お盆やお彼岸にお墓参りをすると、墓石の黒ずみやコケが気になることがあります。屋外にある墓石は、一年中、雨と直射日光と風にさらされています。ここでは、墓石の黒ずみの正体(カビ・コケ・地衣類・風化)を見分け、石を傷めずに手入れする順番をまとめます。家の中のカビ取りと同じ感覚で強い洗剤を使うと、石の表面を傷めて逆にカビが付きやすくなります。
結論:墓石の手入れは「水とブラシで落ちるものだけ落とし、落ちないものは石材店に相談」
- 黒ずみの多くはカビ・コケ・地衣類で、水と柔らかいブラシで落ちる範囲は落とす。これがお墓参りのたびにできる手入れです。
- 落ちないからといって、金属たわし・塩素系漂白剤・酸性洗剤を使わない。研磨面に傷がつき、石によっては変色します。傷やざらつきは水分と汚れを保持し、次のカビの足場になります。
- 建立から年数が経った墓石の変色は、風化やサビであることが多い。これは汚れではなく石の変質で、洗って落ちるものではありません。石材店に相談してください。
墓石の黒ずみの正体を見分ける
屋外の石に付くものは、大きく4種類あります。それぞれ手入れの方法が違います。
カビ
黒や灰色の点、または薄い膜状に広がります。雨で濡れた後に乾きにくい面(北側、彫刻の凹み、台座と石の境目、花立ての周り)に出ます。カビ自体は石を食べませんが、菌糸が石の微細な孔に入り込み、表面に付いたホコリや花粉、鳥のフンを栄養に増えます。
コケ
緑色で、触ると柔らかく、湿った面に広がります。水分が常にある場所、地面に近い台座、日陰の面に出ます。カビよりも落としやすい反面、根のように石の表面に絡むため、こすると石の目地の砂が一緒に落ちることがあります。
地衣類
白、灰色、オレンジ、黄緑などの丸い斑点で、石に固く張り付いています。菌類と藻類が共生したもので、成長は非常に遅く、数十年かけて広がります。石の表面を少しずつ侵すため、文化財の石造物でも問題になります。こすっても落ちにくく、無理に落とすと石の表面ごと剥がれます。
風化・サビ
建立から10〜20年で表面の光沢が失われ、ざらつきが目に見えるようになります。50年を超えると、石に含まれる鉄分が表面に現れてサビ色になることがあります。これらは石の変質であり、汚れではありません。洗っても落ちず、こすると進行します。
手入れの順番
① 乾いた状態でホコリを払う
最初に、乾いた柔らかいブラシやタオルで、ホコリ、花粉、落ち葉のかけらを払います。濡らす前に払うのは、ホコリが水で泥になって彫刻の凹みに入り込むのを防ぐためです。
② 水をかけて、柔らかいブラシでこする
たっぷりの水をかけ、柔らかいブラシ(歯ブラシ、スポンジ、たわしなら植物繊維のもの)で、上から下へこすります。彫刻の文字の中は歯ブラシで。コケはこの段階でほとんど落ちます。カビは表面の膜が落ちれば十分で、点が残っても無理にこすらないでください。
③ 洗剤を使うなら中性洗剤を薄めて
水だけで落ちない汚れには、台所用の中性洗剤を薄めて使い、必ず水でよく流します。流し残しは白い跡になり、新しい汚れの足場になります。塩素系漂白剤は使わないでください。石の種類によっては変色し、周囲の植栽を傷めます。塩素系と酸性の洗剤が混ざると有毒なガスが出ます(国民生活センターが2026年3月に注意喚起)。屋外でも風のない場所では危険です。酸性の洗剤(トイレ用など)も、大理石や一部の石材を溶かすため使いません。
④ 乾いたタオルで水分を拭き取る
洗った後、水分を残さないことが、次のカビとコケを減らす最も効果のある手入れです。凹みや台座の境目に水が溜まらないように拭きます。花立てと水鉢の水は、帰るときに捨てて拭いておきます。溜めた水は、蚊の発生源であると同時に、周囲の石を常に湿らせます。
⑤ 落ちないものは石材店に相談
地衣類、風化、サビ、研磨面の曇りは、家庭の手入れでは戻りません。石材店には石を傷めない専用の洗浄剤や、研磨し直す方法があります。自己流で強い薬剤を使って表面を傷めると、その後の専門的な処置も難しくなります。
やってはいけないこと
- 金属たわし、硬いブラシ、研磨剤入りのクレンザー:研磨面に細かい傷がつき、光沢が失われ、傷に汚れと水分が溜まってカビとコケが付きやすくなります。
- 塩素系漂白剤、カビ取り剤:石の変色、植栽への影響、混合による有毒ガスの危険があります。
- 酸性洗剤:大理石など炭酸カルシウムを含む石は溶けます。御影石でも研磨面が曇ることがあります。
- 高圧洗浄機:目地や彫刻の縁を削り、石と石の接合部のコーキングを傷めることがあります。
- 水を溜めたままにする:水鉢や花立ての水は帰る前に捨てます。
再発を減らすためにできること
屋外なので湿度の管理はできませんが、水が溜まる場所と乾きにくい場所を減らすことはできます。周囲の植栽を刈って日当たりと風通しをよくする、落ち葉を溜めない、台座の周りの土や砂利を石に接しない高さに保つ、お参りのたびに水分を拭き取る。家の中のカビ対策と同じで、水分が残る時間を短くすることがすべてです。カビが育つ条件の基本はカビが育つ条件にまとめています。
よくある質問
Q. 墓石の黒い点が、こすっても落ちません。
A. 地衣類か、風化した表面の変色の可能性があります。無理にこすると石の表面ごと剥がれます。水とブラシで落ちる範囲にとどめ、気になる場合は石材店に相談してください。
Q. コケを落としたら、石の表面がざらざらになりました。
A. コケの下で風化が進んでいたか、こすったことで表面の砂粒が落ちたためです。ざらついた面は水分と汚れを保持しやすいので、拭き取りをこまめにし、必要なら石材店で研磨し直す方法があります。
Q. 家のカビ取り剤を薄めて使ってもいいですか。
A. お勧めしません。塩素系は石の変色と植栽への影響、混合による有毒ガスの危険があります。墓石は中性洗剤と水で手入れするのが基本です。
まとめ
墓石の黒ずみは、カビ、コケ、地衣類、風化・サビのいずれかで、それぞれ手入れの方法が違います。乾いた状態でホコリを払い、水と柔らかいブラシでこすり、中性洗剤で足りなければ石材店に相談する。強い薬剤と硬い道具は使わず、最後に水分を拭き取る。お参りのたびにこの手入れを続けることが、墓石の劣化を遅らせる最も確実な方法です。
参考資料(一次情報)
- 国民生活センター「住宅用塩素系洗浄剤の使い方-まぜるな危険!浴室などで事故が発生しています-」2026年3月18日公表(塩素系と酸性洗剤の混合による塩素ガス発生)












