執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。
床下の湿気が気になると、多くの方が「調湿材を入れる」か「換気扇をつける」という選択肢にたどり着きます。第9回は、この2つを扱います。
この記事は、効く/効かないを断定するものではありません。公的な資料で確認できることと、確認できないことを分けて示し、判断する順番を整理します。
先に結論を書いておくと、調湿材も換気扇も、水の出所を止める手段ではありません。出所が残っていれば、入れたあとも水は入り続けます。順番があります。
この記事で分かること
- 床下調湿材と床下換気扇が、それぞれ何をする道具なのか
- 調湿性能には試験方法(JIS)が定められていること
- 公的資料で確認できること/できないこと
- 導入を検討する前に確かめる5つのこと
- 点検商法の相談件数(国民生活センター)と、その避けかた
1. 結論:調湿材も換気扇も、順番としては後ろ
- まず、水の出所を止める。配管の漏れ、雨水の流入、外構からの水は、道具を足しても止まりません(第2回)
- 次に、通す・覆うを確かめる。換気口がふさがっていないか(第5回)、地面が覆われているか(第6回)
- その上で、まだ湿気が残るなら、調湿材や換気扇を検討する段階になります
この順番を飛ばすと、原因が残ったまま道具だけが増えます。床下に何かを置いたあとは、床下が見えにくくなり、点検もしにくくなります。
用語のたしかめ
国土技術政策総合研究所の「省エネと結露」は、気密・換気・通気のいずれかが欠けても耐久性に影響するとしています。床下も同じで、1つの道具で全体が解決する構造にはなっていません。
2. 床下調湿材とは何をするものか
調湿材は、空気中の水蒸気を吸ったり放ったりする材料です。湿度が高いときに吸い、低いときに放ちます。水を消すものではなく、出入りのタイミングをずらすものと考えると分かりやすくなります。
| よく使われる材料 | 一般的な特徴 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| ゼオライト系 | 多孔質の鉱物。吸放湿を繰り返す | 吸放湿量の試験値が示されているか |
| シリカゲル系 | 乾燥剤として広く使われる材料 | 床下用の製品として設計されているか |
| 炭系 | 木炭・竹炭などを加工したもの | 調湿性能の試験値が示されているか |
| 珪藻土系 | 多孔質の土を加工したもの | 敷設量と面積の関係が示されているか |
| 砂利・砕石 | 地面を覆う目的で使われることがある | 調湿材ではなく、覆材としての効果(第6回) |
「置けば湿度が下がる」とは限りません
- 調湿材は、吸ったぶんをどこかで放ちます。床下の空気が動いていなければ、放った水蒸気は床下にとどまります
- つまり、換気口が働いていること(第5回)が前提になります
- 地面から水蒸気が上がり続けている状態では、吸う量が追いつかない場合があります。先に地面を覆う措置(第6回)が要点になります
- 敷設量・敷設面積・床下の容積の関係は、製品ごとに異なります。数字が示されているかを確認してください
3. 調湿性能には試験方法がある
調湿建材の性能は、感覚ではなく試験で測ることができます。一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会(建産協)は、所定の調湿性能を満たす製品を登録する調湿建材表示制度を運営しています。
| 試験 | 規格番号 | 何を測るか |
|---|---|---|
| 吸放湿量の測定 | JIS A 1470-1 | 建築材料の吸放湿性試験方法(湿度応答法) |
| 平衡含水率の測定 | JIS A 1475 | 建築材料の平衡含水率測定方法 |
| 制度としての評価 | 調湿建材表示制度(建産協) | 調湿性に加え、品質管理・施工方法の指導体制も評価 |
| 登録の表示 | 登録製品にマーク表示 | 基準を満たした製品であることを示す |
| 対象の確認 | 製品ごと | 床下用の製品がこの制度の対象かは、製品ごとに確認が必要 |
検討するときに聞くべきことは、ひとつです。「吸放湿量はいくつですか。どの試験方法で測った値ですか」。この質問に数字で答えられる製品と、答えられない製品があります。
用語のたしかめ
【要追加調査】 床下に調湿材を敷いた場合の、床下の相対湿度の低減量を示した公的な試験データは、この記事の作成時点で確認できていません。材料そのものの吸放湿量(JIS A 1470-1)と、実際の床下に敷いたときの効果は、別の話として扱う必要があります。
