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壁紙(クロス)のカビ|拭いてよい範囲と、張り替えを考える境目

編集:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら)|1995年創業・除カビ防カビ業 愛知県知事許可(般-24)第112038号|本記事の数値は、文部科学省・国土交通省・厚生労働省の公的資料にもとづいています。

部屋の隅、家具の裏、窓の下の壁紙に、黒い点々や灰色のシミ。「拭けば取れるのか」「張り替えるしかないのか」「賃貸だと請求されるのか」。壁紙(クロス)のカビは、家庭で最も判断に迷う場所です。浴室のように「塩素系を塗って待つ」が使えず、放っておくと壁の中に広がるからです。

結論から言うと、壁紙のカビは「表面」「裏」「壁の中」の3つの深さで考えると、対応が決まります。押して硬く、拭くと薄くなるなら表面で、消毒用エタノールで拭けます。クロスが浮く・剥がれる・裏から色が出るなら裏に回っていて、張り替えの検討です。同じ場所に何度も出る、外壁側や北側、広い範囲なら壁の中に水分の供給源があり、拭いても張り替えても繰り返します。

この記事では、壁紙のカビの3つの深さと見分け方、家庭で拭いてよい範囲とその手順、張り替えを考える境目、原因調査が先になる状態、賃貸での負担の考え方、そして繰り返さないための壁の環境づくりを、文部科学省のカビ対策マニュアル、国土交通省の資料をもとに整理します。本記事は連載「素人でもできるカビ対策」の第4回です。

この記事で分かること

  • 壁紙のカビの3つの深さ(表面・裏・壁の中)と、押す・拭くで見分ける方法
  • 家庭で拭いてよい範囲と、消毒用エタノールでの手順(塩素系を使わない理由)
  • 張り替えを考える境目と、張り替えても戻るケース
  • 賃貸で壁紙のカビはどちらの負担か(国土交通省ガイドラインの考え方)
  • 繰り返さないための「冷やさない・濡らさない・ふさがない」

1. 結論:深さで決める。拭く/張り替え/原因調査

結論 根拠
①押して硬く、拭くと薄くなる表面のカビは、消毒用エタノールで拭ける 文部科学省 カビ対策マニュアル:殺菌に消毒用エタノールを使用、薄めない。塩素系のアルカリ性は使える場所が限られ脱色に注意
②クロスが浮く・剥がれる・裏から色が出るなら、裏の糊と石膏ボードに回っている。表面処理では戻らない 同マニュアル:色素と着色胞子の除去は困難で不可逆。除菌だけでは十分な処置にならない
③同じ場所に繰り返す・外壁側・北側・広範囲は、壁側に水分の供給源がある。張り替えより先に原因調査 同マニュアル:環境を改善しない限りカビ被害は繰り返される。収納は壁から10cm離す、相対湿度65%を超えないよう監視

壁紙は「表面だけ見える」素材です。見えている黒い点が、どの深さから来ているかを、押す・拭く・場所を見るの3つで判断してから手を動かしてください。

2. 壁紙のカビの3つの深さ

図1 見えているのは同じ「黒い点」でも、深さで対応が変わる。

① 表面:胞子とホコリが、湿気で育った

東京都保健医療局のカビQ&Aによると、カビは湿度70%以上・温度10〜30℃で発育し、垢やホコリも栄養にします。壁紙の表面に付いたホコリと、結露や湿気で、胞子が育った状態です。ビニールクロスは表面が樹脂なので、菌糸は深く入りにくく、点々が散らばる見た目になります。押しても壁は硬く、消毒用エタノールで拭くと薄くなるのが特徴です。

② 裏:糊と石膏ボードの紙を栄養にしている

壁紙は糊で石膏ボードに貼られ、石膏ボードの表面は紙です。結露や湿気が壁紙の裏に回ると、糊と紙という栄養の上でカビが育ちます。このとき表面に見えるのは、裏から透けた色や、クロスの浮き・剥がれです。拭いても数日で裏から浮き出るのは、このためです。文部科学省のマニュアルは、色素と着色した胞子の除去は困難で変化は不可逆としており、裏まで入った色は表面からは戻りません。

