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カビ取り屋の知恵袋

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防湿コンクリート・防湿フィルム|「地面を覆う」とは何をしていることか

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

前回は「空気を通して乾かす」ほうを扱いました。第6回は、もうひとつの考え方――地面を覆って、水蒸気を止めるほうです。

床下の地面が土のままだと、そこから水蒸気が上がり続けます。換気でどれだけ空気を入れ替えても、供給が続いているかぎり追いつきません。だから、出所そのものを断つという発想が出てきます。

覆う方法は2つあります。コンクリートを打つか、フィルムを敷くか。それぞれ基準の数字があり、失敗のしかたも違います。

この記事で分かること

  • 防湿コンクリートと防湿フィルムの基準(厚さ・重ね)
  • 「覆う」と「換気」はどちらかを選ぶものなのか
  • 防湿フィルムがうまく働かなくなる5つの状態
  • ベタ基礎の底盤は防湿層といえるのか
  • 点検口から確かめられること

1. 結論:基準の数字は2つだけ

図1 コンクリート6cm以上、またはフィルム0.1mm以上

住宅金融支援機構の【フラット35】在来木造の耐久性基準は、床下地面の防湿措置として次のどちらかを求めています。

表1 床下地面の防湿措置(フラット35 在来木造の耐久性基準)
方法 仕様
コンクリートを打設する 厚さ6cm以上
防湿フィルムを敷きつめる 厚さ0.1mm以上

建築基準法施行令第22条は、床下換気孔の規定を定めたうえで、床下をコンクリート、たたきその他これらに類する材料で覆う場合には適用しないとしています。つまり法令上も、「覆う」ことは床下の湿気対策として位置づけられているということです。

  1. 覆うのは、水蒸気の出所そのものを断つため。換気は出てきたものを外へ運ぶ手段で、役割が違います
  2. どちらか一方を選ぶものではありません。ベタ基礎でも換気口を設けている家が多いのは、覆っても入ってくる湿気(配管まわり、室内から、夏型結露)があるためです
  3. 覆いが切れていれば、そこから入ります。面積の大半を覆っても、破れや隙間があれば水蒸気はそこを通ります

2. 防湿コンクリート

床下の地面の上に、厚さ6cm以上のコンクリートを打つ方法です。施工の現場では「土間コンクリート」「防湿コンクリート」などと呼ばれます。

表2 防湿コンクリートで見るところ
内容
厚さの基準 6cm以上(フラット35 耐久性基準)
期待される働き 地面からの水蒸気の通過を抑える。床下に入って作業しやすくなる
注意 コンクリート自体が水分を含んでいる時期がある。打設直後は乾燥に時間がかかる
ひび割れ 乾燥収縮でひびが入ることがある。ひびから水蒸気が通ることがある
配管の貫通部 配管まわりの処理が甘いと、そこが通り道になる
立ち上がりとの取り合い 基礎の立ち上がりとコンクリートの境目が、通り道になることがある

用語のたしかめ

新築の1〜2年目に床下や室内が湿っぽいという相談があります。コンクリートは打設時に含んでいた水分を、その後しばらく放出し続けます。既存記事のコンクリートの余剰水とカビでも扱っています。新しい家の湿気と、古い家の湿気は原因が違うことがあるという点は押さえておく価値があります。

3. 防湿フィルム

地面の上に厚さ0.1mm以上のポリエチレンフィルムなどを敷きつめる方法です。コンクリートより手軽で、既存住宅の床下に後から施工することもあります。

図2 敷いてあることと、機能していることは別
表3 防湿フィルムが効かなくなる5つの状態
状態 何が起きているか 手がかり
破れている 施工時や点検時に踏み抜いた。配管工事で切った 穴のまわりだけ地面が黒い
めくれている・ずれている 固定が甘く、風や作業で動いた 地面が露出している部分がある
重ねが足りない シート同士の継ぎ目が十分に重なっていない 継ぎ目の線に沿って湿っている
端部が処理されていない 基礎の立ち上がりとの取り合いで、端が浮いている 外周に沿って地面が湿っている
上に物が載っている 資材や土が載り、フィルムが破れる・沈む 物の下だけ状態が違う

敷いてあることと、機能していることは別です。点検口から見える範囲だけでも、フィルムが破れていないか、端が浮いていないかは確かめられます。

床下にもぐってフィルムを直そうとしないでください

  • 文部科学省のカビ対策マニュアルは、生きているカビはカビ毒、死んでいてもアレルゲンになるとして呼吸用保護具の着用を案内しています。床下は胞子と埃が舞う環境です
  • フィルムを踏み抜くと、直すつもりが逆に穴を増やすことになります
  • 配管・配線があり、断熱材を傷めるおそれもあります
  • 施工が必要な場合は、床下工事を扱う会社に依頼してください

4. ベタ基礎の底盤は防湿層といえるか

ベタ基礎は、建物の下全面にコンクリートの底盤を打ちます。この底盤は、結果として地面を覆っています。

ただし、底盤は構造のためのものであり、防湿を目的に設計された層とは位置づけが異なります。実際の施工では、底盤の下に防湿フィルムを敷いてから打設することが一般的です。

