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飲食店のカビ取り|厨房・客席の場所別に、自店でやる範囲と業者に頼む範囲、法令上の位置づけ

 

※この記事は2026年9月に、厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」、食品衛生法施行規則、文部科学省「カビ対策マニュアル」の公開情報をもとに内容を全面的に見直しました。

厨房の天井に黒い点が出てきた。冷蔵庫のパッキンが黒い。客席がなんとなくカビ臭い。飲食店のカビは、家庭と違って「営業を止めずに、食品に影響を出さずに、記録を残して」処置する必要があります。結論から言うと、飲食店のカビ取りは場所ごとに「自店で毎日・週1で対応する範囲」と「業者に検査から頼む範囲」を分け、清掃頻度を決めて記録するのが、法令の考え方にも沿った最短の対応です。

この記事では、飲食店でカビが出やすい理由、食品衛生法・HACCPでカビがどう位置づけられているか(保健所への報告義務の有無を含む)、場所別の対応、営業しながらのカビ取り手順、業者に頼む判断、再発させない清掃頻度を、厚生労働省と文部科学省の公開資料をもとに整理します。

この記事で分かること

  • 飲食店の厨房でカビが出やすい理由(湿度80%・温度25℃という目安)
  • 食品衛生法施行規則 別表第17・HACCP・大量調理施設衛生管理マニュアルでのカビの位置づけ
  • 6か所別に、自店で対応できる範囲と業者に頼む範囲
  • 閉店後に行うカビ取り6ステップと、塩素系洗浄剤を厨房で使うときの注意
  • 「床から1m」で変わる清掃頻度と、記録の残し方

1. 結論:場所で分けて、頻度を決めて、記録する

先に要点を3つにまとめます。

要点 内容 根拠
カビを見つけても保健所への報告義務はない。ただし施設を清潔に保つ義務はある 食品衛生法施行規則 別表第17は、内壁・天井・床を清潔に維持し、換気を十分に行い、必要に応じ温湿度を管理することを全営業者に求めている 食品衛生法施行規則 別表第17
清掃頻度は「床から1m」で変わる 床面・排水溝・内壁の床から1mまで・手指の触れる場所は1日1回以上、天井と1m以上の内壁は1月1回以上 厚労省 大量調理施設衛生管理マニュアル
自店で対応できるのは表面にとどまるカビ。天井裏・ダクト・壁の裏は業者 除菌だけでは環境を改善しない限り繰り返す。見えない場所は検査で量と種類を確かめてから処置する 文科省 カビ対策マニュアル 実践編

2. 飲食店の厨房でカビが出やすい理由

カビが育つ条件は水分・栄養・温度・酸素の4つです。厨房はこのうち水分と栄養が常に供給される場所です。シンクと加熱調理の蒸気で湿度が上がり、油煙と食材のくずが壁・天井・排水溝に栄養として付きます。東京都保健医療局のQ&Aは、カビが湿度70%以上・温度10〜30℃で発生しやすく、条件がそろえば2〜3日で集落をつくり、1週間ほどで胞子を飛ばし始めるとしています。

厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」は、施設は十分な換気を行い高温多湿を避けること、調理場は湿度80%以下・温度25℃以下に保つことが望ましいこと、ドライシステム化を積極的に図ることが望ましいことを挙げています。裏返せば、湿度80%を超える厨房、床が常に濡れているウェット厨房は、マニュアルが想定する「望ましい状態」から外れており、カビにとっては好条件です。

もう1つの理由は、清掃の高さです。次の章で触れるように、床から1mまでは毎日清掃するのに対して、天井や壁の上部は月1回が目安です。蒸気と油煙は上に行くので、カビは「清掃頻度が低い高さ」に出ます。飲食店のカビが天井・壁の上部・エアコン吹き出し口に集中するのはこのためです。

3. 法令でのカビの位置づけ:報告義務はないが、清潔維持は義務

食品衛生法施行規則 別表第17(すべての営業者の義務)

