カビの基本知識や特徴、簡単にできるカビ予防術をご紹介

カビ取り屋の知恵袋

ロゴ
ホーム > カビ取り屋の知恵袋 > ビニールクロスの裏にもカビ|壁紙を張り替えても再発する理由と、下地までの処理

ビニールクロスの裏にもカビ|壁紙を張り替えても再発する理由と、下地までの処理

 

「壁紙を張り替えたのに、数か月でまた黒い点が出てきた」。壁紙のカビ相談で、もっとも多い言葉です。これは張り替えの腕が悪かったのではなく、カビが壁紙の表面ではなく、裏側の糊と下地の石膏ボードで育っているからです。

この記事では、ビニールクロスの構造からカビがどこで育つのかを説明し、なぜ張り替えや塗り替えで再発するのか、下地までどう処理すべきか、そして賃貸で壁紙のカビが誰の負担になるのかをまとめます。

結論

  1. 壁紙のカビは「壁紙の裏」で育ちます。糊と石膏ボードの表紙が栄養で、壁紙は水蒸気を通しにくい蓋の役割をします。表面の黒い点は、裏で育った結果が透けて見えているものです。
  2. 張り替え・塗り替えは、原因を残したまま蓋を新しくする作業です。下地に菌糸が残っていれば、新しい壁紙の裏で同じことが繰り返されます。
  3. 順番は「原因を止める → 下地を処理する → 仕上げる」。結露や漏水を止めずに仕上げだけ変えても、再発は時間の問題です。

ビニールクロスの壁は、どういう構造か

日本の住宅の内壁の多くは、室内側から順に「ビニールクロス(塩化ビニル樹脂の壁紙)→ 糊 → 石膏ボード → 空気層または断熱材 → 外壁側」という構成です。カビの立場で見ると、次のようになります。

  • ビニールクロス:表面は樹脂なので、それ自体は栄養になりにくい。ただし水蒸気を通しにくく、裏側の湿気を閉じ込める。
  • 糊:壁紙用の接着剤は一般にでんぷん系や樹脂系で、水で希釈して塗られる。カビにとっては栄養と水分の両方
  • 石膏ボード:芯は石膏だが、両面が紙で覆われている。紙は栄養であり、水を吸う。

つまり、壁紙の裏には「栄養(糊・紙)」があらかじめ用意されていて、あとは「水分」が加われば条件が揃います(カビが育つ条件)。その水分がどこから来るかで、対策が変わります。

水分はどこから来るのか:3つの経路

1. 結露(冬・外壁側・北側)

もっとも多い原因です。外壁に面した壁、とくに北側や家具の裏で、壁の表面温度が下がり、室内の水蒸気が結露します。壁紙の表面で結露すれば拭けますが、石膏ボードの温度が下がると壁紙の裏側で結露が起き、拭くことができません。出る場所が「外壁側の壁の下のほう」「窓の周囲」「家具の裏」に限られているなら、まず結露を疑ってください(カビと結露|湿度ではなく温度差の問題)。

2. 漏水・雨漏り(一か所から濃く)

天井の隅、窓の下、水まわりの裏側の壁で、一点から濃く広がるカビは、上や裏から水が来ています。この場合、換気や除湿では止まりません。建物側の修理が先です。

3. 室内の湿気(梅雨〜夏・広く薄く)

部屋全体の湿度が高い状態が続くと、壁紙の裏にもゆっくり湿気が入ります。出方は広く薄く、複数の壁に同時に出ます。厚生労働省の建築物環境衛生管理基準では相対湿度40〜70%が基準で、70%を超える状態が続く部屋では、糊と紙は湿ったままになります。

なぜ張り替えても再発するのか

壁紙の表面に黒い点が見えている時点で、下地の石膏ボードの表紙には、目に見える範囲よりも広く菌糸が入り込んでいます。カビは根のように広がる菌糸で育ち、表面に出る黒い点はその一部です。

ここで壁紙をはがして新しいものを貼ると、次のことが起きます。

  • 下地に残った菌糸の上に、新しい糊(栄養と水分)を塗る。
  • その上に、水蒸気を通しにくい新しい壁紙(蓋)を貼る。
  • 原因(結露・漏水・湿気)はそのまま。

カビにとっては、栄養と水分を追加してもらい、蓋を新しくしてもらったことになります。数日〜数か月で再発するのは、こういう理由です。「防カビ糊を使うから大丈夫」と言われることがありますが、糊の防カビ性は主に糊自体の腐敗を防ぐためのもので、下地に残ったカビを取り除く効果はありません。

