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カビ取り屋の知恵袋

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外壁のひび割れ・シーリング|雨が壁の中に入る経路

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

第14回で、「雨の翌日に出る」という手がかりを挙げました。第17回は、その雨がどこから壁の中に入るかを見ていきます。

外壁は、雨を受ける一次防水です。その内側に透湿防水シートという二次防水があり、あいだに通気層(第12回)があります。外壁に水が入ること自体は、想定されています。

問題になるのは、入った水が抜けないときと、二次防水を越えて内側へ入るときです。

この記事で分かること

  • 一次防水と二次防水という考え方
  • 雨が壁の中に入る主な経路
  • ひび割れの幅と、判断の目安(0.2mm)
  • シーリングの劣化の見かた
  • 品確法で10年間の責任が定められている部分

1. 結論:外壁は「一次防水」

図1 外壁で受け、通気層で逃がし、シートで止める
  1. 外壁材(一次防水)が雨の大半を受けます。ただし、完全に止めることは前提にされていません
  2. 通気層が、入った水を下へ逃がします。国土技術政策総合研究所は、通気層の最も重要な役割を「一次防水層である外装材から浸入する雨水を外皮の外へ逃がすこと」としています
  3. 透湿防水シート(二次防水)が、内側への侵入を止めます

この3段構えが働いていれば、多少の水は処理されます。どこかが欠けたときに、壁の中へ入ります。

2. 雨が壁の中に入る経路

図2 面より、継ぎ目と開口部
表1 雨が壁の中に入る主な経路
経路 起きること 外から見えるか
外壁材のひび割れ ひびを伝って裏側へ入る 見える
目地のシーリングの劣化 切れ目から入る 見える
サッシまわりの取り合い 窓の上下・左右の継ぎ目から入る 一部見える
貫通部(換気フード・配管・エアコン) 穴のまわりから入る 見える
バルコニーの防水・立ち上がり 床面から壁の中へ回る 上から見える
屋根との取り合い(けらば・雨押え) 上から落ちた水が壁へ入る 見えにくい
基礎と外壁の境目 跳ね返りの水が入る 見える

面よりも、継ぎ目と開口部が入口になります。外壁の点検で見るのは、平らな面ではなく、線と穴のまわりです。

3. ひび割れの見かた

国立研究開発法人建築研究所の資料は、外壁の改修工法を選ぶ判定フローのなかで、ひび割れ幅0.2mmを閾値として示しています。

表2 外壁のひび割れに関する数値と判定(建築研究所の資料より)
観点 示されていること
改修工法選定の閾値 ひび割れ幅が0.2mm以上、またははく落があるか、で分岐する
浮き代の区分 1.0mm以下と1.0mmを超えるもので、注入材の使い分けが分かれる
調査方法 打診法と赤外線サーモグラフィ法。打診法は「比較的簡易な方法」で「誰でも実施可能」だが「人為的な判断誤差が発生しやすい」
ひび割れの挙動 発生時期を初期(数時間〜1日)・中期(数日)・長期(数10日以上)に分類。長期に発生するものが耐久性に悪影響を及ぼす

用語のたしかめ

注意:ここで挙げた0.2mmは、外装仕上げの改修工法を選ぶための閾値として示された数値です。住宅の外壁でひび割れが何mmなら雨が入る、という基準ではありません。幅だけで判断せず、場所・向き・長さ・貫通しているかどうかとあわせて見てください。

表3 ひび割れの記録のしかた
ひび割れの見え方 記録すること 考えかた
髪の毛ほどの細い線が網目状 範囲、向き 表層の乾燥収縮によることがある
まっすぐ縦に長く伸びる 長さ、幅(定規を当てて写真) 下地の動きに沿っていることがある
開口部の角から斜めに出る 窓のどの角か 力が集まる場所に出やすい
ひびの縁が欠けている、段差がある 段差の有無 動きが続いている可能性
ひびから水がしみた跡がある 雨の翌日に撮る 水が通っている手がかり

