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カビ取り屋の知恵袋

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塩素系が使えない場所はどうすればいい?|木・畳・金属・色柄物・革の「代わりの手」

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

読者からの質問

「和室の畳のふちと、押入れの木の板、それに窓のアルミサッシにカビが出ました。浴室で使っているカビ取り剤を使おうとしたら、家族に「畳や木には使えないはず」と止められました。何を使えばいいのでしょうか。」

(50代・戸建て・築20年の和室)

止めてくれたご家族の判断は理にかなっています。塩素系は使える場所が限られます。文部科学省のカビ対策マニュアルは、塩素系漂白剤はアルカリ性であるため使用箇所が限られ、脱色作用や発生するガスに注意が必要だとしています。

使えない理由は、大きく3つです。脱色する、金属を腐食させる、素材そのものを傷める。畳・木・革・色柄物は1つ目と3つ目に、アルミサッシは2つ目に当たります。

では何を使うか。答えの中心になるのは消毒用エタノールです。この記事では、素材ごとの「代わりの手」と、エタノールを使うときの注意、そして自分で手を出さないほうがよい範囲を整理します。

この記事で分かること

  • 塩素系が使えない3つの理由(脱色・腐食・素材を傷める)
  • 畳・木・金属・色柄物・革・壁紙、素材別の代わりの手
  • エタノールを薄めてはいけない理由と、引火の注意
  • 削る・こする前に知っておきたいこと
  • 自分で手を出さないほうがよい範囲

1. 結論:塩素系が使えない3つの理由

図1 脱色・腐食・素材を傷める。どれに当たるかで代わりの手が変わる
表1 塩素系が使えない3つの理由
理由 起きること 当てはまる素材
脱色する 色や模様が抜ける。もとに戻らない 畳、木、色柄物の衣類・カーテン、色柄の壁紙、革
金属を腐食させる サビや変色。厚生労働省は消毒後に十分拭き取るよう案内している アルミサッシ、ステンレス、蛇口、ビス
素材そのものを傷める 繊維が弱る、表面が荒れる、目地がやせる 畳表、白木、革、漆喰、珪藻土

もう1つ、見落とされやすい理由があります。畳や木のように液体を吸う素材では、薬剤が内部に残ってしまいます。表面の色は抜けても、中に残った薬剤は乾きにくく、素材を傷め続けます。「吸う素材には液体を多く使わない」というのが基本の考え方です。

2. 素材別・代わりの手

図2 中心になるのは消毒用エタノール。吸う素材には少量で
表2 素材別の代わりの手
素材 代わりの手 やり方 避けること
畳 消毒用エタノール 布に含ませ、目に沿って一方向に拭く。そのあと乾かす 塩素系(脱色)。水をたっぷり使う。こすって目に押し込む
白木・押入れの板 消毒用エタノール 布に含ませて押さえるように拭く。乾燥させる 塩素系(脱色)。紙やすりで削る(後述)
フローリング(塗装あり) 消毒用エタノール 固く絞った布で拭き、すぐ乾かす 水をためる。塩素系
アルミサッシ・ステンレス 消毒用エタノール 布に含ませて拭く 塩素系(腐食)。使った場合は十分に拭き取る
色柄物の衣類・カーテン 酸素系漂白剤 製品の表示に従ってつけ置き(第8回で詳述) 塩素系(脱色)
白い衣類・ふきん 塩素系(0.02%)または酸素系 表示に従う。0.02%の作り方は第5回 色柄物への塩素系
革製品(靴・バッグ) 固く絞った布で拭き、陰干し 表面の胞子を落として乾かす。専門店に相談 エタノールの多用(色落ち・ひび割れ)。塩素系
ビニールクロス(色柄) 消毒用エタノール 目立たない場所で試してから、押さえるように拭く 塩素系(脱色)
漆喰・珪藻土 手を出さない範囲が広い 表面を軽く払う程度。範囲が広ければ専門業者 液体をたっぷり使う。塩素系

