キッチンは、家の中で唯一「食べるもの」と「カビ」が同じ場所にある空間です。だからこそ、浴室とは判断の基準が変わります。連載「場所別のカビ対策」第4回は、台所と食品まわりのカビをどう考えるかを整理します。
1. 食品のカビは、見えている部分が一部
東京都保健医療局の「食品衛生の窓」では、カビは菌糸と胞子から構成され、菌糸は肉眼に見えないほど細いと説明されています。また、カビの色はほとんどが胞子の色であり、色から種類を判断することはできないとされています。
つまり、表面の色がついた部分を取り除いても、内部に伸びた菌糸まで取り除けているとは限りません。文部科学省の資料でも、増殖の初期は肉眼で全く観察できないとされています。見えた時点で、すでに先行しているということです。

表1 住まいのカビと、食品のカビで変わる判断
| 観点 | 住まい(壁・床など) | 食品 |
|---|---|---|
| 見えている部分 | 集落の一部。素材への浸透の深さを見る | 集落の一部。菌糸が内部へ伸びている可能性がある |
| 取り除けば済むか | 素材と浸透の深さによる | 取り除いた部分だけで判断しない |
| 色から分かること | 属のヒント程度。種や深さは分からない | 同じ。色で安全性は判断できない |
| 基準となる考え方 | 相対湿度40〜70%(建築物環境衛生管理基準) | 保存温度や期限表示など、食品衛生の考え方に従う |
出典:東京都保健医療局「食品衛生の窓」、文部科学省「カビ対策マニュアル 基礎編」、厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」
2. 台所でカビが増える場所は決まっている
水と栄養がそろい、空気が動かない場所です。文部科学省の資料に出てくる目安を当てはめると、見るべき場所は自然に絞られます。

表2 場所ごとの条件と、見るポイント
| 場所 | そろっている条件 | 見るポイント |
|---|---|---|
| シンク下の収納 | 配管の結露や漏れ、閉め切りで空気が動かない | 扉を開けて底板を触る。湿っていれば水の出所を探す |
| 冷蔵庫の背面・下 | 放熱で温度が上がり、壁との間で空気が動かない | 物は壁から10cm離すという目安がある |
| 食器棚の最下段 | 床に近く、湿気がたまりやすい | 最下段は床上75〜120cmの位置より相対湿度が5%以上高いことがある |
| 排水口まわり | 水分と栄養が常時ある | 乾く時間をつくれているか |
| 換気扇・レンジフード | 油分が栄養になる | 調理中以外も定期的に回す |
3. 「カビに見えて、カビではないもの」もある
台所では、カビ以外の微生物も見かけます。東京都保健医療局の資料では、産膜酵母であるピキアについて、液体の表面で膜状になり、固形物の上では乳白色の円形丘状の集落をつくることが説明されています。ぬか床や漬物の表面に出る白い膜は、これにあたることがあります。
白い付着物の切り分け方は、文部科学省の資料に手順が示されています。30倍程度の手持ち顕微鏡かルーペで十分観察してから採取する、水に入れて速やかに沈殿・溶解すれば無機結晶と判定できるという2段階です。

台所は食品を扱う場所です。文部科学省の資料では、噴霧器は胞子を吹き飛ばして汚染を広げるとされ、塩素系の住宅用洗剤はアルカリ性のため使える場所が限られ、脱色やガスに注意が必要とされています。食器や調理器具にかかる可能性のある場所での広範囲な噴霧は避けてください。
4. 事業として食品を扱う場合
ご家庭ではなく食品を扱う事業所であれば、前提が変わります。食品衛生法の改正により、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められ、令和3年6月1日から完全施行されています。清掃や点検を記録として残す仕組みが必要になるため、住宅とは別の考え方で組み立てることになります。
5. まとめ
- 食品のカビは見えている部分が集落の一部。取り除いた部分だけで判断しない
- 色から種類も安全性も判断できない。増殖の初期は肉眼では見えない
- シンク下・冷蔵庫の裏・食器棚の最下段など、条件がそろう場所は決まっている
- 白い膜は産膜酵母のこともある。ルーペ→水、の2段階で切り分ける
- 食品を扱う場所での広範囲な噴霧は避ける。事業所ではHACCPの枠組みで考える
「場所別のカビ対策」全6回の第4回です。第1回浴室・脱衣所のカビ/第2回エアコンと24時間換気/第3回窓・サッシ・カーテンのカビ。見分け方はカビと間違えやすいもので詳しく扱っています。
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