塗装の場合も同じ

塗装仕上げの壁でも構造は同じです。カビが出た壁を水洗いして上から塗料を塗ると、塗膜が蓋になり、下に残ったカビがそのまま育ちます。防カビ塗料は「新しくカビが定着しにくくする」ものであって、すでにある菌糸を取り除くものではありません。塗る前に、下地の処理と乾燥が必要です。

正しい順番:原因を止める → 下地を処理する → 仕上げる

1. 原因を止める

上の3つの経路のどれかを特定し、止めます。結露なら冷たい面をなくす(家具を離す、断熱を補う、窓の対策)。漏水なら修理。湿気なら換気と除湿。ここを飛ばすと、あとの工程は無駄になります。

2. 壁紙をはがして、下地を確認する

カビが出ている範囲の壁紙をはがし、石膏ボードの表紙の状態を見ます。目安は次のとおりです。

  • 表紙に黒ずみが点在する程度:下地の表面処理(カビの除去と乾燥)で対応できることが多い。
  • 表紙が広く黒い、または紙が浮いている・波打っている:ボードが水を含んでいます。乾燥に時間がかかり、内部まで菌糸が入っている可能性があります。
  • ボードが柔らかい、押すとへこむ、裏に断熱材の濡れがある:ボードの交換と、壁の中の確認が必要です。水害で濡れた場合と同じ考え方です(水害によるカビ被害)。

3. 下地を処理し、完全に乾かす

下地のカビを除去し、乾燥させます。ここで急いで糊を塗ると、湿った下地に栄養を足すことになります。湿度が高い時期は、乾燥に数日かかることを見込んでください。

4. 仕上げる

下地が乾いてから壁紙を貼る、または塗装します。壁紙の種類を変えるなら、透湿性のある壁紙(紙・織物系など)は裏側に湿気をためにくい反面、表面が汚れやすい面もあります。結露が根本原因の壁では、壁紙の種類より先に、結露を止めるほうが効きます。

賃貸で壁紙にカビが出たとき、誰の負担か

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、賃借人が結露を放置したことで拡大したカビ・シミについて、拭き取るなどの手入れを怠り壁等を腐食させた場合は、通常の使用を超えると判断されるとしています。一方で、建物の構造や設備が原因で発生したものは貸主側の負担になる考え方です。

壁紙の張り替え費用については、6年で残存価値1円となる直線を想定して負担割合を算定するとされ、借主の毀損が一部でも、色や模様の統一のため「毀損箇所を含む一面分」までは借主負担もやむを得ないという記述があります。なお、このガイドラインに法的拘束力はありません。詳しくは賃貸のカビは誰の負担かと、賃貸でカビが出たときの伝え方をご覧ください。

よくある質問

Q. 壁紙の表面を塩素系漂白剤で拭いたら白くなりました。これで終わりですか。

A. 表面の色は落ちますが、裏側の糊と下地には届いていません。また、塩素系は壁紙を変色させ、石膏ボードの紙を傷めることがあります。壁紙の上から拭くのは応急処置と考え、再発したら下地の処理を検討してください。

Q. 壁紙の上から防カビスプレーをかければ防げますか。

A. 表面に新しく胞子が定着するのを抑える効果はあっても、裏側にすでにあるカビには届きません。原因(結露・漏水・湿気)を止めることのほうが確実です。

Q. 一部だけ張り替えたいのですが。

A. 技術的には可能ですが、既存の壁紙は日焼けや汚れで色が変わっているため、継ぎ目が目立ちます。国土交通省のガイドラインでも、色や模様の統一のため一面分の張り替えが想定されています。カビの範囲が壁紙の一面に収まっているなら、その面ごと処理するのが一般的です。

まとめ

壁紙のカビは、壁紙の裏にある糊と石膏ボードの紙で育ちます。張り替えや塗り替えは、原因を残したまま蓋を新しくする作業なので再発します。順番は「原因を止める → 壁紙をはがして下地を確認する → 下地を処理して乾かす → 仕上げる」。結露・漏水・湿気のどれが原因かは、カビの出る場所と季節で見分けてください。

※当社は医療機関でも法律の専門家でもありません。体調に関することは医療機関へ、賃貸の費用負担については契約書の確認と消費生活センター等へのご相談をお願いします。

参考資料(一次情報)

  • 国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」平成23年8月(結露を放置したことにより拡大したカビ・シミの扱い、クロスの経過年数=6年で残存価値1円、毀損箇所を含む一面分の張替え)
  • 厚生労働省 建築物環境衛生管理基準(相対湿度40〜70%、温度18〜28℃)
  • 建築基準法施行令 第20条の8(住宅等の居室の必要換気回数0.5回/h)
  • WHO室内空気質ガイドライン 2009(湿気・カビ)