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カビ取り屋の知恵袋

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家の断面で見るカビ|基礎から屋根まで、湿気が通る道

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

前回まで、見えない場所が3つあること、水の出所が4つあることを見てきました。第3回は、その2つをつなぎます。家を1枚の断面図として見る回です。

建物の外側と内側では、温度も湿度も違います。その差があるかぎり、水蒸気は高いほうから低いほうへ動こうとします。その道筋のどこかに冷たい面があれば、そこで水になります。

どこに冷たい面があり、どこに水蒸気の道があるか。これが分かると、「なぜこの家のこの場所なのか」が説明できるようになります。

この記事で分かること

  • 家の断面を、下から上へ6つの層で見る方法
  • 湿気が動く2つの力(水蒸気圧の差と、空気の流れ)
  • 「冷たい面」が家のどこにできるか
  • 外皮に求められる3つの役割(気密・通気・換気)の分担
  • 断面図を使って、自分の家の弱いところを探す手順

1. 結論:断面で見ると、3つのことが分かる

図1 基礎から屋根まで。水蒸気の道と、冷たい面ができる場所
  1. 水蒸気は、湿度の高いほうから低いほうへ動く。冬は室内から外へ、夏は外から室内へ向かう
  2. その道の途中に冷たい面があると、そこで水になる。冷たい面の位置は、断熱と気密の納まりで決まる
  3. 外皮には、止める場所と逃がす場所が両方ある。止めるのが防湿層と気密層、逃がすのが通気層と換気孔

国土技術政策総合研究所の「省エネと結露」は、気密・換気・通気の役割をそれぞれ次のように説明しています。

表1 気密・換気・通気の役割分担
役割 何をしているか
気密 室内の水蒸気を、換気部分以外の屋外側外皮へ侵入させず、内部結露を防ぐ
換気 床下・室内・小屋裏へ外気を取り入れ、排出する
通気 通気層により壁内・屋根内の湿気を排出し、雨水浸入を防止する

そのうえで同資料は、いずれかが欠けても耐久性に影響するとしています。3つはセットで働くという理解が出発点になります。

2. 断面を下から上へ|6つの層

木造住宅の断面を、下から順に6つに分けて見ていきます。

表2 断面を6つの層で見る
層 範囲 水の来かた 乾く道
① 地盤・基礎 地面、基礎、床下 地面からの水蒸気、雨水の流入、配管 床下換気孔、または地面を覆う防湿層
② 床 土台、大引、根太、床下地、床材 床下からの湿気、こぼした水 床下側の通気。断熱の位置による
③ 外壁 内装材、防湿層、断熱材、面材、通気層、外装材 室内の水蒸気、外壁からの雨水 通気層(厚さ15mm以上の胴縁)
④ 開口部 窓、サッシ、玄関ドア 室内の水蒸気(結露)、雨水 窓まわりの防水と、室内側の換気
⑤ 天井・小屋裏 天井材、断熱材、小屋組、野地板 室内から上がる水蒸気、雨漏り 小屋裏換気孔(方式で必要面積が変わる)
⑥ 屋根 野地板、防水シート、屋根材 雨水 屋根通気層(厚さ30mm以上)

この表の右の2列に注目してください。水の来かたと、乾く道はセットです。どちらか片方だけを見ても判断できません。「水が来る」だけなら建物は成り立ちませんし、「乾く道がある」だけでも、入る水の量が多ければ追いつきません。

通気層と換気孔の寸法(一次情報)

表3 部位別の寸法基準
部位 基準 出典
外壁の通気層 厚さ15mm以上の胴縁を用いスペースを設ける 国土技術政策総合研究所 ガイドライン(案)
屋根の通気層 厚さ30mm以上のスペース 同上
床下の換気孔 有効換気面積300cm²以上を間隔4m以内ごと。ねこ土台は1mあたり有孔面積75cm²以上 同上/住宅金融支援機構【フラット35】
床下の換気孔(法令) 壁の長さ5m以下ごとに面積300cm²以上。ねずみの侵入を防ぐ設備をあわせて設ける 建築基準法施行令第22条
小屋裏の換気孔 天井面積に対し、軒裏(吸排気両用)1/250、妻壁(吸排気両用)1/300、軒裏(吸気)+棟(排気)は軒裏1/900・棟1/1,600 国土技術政策総合研究所 ガイドライン(案)
基礎の高さ 地面から基礎の上端または地面から土台下端まで40cm以上 住宅金融支援機構【フラット35】

