執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関・学会の公開資料にもとづいています。
施設別シリーズの第3回はオフィス(事務所)です。住宅は浮遊真菌1,000 CFU/m³以下、病院は部屋ごとに10〜500 CFU/m³以下と紹介してきました。オフィスでは、カビについて住宅よりずっと低い目安が示されています。
この記事で分かること
- 日本建築学会の規準で示される事務所の目安(浮遊真菌50・浮遊細菌500 CFU/m³)
- 住宅の1,000 CFU/m³との違いと、その理由の考え方
- ビル管理法(建築物衛生法)の管理基準との関係
- オフィスで数値が上がりやすい時期と場所
1. 結論:事務所は「浮遊真菌50」「浮遊細菌500」CFU/m³以下
- 日本建築学会の規準(AIJES-A0002-2013)の維持管理規準では、事務所の浮遊真菌は50 CFU/m³以下、浮遊細菌は500 CFU/m³以下とされています。
- カビ(真菌)の目安は、住宅の1,000 CFU/m³の20分の1です。
- 実際のオフィスでは、夏から秋にかけて外気のカビが増える時期に、この目安を超えやすいことが報告されています。
これらは設計・維持管理のための参考値で、超えたら健康被害が出るという境目の値ではありません。法律で義務付けられた基準でもありません。
2. 事務所の規準値と、他の施設との比較
| 施設 | 目安(維持管理) | 対象 |
|---|---|---|
| 事務所 | 浮遊真菌 50 CFU/m³以下/浮遊細菌 500 CFU/m³以下 | 真菌と細菌を別々に |
| 住宅 | 浮遊真菌 1,000 CFU/m³以下(超えたらI/O比2以下) | 真菌 |
| 病院 | 10/200/500 CFU/m³以下(部屋ごと) | 細菌と真菌(主に細菌が指標) |
オフィスは中央式の空調で外気をフィルタに通して取り入れる建物が多く、室内でカビが増える要因が少なければ低い値に保てる、という前提の違いがあると考えられます。住宅は窓の開け閉めや生活の水分の影響を大きく受けるため、目安の立て方が異なります。
3. 実際のオフィスではどうか
産業医科大学のグループが大学内の会議室・実習室・研究室と屋外で2年半にわたり測定した研究(石松ら、室内環境 2016年)では、次のように報告されています。
- 室内の浮遊真菌は、毎年、外気の濃度が上がる夏から秋にかけて、事務所の目安50 CFU/m³を超えた
- 浮遊細菌は、2年半の間500 CFU/m³以下を保っていた
カビは外気の影響を強く受けるため、季節によって数値が大きく変わることが分かります。測るときは時期と、屋外の値もあわせて見ることが大切です。
4. ビル管理法(建築物衛生法)との関係
一定規模以上の事務所ビルなどには、建築物衛生法(いわゆるビル管理法)の空気環境の管理基準が適用されます。ここには浮遊粉じん、二酸化炭素、温度、相対湿度などの基準がありますが、浮遊する菌やカビの数の基準はありません。
| 項目 | 建築物環境衛生管理基準 |
|---|---|
| 相対湿度 | 40%以上70%以下 |
| 温度 | 18℃以上28℃以下 |
| 二酸化炭素 | 1,000 ppm以下 |
| 浮遊粉じん | 0.15 mg/m³以下 |
そのため、オフィスの空気中のカビの量を評価するときは、日本建築学会の目安が参考として使われます。湿度を70%以下に保つことは、カビを増やさないためにも役立ちます。
5. オフィスで数値が上がりやすい場所
- 空調機・ファンコイル・ダクトの内部:冷房時の結露水とほこり
- 加湿器:水がたまる部分の汚れ
- 窓ぎわ・外壁側:冬の結露、ブラインドやカーテン
- 書庫・倉庫:紙や段ボール、空気の流れが少ない
- 給湯室・トイレ:水まわりの湿気
6. よくある質問
Q. オフィスの浮遊カビが50 CFU/m³を超えたら問題ですか?
目安は参考値で、超えたら直ちに健康被害が出るものではありません。ただし、夏から秋の外気の影響だけでなく、空調機や加湿器の中でカビが増えている可能性もあるため、屋外と比べたり、空調設備を点検したりすることをおすすめします。
Q. ビル管理法の測定で菌やカビは測っていますか?
建築物環境衛生管理基準の空気環境の測定項目には、浮遊する菌やカビの数は含まれていません。気になる場合は、別に浮遊菌の測定を行う必要があります。
Q. オフィスでカビ臭いと感じるときは?
空調を入れたときににおう場合は、空調機やダクトの内部、においが特定の場所で強い場合は、その周辺の結露や水もれを疑います。専門業者による点検と、必要に応じた浮遊菌の測定をおすすめします。
7. まとめ
- 事務所の目安は浮遊真菌50 CFU/m³以下、浮遊細菌500 CFU/m³以下(日本建築学会 AIJES-A0002-2013)
- カビは夏から秋に外気の影響で上がりやすい。屋外とあわせて測る
- ビル管理法には菌の基準はないが、湿度40〜70%の管理はカビ対策にもつながる
次回は学校を取り上げます。
オフィス・事業所のカビや空気環境のご相談は、法人のお問い合わせまたはフリーダイヤル 0120-052-127 へ。当社ではカビ菌検査で浮遊菌の測定も行っています。
参考資料(一次情報)
- 石松維世・樋上光雄・保利一「大学における用途の異なる室内の浮遊真菌および細菌濃度の長期変動と発生源」室内環境 19巻2号(2016) 日本建築学会維持管理規準(事務所:真菌50 CFU/m³以下、細菌500 CFU/m³以下)、夏季〜秋季の超過
- 日本建築学会「微生物による室内空気汚染に関する設計・維持管理規準・同解説(AIJES-A0002-2013)」 8施設の設計規準値と維持管理規準値
- 厚生労働省「建築物衛生法」 建築物環境衛生管理基準(空気環境の基準)
- 伊藤昭・森本正一「講座 バイオロジカルクリーンルーム(第2回)医療施設」空気清浄 62巻2号(2024) 規準値は設計・維持管理のための参考値であること












