執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。
第19回から、家のいちばん上に移ります。小屋裏(屋根裏)です。
床下は地面からの水蒸気、壁の中は室内からの水蒸気が主な相手でした。小屋裏は、夏は屋根からの熱、冬は室内からの水蒸気という、性格の違う2つの条件を同時に抱えています。
そのため、夏に起きる家と、冬に起きる家があり、両方起きる家もあります。この記事では、その仕組みを整理します。
この記事で分かること
- 小屋裏がどういう空間なのか
- 夏に起きること(屋根の熱と、こもった空気)
- 冬に起きること(室内からの水蒸気と、冷たい野地板)
- 小屋裏で見る場所
- 天井裏に上がることの危険
1. 結論:上と下の両方から条件が来る
- 夏は、屋根が日射で熱くなり、小屋裏の温度が上がります。空気が動かなければ、熱と湿気がこもります
- 冬は、室内の暖かく湿った空気が天井を抜けて上がり、冷たい野地板(屋根の下地)に当たって水になります
- どちらの場合も、空気が動いていれば条件が緩みます。だから小屋裏換気の基準がある(第20回)
用語のたしかめ
用語:「野地板(のじいた)」は屋根材の下にある板状の下地です。「垂木(たるき)」はその野地板を支える細長い材、「棟(むね)」は屋根のいちばん高い部分を指します。
2. 夏に起きること
| 起きること | 仕組み | 見るところ |
|---|---|---|
| 小屋裏の温度が上がる | 屋根が日射を受けて熱くなる | 夏の昼間に点検口を開けたときの体感 |
| 空気がこもる | 換気孔がない、または足りない | 妻壁・軒裏・棟の換気孔の有無(第20回) |
| 天井断熱材の上に熱がたまる | 断熱材が天井面にある場合、その上が高温になる | 断熱材の厚さ、すき間 |
| 湿った外気が入る | 梅雨〜夏の外気は湿っている(東京の平年値で6月75%、7月76%) | 換気孔から入る空気の状態 |
| 夜間に温度が下がる | 昼と夜の差で、結露の条件が出ることがある | 朝の点検口まわり |
| エアコンのダクト・配管 | 冷たい配管の表面で結露する | 配管の保温材の状態(第22回) |
国土技術政策総合研究所は、通気層について、夏季には「外装からの日射熱を排出させる効果もあります」と説明しています。屋根の通気層と小屋裏換気は、この熱を逃がす役割を持ちます。
3. 冬に起きること
| 起きること | 仕組み | 見るところ |
|---|---|---|
| 室内の水蒸気が上がる | 暖かい空気は上へ動く。天井の隙間から小屋裏へ | 点検口、照明器具の穴、換気扇のまわり |
| 野地板が冷える | 外気に接しているため、夜間に大きく冷える | 野地板の裏面(点検口から見える範囲) |
| 野地板の裏に水がつく | 露点に達すると水になる | 黒いシミ、白い跡、垂れた跡 |
| 釘の先が濡れる | 金属は熱を伝えやすく、先に冷える | 野地板から出た釘の先 |
| 断熱材の上面が湿る | 上がってきた水蒸気が断熱材の上で冷える | 断熱材の上面の色 |
| 天井にシミが出る | 結露水が落ちる | 室内側の天井(第21回と切り分ける) |
「雨漏りだと思ったら結露だった」ということがあります
- 天井のシミは、雨漏りでも結露でも出ます。切り分けは「いつ出るか」です(第14回)
- 雨の日・雨の翌日に出るなら、雨水の浸入を疑う材料になります(第21回)
- 寒い時期の朝に出る、雨と関係なく出るなら、結露を疑う材料になります
- 日付・天気・前日の天気を記録してください。1シーズン分そろうと、判断の材料になります
4. 天井の隙間から上がるもの
小屋裏に水蒸気が入る経路は、天井面にあります。天井は面としてつながっているように見えて、いくつも穴が開いています。
| 経路 | どんな穴か | 対処の考え方 |
|---|---|---|
| 小屋裏点検口 | 蓋の周囲の隙間 | 気密性のある点検口にする設計がある |
| ダウンライト | 器具を入れるための穴 | 断熱施工に対応した器具がある |
| 換気扇・レンジフードのダクト | 天井を貫通する | 貫通部の処理 |
| 配線の貫通部 | 電線を通す穴 | 同上 |
| 壁と天井の取り合い | 面が切り替わる場所 | 防湿層の連続(第13回) |
| 和室の廻り縁・天井板の隙間 | 納まりによって隙間が残る | 構法による |
| 階段・吹き抜けの上部 | 空気が集まりやすい | 換気の計画(第27回) |
