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カビ取り屋の知恵袋

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シロアリとカビ|同じ水分条件で起きる2つの被害

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

床下のカビを調べていると、シロアリの話が同時に出てくることがあります。「カビが生えているならシロアリもいるのでは」「シロアリ駆除をすればカビも止まるのでは」――ご相談のなかで、この2つはよく混ざります。

第10回は、この2つを分けて整理します。カビとシロアリは、まったく別の生きものです。ただし、被害が出やすい条件には重なりがあります。その重なりがどこにあるのかを、法令と公的な基準の文言から確かめていきます。

この記事は、駆除の方法を説明するものではありません。公的資料で確認できることを示し、床下で何を先に見るかという順番を整理します。

この記事で分かること

  • カビ・木材腐朽菌・シロアリが、それぞれどう違う生きものか
  • 3つの被害が「水がある場所」で重なる理由
  • 建築基準法施行令とフラット35が、そろって「地面から1m以内」を指していること
  • ヤマトシロアリとイエシロアリの群飛の時期・時間帯(日本しろあり対策協会)
  • 防除施工標準仕様書に書かれている処理の範囲と薬量、再処理の目安
  • 床下でカビとシロアリの条件を減らす順番と、点検商法の相談件数

1. 結論:別の生きもの。重なるのは「水がある」という条件

図1 同じ床下で分かれる3つの被害。重なっているのは「水がある」という条件

先に結論を書きます。カビは菌類、木材腐朽菌も菌類、シロアリは昆虫です。分類としては別のものが3つ並んでいます。それぞれ食べるもの、増える速さ、被害の出かたが違います。

それでも同じ床下で名前が並ぶのは、3つとも「木が濡れている、または湿っている」状態で活動しやすいからです。水の出所が同じであれば、条件は同時に整います。逆にいえば、片方だけを処置しても、水の出所が残っていればもう片方の条件は残ります。

表1 カビ・木材腐朽菌・シロアリの違い
カビ 木材腐朽菌 シロアリ
分類 菌類 菌類 昆虫
主に食べるもの 木材表面の塵埃や汚れ、木材成分 セルロースなど木材の成分 木材(セルロース)
被害の出かた 変色・におい・胞子の飛散 内部が軟らかくなり強度が落ちる 内部が食われて空洞になる
見つかりかた 目で見える(表面の色) 進むまで見えにくい 蟻道・羽アリ・木の空洞音
共通する条件 木材が濡れる・湿る 水分がある 湿った木材と土

表1の最下段が、この記事のいちばん大事な行です。3つとも「水分」の行だけが共通しています。建物側でできる対策が似た形になるのは、ここが重なっているためです。

2. 発生条件を並べてみる|温度・水分・栄養

国土交通省 大臣官房官庁営繕部の資料は、木材に関わる菌について発生条件を整理しています。腐朽菌についてはセルロース等の栄養源、20〜35℃の温度、水分、酸素が示され、カビについては25〜30℃、木材表面が濡れること、塵埃が示されています。

表2 3つの被害が活動しやすい条件(公的資料の記載より)
項目 カビ 木材腐朽菌 シロアリ
温度 25〜30℃で活動しやすいとされる 20〜35℃とされる 種により異なる
水分 木材表面が濡れること 木材中に水分があること 湿った木材・土壌からの水分
栄養 塵埃・汚れ・木材成分 セルロース等 セルロース
その他 空気が動きにくい場所 酸素 土との連続(蟻道)
出典 官庁営繕部資料 官庁営繕部資料 日本しろあり対策協会

「表面」と「内部」の違い

カビは木材の表面で起きる変化です。そのため目で見つかりやすく、においでも気づかれます。一方、腐朽菌とシロアリは木材の内部で進みます。国土技術政策総合研究所のメンテナンスガイドラインは、部位内結露について「発見が遅れるうえに乾燥しにくく、最も厄介な水分供給現象の一つ」と記しています。見えない場所ほど、気づいたときに進んでいるという構図です。

つまり、床下でカビが見えているとき、それは「水分がある」というサインが目に見える形で出ている状態と読めます。カビそのものの被害に加えて、同じ条件で進む別の被害がないかを確認する理由がここにあります。床下のカビの起こりかたは第4回で扱いました。

なお、木材の含水率については注意が必要です。官庁営繕部の資料にある「構造用集成材の含水率が長期間継続的または断続的に19%を超える環境=環境A」という記載は、使用環境を区分するための定義です。カビが生える含水率の閾値を示したものではありません。この点は混同されやすいところです。

3. 法令と基準が、そろって同じ場所を指している

図2 複数の基準が重なって指している範囲。地面に近いほど条件がそろいやすい

建築基準法施行令 第49条第2項は、次のように定めています。

建築基準法施行令 第49条第2項

「構造耐力上主要な部分である柱、筋かい及び土台のうち、地面から1m以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、しろありその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない。」