用語のたしかめ

これらは設計と施工の基準であって、「この数字を満たせばカビが出ない」という保証値ではありません。国土技術政策総合研究所は、UA値は計算値であり、施工時に隙間が多いと所定の性能を発揮できず結露の要因になり得ると指摘しています。基準は出発点で、実際の家がどうなっているかは別に確かめる必要があります。

3. 湿気を動かす2つの力

図2 水蒸気圧の差で拡散し、空気の流れで運ばれる

力① 水蒸気圧の差(拡散)

水蒸気は、濃いほうから薄いほうへ、材料の中をゆっくり通り抜けます。冬は室内のほうが水蒸気が多いので、室内から外へ向かいます。夏は外のほうが多いので、外から室内へ向かいます。

この向きが逆になることが、冬型結露と夏型結露が別の現象である理由です。第14回であらためて扱います。

力② 空気の流れ(対流)

すきま風のように、空気そのものが動くと、その空気に含まれた水蒸気も一緒に運ばれます。拡散よりも、運ばれる量がはるかに多いのが特徴です。

だから、気密が要ります。国土技術政策総合研究所は、気密の役割を「室内の水蒸気を換気部分以外の屋外側外皮へ侵入させず内部結露を防ぐ」ことと説明しています。すきまから壁の中へ入る空気を減らすことが、内部結露を減らすことにつながるという理屈です。

表4 拡散と対流の違い
拡散(水蒸気圧の差) 対流(空気の流れ)
動くもの 水蒸気の分子 空気ごと
速さ ゆっくり 速い
運ぶ量 少ない 多い
止める方法 防湿層(水蒸気を通しにくい層) 気密層(空気を通さない層)
出る場所 壁全体でじわじわ すきまのある一点に集中する
見つかり方 広い範囲が湿っている 特定の場所だけ濡れている

現場で「なぜここだけ」という濡れ方をしている場合、そこにすきまがあって空気が通っていることが多くあります。コンセントまわり、配管の貫通部、壁と天井の取り合いなどです。

4. 「冷たい面」はどこにできるか

水蒸気の道があっても、冷たい面がなければ結露しません。逆に言えば、冷たい面の位置を知ることが、結露の場所を知ることです。

表5 冷たい面ができる7か所
冷たい面 なぜ冷えるか 季節
窓ガラス・サッシ 熱を通しやすい。国総研によればアルミニウム合金の熱伝導率は200W/mK、フロートガラスは1W/mK 冬
外壁の室内側(断熱が切れている部分) 断熱材が入っていない、すきまがある 冬
建物の隅(出隅・入隅) 外側の面積が内側より大きく、熱が逃げやすい 冬
天井と壁の取り合い 断熱材の納まりが難しく、切れやすい 冬
床下の地面と基礎 地面の温度は年間を通じて変化が小さく、夏は外気より低い 夏
冷房している部屋の床・壁 外の湿った空気が触れると結露する 夏
冷たい配管・ダクトの表面 保温材が切れている部分 通年(夏に多い)

国土技術政策総合研究所の「省エネと結露」は、夏型結露を「室内をエアコンで冷房した際、夏季に水分を大量に含んだ屋外空気が温度の低い床下で水滴になる現象や、雨などにより水分を含んだ外装材が日射で焙られ水分を放出し外壁内で水滴となる現象」と説明しています。夏は、冷たい面が室内側にあるということです。

5. 断面図で自分の家を見る手順

図3 図面がある場合・ない場合の進め方
  1. 症状の場所を、断面のどこかに置く。1階の床なら①②、壁のシミなら③、天井なら⑤
  2. その層の「水の来かた」を表2で確認する。候補は1つとは限りません
  3. 「乾く道」があるかを確かめる。床下換気孔がふさがっていないか、通気層があるか、小屋裏の換気孔が2か所以上あるか
  4. 冷たい面がその近くにあるかを表5で確認する
  5. 季節と天気の記録と突き合わせる(第2回の3項目)

