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カビ取り屋の知恵袋

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場所別・いちばん安く済むカビ取りの組み合わせは?|3本で家じゅうをまわす順番

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

読者からの質問

「連載を読んで、塩素系・酸素系・エタノールの使い分けは分かってきました。ただ、家じゅうとなると、どこに何を使えばいいのか混乱します。場所ごとの組み合わせを一覧でまとめてもらえませんか。」

(50代・戸建て・年に1度まとめて掃除したい)

ご要望にお応えして、この回は連載のまとめとして場所別の早見表をつくりました。使うのは3本だけです。塩素系、酸素系、消毒用エタノール。これに下洗い用の中性洗剤を足せば、家の中のほとんどの場所に対応できます。

あわせて、家じゅうをまわる順番も示します。順番には理由があります。薬剤の種類が切り替わるたびに手を洗い、道具を替える必要があるので、同じ薬剤で済む場所をまとめたほうが、時間も量も少なくて済みます。

この記事で分かること

  • 3本(塩素系・酸素系・消毒用エタノール)の担当範囲
  • 場所別の早見表(浴室・洗面所・窓・壁紙・押入れ・和室・キッチン・洗濯機・エアコン)
  • 家じゅうを1日でまわる順番と、その理由
  • 使う量を減らす3つの工夫
  • 手を出さずに相談したほうがよい線引き

1. 結論:3本の担当範囲

図1 塩素系・酸素系・消毒用エタノール。担当する素材が違う
表1 3本の担当範囲
薬剤 担当する素材 担当しない素材 解説した回
塩素系(漂白剤・カビ取り剤) 浴室のタイル・床・パッキン・目地、洗面ボウル、樹脂の部品、白い布 木、畳、金属、色柄物、革 第5回・第6回
酸素系漂白剤 色柄物の衣類・カーテン・タオル、洗濯槽 浴室の奥まで入った黒カビ、木、畳 第8回
消毒用エタノール 畳、木、金属、色柄の壁紙、家具 色素を抜くこと、内部に入ったカビ 第7回
中性洗剤(下洗い用) 薬剤を使う前の皮脂・石けんカス落とし — 第6回

この分け方の根拠は素材です。文部科学省のカビ対策マニュアルは、塩素系漂白剤はアルカリ性であるため使える場所が限られ、脱色作用に注意が必要だとしています。厚生労働省は、金属部分については消毒後に十分拭き取るよう案内しています。

2. 場所別の早見表

図2 場所ごとに使うものと留め方。迷ったら素材で判断する
表2 場所別の早見表
場所 使うもの 留め方・やり方 注意 詳しい回
浴室のゴムパッキン・目地 塩素系(ジェルまたは湿布) キッチンペーパー+ラップで留める 表示時間を延ばさない 第6回
浴室のタイル・床 塩素系(薄めた台所用漂白剤でも可) 面で扱えるので、そのまま塗って置く 使用後は水で十分に流す 第5回
浴室の天井 塩素系 柄つきワイパーにペーパーを留めて押し当てる 真上への噴霧をしない 第6回
排水口の部品・ゴミ受け 塩素系(つけ置き) 外して薄めた液につける 金属部品は避ける 第5回
洗面ボウル(白物) 塩素系 薄めた液で拭く→水拭き 色柄のものは避ける 第5回
窓のサッシ・レール 消毒用エタノール 布に含ませて拭く 金属なので塩素系は避ける 第7回
カーテン 酸素系(色柄物)/塩素系0.02%(白物) 洗濯表示に従ってつけ置き 三角に斜線2本なら酸素系のみ 第8回
壁紙(白・表面のみ) 消毒用エタノール 押さえるように拭く。こすらない 色柄は目立たない場所で試す 第7回
押入れ・クローゼットの板 消毒用エタノール 布に含ませて拭き、完全に乾かす 水分を多く含ませない 第7回
畳 消毒用エタノール 目に沿って一方向に拭く 塩素系は脱色する 第7回
衣類(色柄物) 酸素系漂白剤 表示に従ってつけ置き 毛・絹は表示を確認 第8回
洗濯槽 専用品(塩素系または酸素系) 製品の表示に従う 別系統を混ぜない 第8回
キッチンのふきん・まな板 塩素系0.02% 薄めた液につける→よくすすぐ 食品に触れるので十分にすすぐ 第5回
エアコン内部 自分では触らない範囲が広い フィルターの清掃まで 内部洗浄は事故例がある 第1回