③ 壁の中:結露・漏水・断熱不足が供給源

外壁に面した壁、北側の壁、窓の下、押入れの奥。ここで繰り返すカビは、壁の内側で結露している、外壁からの雨水や配管の漏水、断熱材の不足など、壁側に水分の供給源があります。国土交通省 国総研は、部位内の結露は発見が遅れるうえに乾燥しにくく、最も厄介な水分供給現象の一つだとしています。この状態で壁紙だけ張り替えても、新しい壁紙の裏で同じことが起きます。

見分けるポイント 表面 壁の中
押したとき 硬い 柔らかい・浮いている 柔らかい、湿っている、たわむ
エタノールで拭くと 薄くなる・消える 一時的に薄くなり、数日で裏から戻る 変わらない、または広がる
見た目 点々が散る、ホコリっぽい シミ状、クロスの継ぎ目から浮く、剥がれ 広い範囲、輪郭がぼやける、壁全体が暗い
場所 家具の裏、隅、窓の下 同左+クロスの継ぎ目 外壁側、北側、窓の下、押入れの奥、床に近い部分
対応 拭く+湿度・換気 張り替えを検討(原因も一緒に) 原因調査が先

3. 判断の流れ:3つの問い

図2 3つの問いに順番に答える。

まず「押して硬く、拭くと薄くなるか」。はいなら表面で、第5章の手順で拭きます。いいえなら「クロスが浮く・剥がれる・裏から色が出るか」。はいなら第6章の張り替えの検討です。それでもいいえなら「同じ場所に3回以上出ていないか、外壁側や北側でないか、広くないか」。はいなら第7章、原因調査が先です。どれにも当てはまらなければ、表面処理をしたうえで、湿度と換気を整えて様子を見ます。

4. 家庭で拭いてよい範囲

家庭で対応できるのは、表面のカビで、範囲がおおむね手のひら数枚分までのものです。文部科学省のマニュアルは、カビの処置について、区画を決め、記録写真を撮り、吸引しながら、綿棒や布にアルコールを含ませて局部的に拭き取る、色落ちの懸念があればやわらかな筆で払う、保護具を着ける、という手順を示しています。家庭でもこの順番を守ります。

やってよい やってはいけない
消毒用エタノール(70〜80%程度)を布に含ませて、一方向に拭く 塩素系カビ取り剤をクロスに直接かける(脱色・変色。文部科学省:塩素系は使える場所が限られ脱色に注意)
先に乾いた布や掃除機(HEPA付き)で表面のホコリを取る 水拭き、濡れた雑巾(壁紙の裏に水分を送る)
目立たない場所で色落ちを試してから スプレーで広範囲に噴霧(文部科学省:噴霧器は胞子を吹き飛ばし汚染を広げる)
マスク・手袋を着け、窓を開けて作業 こする、硬いブラシ(表面の樹脂を傷めて次は入りやすくなる)
作業前後に写真を撮る 拭いたあと家具をすぐ壁に戻す

5. 拭く手順:エタノールで、一方向に、乾かす

  1. 記録する。日時・場所・状態を写真に残す。文部科学省のQ&Aも発生日時・場所・状態と写真の記録を勧めている。賃貸なら特に重要(第8章)。
  2. ホコリを取る。乾いた布か、HEPAフィルター付きの掃除機で、表面のホコリを先に取る。ホコリごと拭くと広がる。
  3. 試す。消毒用エタノールを布に含ませ、目立たない場所で色落ちがないか確認する。柄物・濃色のクロスは変色することがある。
  4. 一方向に拭く。布を折り返しながら、同じ面で二度拭きしない。こすらず、押さえるように。
  5. 乾かす。窓を開け、扇風機で風を当てて完全に乾かす。家具は壁から10cm離して戻す。
  6. 1週間後に見る。戻っていれば裏か壁の中。第6章・第7章へ。

塩素系のカビ取り剤を使いたくなる方が多いのですが、壁紙では「白くなったが周りも脱色した」「数日で裏から戻った」という結果になりやすく、勧めません。使うなら第2回で整理した通り、目立たない場所で試し、単独で、換気しながら、キッチンペーパーに含ませて当てる方法に限ります。

6. 張り替えを考える境目

次の状態は、表面処理では戻りません。壁紙を張り替える判断になりますが、「張り替えだけ」で済むのは、原因が一時的なもの(一度の漏水、引っ越し前の閉め切りなど)だった場合に限ります。

