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カビ取り屋の知恵袋

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冬型結露と夏型結露|壁の中で逆向きに起きる

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

結露は冬のもの――そう考えられがちです。窓ガラスが曇るのは寒い朝ですし、拭くのも冬の作業です。

ところが壁の中では、夏にも結露が起きるとされています。しかも冬とは向きが逆になります。第14回は、この2つを並べて整理します。

国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、夏型結露について具体的な場面を2つ挙げています。この記事は、その記述を出発点にします。

この記事で分かること

  • 結露が起きる条件を、湿った空気と冷たい面という形で整理する
  • 冬型結露で、水蒸気がどちらへ向かうか
  • 夏型結露について国土技術政策総合研究所が挙げている2つの場面
  • 冷える面の位置が、季節によって壁の内側と外側で入れ替わること
  • 両方に効く対策と、片方にしか効かない対策
  • 気象庁の平年値で見る、外気が湿っている時期

1. 結論:同じ壁で、冬と夏は向きが逆になる

図1 冬は室内側から外へ、夏は屋外側から内へ。冷える面の位置も入れ替わる

結露は、水蒸気を含んだ空気が、それより冷たい面に触れたときに起きます。条件は2つです。空気に水蒸気があること、そしてその空気が触れる面が冷たいこと。

この2つは、季節で入れ替わります。

表1 冬型結露と夏型結露
冬型(暖房時) 夏型(冷房時)
温度が高いのは 室内側 屋外側
水蒸気が多いのは 室内側になりやすい 屋外側になりやすい
水蒸気が向かう向き 室内側 → 屋外側 屋外側 → 室内側
冷えている面は 壁の外側寄り 壁の室内側寄り
主に関係する仕組み 防湿層・気密層 通気層・外装材の日射熱の排出
気づきやすさ 窓の結露で気づくことがある 壁の中で進むため気づきにくい

表1の3行目と4行目が、この記事の中心です。水蒸気が向かう先と、冷えている面の位置。この2つが季節で入れ替わります。だから同じ壁でも、結露が起きうる位置が変わります。

2. 冬型結露|室内から外へ向かう

冬、室内では調理・入浴・洗濯・人の呼気・暖房から水蒸気が出ています。外は気温が低く、空気が含める水蒸気の量も少なくなります。この差によって、室内側から屋外側へ向かう流れができます。

国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、気密の役割について「室内の水蒸気を換気部分以外の屋外側の外皮へ侵入させないようにして内部結露を防ぎ」と記し、防湿層については「室内で発生した水蒸気の壁内への流入量を抑制させることが可能となり、内部結露が発生しにくくなります」と述べています。

どちらも室内側で入り口を絞る仕組みです。冬型結露に対しては、この2つが主に関わります。防湿層の位置と理由は第13回で扱いました。

室内の水蒸気は、意外に多い

同資料は灯油1Lの燃焼で水蒸気1.13kgという数値を示しています。開放型の石油ストーブやファンヒーターを使うと、燃やした分の水蒸気が室内に加わります。寒いからと換気を止めると、水蒸気は室内にたまり続けることになります。同資料は24時間換気の電源を切らないことを求めており、建築基準法施行令 第20条の8は住宅の居室について換気回数0.5回/時を定めています。

3. 夏型結露|外から中へ向かう

図2 国土技術政策総合研究所が挙げる2つの場面。床下と外壁で起こりかたが違う

国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、夏型結露について次の2つを挙げています。

表2 夏型結露として挙げられている場面
場面 記述されている内容 関係する部位
① 冷房で冷えた床下 冷房で温度の低い床下で、屋外の水分が水滴になる 床下・1階の床まわり
② 日射で焙られた外装材 雨で水分を含んだ外装材が日射で焙られ、外壁内で水滴になる 外壁・通気層まわり

①は、冷えた面のほうが室内側にあるという構図です。冷房をしている部屋の床下は、外気より温度が低くなることがあります。そこへ湿った外気が入れば、冷たい面に触れて水滴になります。床下の温度と湿気の関係は第4回で扱いました。