珪藻土については、なぜカビが生えるのかをなぜ珪藻土にカビが生えるのかで扱っています。吸う素材であっても、乾かす力があるわけではない点が要点です。

3. 消毒用エタノールの使い方

厚生労働省は、消毒に使うエタノールの濃度として70%以上95%以下を示しています。市販の消毒用エタノールはこの範囲に入るようにつくられています。一方、無水エタノールはほぼ100%で、そのままでは水分が足りず、消毒の用途には向きません。無水エタノールを使う場合は、精製水で薄めて70〜80%程度にします。

図3 濃ければよいわけではない。使うのは70〜95%
表3 消毒用エタノールと無水エタノールの違い
消毒用エタノール 無水エタノール
濃度 おおむね70〜80%台 ほぼ100%
そのまま使えるか 使える 消毒の用途には向かない
カビ対策での使い方 薄めずにそのまま 精製水で70〜80%程度に薄めてから
向く用途 畳・木・金属・壁紙の拭き取り 水を嫌う機器の清掃、油汚れ

エタノールを使うときの3つの注意

  • 薄めない。文部科学省のカビ対策マニュアルは、エタノールは薄めずにそのまま使うよう案内しています(消毒用エタノールの場合)
  • 火気に近づけない。エタノールは引火性があります。コンロ、給湯器、ストーブの近くでは使わないでください
  • 換気する。文部科学省のカビ対策マニュアル実践編は、エタノールにも人体への毒性があるとしています。噴霧器での散布は避け、布に含ませて使ってください

手順

  1. 窓を開ける。火の気がないことを確かめる。手袋とマスクをつける
  2. 目立たない場所に少量つけ、色が変わらないか確かめる(とくに塗装面・革・ニス)
  3. 布に含ませ、カビの部分を押さえるように拭く。こすらない
  4. 布の面を替えながら拭く。同じ面を使い回さない
  5. 扇風機や換気で完全に乾かす

エタノールで足りない場合

エタノールは表面のカビには使えますが、できないこともあります。1つは色素を抜くことです。文部科学省のカビ対策マニュアルは、カビの色素と着色した胞子の除去は困難で、変化は不可逆だとしています。黒い点が薄くならないのは、薬剤が弱いからではなく、素材が変化しているためであることがあります。

もう1つは内部に入ったカビです。畳なら畳床、木なら木の内部、壁紙なら下地の石膏ボード。表面を拭いても、乾くと戻ってくる場合は内部から出てきています。ここから先は、拭き取りではなく交換の判断になります。

表5 消毒用エタノールでできること・できないこと
できること できないこと
表面についたカビを取り除く 素材にしみ込んだ色素を抜く
表面の胞子を減らす 内部に入ったカビを止める
塩素系が使えない素材に使える 水の出所(結露・漏水)をなくす
広い範囲を短時間で拭ける 再発を防ぐ

つまりエタノールは「いま表面にあるものを減らす」道具です。再発を止めるのは、湿度と換気の側の手当てになります。

4. 削る・こする前に知っておきたいこと

木や畳のカビを「削って取る」方法を見かけますが、順番を間違えると悪化します。文部科学省のカビ対策マニュアルは、増殖の初期は肉眼では見えないこと、こすると胞子が広がることを説明しています。削るのは最後の手段です。

表6 削る・こする前の注意
やりがちなこと 何が起きるか 代わりに
いきなり紙やすりで削る 胞子が粉になって舞い、部屋中に広がる 先に拭き取り、乾かしてから判断する
掃除機で吸う(排気が室内に戻るもの) 排気から胞子が出る 屋外で行うか、拭き取りを優先する
濡れ雑巾でこする 水分を足してしまう。カビを塗り広げる 固く絞る。押さえて拭く
乾く前に物を戻す 残った水分で再発する 完全に乾かしてから戻す

木材については、カビと腐朽菌は別物です。押したら柔らかい、変色が深い、といった場合は腐朽が進んでいる可能性があります。詳しくは連載「素人でもできるカビ対策」の木製家具・フローリングの回をご覧ください。