注目したいのは、防腐と防蟻が1つの条文に並んでいることです。腐朽(菌類による被害)と、しろあり(昆虫による被害)を、同じ範囲に対して同じ条文で求めています。条件が重なる場所だからこそ、まとめて規定されていると読めます。

住宅金融支援機構【フラット35】の在来木造の耐久性基準も、同じ範囲を指しています。防腐・防蟻の措置は地面からの高さ1m以内の部分が対象で、耐久性区分D1の樹種、防腐防蟻薬剤処理製材、あるいは軒の出90cm以上といった選択肢が示されています。

表3 「地面に近い部分」を定めている基準
基準 定めている内容 数値
建築基準法施行令 第22条 居室の床の高さ 直下の地面から床上面まで45cm以上
建築基準法施行令 第22条 床下換気孔 壁の長さ5m以下ごとに面積300cm²以上、ねずみの侵入を防ぐ設備
建築基準法施行令 第49条第2項 柱・筋かい・土台の防腐・防蟻 地面から1m以内
フラット35 耐久性基準 基礎の高さ 地面から基礎上端または土台下端まで40cm以上
フラット35 耐久性基準 床下防湿 厚さ6cm以上のコンクリート、または厚さ0.1mm以上の防湿フィルム
フラット35 耐久性基準 防腐・防蟻 地面から1m以内の部分
日本しろあり対策協会 標準仕様書 木部処理の範囲 基礎天端から1m以内の土台・通し柱・管柱・間柱

表3を縦に読むと、「地面から40cm〜1m」というひとつの帯が浮かび上がります。床を上げる、地面を覆う、空気を通す、木部に処理をする。狙っている場所は同じです。地面を覆う考えかたは第6回、換気孔の基準は第5回で扱いました。

4. シロアリの種類と、羽アリが飛ぶ時期

日本しろあり対策協会は、主な種について群飛(羽アリが飛ぶこと)の時期と時間帯を示しています。羽アリを見かけた季節と時間は、種を見分けるうえでの手がかりになります。

表4 主なシロアリの群飛の時期・時間帯(日本しろあり対策協会)
種類 群飛の時期 時間帯 地域による違い
ヤマトシロアリ 4〜5月 昼間 沖縄は2月ごろ、東北・北海道は6月ごろ
イエシロアリ 6〜7月 夜 電灯に飛来するとされる

時間帯が分かれている点が実務では手がかりになります。昼に窓辺で見たのか、夜に照明のまわりに集まっていたのかで、見当が変わります。見つけた羽アリは、つぶさずに数匹を容器に取っておくと、調査時の判断材料になります。

羽アリとカビの相談が同時に来る理由

春から初夏にかけては、羽アリが飛ぶ時期であると同時に、外気の湿度が上がって床下の相対湿度も上がりやすい時期です。同じ季節に、別々の現象が同時に目に入る――これが、2つの相談が重なる背景のひとつです。季節が重なることと、因果関係があることは別ですので、そこは分けて考える必要があります。

5. 防除の標準仕様書には何が書かれているか

公益社団法人 日本しろあり対策協会は「防除施工標準仕様書」(令和7年10月版)を公開しています。業者ごとの説明を比べるときの、共通のものさしになります。

表5 防除施工標準仕様書に示されている処理(抜粋)
処理 対象・範囲 示されている量など
木部処理 基礎天端から1m以内の土台・通し柱・管柱・間柱 ―
木部処理(真壁造) 真壁造の内面 土台上端から3cm以内
土壌処理(帯状散布) 布基礎に沿った帯状の部分 1Lあたり1m
土壌処理(面状散布) 土壌面 1m²あたり3L
皮膜形成工法 土壌面 1m²あたり30g以上
再処理 施工後の維持 5年を目途に再処理

「5年を目途に再処理」という記載は、一度施工すれば終わりではない、という前提を示しています。見積書や契約書に保証期間が書かれている場合、この目安と照らして読むと理解しやすくなります。

カビ対策との関係

防蟻の薬剤処理は、シロアリに対する処理です。カビを対象にした処理ではありません。逆に、カビ取りの施工がシロアリに効くわけでもありません。2つは別の工事です。

ただし、床下の水を減らすこと――地面を覆う、換気を確保する、漏れを止める――は、両方の条件に同時に効いてきます。ここが、床下で「何から手を付けるか」を考えるときの分岐点になります。