第13回で見た防湿層の考え方は、天井面にも当てはまります。面として連続していることが効いてきます。
5. 小屋裏で見る場所
| 見るところ | 見るもの | 考えられること |
|---|---|---|
| 野地板の裏 | 黒いシミ、白い跡、垂れた跡 | 結露または雨水の浸入 |
| 棟の付近 | 色の違い、濡れた跡 | 棟換気まわり、または雨水 |
| 垂木・母屋(もや) | 変色、カビ、腐朽 | 水が当たり続けた跡 |
| 断熱材の上面 | 厚さ、すき間、湿り、シミ | 室内からの水蒸気、または上からの水 |
| 換気孔のまわり | ふさがっていないか、虫の巣、埃 | 換気が働いているか(第20回) |
| 配管・ダクト | 保温材の状態、結露の跡 | 第22回で扱う |
| 点検口のまわり | 蓋の裏側の状態 | 水蒸気の出入り |
天井裏には上がらないでください
- 天井は、人の体重を支える構造ではありません。下地のない場所に足を乗せると踏み抜きます
- 小屋裏は暗く、釘の先が突き出ており、断熱材で足元が見えません
- 夏の小屋裏は高温になります。熱中症の危険があります
- 点検口からのぞいて、懐中電灯で照らして見るところまでにしてください
- 上がる必要がある場合は、専門の事業者に依頼してください。第29回でくわしく扱います
6. 記録のしかた
| 記録すること | 書き方の例 |
|---|---|
| 点検した日と天気 | 2026年10月19日 晴/前日:雨 |
| 点検口の位置 | 2階廊下の天井 |
| 開けた時間帯 | 午前10時 |
| 小屋裏の体感 | 外より少し暑い。こもったにおいはない |
| 野地板の状態 | 棟の近くに黒いシミ(写真①)。範囲は30cm角ほど |
| 断熱材 | 厚さは均一。北側の端に薄い部分あり |
| 換気孔 | 軒裏に2か所確認。ふさがりなし |
| 次回 | 2027年2月(冬の状態を見る) |
夏と冬の両方で見ることに意味があります。夏は熱とこもり、冬は結露の跡。片方だけでは、その家の状態の半分しか見えません。
7. よくある質問
Q. 小屋裏に入ったことがありません。点検すべきですか。
A. 点検口の位置を確かめて、開けてのぞいてみるところから始めてください。2階の廊下やクローゼットの天井にあることが多い場所です。上がる必要はありません。懐中電灯で照らして、野地板の裏の色と、断熱材の状態を見るだけでも情報が得られます。
Q. 小屋裏点検口が見当たりません。
A. 住宅の構法や間取りによっては、点検口が設けられていない場合があります。また、押入れの天井や、階段の上部にある場合もあります。図面があれば記載があります。見つからない場合、外から換気孔の有無を確認する方法があります(第20回)。
Q. 屋根の断熱と天井の断熱、どちらがよいですか。
A. どちらにも設計上の考え方があります。天井断熱は、小屋裏を外として扱い、小屋裏換気で空気を動かします。屋根断熱は、小屋裏を室内側として扱い、屋根の通気層で湿気を抜きます。第7回で見た床断熱と基礎断熱の関係と似ています。大事なのは、自分の家がどちらの考え方で作られているかを知ることです。
Q. 小屋裏に換気扇をつければ改善しますか。
A. 空気を動かす手段のひとつではあります。ただし、第9回で見たとおり、外気の湿度が高い時期には乾燥につながらない場合があります。また、換気孔が足りているかどうかが先にあります(第20回)。まず、換気孔の有無と位置を確認してください。
Q. 野地板に黒いシミがあります。カビですか。
A. 黒いシミは、カビの可能性も、水が通った跡の可能性もあります。範囲・形・場所(棟に近いか、軒に近いか、釘のまわりか)を記録してください。雨と連動して広がるなら雨水の浸入(第21回)、寒い時期に出るなら結露を疑う材料になります。文部科学省のカビ対策マニュアルは、色素の除去は困難としています。表面を拭くだけでは戻らない場合があります。
8. まとめ
- 小屋裏は、夏は屋根の熱、冬は室内からの水蒸気という2つの条件を抱えている
- 夏は熱とこもり、冬は野地板の裏の結露が起きやすい
- 天井面には点検口・ダウンライト・ダクト・配線の穴があり、そこから水蒸気が上がる
- 見るのは、野地板の裏・棟の付近・垂木・断熱材の上面・換気孔
- 天井裏には上がらない。点検口からのぞく
- 夏と冬の両方で見る。片方だけでは半分しか見えない
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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回