目立たない場所で試してから

木・畳・革・壁紙は、同じ「木」「布」でも仕上げや染料が製品ごとに違います。本番の前に、家具の裏側や畳の縁の下など、見えない場所で試してください。白い布に薬剤を含ませて軽く当て、布に色が移らないか、当てた場所が変色しないかを見ます。数分置いて変化がなければ、同じ手順を見える場所に広げます。

変色が出たら、その素材にはその薬剤を使わないでください。試した場所が目立たない範囲で済んでいるうちに引き返せます。先に広い面で使ってしまうと、戻せません。

5. 自分で手を出さないほうがよい範囲

表7 自分で続けるか、相談するかの境目
状況 判断
畳の表面の点。拭いて薄くなった 自分で対処できる範囲。湿度と換気の見直しを続ける
畳の裏や下の板まで黒い 畳を上げて確認。床下からの湿気の可能性
木の変色が深い。押すと柔らかい 腐朽の可能性。構造にかかわるため専門業者へ
壁の中や天井裏からにおう 見えない場所。原因調査から
文化財・古い建具・高価な革製品 取り返しがつかないため、先に専門家に相談
広い範囲に出ている 一般に1m²を超えるような範囲は、区画と保護具の準備が要る

文化財や歴史的な建具については、東京文化財研究所が相対湿度60%以下に保つことを基本としています。素材を傷めずに扱う判断が必要な領域なので、自己流の薬剤使用は避けてください。

6. よくある質問

Q. 畳にエタノールを使うと、シミになりませんか?

A. 目立たない場所で試してから使ってください。畳表は日焼けや経年で色が変わっているため、部分的に拭くと差が出ることがあります。布に含ませて目に沿って一方向に拭き、広い範囲を均一に扱うと差が出にくくなります。水分を多く含ませないことも大切です。

Q. アルミサッシに塩素系を使ってしまいました。

A. すぐに水拭きして、薬剤を十分に拭き取ってください。厚生労働省は、金属部分については消毒後に十分に拭き取るよう案内しています。そのあとよく乾かしてください。すでに変色している場合、色はもとに戻らないことがあります。

Q. 重曹やクエン酸ではカビは取れませんか?

A. 重曹やクエン酸をカビ取りに使うことを示す公的資料は見つかっていません(要追加調査)。クエン酸は酸性なので、塩素系と一緒に使うと有毒な塩素ガスが発生します。併用はしないでください。汚れ落としと、カビの処置は別のものと考えてください。

Q. 色柄物の服のカビはどうすれば?

A. 酸素系漂白剤が候補になります。塩素系は脱色します。洗濯表示に漂白の記号があり、三角に斜線2本なら酸素系のみ使えるという意味です。酸素系の使い方は第8回(9月27日公開予定)で扱います。

7. まとめ

  • 塩素系が使えない理由は、脱色・腐食・素材を傷める、の3つ
  • 畳・木・金属・色柄の壁紙は、消毒用エタノールが中心の選択肢になる
  • エタノールは薄めない。火気を避ける。噴霧せず布に含ませる
  • 色柄物の衣類には酸素系漂白剤。重曹・クエン酸は塩素系と併用しない
  • 削るのは最後の手段。木の変色が深い場合は腐朽の可能性があり、専門業者へ

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連載「知恵袋Q&A ― 読者の質問に答える」

  1. 第1回 エアコンから黒い粒が落ちる・カビ臭い。自分で掃除できますか?
  2. 第2回 加湿器はカビの原因になりますか?使ってはいけない?
  3. 第3回 布団・マットレス・枕にカビ。捨てるしかない?
  4. 第4回 除湿機・エアコン除湿・換気、どれが一番カビに効く?
  5. 第5回 台所用漂白剤でカビは取れますか?薄め方は?
  6. 第6回 カビ取り剤を吹きかけても落ちません。なぜですか?
  7. 第7回 塩素系が使えない場所はどうすればいい?(この記事)
  8. 第8回 酸素系漂白剤はカビに効きますか?
  9. 第9回 詰め替え・業務用、どれが得ですか?
  10. 第10回 場所別・いちばん安く済むカビ取りの組み合わせは?
  11. 第11回 やってはいけない「格安カビ取り」は?

参考資料(一次情報)

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