エアコン内部については、製品評価技術基盤機構が内部洗浄による事故を注意喚起しています。フィルターの清掃までを自分で行い、内部は専門業者に任せる、という線引きをおすすめします。詳しくは連載第1回をご覧ください。

3. 家じゅうを1日でまわる順番

図3 薬剤を切り替える回数を減らすと、時間も量も減る
  1. 準備(15分) 窓を開け、換気扇を回す。手袋・マスク・目を守るものを用意する。薬剤を並べ、塩素系と酸性のものを離して置く
  2. エタノール担当(30分) 畳・木・サッシ・壁紙・押入れ。乾いた場所から始める。火の気がないことを確かめる
  3. 酸素系担当(つけ置き開始・10分+放置) 色柄物の衣類やカーテンをつけ置きに入れる。放置している間に次へ進む
  4. 下洗い(20分) 浴室の中性洗剤での下洗い。皮脂と石けんカスを落とし、シャワーで流して水気を拭く
  5. 塩素系担当(40分) 浴室のパッキン・目地・タイル・天井・排水口。留めて置き、表示時間で流す
  6. 乾燥(そのまま) 浴室は換気扇を回し続ける。拭いた場所は扇風機で乾かす
  7. 片づけ 酸素系のつけ置きをすすいで干す。薬剤はもとの場所へ戻す

順番に理由があります

  • エタノールを先にするのは、乾いた場所を先に済ませるため。浴室を先にやると、湿気が家じゅうに回ります
  • 下洗いを塩素系の直前にするのは、酸性洗剤の残りを流しきるため。製品評価技術基盤機構によれば、次亜塩素酸ナトリウムはpH5以下では塩素ガスを発生して分解します
  • 塩素系を最後にするのは、換気しながら締めくくれるため。作業後に浴室の換気扇を回し続けられます

迷ったときは素材で決める

場所の名前ではなく、素材で判断すると迷いません。水に強く色を抜いても困らないもの(タイル・目地・ゴムパッキン・排水口)は塩素系。色や柄を残したいもの(衣類・カーテン・タオル)は酸素系。水を含ませたくないもの(木・畳・革・紙・家電まわり)は消毒用エタノール。この3分類でほとんどの場所が決まります。

表3 素材で決める早見表
素材 使うもの 理由
タイル・目地・ゴム・プラスチック 塩素系 水に強く、色が抜けても困らない
色柄のある布 酸素系 色柄を残したまま扱える(第8回)
木・畳・革・紙 消毒用エタノール 水を含ませると反りや染みが出る(第7回)
金属 消毒用エタノール 塩素系は金属を傷めることがある。表示を確認する
判断がつかないもの 目立たない場所で試す 変色が出ないか確かめてから広げる

どれを使うか決めたら、次は「留め方」です。第6回で扱ったとおり、吹きかけただけの液は垂れて流れます。キッチンペーパーを当てて薬剤を含ませ、上からラップで覆うと、表示された時間だけその場に留まります。留められない場所に何度も吹き直すより、1回留めるほうが使う量は少なく済みます。

4. 使う量を減らす3つの工夫

表4 使う量を減らす3つの工夫
工夫 やり方 効き方
留めて1回で終わらせる キッチンペーパー+ラップ。吹き直しをやめる 重ねがけの回数が減る
カビのある場所にだけ使う 面全体ではなく、点や線にだけ置く 1回あたりの量が減る
薄めて使えるものを選ぶ 台所用漂白剤を用途別に薄める 1本あたりの量が増える

もっとも効くのは、そもそも使う回数を減らすことです。文部科学省のカビ対策マニュアルは、環境を改善しない限りカビ被害は繰り返されるとしています。東京都のアレルギー情報navi.は、室内の湿度を60%以下に保つこと、天気の良い日の換気がカビ予防としてもっとも有効であることを案内しています。

道具も3つでいい

表5 そろえる道具
道具 使いどころ 選び方
キッチンペーパー 薬剤を留める。拭き取る 厚手のもの。面を替えながら使い捨てる
ラップ 湿布の上から覆って乾燥を遅らせる 普通の食品用で足りる
使い捨ての布・ウエス エタノールでの拭き取り 同じ面を使い回さないので枚数を用意する
(保護具)手袋・マスク・目を守るもの すべての作業 文部科学省のカビ対策マニュアルは保護具の着用を案内している

スポンジやブラシを使わないのは、こすると胞子が広がるからです。文部科学省のカビ対策マニュアルは、表面のカビは綿棒や布にアルコールを含ませて局部的に取り、こすり広げないことを案内しています。「こする道具」ではなく「置く道具」をそろえてください。