4. 床下換気扇とは何をするものか
床下換気扇は、床下の空気を機械で動かす装置です。換気口だけでは空気が動きにくい場所に、風の流れをつくることを目的としています。
| できること | できないこと |
|---|---|
| 床下の空気を動かす | 水の出所を止める |
| 空気がよどむ場所の停滞を減らす | 外気より乾いた空気をつくる |
| 外気を取り込んで入れ替える | 入れた外気の湿度を下げる |
| 換気口の少ない区画に風を通す | ふさがれた換気口の代わりになる |
| タイマー等で運転時間を管理する | 運転していない時間の状態を保つ |
外気の湿度は季節で変わります
- 気象庁の東京の平年値(1991〜2020年)では、平均相対湿度は6月75%、7月76%です。この時期に外気をそのまま送り込んでも、乾燥につながらない場合があります
- 第4回で見たとおり、夏は床下の温度が外気より低くなる場合があります。湿った外気が冷たい面に触れると結露します
- 運転する時間帯や季節を、外気の状態にあわせて考える必要があります
- 基礎断熱の家(第7回)は、床下を室内として扱う設計です。そこへ外気を送り込むと設計の前提が変わります
機器としての注意
床下換気扇は電気製品です。消費者庁は2021年6月15日、消費生活用製品安全法第35条第1項の規定に基づく重大製品事故として、床下用換気扇の火災を公表しています。
また、製品評価技術基盤機構(NITE)は、約18年使用した換気扇で、長期間の使用によりモーター巻線の絶縁性能が低下し、ショートして出火する事故が発生したと報告しています。床下は目が届かない場所です。設置したあとの点検と、耐用年数の確認が必要になります。
5. 導入を検討する前に確かめる5つのこと
| 確かめること | 確かめかた | 未確認のまま進めると |
|---|---|---|
| 水の出所は止まっているか | 第2回の4つの出所を順に確認する | 入れたあとも水は入り続ける |
| 換気口はふさがっていないか | 基礎の外周を一周して開口を見る(第5回) | 空気が動かない原因が残る |
| 地面は覆われているか | 点検口から地面を見る(第6回) | 水蒸気が上がり続ける |
| 床下の湿度を測ったか | 温湿度計で季節を変えて記録する(第8回) | 効果を比べる基準がなくなる |
| 床断熱か基礎断熱か | 基礎の換気口の有無を見る(第7回) | 設計の前提と逆のことをする可能性 |
とくに4つ目が大事です。導入前の湿度を記録していなければ、導入後に下がったのか、季節が変わっただけなのかが分かりません。同じ場所・同じ時間帯で、導入前と導入後を比べられる形にしておいてください。
6. 点検商法について
床下は、住んでいる方が自分で見にくい場所です。そのため、点検をきっかけとした販売について、公的機関が相談件数を公表しています。
| 年度 | 訪問販売によるリフォーム工事の相談件数 | 点検商法の相談件数 |
|---|---|---|
| 2023年度 | 11,879件 | 12,550件 |
| 2024年度 | 9,839件 | 19,249件 |
| 2025年度 | 5,544件 | 19,696件 |
点検商法の相談件数は、2023年度から2025年度にかけて増えています。ここで示したのは相談として寄せられた件数であり、個別の事業者の良否を示すものではありません。
| 進める前に | 具体的にすること |
|---|---|
| その場で契約しない | 見積書を受け取り、日を改める |
| 写真の出所を確かめる | 自分の家の床下であることを、点検口から確認する |
| 見積の内訳を見る | 材料・数量・施工範囲・保証が分かれているか |
| 別の事業者にも相談する | 同じ現場で2社以上の見方を聞く |
| クーリング・オフを知っておく | 訪問販売には特定商取引法の規定がある。国民生活センターや消費生活センターに相談できる |
費用については、床下の面積・高さ・進入経路・状態で変わります。現地調査のうえで見積りを出すのが前提になり、現地を見ずに出る金額は目安にとどまります。
健康に関する表現について
- カビと健康の関係については、文部科学省の「カビ対策マニュアル」などの公的資料が参考になります
- 当社は医療機関ではありません。体調に関わる判断は、医療機関にご相談ください
