衣替えで出したジャケットに白い粉がついている。押入れの布団がカビ臭い。クローゼットの奥の壁が黒ずんでいる——相談の多くはこの3つのどれかです。衣類や寝具にカビが出るのは、ものが悪いのではなく、しまってある場所の空気が動いていないからです。
この記事では、押入れ・クローゼットでカビが起きる理由を「湿気」と「結露」の2つに分けて整理し、収納の仕方と換気の順番、そしてカビが出てしまった衣類の扱いをまとめます。
結論
- 押入れ・クローゼットのカビは「空気が動かない」ことで起きます。詰め込みすぎ、閉めっぱなし、ビニールカバー。この3つが揃うと、家の中でいちばん湿った空間になります。
- 原因は2種類あり、対策が違います。梅雨〜夏に中身全体がカビるのは湿気、冬に外壁側の壁や床だけがカビるのは結露です。
- 順番は「減らす → 隙間をつくる → 動かす」。除湿剤や防カビ剤は最後です。空気の通り道がないところに置いても効きません。
なぜ押入れ・クローゼットはカビやすいのか
カビが育つ条件は温度・水分・栄養・時間の4つです(カビが育つ条件)。収納の中はこの4つが揃いやすい場所です。
- 水分:布団は寝ている間の汗を吸っており、衣類も着用中の湿気を含んでいます。それを扉のある空間に入れると、出ていく先がありません。
- 栄養:衣類の繊維、皮脂、ほこり、食べこぼし。どれもカビの栄養になります。とくにウールや綿などの天然素材、そして皮革は栄養そのものです。
- 温度:居室と同じです。人が快適な温度は、カビにも快適です。
- 時間:ここが決定的です。衣類は季節をまたいで何か月も動かされません。条件が揃った状態が長く続くのが、収納のカビの本質です。
厚生労働省の建築物環境衛生管理基準では、室内の相対湿度の基準を40〜70%としています。居室が70%以内に収まっていても、扉を閉めた収納の中は空気が入れ替わらないため、それより高い状態が続きます。
原因は2種類:湿気によるカビと、結露によるカビ
同じ押入れのカビでも、出方で原因が分かります。ここを見分けないと、対策が空振りします。
湿気によるカビ(梅雨〜夏、中身全体)
布団の表面、衣類、収納ケースの中身など、入れてあるものに広く出ます。時期は梅雨から夏。空気中の水蒸気が多く、収納の中にこもった結果です。対策は、この記事の後半にある「収納と換気」で対応できます。
結露によるカビ(冬、外壁側の壁・床・隅)
押入れの奥の壁、外壁に面した側の床、天井の隅など、特定の面だけに出ます。時期は冬。外壁に接した面が冷え、そこに居室から流れ込んだ水蒸気が結露するためです。北側の押入れで多いのはこのためで、布団がその壁に密着していると、布団の裏側だけがカビます。
結露によるカビは、換気や除湿だけでは止まりません。冷たい面をなくす(壁から離す、断熱を補う)ことが先です。仕組みと対策の順番はカビと結露|湿度ではなく温度差の問題に書いています。
もうひとつの疑い:下からの湿気
1階の押入れで、床板が湿っている・床の隅から出ている場合は、床下の湿気が上がってきている可能性があります。建築基準法施行令第22条は、床の高さを地面から45cm以上とし、外壁の床下部分に換気孔を設けることを定めていますが、換気孔が物でふさがれている家は少なくありません。床下のカビ|原因の見分け方もあわせてご覧ください。
収納の仕方:減らす → 隙間をつくる → 動かす
順番が大切です。1から順に行ってください。
1. 減らす
もっとも効くのは、量を減らすことです。収納の容量に対して7〜8割を目安に、隙間なく詰まっている状態を解消します。何年も着ていない衣類、使っていない布団は、この機会に手放します。減らさずに次へ進んでも、空気の通り道はできません。
2. 隙間をつくる
- 押入れ:床にすのこを敷き、できれば側面と奥にも立てかけます。布団を壁に密着させないためです。上段・下段とも、奥の壁との間に手のひらひとつ分の隙間を残します。
- クローゼット:ハンガー同士の間隔は、指1本が入る程度を目安に。ぎっしり掛かった洋服は、1枚の厚い壁と同じです。
- 収納ケース:プラスチック製の密閉ケースは、湿気を含んだまま閉じると中で条件が完成します。使う場合は、完全に乾いたものだけを入れ、乾燥剤を併用します。
- クリーニングのビニールカバー:持ち帰ったら外します。カバーは運搬中のほこりよけで、保管用ではありません。中の湿気が抜けず、カビと変色の原因になります。
3. 動かす