図面があるとき

確認申請の図面や、住宅性能評価書があれば、断熱材の種類と厚さ、通気層の有無、換気方式が書かれています。国土交通省の資料によれば、日本住宅性能表示基準は10分野33項目で構成され、劣化対策等級(構造躯体等)は必須評価項目とされています。評価書があれば、その等級も手がかりになります。

図面がないとき

表6 外から見て分かること
見るところ 外から分かること
基礎の外周 換気口があるか(床下換気タイプ)、ないか(基礎断熱の可能性)
外壁の下端 外壁材と基礎のあいだに隙間があるか(通気層の出口)
軒裏(のきうら) 有孔ボードや換気金物があるか(小屋裏換気の吸気口)
屋根の棟 棟換気の金物があるか(小屋裏換気の排気口)
妻側の壁の上部 換気ガラリがあるか(妻壁換気)
外壁の上端 軒天との取り合いに隙間があるか(通気層の出口)

これらを写真に撮っておくと、相談するときに話が早くなります。ただし、屋根に上がる、はしごをかけるといったことはしないでください。地上から見上げて撮るか、双眼鏡やカメラのズームを使ってください。

6. よくある質問

Q. 気密を高めると、かえって湿気がこもりませんか。

A. 気密と換気は対になっています。国土技術政策総合研究所は、気密の役割を「室内の水蒸気を換気部分以外の屋外側外皮へ侵入させない」ことと説明し、換気の役割を「床下・室内・小屋裏へ外気を取り入れ排出する」こととしています。つまり、すきまからの出入りを止めたうえで、決まった経路で計画的に空気を入れ替えるという考え方です。同資料は「24時間換気システムの電源は切らない」ことも案内しています。

Q. 通気層がない家はどうすればよいですか。

A. 古い建物では通気層がない場合があります。その場合、外壁から入った雨水や、壁の中に入った水蒸気の逃げ道が限られます。外装材の張り替えや断熱改修のタイミングで通気層を設ける選択肢があるかどうか、施工会社に確認するのが現実的です。第18回・第31回で扱います。

Q. 床下に換気口がありません。欠陥ですか。

A. そうとは限りません。建築基準法施行令第22条は、床下をコンクリート、たたきその他これらに類する材料で覆う場合には換気孔の規定を適用しないとしています。基礎断熱の建物では、床下を室内側として扱い、換気口を設けない設計があります。どちらの考え方で建てられているかを確かめてください。第7回で扱います。

Q. 断面図を見ても、断熱材がどこに入っているか分かりません。

A. 床断熱か基礎断熱か、天井断熱か屋根断熱かで納まりが変わります。図面の凡例に断熱材の記号と厚さが書かれていることが多いので、そこを探してください。分からない場合は、建てた会社に「断熱の仕様はどれか」と尋ねるのが確実です。

7. まとめ

  • 家の断面は、地盤・基礎/床/外壁/開口部/天井・小屋裏/屋根の6層で見る
  • 水蒸気は、水蒸気圧の差(拡散)と空気の流れ(対流)の2つで動く。運ぶ量は対流のほうが多い
  • 冷たい面の位置が、結露の場所を決める。冬は室内側の外周部、夏は床下と冷房した部屋
  • 外皮には止める役割(気密・防湿層)と逃がす役割(通気層・換気孔)があり、どれが欠けても耐久性に影響する
  • 症状の場所を断面のどこかに置き、水の来かた・乾く道・冷たい面の3点で確かめる

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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回

全体像(第1〜3回)

床下・基礎(第4〜10回)

壁の中・外壁(第11〜18回)

小屋裏・屋根(第19〜22回)

開口部・水まわり(第23〜27回)

  • 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
  • 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
  • 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
  • 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
  • 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)

点検と改修(第28〜31回)

  • 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
  • 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
  • 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
  • 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)

参考資料(一次情報)

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