2021年6月のHACCP完全制度化に合わせて、営業者が実施すべき「一般的な衛生管理」が食品衛生法施行規則 別表第17に定められています。カビという言葉は出てきませんが、次の項目が直接関係します。

別表第17の項目 内容 カビとの関係
施設の衛生管理 施設の内壁、天井及び床を清潔に維持すること 天井・壁のカビは「清潔に維持」から外れる
施設内の採光、照明及び換気を十分に行うとともに、必要に応じて適切な温度及び湿度の管理を行うこと 換気と温湿度管理がカビ対策の根拠になる
排水溝は、固形物の流入を防ぎ、排水が適切に行われるよう清掃し、破損した場合速やかに補修を行うこと 排水溝は厨房で最もカビと汚れが集まる場所
ねずみ及び昆虫対策 1年に2回以上、ねずみ及び昆虫の駆除作業を実施し、その実施記録を1年間保存すること カビの直接規定ではないが、「定期実施+記録」の型はカビ対策にも使える

「飲食店 カビ 保健所」で調べる方が多いので明記しておくと、食品衛生法と施行規則に、カビを発見したときに保健所へ報告する規定はありません(当社が確認した範囲)。一方で、保健所の監視指導では施設の清潔維持や換気が確認対象になるため、天井や壁のカビが指摘の対象になり得ます。「報告義務がないから放置してよい」ではなく、「清潔維持義務の一部として自店で管理する」という整理です。

大量調理施設衛生管理マニュアル(大規模施設向けだが、考え方は使える)

同一メニューを1回300食以上または1日750食以上提供する施設向けのマニュアルですが、清掃頻度の目安として小規模店でも参考になります。床面(排水溝を含む)・内壁のうち床面から1mまでの部分・手指の触れる場所は1日に1回以上、天井および内壁のうち床面から1m以上の部分は1月に1回以上清掃すること、貯水槽は専門の業者に委託して年1回以上清掃すること、床に水を使う部分は100分の2程度の勾配と排水溝を設けることが書かれています。

図2 「床から1m」の線で清掃頻度が変わる。カビが出やすい上部ほど頻度が低いのが盲点

小規模な一般飲食店向けの手引書

日本食品衛生協会の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」には、冷蔵10℃以下・冷凍-15℃以下といった温度管理の記載はありますが、カビの独立した項目はありません。つまり、カビは各店が一般的衛生管理の中で自分で位置づける必要があります。次の章の「場所別」がその位置づけです。

4. 場所別:自店で対応する範囲と、業者に頼む範囲

図1 6か所の出やすい理由と、自店で対応できる範囲の目安
場所 出やすい理由 自店でやること 業者に頼む目安
厨房の壁・天井(コンロ・シンクの上) 蒸気と油煙が上にたまる。清掃頻度が月1回 月1回の清掃に「カビの点検」を組み込む。点々の段階で拭き取る 面で広がる、拭いても2〜4週間で戻る、天井材が浮いている
排水溝・グリストラップまわり 常に濡れ、油と食材くずがある 毎日の清掃。ふたの裏・目地・排水口の縁まで 排水の流れが悪く床が乾かない(勾配・配管の問題)
冷蔵庫のパッキン・製氷機・ドリンクサーバー 結露と糖分。低温でも生える 週1回の点検と拭き取り。パッキンの溝は綿棒で パッキン交換で戻らない、製氷機内部
客席のエアコン吹き出し口・壁紙・窓際 結露と空気の滞り。カビ臭の発生源になりやすい 吹き出し口とフィルターの表面清掃。窓際の結露拭き エアコン内部、壁紙の裏側、臭いが続く
食材庫・倉庫の壁と床の隅 換気不足。段ボールが湿気を吸う 段ボールを床に直置きしない。壁から離す。湿度計を置く 壁や床が湿っている(漏水・結露)
天井裏・ダクト内・壁の裏側 見えない。清掃対象に入っていない 臭いの記録(いつ・どこで強いか) 浮遊菌検査で量と種類を確かめてから処置