収納は「開けたときだけ換気される空間」です。晴れた日の日中に扉を開け放し、部屋の窓も開けて空気を通すのが基本です。夕方以降と雨の日は外気のほうが湿っているため、閉めておきます。扇風機やサーキュレーターで収納に向けて風を送ると、短時間で入れ替わります(カビ対策と扇風機)。
住宅の居室には、建築基準法施行令第20条の8により、機械換気で1時間に0.5回の換気が求められています。しかし押入れやクローゼットは居室ではないため、この換気の対象外です。収納の中の空気を動かすのは、住んでいる人の手作業だと考えてください。
4. しまう前に乾かす
布団は干してから、衣類は着用後すぐにしまわず一晩ハンガーに掛けてから収納します。洗濯した衣類も、生乾きのまま畳んでしまわないでください。室内干しの湿気の行方については洗濯物の室内干しがカビを発生させるで説明しています。
除湿剤・防カビ剤の位置づけ
置き型の除湿剤や防カビ剤は、1〜3を終えたあとの補助です。空気が動かない空間で除湿剤だけを置いても、吸える量には限りがあり、すぐに満水になります。逆に、隙間をつくって換気できていれば、除湿剤は「梅雨時の保険」程度で足ります。
もうひとつ、地域差があります。気象庁の平年値では、日本海側の都市は冬の湿度が夏より高く(富山は1月82%・8月77%)、太平洋側は逆です(東京は1月51%・8月74%)。冬の押入れが湿るのは、地域によっては当たり前で、換気の時期や頻度は住んでいる場所で変わります(都道府県別の気候とカビ)。
カビが出た衣類・布団はどうするか
- まず外へ出す。収納の中で払うと胞子が広がります。ベランダなどで、表面のカビをブラシで払い落とします。
- 洗えるものは洗う。表示に従って洗濯し、しっかり乾かします。酸素系漂白剤が使える素材なら、表示の範囲で使います。
- 洗えないもの(スーツ・コート・皮革)はクリーニングへ。カビが出ていることを伝えてください。家庭で塩素系漂白剤を使うのは、色抜けと素材の傷みの原因になるためおすすめしません。
- 布団は干して、それでもにおいが残るなら専門の丸洗いか買い替え。中綿までカビが入ったものは、表面を拭いても戻りません。
- 収納側の掃除を同時に行う。ものだけきれいにして戻しても、また同じことになります。壁・床を消毒用エタノールで拭き、乾かしてから戻します。壁の奥まで黒くなっている場合は、表面の掃除では取りきれないことがあります。
よくある質問
Q. 押入れの扉を外してしまえば解決しますか。
A. 空気は動くようになるので、湿気によるカビには効きます。ただし、結露によるカビ(外壁側の面だけに出るもの)は、扉を外しても冷たい面が残っているので止まりません。原因の見分けが先です。
Q. 押入れの壁がベニヤで、そこにカビが出ています。塗り替えれば直りますか。
A. 塗料で覆っても、原因(結露や湿気)が残っていれば下から再発します。板が波打っている・触ると柔らかい場合は、板そのものが湿気を含んでいます。先に原因を止め、乾かし、それから仕上げの順です。広範囲なら業者に相談してください。
Q. 防虫剤と除湿剤を一緒に置いても大丈夫ですか。
A. 製品の表示に従ってください。防虫剤は種類によって併用できない組み合わせがあるため、パッケージの注意書きを確認します。除湿剤との併用は一般に問題ありませんが、どちらも「空気が動く収納」でこそ効くものです。
まとめ
押入れ・クローゼットのカビは、収納の中の空気が動かないことで起きます。対策は「減らす → 隙間をつくる → 動かす」の順で、除湿剤や防カビ剤はその後です。冬に外壁側の面だけがカビるなら結露が原因で、換気より先に冷たい面をなくす必要があります。衣類・布団にカビが出たら、外に出して払い、洗えるものは洗い、洗えないものはクリーニングへ。そして収納側も同時に掃除してから戻してください。
※当社は医療機関ではありません。カビによる体調への影響が心配な場合は、医療機関にご相談ください(カビアレルギーと住まい)。
参考資料(一次情報)
- 厚生労働省 建築物環境衛生管理基準(相対湿度40〜70%、温度18〜28℃)
- 建築基準法施行令 第20条の8(住宅等の居室の必要換気回数0.5回/h、平成15年7月1日施行)
- 建築基準法施行令 第22条(居室の床の高さは直下の地面から45cm以上、外壁の床下部分に壁の長さ5m以下ごとに面積300cm²以上の換気孔)
- 気象庁 過去の気象データ 1991〜2020年平年値(各県庁所在地の気象台・月別平均相対湿度)
- WHO室内空気質ガイドライン 2009(湿気・カビ)












