住宅のカビ対策は、図面上の性能と、施工・乾燥・引渡しの記録をつなげて考えます。断熱や換気の仕様を満たすことに加え、雨に濡れた建材、局所的な結露、漏水、空調や入居後の湿気も確認します。「高断熱だからカビが出ない」「新築だからしばらく待てばよい」と、性能や築年数だけで原因を決めることはできません。
この記事は、設計者・工務店・住宅会社・工事監理の担当者向けに、設計時から引渡し前までに共有したい確認事項を整理しています。すでに入居した方は新築でカビを見つけたときの記録と住宅会社への相談、床下の是正工程を進める住宅会社は新築床下の調査・施工と引渡し前の対応もご覧ください。
図面・現場・引渡しで確認する3つのこと
- 断熱・防湿・換気の採用仕様と、実際に施工した状態を照合する。
- 濡れた場所と乾燥・補修の記録を残し、閉じる前の確認を共有する。
- 施工後の確認と、設備の運転・点検方法を引渡し資料につなげる。
建築・設計・施工担当者が、最初に共有したい情報
建築中にカビらしい付着物を見つけたら、清掃や内装で覆う前に、場所が分かる全体写真と近接写真を残します。施工会社・設計者・工事監理者で、図面の該当部位、発見日、雨濡れや漏水の履歴、工程と確認できる範囲を共有してください。黒い点や変色だけで菌種や発生原因を断定せず、素材の変色・汚れ・傷みも確認します。
- 工程:基礎工事後、上棟後、断熱施工後、内装前、引渡し前など、現在の段階と次に閉じる箇所。
- 建物と仕様:木造・鉄骨・RC、床断熱・基礎断熱などの採用方式、換気や空調の設計。
- 水分の履歴:雨濡れ、配管漏水、結露、湿式工事、乾燥・除湿の実施内容。
- 希望する確認:現地調査、含水率測定、菌の確認、除カビ、施工記録・報告書の用途。
連絡窓口と、施工範囲を決める担当者をそろえると、再調査や工程の戻りを減らしやすくなります。相談のためだけに床下へ入ったり建材を外したりせず、現場の立入り・開口・高所作業の条件を整えてから確認します。
結露は、水蒸気量と表面温度の両方を見る
結露は、水蒸気を含む空気が冷えて、含みきれなくなった水分が現れる現象です。露点は、その空気を冷やしたときに水蒸気が凝結し始める温度を指します。窓や壁の表面がその空気の露点を下回る条件では、表面結露が起こり得ます。「湿度ではなく表面温度」と二者択一にせず、空気中の水分と、面の温度を合わせて確認します。
現場では、室温・相対湿度、外気の状況、発生面の位置、換気・空調の運転と、濡れている時間帯を記録します。窓だけ、家具の裏だけ、配管の周囲だけなど、同じ部屋でも局所的に条件が違います。暖房時の窓や外壁側、冷房で冷える部材、空調配管などを、設備と構造に合わせて確認してください。
国土交通省の住宅設計資料も、室内の湿度・温度、壁や窓の断熱、水蒸気の過剰な発生を抑えること、適切な換気を組み合わせる考え方を示しています。断熱改修だけを行った結果、別の冷たい面が濡れる可能性にも配慮し、建物全体の条件と局所の状態を見ます。
断熱と熱橋:図面の仕様と局所的な冷えを照合する
断熱材の種類・厚さ、施工する範囲、窓の仕様を、設計図と現場写真で照合します。壁と床、壁と屋根、窓まわり、配管・配線の貫通部などは、複数の工種が関わるため、担当の境界で確認事項が抜けないようにします。変更した仕様は、変更図や納品・施工の記録にも反映してください。
熱が伝わりやすくなる部位を熱橋と呼びます。建物の平均的な断熱性能だけでは、局所の表面温度や施工の隙間まで説明できない場合があります。気になる部分は、設計者が断熱・防湿の納まりと、接合部・貫通部の施工を確認し、必要な調査を検討します。
赤外線画像は表面温度の違いを確認する手掛かりになりますが、それだけで壁内のカビや漏水を確定するものではありません。撮影時の内外温度、日射、空調運転、対象面の条件も残します。仕上げ材で隠れる前の写真や施工記録と、現地で確認できる状態を合わせて読みます。
換気は、機器の設置と空気の経路を分けて確認する
国土交通省は、シックハウス対策として原則、機械換気設備の設置が必要であり、住宅では換気回数0.5回/h以上の設備が必要と説明しています。この数値は、どの部屋のカビも換気だけで解決することを示す基準ではありません。個々の適用条件や採用方式は、設計者が現行の法令・仕様に沿って確認します。
図面では給気と排気の位置、部屋を閉めたときの空気の経路、床下や小屋裏の扱いを整理します。竣工時には、設計どおりの機器・設定か、給排気口が塞がれていないか、ダクトやフィルターの状態、必要な運転確認を設備担当者と照合します。「換気扇が付いている」という確認だけで終わらせないことが大切です。