状態 起きていること 張り替えで済むか
クロスが浮いている、継ぎ目から剥がれる 裏の糊がカビと湿気で効かなくなっている 原因が一時的なら済む。下地の紙もカビていれば下地処理も
拭いても数日で同じ色が浮き出る 裏の紙・糊にカビの色素 張り替え+下地の処置。原因が続いていれば戻る
シミ状に広がり、輪郭がぼやける 裏で面として広がっている 下地まで見る必要がある
壁を押すと柔らかい、たわむ 石膏ボードが湿気で劣化 張り替えではなくボードの交換。原因調査が先
カビ臭が強いのに、見える範囲は小さい 壁の中で繁殖 張り替えでは止まらない。第7章へ

文部科学省のマニュアルは、除菌だけでは十分な処置とならず、環境を改善しない限りカビ被害が繰り返されると明記しています。張り替えは「除菌」の延長であって、「環境の改善」ではありません。張り替える前に、なぜそこが濡れたのかを確認してください。

7. 原因調査が先になる状態

  • 同じ場所に3回以上出ている
  • 外壁に面した壁、北側の壁、窓の下、押入れの奥に出ている
  • 範囲が壁1面の1/4を超える、複数の部屋に出ている
  • 壁を押すと柔らかい、湿っている、たわむ
  • 上階や隣室に水回りがある壁に出ている(漏水の可能性)
  • 冬に壁が冷たく、結露でぬれている

この場合、壁紙ではなく壁の中に原因があります。壁の内側の結露(断熱不足・気密の隙間)、外壁からの雨水、配管の漏水などです。表面を拭いても張り替えても、原因が残る限り繰り返します。原因の場所を特定するには、壁の内側の含水率測定やカビ菌検査、場合によっては壁を開けての確認が必要です。ここは家庭の作業の範囲を超えるため、専門業者に相談してください。

8. 賃貸の場合:どちらの負担になるか

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」のQ&Aは、次のように整理しています。

ガイドラインの考え方 壁紙のカビへの当てはめ
Q5 原状回復は入居時の状態に戻すことではない。通常の使用による損耗は借主負担にならない 通常に生活し、通常の掃除と換気をしていて出たカビ・経年の汚れは、原則として借主負担にならない
Q10 通常の掃除を怠り、特別な清掃をしなければ除去できないカビ等の汚損を生じさせた場合は善管注意義務違反。結露を放置してシミ等を生じさせた場合も同様 結露が出ているのに拭かず、換気もせず、家具を密着させたまま放置して広げた場合は借主負担になり得る
Q10 設備が壊れて修繕が必要なときは貸主に修繕義務があるが、借主は通知する必要があり、怠って被害が広がれば損害賠償を求められる可能性 漏水や壁の内側の結露が疑われるカビは、早めに管理会社へ通知する。放置して広げると借主の責任が問われる
Q7 クロスは㎡単位が望ましく、やむを得ない場合は毀損箇所を含む一面分 借主負担になる場合でも、部屋全体ではなく該当面が基本
Q1 入居時・退去時に双方立会い、チェックリスト、写真 カビを見つけた日の写真と、掃除・換気の記録が、負担の判断材料になる

つまり、賃貸で壁紙のカビを見つけたら、拭く前に写真を撮り、通常の掃除と換気をしていることを記録し、裏や壁の中が疑われる場合は管理会社に早めに連絡する。これが借主にとって最も安全な順番です。

9. 繰り返さないために:冷やさない・濡らさない・ふさがない

図3 壁紙のカビの環境改善は、壁の温度・空気の水分・空気の流れの3つ。

壁紙にカビが出る条件は、壁の表面が冷えて結露する、空気の水分が多い、その場所の空気が動かない、の3つが重なったときです。文部科学省のマニュアルは、収納家具を壁から10cm程度離すこと、相対湿度が65%を超えないように監視し60%以下を目安とすることを挙げています。国土交通省 国総研は、開放型の石油ストーブが灯油1Lの燃焼で水蒸気を1.13kg放出すること、24時間換気システムの電源を切らないことを示しています。

  • 冷やさない:北側・外壁側の壁に家具を密着させない(10cm離す)。窓の結露を毎朝拭く。断熱の弱い壁は、冬に壁面の温度が下がるので、その面に物を置かない。
  • 濡らさない:加湿器は湿度計を見ながら60%を超えないように。室内干しは換気か除湿とセットで(環境再生保全機構は、極端な乾燥時を除き部屋干しをやめることを勧めている)。開放型暖房は換気を。
  • ふさがない:24時間換気を止めない。家具・カーテン・荷物で壁の空気が止まる場所を作らない。押入れの奥は扉を開けて風を通す。

