執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関・学会の公開資料にもとづいています。
施設別シリーズの第2回は病院です。前回の住宅では、空気中のカビ(浮遊真菌)の目安として「1,000 CFU/m³以下」を紹介しました。病院では、手術室から一般病室まで部屋の役割ごとに、はるかに厳しい目安が示されています。
この記事で分かること
- 日本建築学会の規準で示される病院の浮遊微生物の目安(10/200/500 CFU/m³)
- 病院の空調設計の指針「HEAS-02-2022」の清浄度クラスⅠ〜Ⅴ
- 手術室・ICU・一般病室で求められる換気回数・室圧
- 病院の目安と、住宅の目安の違い
1. 結論:病院の目安は「10」「200」「500」CFU/m³の3段階
- 日本建築学会の規準(AIJES-A0002-2013)では、病院で最も清浄度が求められるバイオクリーン手術室・バイオクリーン病室は10 CFU/m³以下(設計・維持管理とも)です。
- 一般手術室やICUなどは、設計・維持管理とも200 CFU/m³以下です。
- 一般病室や一般診察室などは、設計200 CFU/m³以下、維持管理500 CFU/m³以下です。
住宅の1,000 CFU/m³と比べると、病院は2分の1から100分の1の水準です。なお、病院の値は細菌と真菌の両方が対象で、病院では浮遊細菌の方が圧倒的に多いことから、主に浮遊細菌を指標にした値と解説されています。
2. 日本建築学会の病院の規準値
| 部屋の例 | 設計規準 | 維持管理規準 |
|---|---|---|
| バイオクリーン手術室、バイオクリーン病室 | 10 CFU/m³以下 | 10 CFU/m³以下 |
| 一般手術室、ICUなど | 200 CFU/m³以下 | 200 CFU/m³以下 |
| 一般病室、一般診察室など | 200 CFU/m³以下 | 500 CFU/m³以下 |
対象は細菌と真菌で、ウイルスは含まれません。また、これらは設計・維持管理のための参考値で、感染や汚染が起きる境目の値ではないとされています。
3. 病院の空調の指針「HEAS-02-2022」の清浄度クラス
病院の空調設備の設計・管理では、日本医療福祉設備協会の「病院設備設計ガイドライン(空調設備編)HEAS-02-2022」が広く参照されています。1989年の初版以来、国内唯一の病院空調のガイドラインで、2022年版が第5版です。
| 清浄度クラス | 該当室(代表例) | 最小換気回数(外気/全風量) | 室内圧 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ | 超清浄手術室 | 外気5回/h | 陽圧 |
| Ⅱ | 一般手術室/易感染患者用病室 | 3/15回/h ・ 2/15回/h | 陽圧 |
| Ⅲ | 血管造影室、手術ホール、ICU・NICU、分娩室など | 3/15回/h ・ 2/6回/h | 陽圧 |
| Ⅳ | 新生児室、一般病室、診察室など | 外気2回/h | 要求なし |
| Ⅴ | 空気感染隔離室、内視鏡室、細菌検査室、トイレ・汚物処理室など | 全風量6〜12回/h など | 陰圧 |
HEAS-02では、初版に載っていた微生物数の参考指標は2004年の第3版で削除されており、現在は換気回数・室圧・フィルタ性能で清浄度を管理する考え方になっています。
4. 病院で「カビ」が特に重視される場所
HEAS-02-2022の解説では、易感染患者用病室(防護環境)で制御する対象はカビの胞子で、その主な発生源は屋外であるとされています。胞子の大きさは直径2〜6µm程度のため、中性能以上のフィルタで85%以上捕集できると説明されています。
つまり、病院では外から入るカビの胞子をフィルタで止め、室内でカビを発生させないことの両方が大切です。室内の発生源としては、結露、水もれ、加湿器、空調機やダクトの内部などが考えられます。
5. 病院の目安と住宅の目安の違い
| 住宅 | 病院 | |
|---|---|---|
| 目安の値 | 浮遊真菌 1,000 CFU/m³以下 | 10〜500 CFU/m³以下(部屋ごと) |
| 対象 | 真菌(カビ) | 細菌と真菌(主に細菌が指標) |
| 超えたときの見方 | I/O比(室内÷屋外)2以下か | 換気回数・室圧・フィルタの点検 |
住宅の目安は「住宅の空気中のカビはどれくらいまで?」で解説しています。
6. よくある質問
Q. 病院の浮遊菌の基準は法律で決まっていますか?
日本建築学会の規準や日本医療福祉設備協会のガイドラインは、法律ではなく学会・団体が示す指針です。多くの病院の設計や管理で参照されています。
Q. 一般病室の目安が500 CFU/m³なのはなぜ?
一般病室や診察室は人の出入りが多く、手術室ほどの清浄度は求められないためです。それでも住宅の目安(1,000 CFU/m³)の半分の水準です。
Q. クリニックや診療所でも同じ目安が使えますか?
部屋の用途が近ければ、一般診察室の目安(維持管理500 CFU/m³以下)が参考になります。空調機の汚れや結露、水まわりのカビがあると数値が上がるため、定期的な点検と清掃が大切です。
7. まとめ
- 病院の目安は10/200/500 CFU/m³の3段階(日本建築学会 AIJES-A0002-2013)
- 空調の設計・管理はHEAS-02-2022の清浄度クラスⅠ〜Ⅴで、換気回数・室圧・フィルタを管理
- カビの胞子は主に屋外から。フィルタで止め、室内で発生させないことが大切
次回はオフィス(事務所)を取り上げます。
病院・クリニック・介護施設などのカビのご相談は、法人のお問い合わせまたはフリーダイヤル 0120-052-127 へ。
参考資料(一次情報)
- 伊藤昭・森本正一「講座 バイオロジカルクリーンルーム(第2回)医療施設」空気清浄 62巻2号(2024) AIJES-A0002-2013の病院の規準値(10/200/500 CFU/m³)、HEAS-02-2022の清浄度クラス表、微生物数の参考指標が第3版で削除された経緯、防護環境でのカビ胞子の扱い
- 日本建築学会「微生物による室内空気汚染に関する設計・維持管理規準・同解説(AIJES-A0002-2013)」 8施設の設計規準値と維持管理規準値
- 日本医療福祉設備協会「病院設備設計ガイドライン(空調設備編)HEAS-02-2022」 病院空調設備の設計・管理指針(第5版)
- 日本集中治療医学会「病院の清浄度クラスと換気条件」 病院設備設計ガイドライン(空調設備編)からの抜粋