床断熱と基礎断熱では、断熱する境界と床下の環境が異なります。床下へ外気を入れる方法を一律に勧めず、採用した設計で水分をどう扱うか、居室・床下・空調がどう関係するかを確認します。外気の温湿度や冷房条件によっては、単に窓や換気口を増やすことが十分な対策にならない場合もあります。
施工中の水分は、濡れた履歴と閉じる前の記録を残す
施工中の雨、漏水、コンクリートや湿式工事に関係する水分など、濡れの経路を分けて記録します。コンクリートは乾燥に伴って含水率が変わりますが、建物の乾燥日数やカビの原因を「新築から1〜2年」で一律に決めることはできません。木材・断熱材・下地など、部位と材料に合う確認が必要です。
水が入った原因への対応と、濡れた建材の扱いを、表面の除カビと分けて検討します。乾燥で対応するか、補修・交換が必要かは、素材や傷み、メーカーの施工条件などを確認して判断します。乾燥期間を工期だけから決めたり、見える面が乾いたことだけで内部も乾いたと扱ったりせず、確認する範囲と次工程へ進む条件を担当者で共有します。
含水率測定を行う場合は、対象材、機器・設定、測定位置・日時・方法を残します。材質や測定方法の異なる数値を同じ基準で比較せず、施工・仕上げの条件に合う読み方を確認します。菌の状態と建材の水分は別の確認項目なので、含水率だけで除カビの完了を判断するものではありません。
コンクリートの水分と新築のカビ → / 床下の濡れ・換気と調査の進め方 →
省エネ基準への適合と、カビ対策で確認する範囲
2025年4月1日以降に着工する新築・増改築では、原則、床面積が10㎡を超える場合に省エネ基準への適合が義務付けられています。増改築は原則としてその部分が対象です。10㎡以下の新築・増改築、居室がない又は高い開放性により空調設備を設ける必要がない建物、歴史的建造物・文化財等、仮設建築物等には適用除外があります。
対象・例外の判断は、用途、規模、着工時期、工事の内容などを、設計者と建築確認等の窓口で確認します。適合義務の有無と、審査・手続きの省略は同じ意味ではありません。このページは、個別の計画の法令適合性を判定するものではなく、担当者が確認する資料と現場条件を整理するための案内です。
省エネ基準を満たすことは、将来のカビの発生を防ぐ保証ではありません。断熱・設備の性能に加え、施工中の水分、漏水、局所の納まり、維持管理、入居後の運転や湿気を確認します。床下の防湿・換気や木部の防腐・防蟻についても、構造・断熱方法と現行の建築基準法令に応じた仕様を設計者が確認してください。
住宅性能評価書は、評価項目と確認段階を読む
住宅性能表示制度では、登録住宅性能評価機関が、定められた基準と方法で性能を評価します。設計住宅性能評価書は設計図書の段階、建設住宅性能評価書は施工・完成段階の検査を経た評価結果をまとめるものです。取得している場合は、評価した項目と等級、対象住戸、採用仕様、変更内容を確認します。
- 断熱等性能等級
- 外皮の断熱や冷房期の日射遮蔽などの性能と、結露を抑制する対策も評価します。建材を閉じる前の濡れや、入居後すべての部位の結露・カビを検査した証明と読み替えないようにします。
- 一次エネルギー消費量等級
- 外皮の断熱に加え、暖冷房・換気・給湯・照明などの設備の省エネ性能を総合的に評価します。空気中や表面の菌数、部材の乾燥、個別のカビの有無を評価する等級ではありません。
- 劣化対策等級(構造躯体等)
- 構造躯体の劣化を軽減する対策の程度を確認します。実際の寿命や、すべての仕上げ材のカビが出ないことを保証するものとして扱わず、維持管理と採用仕様を合わせて確認します。
国土交通省は等級や評価方法の改正情報を公開しています。古い資料だけで最新の等級の範囲を決めず、評価書の発行時期と適用した基準も確認してください。評価書にない項目は、別の調査・施工記録が必要かを相談します。
竣工・引渡し前は、確認した範囲と残る作業を明確にする
確認記録には、対象の部屋・部位、実施日、確認者、採用仕様、写真、測定条件、補修・乾燥・除カビの範囲をまとめます。点検口から見える範囲と、開口していない壁内・床下の範囲を区別し、未確認の場所まで「確認済み」とする表現を避けます。
- 図面と施工記録を照合:断熱・防湿・換気の仕様と変更、濡れた箇所の処理記録を確認します。
- 水分への対応と施工を確認:漏水修理、乾燥、必要な補修・交換、除カビの各担当と範囲を確認します。