- 「これを入れれば健康になる」という説明があった場合は、その根拠となる資料を示してもらってください
7. よくある質問
Q. 床下に炭を敷けば湿気が取れると聞きました。
A. 炭系の材料は多孔質で、吸放湿する性質があります。ただし、吸ったぶんをどこかで放つため、床下の空気が動いていることが前提になります。また、敷設量と床下の容積の関係で結果は変わります。製品を検討する場合は、吸放湿量の試験値(JIS A 1470-1など)が示されているかを確認してください。
Q. 床下換気扇をつければ、換気口が少なくても大丈夫ですか。
A. 換気扇は空気を動かす装置で、ふさがれた開口の代わりになるものではありません。国土技術政策総合研究所のガイドラインは、床下換気孔について有効面積300cm²以上を4m以内ごとに設けることを示しています。まず開口が設計どおりに働いているかを確認し、その上で足りない部分に機械の力を使う、という順番になります。
Q. 調湿材と換気扇、どちらを先に検討すべきですか。
A. どちらが先かを決める前に、第5節の5つの確認を済ませてください。水の出所が残っていれば、どちらを入れても同じ状態が続きます。確認を済ませた上で、床下の空気が動いていない場所なら換気の側、地面からの水蒸気が主因なら覆う側(第6回)、というように、その家で何が起きているかで選ぶ順番が変わります。
Q. 導入後、どのくらいで効果が分かりますか。
A. 湿度は季節で大きく動くため、短期間の比較では判断できません。同じ場所・同じ時間帯で、少なくとも梅雨時と冬の両方を含む期間で記録して比べる必要があります。導入前の記録がない場合、比較の基準がないため、判断が難しくなります。
Q. 床下換気扇は何年くらいで交換するものですか。
A. 製品ごとに設計上の標準使用期間が示されている場合があります。製品評価技術基盤機構は、約18年使用した換気扇でモーター巻線の絶縁性能が低下して出火した事故を報告しています。床下は目が届かない場所なので、設置年を記録し、製品の表示や取扱説明書に沿って点検・更新を計画してください。
8. まとめ
- 調湿材も換気扇も、水の出所を止める道具ではない。順番としては後ろ
- 調湿性能にはJIS A 1470-1・JIS A 1475という試験方法があり、建産協の調湿建材表示制度がある
- 床下に敷いたときの湿度低減量を示す公的データは、作成時点で確認できていない(要追加調査)
- 換気扇は空気を動かす装置で、外気を乾かす装置ではない。梅雨から夏の外気は湿っている
- 床下換気扇は電気製品。火災事故が公表されており、長期使用による出火事例もある
- 導入前に5つを確認する。とくに導入前の湿度記録がないと、効果を比べられない
- 点検商法の相談件数は増えている。その場で契約せず、写真の出所を確かめる
手に負えないカビは、お近くのカビバスターズへ
自分で試して2回落ちない、面積が広い、壁や床の内側から出ている、においが消えない――そうしたカビは、原因調査から入る専門業者の領域です。MIST工法®カビバスターズは全国に加盟店があります。まずはお近くの店舗、または本部にご相談ください。
- 全国のカビ取り加盟店一覧(カビバスターズ)
- 本部へのお問い合わせフォーム / フリーダイヤル 0120-052-127(月〜金 9:00〜18:00)
- カビ菌検査について / MIST工法®とは
連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回
全体像(第1〜3回)
- 第1回(10/1)家のカビは見えている場所だけではない|床下・壁の中・小屋裏で起きていること
- 第2回(10/2)建物に水が来る4つの出所|雨・地面・室内・配管
- 第3回(10/3)家の断面で見るカビ|基礎から屋根まで、湿気が通る道
床下・基礎(第4〜10回)
- 第4回(10/4)床下のカビはなぜ起きるのか|地面からの水蒸気と床下の温度
- 第5回(10/5)床下換気の基準|施行令22条の換気孔と、ベタ基礎の考え方
- 第6回(10/6)防湿コンクリート・防湿フィルム|「地面を覆う」とは何をしていることか
- 第7回(10/7)床断熱と基礎断熱、カビ目線でどう違うか
- 第8回(10/8)床下の点検で何を見るか|におい・白い粉・土台の色・水の跡
- 第9回(10/9)床下調湿材・床下換気扇は効くのか|公的資料で確認できること(この記事)
- 第10回(10/10)シロアリとカビ|同じ水分条件で起きる2つの被害
壁の中・外壁(第11〜18回)
- 第11回(10/11)壁の中で何が起きているのか|内部結露という現象
