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カビの検査|落下菌検査と同定検査で分かること・分からないこと、依頼する前に知っておく3つ

 

「カビの検査」と聞くと、専門家が顕微鏡をのぞいてカビの名前を言い当てる場面を想像するかもしれません。実際の検査はもっと地味で、「どこに、どれくらい、何がいるか」を数字と写真にする作業です。ここでは、カビの検査で分かること・分からないこと、そして検査を依頼する前に知っておくべきことをまとめます。

結論:検査は「目に見えないカビ」を数字にするためのもの。取る前と取った後の2回に意味がある

  1. 検査で分かるのは「量」「種類」「場所」。空気中にどれくらい飛んでいるか(落下菌検査)、その面に何が付いているか(同定検査)。この2つで、見えないカビの状況が数字になります。
  2. 検査で分からないのは「原因」と「健康への影響」。カビの量が多いことは分かっても、なぜ多いのか(結露か、漏水か、換気不足か)は建物の調査で判断します。また、この量なら安全という基準値は、住宅には存在しません。
  3. 検査の価値は「施工前」と「施工後」の比較にある。取る前の数値と取った後の数値を比べてはじめて、対策が効いたかどうかが分かります。1回だけの検査は、状況の記録にはなっても、効果の証明にはなりません。

カビの検査の基本は「育てて数える」

カビは目に見えない胞子の状態で空気中を漂っています。これを直接数えることは難しいので、検査ではカビが育ちやすい栄養を寒天で固めた「培地」に胞子を付着させ、一定の温度で数日間育てて、目に見える集落(コロニー)にしてから数えます。これが培養法と呼ばれる方法で、食品工場や医薬品工場の環境検査でも使われている基本的な手法です。

育ったコロニーは、色、形、顕微鏡での胞子の形などから種類を推定します。培地の組成によって育ちやすいカビが違うため、目的に応じて培地を選びます。

検査の種類① 落下菌検査:空気中のカビを数える

培地を室内で一定時間(当社の検査では20分間)開放し、空気中から自然に落ちてくる胞子を捕集します。その後、25〜35℃で120時間(5日間)培養し、できたコロニーの数を数えます。同じ条件で複数の場所(部屋の広さに応じて2〜4か所)を測ることで、どの部屋の空気がどれくらい汚染されているかが比較できます。

落下菌検査で分かるのは「空気中の量」です。カビ臭いのに見えるカビがない、家族の症状が特定の部屋で出る、といったときに、部屋ごとの数値を比べることで発生源の見当がつきます。コロニーが多すぎて数えられない場合は「測定不能多数」として記録します。

検査の種類② 同定検査:その面に何がいるかを調べる

カビ専用の寒天スタンプを壁や床、家具の表面に押し当てて、その面に付着している菌を採取し、培養して種類を調べます。「この黒い点はカビなのか、汚れなのか」「壁紙の裏まで及んでいるのか」を判断するときに使います。

同定検査で種類が分かると、対策の優先順位が決まります。たとえば湿気が多い場所を好む種類が出れば水分の供給源を探し、乾燥に強い種類が出ればホコリの管理を疑う、といった具合です。

検査で分からないこと

「この数値なら安全」という基準値

厚生労働省の建築物環境衛生管理基準は、温度・湿度・二酸化炭素・浮遊粉じんなどの基準を定めていますが、浮遊するカビの量については基準値を定めていません。WHOも2009年の室内空気質ガイドラインで、湿気やカビと呼吸器症状のリスク上昇との関連を示しつつ、安全といえる定量的な基準値は設定できないとしています。検査の数値は「多い・少ない」「施工前後で減った・減らない」という比較で使うものであり、「基準以下だから安全」という使い方はできません。

原因

検査はカビの状況を記録しますが、なぜそこにカビが多いのかは教えてくれません。原因は結露、漏水、床下の湿気、換気不足、建設中の水分など建物側にあることが多く、これは温湿度の測定、含水率の測定、床下や壁内の目視といった建物の調査で判断します。カビが育つ条件はカビが育つ条件を参照してください。

健康への影響の有無

カビの量と個人の症状の関係は、体質や持病、曝露の時間で大きく変わります。検査の数値から個人の健康への影響を判断することはできません。症状がある場合は医療機関にご相談ください。カビと健康の関係はカビアレルギーと住まいにまとめています。

検査を依頼する前に知っておく3つのこと

① 目的をはっきりさせる

「カビ臭の発生源を特定したい」「施工の効果を確認したい」「賃貸の退去時に状況を記録したい」「食品を扱う施設で衛生管理の記録が必要」。目的によって、測る場所、回数、必要な検査の種類が変わります。

② 比較の設計をする

1か所だけ、1回だけの数値は、比べる相手がないので解釈できません。カビ臭い部屋と臭わない部屋、施工前と施工後、屋内と屋外。比較の相手を決めてから測ることで、はじめて数値に意味が出ます。

③ 検査と施工を分けて考える

検査の結果、カビが多いと分かっても、それだけでは何も解決しません。原因の調査と、除去・再発防止の施工が別に必要です。検査を「施工を売るための入口」として使う業者もあります。検査結果の説明と、施工の見積もりが分かれているかどうかを確認してください。

当社のカビ菌検査について

当社(MIST工法®カビバスターズ本部)では、落下菌検査と同定検査の2種類を実施しています。一般の建物内でカビ菌検査を実施したのは当社グループが初めての試みで、施工前後の数値を比較してお示しすることを基本にしています。検査の詳しい手順と対象はカビ菌検査のページをご覧ください。食品工場、飲食店、施設内のアレルギー対策など、記録が必要な場面にも対応しています。ご相談はお問い合わせから承ります。

よくある質問

Q. 市販のカビ検査キットで十分ですか。
A. 空気中の胞子を培地で育てて数えるという原理は同じです。ただし、開放時間・培養温度・置く場所を揃えて比較しなければ、数値の意味が出ません。同じ条件で複数回測る前提なら、状況の把握には使えます。

Q. 検査でカビの種類が分かれば、健康被害の原因が特定できますか。
A. できません。検査で分かるのは環境中のカビの種類と量であり、個人の症状との因果関係は医療の領域です。検査結果は医師に相談するときの参考情報として役立ちます。

Q. 検査だけ依頼することはできますか。
A. できます。検査の結果を見てから、原因調査や施工を検討するかどうかを判断していただいて構いません。

まとめ

カビの検査は、目に見えないカビを「量」「種類」「場所」として数字にする作業です。空気中を数える落下菌検査と、面を調べる同定検査があり、価値は比較にあります。基準値は存在せず、原因と健康への影響は検査では分かりません。目的を決め、比較の相手を決め、検査と施工を分けて考える。この3つを押さえて依頼してください。

参考資料(一次情報)

  • 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」(温度・相対湿度・二酸化炭素・浮遊粉じん等の基準。浮遊真菌の基準値は定められていない)
  • WHO「WHO guidelines for indoor air quality: dampness and mould」2009年(安全といえる定量的基準値は設定できないとしている)
  • 株式会社せら「カビ菌検査」(落下菌検査:培地を20分間開放し25〜35℃で120時間培養/同定検査:寒天スタンプによる採取)

当社は医療機関ではありません。健康に関する症状は医師にご相談ください。