判断の軸は2つです。1つは「表面にとどまっているか」。文部科学省のカビ対策マニュアルは、除菌だけでは十分な処置とならず、環境を改善しない限りカビ被害は繰り返されるとしています。拭いて戻る、面で広がる、材料が浮いている場合は、表面の処置では止まりません。もう1つは「食品と客席への影響」。厨房の天井裏やダクト内のカビは、胞子が調理場と客席に降りてくる経路になるため、自店での処置は勧めません。量と種類をカビ菌検査で確かめてから処置範囲を決めるのが、営業への影響を最小にする順番です。

5. 営業しながらのカビ取り:閉店後に行う6ステップ

文部科学省のマニュアルの考え方(記録・区画・保護具・噴霧不可・一方向)を厨房に置き換えると、次の順番になります。営業中は行わず、閉店後に食材と器具を退避してから始めます。

図3 閉店後の6ステップ。スプレーで吹きかけない、食品と器具を先に退避する、の2点が家庭と違う
  1. 記録する。日時・場所・大きさを写真で残します。別表第17の「記録」の考え方をカビにも使い、次回の点検で広がったかどうかを比べます。
  2. 食材・器具・食器を退避し、区画する。周囲の調理台や棚をポリシートで覆い、胞子が食品や食器に落ちないようにします。
  3. 保護具と換気。マスク(防塵マスクが望ましい)・手袋・目の保護を着け、換気扇を回します。生きているカビにはカビ毒、死んでいてもアレルゲンが残るためです。
  4. スプレーで吹きかけない。噴霧は胞子を吹き飛ばして汚染を広げるため、マニュアルは不可としています。洗剤は布やペーパーに含ませ、一方向に拭き取ります。
  5. 薬剤は場所で選ぶ。塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)はステンレスを含む金属を腐食させることがあり、食品への混入と、酸性洗剤やエタノールとの混合による塩素ガスに注意が必要です(国民生活センター 2026年3月18日)。天井や壁の広い面に塩素系を使うと液だれが食品側に落ちるため、拭き取り用に限定します。消毒用エタノールは薄めずに使い、火気のそばでは使いません。
  6. 乾かしてから戻す。拭いた面を完全に乾かし、食材と器具を戻します。数日たっても臭いが残る場合は、拭いた面ではなく裏側や上部に発生源があります。

6. 業者に頼む判断と、依頼前に用意するもの

状況 何が起きているか 依頼する内容
拭いても2〜4週間で同じ場所に戻る 表面を拭いただけで、材料の裏や内部に残っている。または水分の供給が続いている 原因調査(結露・漏水・換気)と処置範囲の特定
カビ臭いのに見当たらない 天井裏・ダクト・壁の裏側・エアコン内部に発生源がある 浮遊菌検査で量と種類を確かめる
天井材・壁材が浮く、変色が面で広がる 内部まで水分が回っている 材料の交換を含む処置。営業時間を避けた工程の相談
従業員や客から体調の訴えがある 当社は医療機関ではないため判断できない 検査結果を記録として残し、医療機関の判断の材料にする

依頼前に用意しておくと話が早いのは、①発生場所の写真と日付、②厨房の湿度計の記録(あれば)、③換気設備と空調の稼働時間、④直近の清掃・改装の履歴、⑤営業時間(作業できる時間帯)の5つです。

7. 再発させない:清掃頻度と湿度を「決めて記録する」

飲食店のカビ対策で一番効くのは、特別な薬剤ではなく、清掃頻度と湿度を数字で決めて記録することです。大量調理施設衛生管理マニュアルと別表第17の考え方を、小規模店向けに置き換えると次の表になります。

項目 頻度の目安 根拠
床面・排水溝・内壁の床から1mまで・手指の触れる場所 1日1回以上 大量調理施設衛生管理マニュアル
天井・内壁の1m以上の部分・エアコン吹き出し口 1月1回以上(カビの点検を兼ねる) 同上
冷蔵庫パッキン・製氷機・ドリンクサーバー 週1回の点検 当社の目安(公的な頻度規定なし)
貯水槽 年1回以上、専門業者に委託 大量調理施設衛生管理マニュアル
ねずみ・昆虫の駆除 年2回以上、記録を1年保存 食品衛生法施行規則 別表第17
厨房の湿度・温度 湿度80%以下・温度25℃以下が望ましい。湿度計を置いて記録 大量調理施設衛生管理マニュアル

