スタッフが更新しています

スタッフブログ

ロゴ
ホーム > スタッフブログ > 【最新規制】EUが導入したココア/チョコレートのOTA上限値|ココアパウダー3.0μg/kgの位置づけ、チョコレートと日本の基準の現状、輸入・製造側の5つの管理

【最新規制】EUが導入したココア/チョコレートのOTA上限値|ココアパウダー3.0μg/kgの位置づけ、チョコレートと日本の基準の現状、輸入・製造側の5つの管理

 

※この記事は2026年9月に、EUの食品汚染物質規則(Commission Regulation (EU) 2023/915)の本文と、農林水産省・東京都保健医療局の公開情報をもとに内容を全面的に見直しました。相場や個別の発生事例など、すぐ古くなる情報は載せていません。

ココアパウダーを輸入・使用する事業者から、「EUのOTA規制に日本も合わせるべきか」という相談が増えています。結論から言うと、EUはココアパウダーにオクラトキシンA(OTA)の上限3.0μg/kgを置いていますが、チョコレート製品そのものにはOTAの行がなく、日本にはOTAの基準そのものがありません。したがって国内で法令上の数値義務はなく、実務は「産地側の分析証明書で確認し、国内で増やさない」に集約されます。この記事では、基準の現状、OTAが入る場所、輸入・製造側の5つの管理を整理します。

この記事で分かること

  • EU 2023/915のココアパウダーOTA 3.0μg/kgの位置づけと、チョコレート製品・日本の基準の現状
  • OTAとは何か、どのカビが作るか(農林水産省)
  • カカオ豆のどの工程でOTAが入るか(発酵・乾燥・保管)
  • 輸入・製造側の5つの管理
  • 工場・倉庫の壁天井のカビと、原料管理の関係

1. 結論:EUはココアパウダーに3.0μg/kg、チョコレートと日本には基準がない

図1 「規制が導入された」のはEUのココアパウダー。日本の法令義務ではない
OTAの基準 備考
EU 2023/915 Annex I 1.2.16 ココアパウダー 3.0μg/kg チョコレート製品のOTAの行は記載なし(当社が確認した範囲)
EU(同じ規則の参考値) 焙煎コーヒー3.0/インスタントコーヒー5.0/乾燥ハーブ10.0/干しぶどう8.0μg/kg 乾燥・発酵を経る原料に基準が並ぶ
日本 OTAの基準値なし 農林水産省が実態調査・リスクプロファイルを公表
コーデックス 小麦・大麦・ライ麦 5μg/kg ココア・チョコレートは対象外

EUの規則2023/915は、旧規則1881/2006を統合・置き換えた食品汚染物質の上限値規則で、Annex I 1.2.16に「Cocoa powder 3,0」があります。チョコレート製品にはカドミウムなど別の汚染物質の基準が置かれていますが、OTAの行は当社が確認した範囲ではありません。日本ではOTAに基準がなく、農林水産省が「いろいろなかび毒」で「日本 基準なし」と整理しています。

2. OTAとは:アスペルギルス属・ペニシリウム属が作る、貯蔵中のかび毒

項目 内容 出典
産生するカビ アスペルギルス属・ペニシリウム属 農林水産省「いろいろなかび毒」
入る場面 主に貯蔵中に産生。穀類・豆類・乾燥果実・コーヒー・飲料など 農林水産省 OTAリスクプロファイル(2014)
体への影響 腎臓・肝臓への毒性、発がん性の可能性(IARC グループ2B) 農林水産省
加熱 通常の加工・調理で十分に減少しない 農林水産省「かびとかび毒についての基礎的な情報」

健康影響の判断は医療機関・食品安全委員会の領域で、当社は医療機関ではありません。この記事は「どこで入り、どう管理するか」に限ります。

3. OTAはどこで入るか:発酵・乾燥・保管の「水分が高い時間」

図2 入るのは主に産地側。国内でできるのは「確認する」と「増やさない」

カカオ豆は収穫後、産地で発酵させてから乾燥します。東京都保健医療局「食品衛生の窓」は、カビは湿度70%以上・10〜30℃で発育しやすく、条件がそろえば2〜3日で集落になるとしています。乾き切る前の時間が長い、輸送中に結露で湿る、という場面が、農林水産省の言う「貯蔵中に産生」にあたります。

工程 何が起きるか 国内側でできること
① 産地:発酵・乾燥 乾き切る前の時間が長いとカビが増える余地 分析証明書で結果を確認する
② 産地〜輸送:保管 袋・コンテナ内の湿気と温度差。結露で豆が湿る 入荷時の水分確認、コンテナ内の結露跡の記録
③ 製造:焙煎・粉砕 焙煎で減る分はあるが、加熱で十分に減少しない(農水省) 工場の湿度管理で増やさない
④ 製品:ココアパウダー EUが基準を置いた製品形態 ロット管理と再分析

