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高齢者向け寝室のポイント|「暖かく、乾いていて、手間がかからない」を同時に満たす設計と運用

 

「高齢者向け寝室のポイント」を、カビと湿気の視点で書き直しました。高齢者の寝室は、家の中で最も長い時間を過ごす部屋であり、同時に最もカビが出やすい条件が揃いやすい部屋です。在室時間が長いこと、寝具に水分が溜まること、暖房と加湿を同時に使うこと、そして掃除や布団干しといった維持の負担が大きくなることが重なるからです。

結論:高齢者の寝室は「暖かく、乾いていて、手間がかからない」の3つを同時に満たす必要がある

  1. 暖かさを削ってはいけない。冬の寒い寝室は健康上のリスクであり、消費者庁も入浴事故の対策として脱衣所や浴室を事前に暖めることを勧めています。カビ対策のために暖房を控える、という選択は成り立ちません。
  2. 暖めるなら、結露と加湿の管理が必須。暖房で室温を上げると、冷たい窓や北側の壁で結露が起きます。加湿器を使うとさらに増えます。湿度計を置き、50〜60%の範囲で加湿を止める運用が要ります。
  3. 維持の手間を設計で減らす。重い布団を干す、押入れの奥を掃除する、窓の結露を毎朝拭く。これらが続かないことを前提に、干さなくても乾く寝具、結露しにくい窓、詰め込まない収納を選びます。

なぜ高齢者の寝室にカビが出やすいのか

在室時間が長い

就寝時間に加え、日中も寝室で過ごす時間が増えます。人がいる間、呼気と汗で水分が出続け、二酸化炭素も溜まります。若い人の寝室が「夜だけ」使われるのに対し、高齢者の寝室は一日中、水分の発生源がある部屋です。

寝具に水分と栄養が溜まる

汗と皮脂、フケは寝具に溜まります。これはカビの水分と栄養であり、同時にダニの餌でもあります。布団を干す、掃除機をかける、シーツを洗うという作業が体力的に難しくなると、寝具の水分と栄養は溜まり続けます(カビとダニ)。

暖房と加湿を同時に使う

冬の寝室で暖房を使うと、室内の空気は多くの水蒸気を含めるようになり、そこに加湿器を加えると、窓や北側の壁など冷たい面で結露が起きます。乾燥対策として湿度を上げること自体は必要ですが、目安を超えると結露を通じてカビの水分になります。厚生労働省のインフルエンザ対策の目安は湿度50〜60%、建築物環境衛生管理基準は40〜70%です。

窓を閉めきる

寒さと防犯のため、冬は窓を開けなくなります。24時間換気があれば最低限の換気は保たれますが、スイッチを切っている家では水分の逃け道がなくなります(換気とカビ)。

寝室の場所と向きで決まること

これから寝室を決める、または改修する場合は、次の点が湿気とカビに直接影響します。

  • 南または東向きで、日当たりがよいこと。日射で壁と床が暖まり、表面温度が上がるので結露が減ります。北側の部屋は同じ室温でも壁が冷たく、家具の裏や押入れで結露しやすくなります。
  • 1階の場合は床下の状態を確認すること。避難のしやすさから1階に寝室を置くことが多いですが、床下の湿気が床を通して上がってくることがあります。床下の換気孔が塞がれていないか、土台に湿りがないかを見ておきます(床下のカビ)。
  • トイレを寝室に隣接させる場合は、換気扇の運転を止めないこと。夜間の移動距離を短くするために寝室とトイレを近づける設計は合理的ですが、トイレと洗面の湿気が寝室に流れ込みます。トイレの換気扇は常時運転にします。
  • ベッドは壁から離す。外壁に密着させたベッドの裏は、家具の裏と同じく結露します。5cm以上離し、頭側を外壁に向けないようにします。

維持の手間を減らす選択

寝具

重い綿布団を干す作業は続きません。軽い寝具にする、洗える敷きパッドとカバーを使って週1回の洗濯だけで済ませる、マットレスは布団乾燥機で乾かす、という形にします。ベッドにすると床との間に空気が通り、敷きっぱなしの布団の裏で起きるカビを避けられます。介護を見据えてベッドにする判断は、カビの面からも合理的です。

結露を毎朝拭く作業も続きません。複層ガラスや内窓で窓面の温度を上げれば、結露そのものが減ります。カーテンは床につかない長さにし、窓との間に空気が通るようにします。

収納

押入れは低めにして出し入れを楽にする、という配慮は、カビの面でも有効です。奥に手が届かない収納は、中身が動かず空気も動かないため、カビの出る場所になります。中身を減らし、すのこで隙間をつくり、扉をときどき開けるだけで済む量にします。

加湿器

湿度計とセットで使い、60%を超えたら止めます。加湿器のタンクとフィルターは水が溜まる部品で、それ自体がカビの発生源になります。毎日水を替え、週1回は洗います。手入れが続かない場合は、洗濯物を室内に干すなど、別の加湿方法のほうが安全なこともあります。

入浴と脱衣所の暖房について

消費者庁は2020年11月19日の注意喚起で、高齢者の入浴中の事故を防ぐために、入浴前に脱衣所と浴室を暖めること、湯温は41℃以下、湯につかる時間は10分までを目安にすること、浴槽から急に立ち上がらないこと、食後すぐや飲酒後の入浴を避けること、入浴前に同居者に一声かけることを挙げています。厚生労働省の人口動態調査では、高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による死亡者数は交通事故より多く、11〜4月の冬季に集中しています。

脱衣所と浴室を暖めることは、カビの面では湿度を上げる方向に働きます。しかし優先順位は明確で、安全が先、カビ対策は後です。暖めたうえで、入浴後に浴室の換気扇を回し、脱衣所の扉を開けて乾かす、という順番にします。

よくある質問

Q. 高齢の親の寝室がカビ臭いのですが、本人は気づいていません。
A. 嗅覚は年齢とともに変化し、慣れもあるため、本人が気づきにくいことは珍しくありません。寝具の裏、ベッドの下、押入れの奥、窓の下の壁を確認してください。臭いは発生源があるサインです。

Q. 布団を干せなくなりました。代わりに何をすればいいですか。
A. 布団乾燥機で乾かし、その後に掃除機をかけることで、干すのと同等以上の効果が得られます。洗えるカバー類を週1回洗濯することも有効です。

Q. 冬に暖房と加湿器を使うとカビが出ます。どちらを止めればいいですか。
A. どちらも止めません。暖房は健康上必要で、適度な加湿も乾燥対策として必要です。湿度計を置いて60%を超えないように加湿器を調整し、窓と北側の壁の結露を減らす(内窓、家具を離す)ことで両立できます。

まとめ

高齢者の寝室は、暖かく、乾いていて、手間がかからないことを同時に満たす必要があります。暖房は削らず、湿度計で加湿を管理し、結露しにくい窓と壁から離した寝具の配置で結露を減らす。干さなくても乾く寝具、詰め込まない収納、常時運転の換気で維持の手間を減らす。カビと健康の関係はカビアレルギーと住まいを参照してください。

参考資料(一次情報)

  • 消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」2020年11月19日公表(脱衣所・浴室を事前に暖める、湯温41℃以下、10分まで、急に立ち上がらない、食後・飲酒後を避ける、同居者への声かけ。厚労省人口動態調査で高齢者の不慮の溺死・溺水は交通事故より多く冬季に集中)
  • 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」(相対湿度40%以上70%以下、温度18℃以上28℃以下)
  • 厚生労働省「インフルエンザQ&A」(適切な湿度50〜60%)
  • WHO「WHO guidelines for indoor air quality: dampness and mould」2009年

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