- 第12回(10/12)通気層の役割|壁の中の湿気を外へ出す仕組み
- 第13回(10/13)防湿層はなぜ室内側にあるのか
- 第14回(10/14)冬型結露と夏型結露|壁の中で逆向きに起きる
- 第15回(10/15)断熱材の種類とカビ|繊維系・発泡系で水分の振る舞いが違う
- 第16回(10/16)石膏ボードと壁紙|下地までカビが入るとき
- 第17回(10/17)外壁のひび割れ・シーリング|雨が壁の中に入る経路
- 第18回(10/18)サイディングとモルタル|外壁材で変わる水の逃げ方
小屋裏・屋根(第19〜22回)
- 第19回(10/19)小屋裏のカビ|なぜ夏と冬の両方で起きるのか
- 第20回(10/20)小屋裏換気の基準|方式で変わる換気孔の面積
- 第21回(10/21)屋根の雨漏りとカビ|「滴る」前に起きていること
- 第22回(10/22)天井裏の配管・ダクト|結露する場所が決まっている理由
開口部・水まわり(第23〜27回)
- 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
- 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
- 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
- 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
- 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)
点検と改修(第28〜31回)
- 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
- 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
- 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
- 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)
参考資料(一次情報)
- 国土技術政策総合研究所「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」 小屋裏換気孔の有効面積、外壁通気層15mm以上、床下換気孔300cm²/4m以内
- 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」 夏型結露の定義、気密・換気・通気の役割分担、材料の熱伝導率
- 住宅金融支援機構【フラット35】在来木造の耐久性基準 基礎高さ40cm以上、防湿コンクリート6cm以上、防湿フィルム0.1mm以上
- 国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」 10年間の瑕疵担保責任の対象部分、住宅性能表示基準10分野33項目
- 文部科学省「カビ対策マニュアル」基礎編 水分活性Aw0.6以下、相対湿度60%以下、色素の除去は困難
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」 相対湿度40〜70%、温度18〜28℃
- 国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法(各種相談の件数や傾向)」 点検商法の相談件数 2023年度12,550件/2024年度19,249件/2025年度19,696件
- 消費者庁「消費生活用製品の重大製品事故:換気扇(床下用)で火災等(6月15日)」 消費生活用製品安全法第35条第1項に基づく重大製品事故の公表(2021年6月15日)
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「エアコンの内部洗浄による事故に注意〜製造から長期間経過した換気扇・扇風機にも注意〜」 約18年使用した換気扇でモーター巻線の絶縁性能が低下し出火した事故
- 一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会「調湿建材表示制度」 JIS A 1470-1(吸放湿性試験方法)、JIS A 1475(平衡含水率測定方法)
- 気象庁 東京の月別平年値(1991〜2020年) 6月の平均相対湿度75%、7月76%