6. 床下で条件を減らす順番

図3 水の出所を止める→通す・覆うを確かめる→それぞれの専門処理を検討する
  1. 水の出所を止める。配管の漏れ、雨水の流入、外構から入る水は、薬剤でも調湿材でも止まりません(第2回)
  2. 覆う・通すを確かめる。防湿層があるか、換気孔がふさがれていないか(第6回・第5回)
  3. 現状を記録する。写真、におい、木部の色、含水率の測定値(第8回)
  4. それぞれの専門処理を検討する。カビはカビの、シロアリはシロアリの調査と施工
  5. 設備を足すのは最後に検討する。調湿材・換気扇の位置づけは(第9回)
表6 床下で見るところと、そこから分かること
見るところ カビの手がかり シロアリの手がかり
基礎の立ち上がり 白い粉状のもの、黒い点 土でできた筋(蟻道)
土台・大引 変色、表面の毛羽立ち 叩くと軽い音、表面のわずかな膨らみ
地面 湿り、水たまりの跡 土の盛り上がり
断熱材の裏 黒ずみ、はがれ 食害の跡
におい 土のにおい、かび臭さ ―
室内側の様子 建具の動きが重い、床鳴り 床のきしみ、たわみ

表6の左右は、同じ場所を別の視点で見ているだけです。床下に入る機会があるなら、両方を一度に確認しておくと、調査を二度手間にしないで済みます。

点検商法について

床下は、住んでいる方が自分で確かめにくい場所です。そのため「無料点検」をきっかけとした勧誘の相談が寄せられています。国民生活センターによれば、点検商法に関する相談件数は2023年度12,550件、2024年度19,249件、2025年度19,696件と推移しています。

その場で契約しないための3つ

  • 見せられた写真が自宅の床下のものかを確認する(撮影日時、位置の説明)
  • その場で契約しない。見積書を持ち帰ってもらい、複数社で比べる
  • 不安があれば消費生活センター(局番なしの188)に相談する

7. よくある質問

Q. カビが生えている床下には、シロアリもいると考えてよいですか。

A. カビがあることと、シロアリがいることは別の事実です。カビは「水分がある」ことを示す手がかりにはなりますが、シロアリの存在を示すものではありません。シロアリについては、蟻道の有無や木部の状態を別に確認することになります。両方を見る機会として床下点検を使う、という考えかたが現実的です。

Q. 防蟻工事をすれば、床下のカビも減りますか。

A. 防蟻の薬剤はシロアリを対象にした処理です。カビを対象にした処理ではないため、カビが減ることを見込む根拠にはなりにくいと考えられます。ただし、防蟻工事にあわせて防湿シートの敷設や換気の改善を行った場合は、床下の水分条件そのものが変わります。見積書で「薬剤処理」と「湿気対策」を分けて読むことをおすすめします。

Q. 羽アリを見つけました。まず何をすればよいですか。

A. 数匹を容器に取り、見つけた場所・日付・時間帯を記録してください。日本しろあり対策協会の資料では、ヤマトシロアリは4〜5月の昼間、イエシロアリは6〜7月の夜に群飛するとされています。この情報があると、調査のときの判断材料になります。なお、羽アリにはクロアリの羽アリもありますので、種の判断は専門の調査に委ねるほうが確実です。

Q. 床下の木が黒い場合、カビですか、腐朽ですか。

A. 見た目だけで分けるのは難しいところです。カビは表面の変化、腐朽は内部の変化という違いがありますので、木部を軽く押したときの手応えや、含水率の測定が手がかりになります。木材の腐朽についてはカビによる木材の腐朽でも扱っています。

Q. シロアリ被害は火災保険や瑕疵担保の対象になりますか。

A. 保険の適用は契約内容によって異なりますので、契約先への確認が必要です。新築住宅については、住宅の品質確保の促進等に関する法律により、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について10年間の瑕疵担保責任が定められています。木造戸建の場合、土台・柱・基礎などが対象部分に含まれます。該当するかどうかは、施工者や窓口への確認が出発点になります。

8. まとめ

  • カビ・木材腐朽菌・シロアリは別の生きもの。共通しているのは「水がある」という条件
  • カビは木材表面、腐朽菌とシロアリは内部で進む。見えたときの進みかたが違う
  • 施行令49条2項は、地面から1m以内の柱・筋かい・土台に防腐と防蟻を並べて求めている
  • フラット35の基準も同じ範囲を指す。基礎40cm以上、防湿コンクリート6cm以上など
  • ヤマトシロアリは4〜5月の昼、イエシロアリは6〜7月の夜に群飛するとされる
  • 標準仕様書は木部処理の範囲、土壌処理の薬量、5年を目途とした再処理を示している
  • 薬剤処理はシロアリ用、カビ取りはカビ用。ただし床下の水を減らすことは両方に効く
  • 点検商法の相談は増えている。写真の出所を確かめ、その場で契約しない

次回、第11回からは壁の中に入ります。床下と同じく見えない場所ですが、水の来かたと抜けかたが違います。内部結露という現象から見ていきます。

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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回

全体像(第1〜3回)

床下・基礎(第4〜10回)

壁の中・外壁(第11〜18回)

小屋裏・屋根(第19〜22回)

開口部・水まわり(第23〜27回)

  • 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
  • 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
  • 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
  • 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
  • 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)

判断・点検・改修(第28〜31回)

  • 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
  • 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
  • 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
  • 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)

参考資料(一次情報)

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