浴室のカビは、住まいの相談のなかでも群を抜いて多いテーマです。そして「掃除しているのに、また出てくる」という言葉が、ほぼ必ずついてきます。今回から始まる連載「場所別のカビ対策」の第1回は、その理由を条件の側から整理します。結論を先に言えば、落ちていないのではなく、条件が毎日戻っているということです。
1. 浴室では、4つの条件のうち3つが自動的にそろう
カビが育つには、水分・栄養・温度・酸素の4つが必要とされています。浴室はこのうち3つが、使うだけで満たされてしまう場所です。
栄養については、意外に思われるかもしれません。東京都保健医療局の「食品衛生の窓」では、カビの栄養源として食品だけでなく垢やペンキ、プラスチックなども挙げられています。皮脂や石けんカスがあれば十分ということになります。温度も、多くのカビが育つ範囲は10〜30℃とされており、入浴後の浴室はその中心にあります。
つまり浴室で人の側が断てるのは、実質的に水分だけです。「乾かす」が対策の中心になるのは、消去法の結果でもあります。

2. 「掃除しても再発する」の中身は4つある
再発と呼ばれている現象には、性質の違うものが混ざっています。どれなのかで、次にやることが変わります。
表1 再発に見える4つの状態
| 状態 | 起きていること | 次にやること |
|---|---|---|
| 条件が戻っている | 取り除けてはいるが、使うたびに水分条件が復活する | 乾かす仕組みを見直す(換気・水気の除去) |
| 色素が残っている | 色素と着色胞子の除去は困難で不可逆とされる。黒い跡が残る | 生きているかどうかとは別の問題として扱う |
| 内部に入っている | 目地やパッキンの内部まで進んでいる。表面を拭いても届かない | 部材の交換を含めて判断する |
| 気づくのが遅い | 増殖の初期は肉眼で全く観察できないとされる | 見えた時点で先行していると考える |
出典:文部科学省「カビ対策マニュアル 基礎編・実践編」

3. 落とすときに気をつけること
浴室は狭く、閉め切って作業しがちな場所です。文部科学省のカビ対策マニュアルには、除去作業についての注意が具体的に書かれています。
表2 やりがちなこと/公的資料での位置づけ
| やりがちなこと | 公的資料での位置づけ |
|---|---|
| スプレーで広く噴霧する | 噴霧器は胞子を吹き飛ばし、汚染を広げるとされる |
| 塩素系洗剤をどこにでも使う | アルカリ性のため使える場所が限られ、脱色やガスに注意が必要とされる |
| 乾いた布で強くこする | こすらず一方向に拭く。色落ちが心配ならやわらかな筆で払う |
| 素手・マスクなしで作業する | 生きていればカビ毒、死んでいてもアレルゲンとなるため呼吸用保護具が必要とされる |
| とりあえず除菌して終える | 除菌だけでは十分な処置とならず、環境を改善しない限り繰り返されるとされる |
出典:文部科学省「カビ対策マニュアル 実践編3-6・Q&A」

4. 脱衣所まで含めて考える
浴室で発生した湿気は、扉を開ければ脱衣所へ移動します。脱衣所には洗濯機・タオル・衣類があり、浴室より温度が低いことが多い場所です。空気が冷えれば相対湿度は上がるため、条件は浴室より悪くなることもあります。
厚生労働省の建築物環境衛生管理基準では、相対湿度40〜70%、温度18〜28℃が基準とされています。浴室を出たあとの空気がどこへ行くのかまで含めて考えると、見落としが減ります。詳しくは室内の湿度と体調もあわせてご覧ください。
入浴直後だけでなく、浴室の壁面が乾くまで回し続けられているかが分かれ目になります。扉を開けたまま換気扇を回すと、脱衣所や廊下の空気を引き込むだけで浴室が乾きにくくなることがあります。扉と給気口の関係を一度確認してみてください。
5. まとめ
- 浴室では水分・栄養・温度が自動的にそろう。断てるのは実質的に水分だけ
- 「再発」には、条件の復活・色素の残存・内部浸透・気づきの遅れという4つの中身がある
- 噴霧・強いこすり・保護具なしの作業は、公的資料では推奨されていない
- 除菌だけでは繰り返す。湿気がどこへ行くのかまで含めて考える
目地やパッキンの内部、壁の中の状況が気になる場合は、カビ菌検査や現地調査もご相談いただけます。処置の考え方はMIST工法®のページをご覧ください。費用は建物の状態によって変わるため、現地調査のうえでのお見積りとなります。












