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換気とカビ|窓を開けても効かない理由と、法律が定める「1時間に0.5回」の換気

 

「換気とカビ」について、以前は「窓を開けましょう」という短い記事でした。ここでは一段深く、換気の何がカビに効くのか、なぜ窓を開けても効かない場合があるのか、そして住宅に法律で義務づけられている換気の話をまとめます。換気は「開ける」ことではなく「空気を動かして水蒸気を外に出す」ことです。

結論:換気がカビに効くのは「水蒸気を捨てる」ときだけ

  1. 換気の目的は、室内で発生した水蒸気を外に出すこと。人の呼気と汗、調理、入浴、洗濯物、加湿器。住まいの中では水蒸気が発生し続けています。これを外に出さなければ湿度は上がり、冷たい面で結露し、カビの条件が揃います。
  2. 外気が室内より湿っているときは、窓を開けても効かない。梅雨や夏、雨の日の外気は湿度が高く、窓を開けると湿った空気が入ってきます。このときは窓を閉め、換気扇と除湿で対処します。
  3. 2003年以降の住宅には24時間換気が義務づけられている。建築基準法施行令第20条の8により、住宅の居室は1時間に0.5回(2時間で部屋の空気が入れ替わる量)の機械換気が必要です。このスイッチを切っている家が少なくありません。止めないことが、最も手間のかからないカビ対策です。

換気がカビに効く仕組み

カビが育つには水分が必要で、住まいで操作できる条件は水分だけです(カビが育つ条件)。室内の水分は、水蒸気として空気中にあります。換気は、この水蒸気を含んだ空気を外に出し、乾いた空気と入れ替える作業です。

ここで重要なのは、入れ替える先の空気が乾いていることです。冬の外気は湿度が低いので、窓を開ければ室内の水蒸気は減ります。しかし梅雨や夏の外気は湿度が75%前後あり、室内より湿っていることが珍しくありません。東京の平年値(気象庁、1991〜2020年)では6月75%、7月76%、9月75%です。このとき窓を開けると、湿度は下がるどころか上がります。

厚生労働省の建築物環境衛生管理基準は、相対湿度40〜70%、二酸化炭素1,000ppm以下を定めています。二酸化炭素は換気の指標として使われる数値で、人がいる部屋で上がり続けます。湿度計と、可能ならCO2計を置くと、換気が足りているかどうかを感覚ではなく数字で判断できます。

法律が定める換気量:1時間に0.5回

建築基準法施行令第20条の8は、シックハウス対策として平成15年(2003年)7月1日に施行されました。住宅等の居室には、1時間あたり0.5回以上の換気回数を確保できる機械換気設備の設置が必要です(その他の居室は0.3回以上)。0.5回とは、2時間で部屋の空気がすべて入れ替わる量を意味します。

この制度の目的はホルムアルデヒドなどの化学物質対策ですが、結果として湿気対策にもなっています。24時間換気が動いていれば、室内で発生した水蒸気は常に少しずつ外に出ていきます。反対に、「音がうるさい」「冬に寒い」「電気代がかかる」という理由でスイッチを切ると、湿気の逃げ道がなくなります。

2003年より前に建てられた住宅には、この設備がないことがあります。その場合は、浴室・トイレ・キッチンの換気扇を意識的に回す運用が必要です。

換気が効かない家に共通する4つのこと

① 給気口が閉じている・塞がれている

換気は「出口」と「入口」が揃ってはじめて成立します。換気扇を回しても、給気口(壁の丸いカバー)が閉じていたり、家具やカーテンで塞がれていたりすると、空気は動きません。給気口が冬に冷たい風を入れるので閉じてしまう家が多いのですが、閉じると湿気の逃げ道も同時に閉じます。

② 窓を1か所しか開けていない

窓を1か所開けても、空気の入口と出口が同じなので、部屋の奥の空気は動きません。対角線上の2か所を開ける、または1か所を開けてサーキュレーターで部屋の奥から窓へ空気を押し出す、という形にします。

③ 扉を閉めた空間がある

押入れ、クローゼット、下駄箱、家具の裏。扉を閉めた空間は、部屋を換気しても空気が動きません。部屋の湿度が60%でも、押入れの奥は80%ということがあります。定期的に扉を開け、中身を減らして空気の通り道をつくります(衣類のカビ)。

④ 発生源を止めていない

浴室のお湯を張ったまま、洗濯物を部屋に干したまま、加湿器を回したまま。換気で出す量より発生する量が多ければ、湿度は下がりません。入浴後は浴槽のお湯を抜く、室内干しは除湿機やサーキュレーターと組み合わせる、加湿器は湿度計を見て使う、が先です。

季節で変える換気の運用

冬:外気は乾いています。短時間でも窓を開ければ湿度は下がります。ただし暖房中に湿度を下げすぎると乾燥するので、加湿と換気のバランスは湿度計で見ます。冬のカビは換気不足よりも結露が原因のことが多く、対策の順番はカビと結露を参照してください。

梅雨・夏・秋雨:外気が湿っています。雨の日や湿度の高い日は窓を閉め、24時間換気と換気扇に任せ、エアコンの除湿や除湿機で水蒸気を減らします。晴れて乾いた日にまとめて窓を開けます(梅雨のカビ対策、秋カビ対策)。

床下:建築基準法施行令第22条は、木造住宅の床下に壁の長さ5m以下ごとに300cm²以上の換気孔を設けることを定めています。この換気孔の前に物を置くと床下の空気が止まります。詳しくは床下のカビにまとめています。

よくある質問

Q. 24時間換気を止めると電気代はどれくらい違いますか。
A. 機種によりますが、一般的な換気ファンの消費電力は小さく、止めることで得られる節約より、カビや結露で内装を傷めたときの修繕費のほうがはるかに大きくなります。止めないことをお勧めします。

Q. 雨の日に窓を開けると湿度が上がるのはなぜですか。
A. 外気の湿度が室内より高いためです。換気は「湿った空気を乾いた空気に入れ替える」作業なので、外が湿っていれば逆効果になります。雨の日は窓を閉めて換気扇と除湿を使います。

Q. 換気扇を回しているのにカビが出ます。
A. 給気口が塞がれていて空気が流れていないか、発生源(浴槽のお湯、室内干し、加湿器)が換気量を上回っているか、扉を閉めた空間で空気が止まっているかのいずれかです。上の4つを順に確認してください。

まとめ

換気は「窓を開けること」ではなく「水蒸気を外に出すこと」です。24時間換気は止めない、給気口を塞がない、外気が湿っているときは窓を閉めて除湿する、扉を閉めた空間は別に空気を動かす。この4つで、換気はカビ対策として機能します。家全体の基本は家庭でできるカビ対策の基本にまとめています。

参考資料(一次情報)

  • 建築基準法施行令 第20条の8(換気設備の技術的基準:住宅等の居室は換気回数0.5回/h以上、その他の居室は0.3回/h以上。平成15年7月1日施行)
  • 建築基準法施行令 第22条(居室の床の高さ及び防湿方法)
  • 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」(相対湿度40%以上70%以下、二酸化炭素1,000ppm以下、気流0.5m/s以下)
  • 気象庁「東京 月別平年値(1991〜2020年)」相対湿度