執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関・学会の公開資料にもとづいています。
施設別シリーズの第10回は博物館・美術館・図書館・資料館です。紙・布・木などの資料は、カビの栄養になりやすい素材です。文化庁のハンドブックには、カビを防ぐための湿度の数値がはっきり示されています。
この記事で分かること
- 文化庁が示す収蔵庫の湿度の目安(相対湿度50〜60%)
- 「65%以上でカビの危険度が一気に上昇」の意味
- 温度が1℃変わると湿度が3〜5%変わる理由と断熱
- 収蔵庫・書庫の日常点検とカビの予防
1. 結論:収蔵庫は「相対湿度50〜60%」を年間通じて一定に
- 文化庁のハンドブックでは、収蔵庫の湿度は年間を通じて恒湿になることに努め、相対湿度50〜60%程度を保つようにするとされています。
- 65%以上になるとカビ発生の危険度が一気に上昇し、50%未満になると乾燥による障害が危惧されると説明されています。
- カビの予防には相対湿度60%以下が望まれる一方、木製品や塗膜のある工芸品は乾燥にも注意が必要です。
2. 文化庁ハンドブックの主な目安
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 相対湿度 | 年間を通じて50〜60%程度。恒湿に努める |
| カビの危険 | 65%以上で危険度が一気に上昇 |
| 乾燥の危険 | 50%未満で乾燥による障害 |
| 冷房能力 | 28℃以下への冷房が可能な出力の確保が推奨 |
| 記録 | 収蔵庫内にデータロガー等を設置し、継続的に温湿度を記録 |
| 空気循環 | サーキュレーター等で緩やかに循環させると、湿気溜まりの解消とカビの抑制に有効 |
3. 温度が1℃変わると、湿度は3〜5%変わる
ハンドブックでは、温度が1℃変化すると相対湿度はおよそ3〜5%変化するため、湿度を一定に保つには外からの温度の影響をできるだけ小さくすることが重要だとしています。屋根裏・壁・床に断熱材を隙間なく入れ、建物そのものの断熱性と気密性を高めることが基本です。
夜間に空調を止めると温度が下がって湿度が上がり、壁ぎわや床に近い場所で結露やカビが起きることがあります。
4. 日常点検とカビの予防
- 点検項目:屋根・雨樋の破損や詰まり、施設内の異常な染み・汚れ・臭い、急激な温湿度変化、資料のカビや虫糞
- 荒天・地震のあとは必ず点検
- 整理・清掃:清潔に保つことはカビや虫の予防として非常に有効
- 換気と空気循環:換気設備を適切に運用し、庫内で緩やかに空気を循環させる
5. 図書館・書庫で気をつけたいこと
- 壁に接した書架:外壁側は結露しやすい。壁から離して配置
- 床に近い最下段:冷えやすく湿気がたまる
- 地下書庫:地面からの湿気。除湿と記録を
- 返却された本:湿った本やカビのある本を書架に戻す前に確認
6. よくある質問
Q. 美術館や博物館の収蔵庫の湿度は何%が目安ですか?
文化庁のハンドブックでは、年間を通じて相対湿度50〜60%程度を保つよう示されています。65%以上ではカビの危険度が一気に上がり、50%未満では乾燥による障害が心配されます。
Q. 資料にカビを見つけたら?
ほかの資料に広がらないよう、まず隔離して保存環境(湿度・温度・空気の流れ)を確認します。資料のカビの処理は専門の保存修復の方法が必要になるため、自己流で拭いたり薬剤を使ったりせず、専門家に相談してください。
Q. 夜間に空調を止めてもいいですか?
温度が下がると相対湿度が上がり、結露やカビの原因になることがあります。温湿度を記録して、夜間や休館日の変化を確認したうえで運用を決めましょう。
7. まとめ
- 収蔵庫は相対湿度50〜60%を年間通じて一定に(文化庁)
- 65%以上でカビの危険度が急上昇、50%未満は乾燥の障害
- 湿度を安定させるカギは断熱・気密と温湿度の記録
博物館・美術館・図書館・資料館の建物のカビのご相談は、法人のお問い合わせまたはフリーダイヤル 0120-052-127 へ。神社仏閣・文化財建造物の実績はこちら。
参考資料(一次情報)
- 文化庁文化財部美術学芸課「文化財(美術工芸品)保存施設、保存活用施設 設置・管理ハンドブック」(平成27年3月) 相対湿度50〜60%程度、65%以上でカビ発生の危険度が一気に上昇、50%未満で乾燥による障害、カビ予防には60%以下、温度1℃で相対湿度3〜5%変化、日常点検・清掃・空気循環
- 文化庁「文化財公開施設の計画に関する指針」