全体像(第1〜3回)
- 第1回(10/1)家のカビは見えている場所だけではない|床下・壁の中・小屋裏で起きていること
- 第2回(10/2)建物に水が来る4つの出所|雨・地面・室内・配管
- 第3回(10/3)家の断面で見るカビ|基礎から屋根まで、湿気が通る道
床下・基礎(第4〜10回)
- 第4回(10/4)床下のカビはなぜ起きるのか|地面からの水蒸気と床下の温度
- 第5回(10/5)床下換気の基準|施行令22条の換気孔と、ベタ基礎の考え方
- 第6回(10/6)防湿コンクリート・防湿フィルム|「地面を覆う」とは何をしていることか
- 第7回(10/7)床断熱と基礎断熱、カビ目線でどう違うか
- 第8回(10/8)床下の点検で何を見るか|におい・白い粉・土台の色・水の跡
- 第9回(10/9)床下調湿材・床下換気扇は効くのか|公的資料で確認できること
- 第10回(10/10)シロアリとカビ|同じ水分条件で起きる2つの被害
壁の中・外壁(第11〜18回)
- 第11回(10/11)壁の中で何が起きているのか|内部結露という現象
- 第12回(10/12)通気層の役割|壁の中の湿気を外へ出す仕組み
- 第13回(10/13)防湿層はなぜ室内側にあるのか
- 第14回(10/14)冬型結露と夏型結露|壁の中で逆向きに起きる
- 第15回(10/15)断熱材の種類とカビ|繊維系・発泡系で水分の振る舞いが違う
- 第16回(10/16)石膏ボードと壁紙|下地までカビが入るとき
- 第17回(10/17)外壁のひび割れ・シーリング|雨が壁の中に入る経路
- 第18回(10/18)サイディングとモルタル|外壁材で変わる水の逃げ方
小屋裏・屋根(第19〜22回)
- 第19回(10/19)小屋裏のカビ|なぜ夏と冬の両方で起きるのか(この記事)
- 第20回(10/20)小屋裏換気の基準|方式で変わる換気孔の面積
- 第21回(10/21)屋根の雨漏りとカビ|「滴る」前に起きていること
- 第22回(10/22)天井裏の配管・ダクト|結露する場所が決まっている理由
開口部・水まわり(第23〜27回)
- 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
- 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
- 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
- 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
- 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)
点検と改修(第28〜31回)
- 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
- 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
- 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
- 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)
参考資料(一次情報)
- 国土技術政策総合研究所「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」 小屋裏換気孔の有効面積、外壁通気層15mm以上、床下換気孔300cm²/4m以内
- 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」 夏型結露の定義、気密・換気・通気の役割分担、材料の熱伝導率
- 住宅金融支援機構【フラット35】在来木造の耐久性基準 基礎高さ40cm以上、防湿コンクリート6cm以上、防湿フィルム0.1mm以上
- 国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」 10年間の瑕疵担保責任の対象部分、住宅性能表示基準10分野33項目
- 文部科学省「カビ対策マニュアル」基礎編 水分活性Aw0.6以下、相対湿度60%以下、色素の除去は困難
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」 相対湿度40〜70%、温度18〜28℃
- 気象庁 東京の月別平年値(1991〜2020年) 6月の平均相対湿度75%、7月76%
