000 CFU/m³を超過
- 日経クロステック「健康被害リスクを下げるレベルの達成は容易」 住宅の規準(1,000 CFU/m³以下、超える場合はI/O比2以下)と根拠の説明
- 伊藤昭・森本正一「講座 バイオロジカルクリーンルーム(第2回)医療施設」空気清浄 62巻2号(2024) AIJES-A0002-2013の規準値は設計・維持管理のための参考値であり、感染・汚染の境目の値ではないこと