5. 年間の手当て:使う回数そのものを減らす

表6 季節ごとの手当て
季節 やること ねらい
春(3〜5月) 晴れた日に窓を開けて換気。押入れを開けて空気を通す 冬にたまった湿気を抜く
梅雨(6〜7月) 除湿機を回す。窓は閉める。浴室は使用後に換気を続ける 外気が湿っているので換気では下がらない
夏(7〜8月) エアコンの冷房・除湿。運転後は送風で内部を乾かす エアコン自体をカビさせない
秋(9〜10月) 雨の日は除湿機、晴れた日は換気。衣替えのときに収納を乾かす 秋雨・台風の湿気を持ち越さない
冬(11〜2月) 結露を拭く。加湿は60%まで。晴れた日に短時間の換気 結露からのカビを防ぐ

季節の使い分けは連載第4回(除湿機・エアコン除湿・換気)に、加湿器の上限は第2回にまとめています。

6. 手を出さずに相談したほうがよい線

表6 相談したほうがよい線
状況 判断
2回試しても薄くならない 内部に入っている。打ち替え・交換か、専門業者へ
拭くと薄くなるが、乾くと戻る 内部から出てきている。表面の処置では止まらない
広い範囲に広がっている 水の出所が別にある。原因調査へ
壁や天井の内側からにおう 見えない場所。調査が必要
床がきしむ、木が柔らかい 腐朽の可能性。構造にかかわるため専門業者へ
作業中に気分が悪くなった 換気して中止。症状が続く場合は医療機関へ。当社は医療機関ではありません

7. よくある質問

Q. 1日で全部やらないといけませんか?

A. 分けて構いません。むしろ、薬剤を使う作業は換気しながら短時間で区切ることをおすすめします。おすすめは「乾いた場所(エタノール)の日」と「浴室(塩素系)の日」を分けることです。同じ薬剤の場所をまとめる、という考え方は変わりません。

Q. 専用品をそろえたほうが早いのでは?

A. 早さで言えばそのとおりです。専用品は使い方が決まっていて迷いません。ただし種類が増えるほど取り違えと混合の危険が上がり、費用もかさみます。3本に絞る利点は、費用と安全の両方にあります。詳しくは第9回をご覧ください。

Q. カビが見当たらないのに、においだけします。

A. 見えない場所にある可能性があります。壁の中、床下、エアコン内部、家具の裏などです。においの出どころが分からない場合、薬剤を広くまくのではなく、原因を探すほうが先です。

Q. 全部やったのに、翌年また同じ場所に出ます。

A. 薬剤ではなく水の側に原因が残っています。その場所に水が来る理由(結露、漏水、換気不足、洗濯物の部屋干し)を1つずつ確かめてください。同じ場所に繰り返し出るのは、原因が特定しやすいという意味でもあります。

8. まとめ

  • 使うのは3本。塩素系(浴室・白物)、酸素系(色柄の布もの)、消毒用エタノール(畳・木・金属・壁紙)
  • 場所ごとの選び方は素材で決まる。迷ったら目立たない場所で試す
  • まわる順番は、エタノール→酸素系のつけ置き→下洗い→塩素系→乾燥
  • 下洗いの酸性洗剤は流しきってから塩素系に移る
  • 使う回数を減らすのがいちばん安い。湿度60%以下と換気を年間で続ける

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自分で試して2回落ちない、面積が広い、壁や床の内側から出ている、においが消えない――そうしたカビは、原因調査から入る専門業者の領域です。MIST工法®カビバスターズは全国に加盟店があります。まずはお近くの店舗、または本部にご相談ください。

連載「知恵袋Q&A ― 読者の質問に答える」

  1. 第1回 エアコンから黒い粒が落ちる・カビ臭い。自分で掃除できますか?
  2. 第2回 加湿器はカビの原因になりますか?使ってはいけない?
  3. 第3回 布団・マットレス・枕にカビ。捨てるしかない?
  4. 第4回 除湿機・エアコン除湿・換気、どれが一番カビに効く?
  5. 第5回 台所用漂白剤でカビは取れますか?薄め方は?
  6. 第6回 カビ取り剤を吹きかけても落ちません。なぜですか?
  7. 第7回 塩素系が使えない場所はどうすればいい?
  8. 第8回 酸素系漂白剤はカビに効きますか?
  9. 第9回 詰め替え・業務用・100円ショップ、どれが得ですか?
  10. 第10回 場所別・いちばん安く済むカビ取りの組み合わせは?(この記事)
  11. 第11回 やってはいけない「格安カビ取り」は?

参考資料(一次情報)

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