10. よくある質問

Q1. 壁紙のカビの上から、防カビ塗料やペンキを塗ってもいいですか

表面のカビを落とし、乾かし、原因を止めたうえでなら、塗装は選択肢の一つです。ただし、裏や壁の中にカビが残ったまま塗ると、塗膜の下で育って浮き出ます。文部科学省のマニュアルが言う通り、除菌と環境改善が先で、塗装は仕上げです。

Q2. 珪藻土や漆喰の壁にもカビは生えますか

生えます。珪藻土や漆喰は湿気を吸う素材で、乾く機会がなければ吸ったままになり、表面にカビが出ます。ビニールクロスと違って表面が多孔質なので、エタノールで拭くより、乾いた状態でやわらかい筆で払い、換気と除湿で乾かすことが中心になります。塩素系は変色するため使いません。

Q3. カビを拭いたあと、黒い跡だけが残りました

色素が壁紙の表面に残った状態です。文部科学省のマニュアルは、色素と着色した胞子の除去は困難で不可逆としています。カビ自体は減っているので、跡が薄く小さければそのまま様子を見る、目立つなら張り替え、という判断になります。跡が広がる・濃くなるなら、まだ育っています。

Q4. 子ども部屋や寝室の壁紙にカビがあります。健康への影響は

文部科学省のマニュアルは、カビの胞子は死んでもアレルゲンになるとしています。拭く作業で胞子が舞うため、子どもが部屋にいない時間に、マスクと換気をして行ってください。咳や鼻の症状が続く場合は、医療機関に相談してください。当社は医療機関ではありませんので、体調に関する判断は医師にご相談ください。

11. まとめ

壁紙のカビは、表面・裏・壁の中の3つの深さで考えます。押して硬く拭くと薄くなる表面のカビは、記録→ホコリ取り→試す→エタノールで一方向に拭く→乾かす、の手順で家庭で対応できます。クロスが浮く・裏から色が出るなら張り替えの検討、同じ場所に繰り返す・外壁側・広い範囲なら原因調査が先です。賃貸では、拭く前の写真と掃除・換気の記録、早めの通知が借主を守ります。そして繰り返さないためには、壁を冷やさない・空気を濡らさない・空気をふさがない。次回は、結露の最前線である窓のサッシ・ゴムパッキン・カーテンのカビを扱います。

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連載「素人でもできるカビ対策」

  1. 家庭でできるカビ対策の基本|湿度・換気・掃除の3つで、今日から始める10のこと
  2. カビ取り剤の選び方|塩素系・酸素系・エタノールの使い分けと「まぜるな危険」
  3. お風呂のカビ取り|ゴムパッキン・天井・排水口を自分で落とす手順
  4. 壁紙(クロス)のカビ|拭いてよい範囲と、張り替えを考える境目(本記事)
  5. 窓のサッシ・ゴムパッキン・カーテンのカビ|結露の最前線の掃除と予防
  6. 押入れ・クローゼットと衣類のカビ|収納の湿気を逃がす方法
  7. 洗濯機と洗濯物のカビ臭|洗濯槽の掃除と部屋干しの工夫
  8. キッチン・冷蔵庫・食品のカビ|捨てる判断と保存の基本
  9. 木製家具・フローリングのカビ|素材を傷めずに落とす方法
  10. 自分で取ってはいけないカビ|専門業者に頼む判断基準と費用の目安

参考資料(一次情報)

  • 文部科学省「カビ対策マニュアル」基礎編・実践編・Q&A(エタノールは薄めない/塩素系は使える場所が限られ脱色に注意/噴霧器不可/色素は不可逆/除菌だけでは繰り返す/壁から10cm/65%監視・60%以下/記録と写真)
  • 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」Q&A(Q1・Q5・Q7・Q10)
  • 国土交通省 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」(灯油1Lで水蒸気1.13kg/24時間換気を切らない)、「木造住宅の長期使用に向けたメンテナンスガイドライン」(部位内結露)
  • 厚生労働省 建築物環境衛生管理基準(相対湿度40〜70%)
  • 東京都保健医療局「食品衛生の窓」カビQ&A(発育条件)
  • 環境再生保全機構 ぜん息などの情報館(部屋干し・加湿器)