表4 防湿コンクリートとベタ基礎の底盤
防湿コンクリート(布基礎に打つ) ベタ基礎の底盤
主な目的 地面からの水蒸気を抑える 建物の荷重を地盤に伝える
厚さ 6cm以上(フラット35 耐久性基準) 構造計算による。防湿コンクリートより厚い
鉄筋 入れない場合がある 入る
下の防湿フィルム 敷く場合がある 敷いてから打設することが一般的
結果としての防湿 期待できる 期待できる
施行令22条との関係 「床下をコンクリート等で覆う場合」に当たり得る 同左

どちらの場合も、ひび割れと配管の貫通部が弱点になります。面で覆っていても、線や点で通り道ができれば、そこから水蒸気は入ります。

5. 「覆う」と「換気」をどう組み合わせるか

図3 出所を断つのと、出たものを運ぶのは役割が違う

国土技術政策総合研究所の「省エネと結露」は、気密・換気・通気のいずれかが欠けても耐久性に影響するとしています。床下についても同じ考え方が当てはまります。

表5 覆うと換気の4つの組み合わせ
組み合わせ 状態 考えられること
覆っている+換気している 地面からの水蒸気は抑えられ、入った湿気は運び出される 設計上は整っている。ふさがりと破れを点検する
覆っている+換気していない 地面からは入らないが、配管まわりや室内からの湿気が抜けにくい 基礎断熱の設計であれば意図的(第7回)。そうでなければ確認が要る
覆っていない+換気している 地面から出続けるものを、換気で運び出している 梅雨〜夏は外気が湿っていて追いつかないことがある
覆っていない+換気していない 出所も抜け道もない もっとも湿気がたまりやすい。優先して確認する

自分の家がどれに当たるかは、点検口から地面を見ることと、外周を一周して換気口を探すことで、おおよそ分かります。

点検口から確かめられること

  1. 地面が土か、覆われているか。土なら黒っぽく湿っていないか
  2. フィルムが見えるか。見えるなら、破れ・めくれ・端の浮きがないか
  3. コンクリートなら、ひび割れがないか。白い粉(エフロレッセンス)が出ていないか
  4. 配管が通っている部分のまわりがどうなっているか
  5. 水たまりや、決まった場所だけの濡れがないか(雨水の流入や配管の漏れの手がかり)

農林水産省の資料は、エフロレッセンスについて「コンクリート中の水分が表面で蒸発し可溶成分のカルシウムが乾燥して生成される白い析出物」であり、品質への悪影響はないが水の移動に関連するとしています。白い粉は問題そのものではなく、水の通り道があることの手がかりです。

6. よくある質問

Q. あとから防湿フィルムを敷くことはできますか。

A. 既存住宅の床下にフィルムを敷く工事は行われています。ただし、床下の高さ、配管の位置、地面の状態によって施工の可否や手順が変わります。また、敷くだけでなく端部の処理や固定が要点になります。床下工事を扱う会社に、現地を見てもらったうえで相談してください。

Q. 土の上に炭や砂利を敷くのは防湿になりますか。

A. 炭や砂利そのものが地面からの水蒸気を止めることを示す公的資料は、本記事の執筆時点では見つかっていません(要追加調査)。フラット35の耐久性基準が挙げているのは、厚さ6cm以上のコンクリートと厚さ0.1mm以上の防湿フィルムの2つです。第9回であらためて扱います。

Q. 防湿フィルムの上に水がたまっています。

A. フィルムの上に水がたまっているということは、地面からの水蒸気ではなく、別の経路で液体の水が入っている可能性があります。雨水の流入か、配管の漏れが考えられます。第2回で扱った「いつ濡れるか」で切り分けてください。大雨のあとなら雨水、季節に関係なく続くなら配管です。

Q. 基礎にひびがあります。すぐ直すべきですか。

A. ひびの幅・長さ・位置・進行しているかによって扱いが変わります。構造に関わる判断が必要なので、写真と記録を持って、基礎工事を扱う会社か建築士に相談してください。新築から10年以内であれば、国土交通省の資料が示す「構造耐力上主要な部分」に基礎が含まれている点も確認材料になります。

7. まとめ

  • 床下地面の防湿措置は、厚さ6cm以上のコンクリートか、厚さ0.1mm以上の防湿フィルム
  • 施行令22条は、床下をコンクリート等で覆う場合には換気孔の規定を適用しないとしている
  • 「覆う」は出所を断つこと、「換気」は出たものを運ぶこと。役割が違い、どちらか一方を選ぶものではない
  • フィルムは、破れ・めくれ・重ね不足・端部の未処理・上載物で機能を失う
  • コンクリートもベタ基礎の底盤も、ひび割れと配管の貫通部が弱点になる

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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回

全体像(第1〜3回)

床下・基礎(第4〜10回)

壁の中・外壁(第11〜18回)

小屋裏・屋根(第19〜22回)

開口部・水まわり(第23〜27回)

  • 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
  • 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
  • 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
  • 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
  • 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)

点検と改修(第28〜31回)

  • 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
  • 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
  • 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
  • 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)

参考資料(一次情報)

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