②は、外装材が持ち込んだ水分が、熱で押し出されるという構図です。雨で濡れた外装材に日射が当たると、含んでいた水分が水蒸気になって壁側へ向かいます。冷房で室内側が冷えていれば、その途中で水滴になる位置ができます。

通気層は、この場面でも関わる

同資料は通気層について、夏季には「外装からの日射熱を排出させる効果もあります」と記しています。外装材が受けた熱を通気層から逃がせば、壁の中へ向かう分が減るという整理です。通気層の役割は第12回にまとめています。

4. 外気が湿っている時期を、数値で見る

夏型結露の話をするときに前提になるのが、外の空気がどれくらい湿っているかです。気象庁の平年値(1991〜2020年)では、東京の月別の平均相対湿度は6月で75%、7月で76%と示されています。

表3 外気の状態と、室内の基準
項目 値 出典
東京の平均相対湿度(6月) 75% 気象庁 月別平年値(1991〜2020年)
東京の平均相対湿度(7月) 76% 同上
室内の相対湿度(管理基準) 40%以上70%以下 厚生労働省 建築物環境衛生管理基準
室内の温度(管理基準) 18℃以上28℃以下 同上
カビ対策としての湿度 相対湿度60%以下 文部科学省 カビ対策マニュアル
カビが活動しやすい温度 25〜30℃とされる 国土交通省 官庁営繕部資料

表3を並べると、梅雨から夏にかけての外気が室内の管理基準の上限(70%)を上回る水準にあることが分かります。この時期に「換気すれば湿気が抜ける」とは限らない理由が、ここにあります。外が湿っていれば、入れ替えても湿った空気が入ってきます。

梅雨から夏の換気で気をつけること

  • 外の相対湿度が高い時間帯(雨天・夜間・早朝)は、窓を大きく開ける効果が限られる
  • 24時間換気は、湿度に関わらず切らないことが求められている(国土技術政策総合研究所)
  • 除湿は「外の空気を入れる」のではなく「室内の空気から水分を取る」方向の手段
  • 湿度計を置いて、外と室内の両方を見ると判断しやすい

5. 冷える面の位置が入れ替わる

もう一度、表1の4行目に戻ります。冷えている面の位置です。

表4 季節で変わる「冷たい面」
季節 冷たい面 その面の近くにあるもの 出やすい場所の例
冬(暖房時) 壁の外側寄り 構造用面材・二次防水層の内側 外壁面の室内側、断熱の切れ目
夏(冷房時) 壁の室内側寄り 内装材・防湿層の室内側 冷房している部屋の外壁面
夏(冷房時) 冷えた床下 土台・大引・床下地 1階の床まわり
通年 熱を伝えやすい部材 金属の部材、コンクリート サッシまわり、基礎立ち上がり

最下段は季節を問いません。国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は材料の熱伝導率としてアルミ200、樹脂(PVC)0.17、ヒノキ・スギ0.12、ガラス1、空気0.0241、アルゴン0.0164 W/mKを挙げています。数字が大きいほど熱を伝えやすく、そこだけ温度が変わりやすくなります。アルミと樹脂では、1000倍以上の差があります。

この差が、サッシまわりで結露が出やすい理由のひとつです。窓まわりの話は本連載の第23回で扱います。

6. 両方に効くこと、片方にしか効かないこと

図3 季節を問わず効くことと、季節によって効きかたが変わること
表5 対策と、効く季節
対策 冬型に対して 夏型に対して 備考
室内の水蒸気を減らす 効く 効く 発生源を減らす方向
24時間換気を止めない 効く 効く 施行令20条の8で0.5回/時
防湿層・気密層 主に効く 向きが逆になるため条件が変わる 入り口を絞る層
通気層 効く 効く(日射熱の排出も) 出口をつくる層
窓を大きく開ける 外が乾いていれば効く 外が湿っていると効きにくい 外の湿度で判断
除湿(エアコン・除湿機) 効く 効く 室内の水分を取る方向
断熱を厚くする 冷たい面ができにくくなる 同左 気密・防湿・通気とセットで考える