あわせて、厨房を濡れたままにしない(ドライ運用)、換気扇を営業終了後もしばらく回す、食材庫の段ボールを床と壁から離す、の3つを習慣にすると、水分の供給が減ります。

8. よくある質問

Q. 厨房にカビが出たら、保健所に報告しないといけませんか。

食品衛生法と施行規則に、カビを発見したときに報告する規定はありません(当社が確認した範囲)。ただし、内壁・天井・床を清潔に維持することは全営業者の義務で、監視指導で指摘の対象になり得ます。記録を残して処置し、原因を改善しておくことが、監視指導の際にも説明しやすい対応です。

Q. カビが出たら営業停止になりますか。

営業停止などの行政処分は保健所が個別に判断するもので、当社が断定することはできません。この記事で言えるのは、清潔維持・換気・温湿度管理が義務であり、カビはその管理状態を示すサインの1つだ、ということまでです。

Q. 厨房で塩素系のカビ取り剤を使っても大丈夫ですか。

使えますが、家庭より注意点が多くなります。金属の腐食、食品・食器への混入、酸性洗剤やエタノールとの混合による塩素ガスの3つです。閉店後に食材と器具を退避し、布に含ませて拭き取り、しっかり水拭きと乾燥をしてから復旧してください。

Q. エアコンからカビ臭がします。フィルター掃除で足りますか。

フィルターと吹き出し口の表面は自店で清掃できますが、臭いが続く場合は内部の熱交換器やドレンパンに発生源があることが多く、内部洗浄は業者の領域です。カビ臭の仕組みはカビ臭の正体|「臭うのに見当たらない」が起きる仕組みで説明しています。

9. まとめ

飲食店のカビは、場所で分けて、頻度を決めて、記録する、の3つで管理します。保健所への報告義務はありませんが、内壁・天井・床の清潔維持と換気・温湿度管理は義務です。自店で対応できるのは表面にとどまるカビで、天井裏・ダクト・壁の裏側・エアコン内部は検査で量と種類を確かめてから処置します。厨房の湿度80%以下・温度25℃以下、床から1mまでは毎日・上部は月1回という数字を、そのまま自店のルールにしてください。

店舗のカビは、営業時間を避けて検査から

MIST工法®カビバスターズ本部では、飲食店・食品を扱う施設のカビについて、浮遊菌検査で量と種類を確かめたうえで、営業時間を避けた工程で処置を行っています。天井裏・ダクト・壁の裏側など、自店で手を出しにくい場所はご相談ください。

参考資料

  • 厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」(平成9年3月24日付け衛食第85号別添、最終改正 平成29年6月16日)(湿度80%以下・温度25℃以下が望ましい/ドライシステム化/清掃頻度/貯水槽年1回/排水勾配)
  • 食品衛生法施行規則 別表第17(一般的な衛生管理)(内壁・天井・床の清潔維持/採光・照明・換気・温湿度/排水溝/ねずみ・昆虫 年2回・記録1年)
  • 厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理の制度化」(2021年6月1日完全施行)
  • 日本食品衛生協会「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」
  • 文部科学省「カビ対策マニュアル」実践編・Q&A(区画・記録・保護具・噴霧器不可・除菌だけでは繰り返す)
  • 東京都保健医療局「食品衛生の窓」カビQ&A(湿度70%以上・10〜30℃/2〜3日で集落・1週間で胞子)
  • 国民生活センター「住宅用塩素系洗浄剤の使い方」(2026年3月18日)

※本記事は公的機関の公開情報をもとに一般的な情報を提供するもので、個々の店舗の法令適合や行政の判断を保証するものではありません。行政処分や監視指導に関する判断は所管の保健所にご確認ください。症状に関する判断は医療機関にご相談ください。