4. 輸入・製造側の5つの管理

図3 日本に数値義務はないが、取引先には「基準の有無」と「分析値」を説明できる状態にしておく
管理 やること 根拠・考え方
1 分析証明書 ロットごとのOTA分析値を入手。EU向け実績のある産地・サプライヤーは3.0μg/kgで管理している EU 2023/915
2 水分・保管記録 入荷時の水分、倉庫の温湿度記録。結露する壁際・床に袋を置かない 東京都(70%・2〜3日)、文部科学省(壁から離す・65%監視)
3 先入れ先出し 長期在庫を作らない。夏を越す在庫は再分析 農林水産省(貯蔵中に産生)
4 工場の湿度管理 別表第17の温湿度管理・換気。粉砕室・保管庫の壁天井のカビは湿度が高いサイン 食品衛生法施行規則 別表第17
5 記録と説明 取引先に基準の有無と分析値を説明できる状態に

国内に数値の義務がないぶん、「EU基準で管理している」ことを示せるかどうかが取引上の差になります。ナッツやスパイスの記事と同じ考え方です(ナッツ類のアフラトキシンスパイスのアフラトキシン・オクラトキシンA)。

5. 工場・倉庫の壁天井のカビと、原料管理の関係

原料のOTAとは別の問題ですが、粉砕室や原料倉庫の壁・天井・冷蔵設備にカビが出ているなら、その空間の湿度が高い証拠で、原料を保管する条件としても良くありません。食品衛生法施行規則 別表第17は、内壁・天井・床の清潔維持と、換気・必要に応じた温湿度管理を求めています。営業を止めずに処置する順番は飲食店のカビ取りと同じで、水の出所→栄養→表面→原因調査の順です。

6. よくある質問

Q. 日本でもココアパウダーに3.0μg/kgの義務がありますか。

ありません。日本にはOTAの基準値そのものがありません(農林水産省)。EU向け輸出や、EU基準で管理する取引先との契約では、契約上の基準として求められることがあります。

Q. チョコレートにもOTAの基準がありますか。

EU 2023/915のOTAの表にチョコレート製品の行は、当社が確認した範囲ではありません。チョコレートにはカドミウムなど別の汚染物質の基準があるので、混同しないでください。最新の規則本文で確認を。

Q. 焙煎すればOTAは消えますか。

農林水産省は、かび毒は通常の加工・調理で十分に減少しないとしています。焙煎で一部は減っても、前提にはできません。

Q. 家庭でココアを保存するときの注意は。

OTAは家庭で増やすものではなく、産地側で決まります。家庭でできるのは、開封後に湿気を入れないこと(密閉・冷暗所)と、固まり・変色・カビ臭があれば使わないことです。

7. まとめ

EUはココアパウダーにOTA 3.0μg/kgを置き、チョコレート製品と日本には個別基準がない。OTAはアスペルギルス属・ペニシリウム属が産地の発酵・乾燥・保管で作り、加熱で十分に減らない。だから国内の管理は、証明書で産地側を確認し、水分・温湿度・先入れ先出しで増やさず、取引先に説明できる記録を持つこと。この5つです。

工場・倉庫のカビは、操業を止めずに

原料倉庫・粉砕室・冷蔵設備のカビは、保管環境の湿度が高いサインです。MIST工法®カビバスターズ本部では、浮遊カビの量と種類を調べる検査と、操業を止めない工程での処置を行っています。

参考資料

  • Commission Regulation (EU) 2023/915 on maximum levels for certain contaminants in food, Annex I(1.2.16 Cocoa powder 3,0μg/kg。焙煎コーヒー3.0・インスタント5.0・乾燥ハーブ10.0・干しぶどう8.0)
  • 農林水産省「いろいろなかび毒」(OTA=アスペルギルス属・ペニシリウム属/腎臓・肝臓毒性/日本 基準なし/コーデックス 小麦・大麦・ライ麦5μg/kg)
  • 農林水産省「食品安全に関するリスクプロファイルシート オクラトキシンA」(2014年)、「かびとかび毒についての基礎的な情報」(通常の加工・調理で十分に減少しない)
  • 東京都保健医療局「食品衛生の窓」(湿度70%以上・10〜30℃/2〜3日で集落)、食品衛生法施行規則 別表第17、文部科学省「カビ対策マニュアル」

※本記事は公的機関・EU規則の公開情報をもとに一般的な情報を提供するもので、個別の製品の安全性や法令適合を判断するものではありません。基準値は改正されることがあるため、最新の規則本文と所管官庁の情報を確認してください。当社は食品衛生の検査機関・医療機関ではありません。