- 次工程・引渡しの条件を共有:復旧前の確認、設備の運転、追加調査が必要な範囲と日程を整理します。
- 入居後の説明につなげる:換気設備の運転、フィルターの手入れ、給排気口の位置、気になる濡れや再発があったときの窓口を引渡し資料へまとめます。
工事写真は、全体の位置が分かるものと細部を組み合わせると、後日も確認しやすくなります。写真・図面の共有に制限がある場合は、送付前に取扱条件を相談してください。検査の記録と、工事の検査・引渡しの判断は目的が異なるため、必要な担当者で確認します。
漏水後の新築住宅で、壁面を施工した公開事例
滋賀県大津市の新築戸建てで、カビバスターズ京都が公開している雨水漏水後の壁面除カビ事例です。掲載元では、工務店が室内に足場を組み、壁面の施工を行ったと説明しています。写真は当該現場の施工記録で、断熱性能や建物全体の適合性を示すものではありません。

検査・除カビは、知りたいことと復旧工程から検討する
検査が必要な場合は、付着物を確認したいのか、施工前後の状態を記録したいのか、報告資料に使うのかを整理します。表面の付着菌、一定量の空気を採取する浮遊菌、一定時間に落ちる菌を調べる落下菌では、対象と結果の読み方が異なります。採取箇所・日時・換気運転・施工段階をそろえて記録してください。
検査結果だけで、発生原因、断熱や換気の適合、未採取箇所の状態を一律に確定するものではありません。せらへの相談では、素材・範囲・現在の工程から必要な調査と除カビを検討し、養生・換気・乾燥・復旧前の確認を工事側の担当者と調整します。
電話・フォーム相談は無料です。現地調査・測定・検査・施工・報告書・交通費等は、内容と総額をご依頼前に確認します。最新の本部掲載料金に合わせた税込料金・簡単見積りと、検査方法と費用をご覧ください。設計・設備の改善工事や内装復旧を含むかも、見積りで整理します。
家づくりとカビ対策でよくある質問
高断熱・高気密なら、カビは出ませんか?
性能だけで将来のカビを保証することはできません。断熱の納まり、換気、施工中の水分、漏水、設備運転や入居後の湿気を合わせて確認します。気密・断熱の性能と、実際の換気や部位の状態は分けて点検します。
新築のカビは、1〜2年待てばなくなりますか?
築年数だけで判断しません。施工中の水分、結露、漏水など複数の条件が考えられます。発見した場所と日付、濡れや工事の履歴を残し、原因の点検と必要な処理を相談します。
住宅性能評価書があれば、カビの検査は不要ですか?
評価書の項目と、現場で確認したい内容は異なります。評価した性能と範囲を読み、濡れや付着物がある場合は、その場所の調査・測定・検査の必要性を目的から検討します。すべての現場で菌検査を必須とするものではありません。
引渡しが迫っています。どの情報から相談できますか?
建物の用途と所在地、現在の工程、発生場所の写真、濡れた履歴、希望日程をお知らせください。施工範囲・養生・乾燥・復旧と確認に必要な時間を整理し、工程に合わせて実施できる条件を相談します。
図面と現場の状況から、必要な確認を相談する
「断熱施工後の壁に付着物がある」「床下が乾きにくく次工程へ進む条件を整理したい」「引渡し前に調査と施工記録をそろえたい」など、今困っていることからお聞かせください。すべての原因や面積が特定できていなくても構いません。
0120-052-127(平日9:00〜18:00・土日祝除く)。せらが相談窓口となり、必要に応じて加盟店と対応地域・日程を調整します。工事側の点検・修理・復旧と、除カビの対応範囲を確認して進めます。
参考資料・施工写真の出典
- 気象庁「気温、湿度」:湿度と露点温度の定義。
- 国土交通省「住宅省エネルギー技術講習テキスト」:室内水蒸気、表面温度、断熱・換気を合わせた結露対策の参考。
- 国土交通省「省エネ基準適合義務の対象」:2025年4月以降の新築・増改築と適用除外。
- 国土交通省「住宅等における換気等に関する情報提供」:住宅の機械換気と換気回数の説明。
- 国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律」/新築住宅の性能表示制度ガイド:評価項目、設計・建設評価、最新の改正情報。
- 日本コンクリート工学会「コンクリートの基礎知識・体積変化」:乾燥と含水率の変化。住宅の乾燥期間やカビの原因を一律に示す資料ではありません。
- カビバスターズ京都「滋賀県大津市・新築戸建・漏水後の壁面除カビ処理」:掲載した実施工写真と施工内容。