表5で見えてくるのは、「室内の水蒸気を減らす」と「出口を確保する」は季節を問わないということです。一方、換気の効きかたは外の空気の状態で変わります。

国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、気密・換気・通気は、いずれかが欠けても耐久性に影響するという趣旨を示しています。季節ごとに別の対策を用意するというより、3つがそろっているかを確かめるという見かたになります。

7. よくある質問

Q. 冬に結露が出ないので、うちは大丈夫だと思ってよいですか。

A. 窓に結露が出ないことと、壁の中で起きていないことは別の話です。国土技術政策総合研究所は、部位内結露について「発見が遅れるうえに乾燥しにくく、最も厄介な水分供給現象の一つ」と記しています。窓は目に見える場所なので気づきますが、壁の中は見えません。室内側の手がかりの見かたは第11回にまとめています。

Q. 夏に壁が湿るのは、雨漏りではないのですか。

A. 雨漏りの可能性もありますし、夏型結露の可能性もあります。見分けの手がかりのひとつは雨との関係です。雨のたびに出るなら雨水の浸入、晴れて気温が上がった日や冷房を強くした日に出るなら結露、という向きで考えられます。ただし国土技術政策総合研究所が挙げる②の場面は「雨で水分を含んだ外装材が日射で焙られる」というもので、雨のあとに晴れたときに起きるという重なりかたをします。記録を取って、条件を絞っていくことになります。

Q. 冷房の設定温度を上げれば、夏型結露は減りますか。

A. 室内側の温度が上がれば、冷たい面ができにくくなるという方向にはなります。厚生労働省の建築物環境衛生管理基準は、温度について18℃以上28℃以下を示しています。ただし、体調に関わる話でもありますので、温度だけで調整するより、除湿とあわせて考えるほうが現実的です。

Q. 梅雨に窓を開けて換気したほうがよいですか。

A. 外の空気が室内より湿っていれば、入れ替えても湿気は減りにくくなります。気象庁の平年値では、東京の6月の平均相対湿度は75%、7月は76%です。外と室内の湿度を比べてから判断するのが確実です。なお、機械換気(24時間換気)は湿度に関わらず動かし続けることが求められています。

Q. 冬型と夏型、どちらのほうが被害が大きいですか。

A. 公的資料でどちらが大きいと示されたものは、作成時点で確認できていません(要追加調査)。ただし、カビの活動しやすい温度として官庁営繕部の資料が25〜30℃を挙げていること、腐朽菌については20〜35℃が示されていることを踏まえると、温度の条件は夏のほうがそろいやすいと読めます。水分がどれだけあるかで結果は変わりますので、そこは実際の状態を見ることになります。

8. まとめ

  • 結露は「水蒸気を含んだ空気」と「それより冷たい面」がそろうと起きる
  • 冬は室内側から屋外側へ、夏は屋外側から室内側へ、向きが逆になる
  • 冷えている面も、冬は壁の外側寄り、夏は壁の室内側寄りに移る
  • 夏型結露として、冷房で冷えた床下と、日射で焙られた外装材の2つの場面が挙げられている
  • 通気層は夏季に外装からの日射熱を排出させる効果もあるとされる
  • 気象庁の平年値で東京の6月は75%、7月は76%。外が湿っていれば換気の効きかたは変わる
  • 室内の水蒸気を減らすことと、出口を確保することは季節を問わない
  • 気密・換気・通気は、いずれかが欠けても耐久性に影響するとされる
  • アルミ200、樹脂0.17 W/mK。熱を伝えやすい部材の近くは温度が変わりやすい

次回は、断熱材の種類とカビを扱います。同じ「断熱材」でも、水分の振る舞いは材料によって違います。

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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回

全体像(第1〜3回)

床下・基礎(第4〜10回)

壁の中・外壁(第11〜18回)

小屋裏・屋根(第19〜22回)

開口部・水まわり(第23〜27回)

  • 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
  • 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
  • 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
  • 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
  • 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)

判断・点検・改修(第28〜31回)

  • 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
  • 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
  • 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
  • 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)

参考資料(一次情報)

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