4. シーリングの劣化

シーリングは、外壁材の継ぎ目や、サッシとの取り合いを埋める材料です。ゴム状で、動きに追従します。年数とともに性質が変わります。

表4 シーリングの劣化の見え方
劣化の見え方 状態 見るところ
表面にひびが入る 弾力が落ちている 日射の強い南・西面
痩せて溝ができる 体積が減っている 目地の全長
外壁材との境目が切れている 接着が切れた(剥離) 指で触らず、目視と写真で
シーリングそのものが割れている 破断 同上
変色・べたつき 材料の変質 同上
サッシまわりだけ劣化が早い 動きと日射が集まる 窓の四周

シーリングを自分で打ち増ししないでください

  • 古いシーリングの上に重ねると、接着せずに浮くことがあります
  • ふさいではいけない目地があります。通気を確保するための目地や、水を抜くための開口をふさぐと、入った水の逃げ道がなくなります(第12回)
  • 外壁材の種類によって、使えるシーリングの種類が変わります
  • 高所の作業は転落の危険があります。地上から見える範囲にとどめてください

5. 開口部まわり

表5 開口部まわりで見るところ
場所 入りやすい理由 見るところ
サッシの上端 上から流れた水が集まる 庇の有無、シーリングの状態
サッシの下端 水が溜まりやすい 水切りの形、シーリングの切れ
サッシの左右 縦の目地と交差する 取り合いの納まり
換気フード 穴を開けた部分 フードのまわりのシーリング、フード自体の傾き
エアコンの配管穴 後から開けた穴のことがある 屋外側のパテ・カバーの状態
雨戸・シャッターの箱 形が複雑 箱の下端、外壁との取り合い

窓まわりの結露が壁の中に入る話は第23回で扱います。ここでは外から入る水の話です。同じ場所で、外からと内からの両方が起きることがあります。

6. 法的な位置づけ

国土交通省の資料によれば、住宅品質確保法により、新築住宅の基本構造部分について10年間の瑕疵担保責任が定められています。その対象には、雨水の浸入を防止する部分が含まれます。

表6 10年間の瑕疵担保責任の対象(国土交通省資料より)
区分 木造戸建(在来軸組)の場合の対象
構造耐力上主要な部分 基礎・壁・柱・小屋組・土台・斜材・床版・屋根版・横架材
雨水の浸入を防止する部分 屋根・外壁・開口部
(RC造共同住宅の場合) 上記に加えて排水管も含まれる

外壁と開口部は、この対象に入っています。新築から10年以内に雨水の浸入が疑われる場合は、施工した会社に相談してください。記録(いつ・どこに・どんな状態で)が判断の材料になります。

7. 自分で見るときの順番

図3 晴れた日に一周、雨の翌日にもう一周
表7 外壁を見るタイミング
タイミング 見るもの 記録
晴れた日 外壁を一周。ひび割れ、シーリング、貫通部 全体と、気になる箇所の接写
雨の翌日 同じ場所を一周。濡れ方の違い しみた跡、乾き方のむら
室内側 同じ壁の室内側。シミ、浮き、におい 位置を外と対応させる
年1〜2回 同じ順番で繰り返す 前回の写真と比べる

見るときの安全

  • 屋根・バルコニーの手すりの外・脚立の上からの作業はしないでください。転落の危険があります
  • 地上から見える範囲と、窓から見える範囲にとどめてください
  • 望遠で撮った写真は、後日の相談に使えます
  • 高所の確認が必要な場合は、専門の事業者に依頼してください

8. よくある質問

Q. 外壁にひびがありますが、すぐ直すべきですか。

A. 幅だけでは決まりません。場所(開口部の角か、面の中央か)、向き、長さ、水がしみた跡があるか、室内側に変化があるかをあわせて見てください。国立研究開発法人建築研究所の資料は、外装仕上げの改修工法を選ぶ判定で0.2mmという閾値を示していますが、これは住宅の外壁で雨が入るかどうかの基準ではありません。記録を残し、外壁の改修を検討する時期とあわせて相談するのが現実的です。

Q. シーリングは何年で打ち替えるものですか。

A. 製品と部位、日射の条件で変わります。南面・西面は劣化が早い傾向があります。年数で一律に決めるより、状態を見て判断するほうが実際に合います。表面のひび、痩せ、外壁材との境目の切れを、年1〜2回の点検で記録してください。

Q. 外壁塗装をすれば、雨漏りは止まりますか。

A. 塗装は外壁材の表面を保護するもので、ひび割れやシーリングの劣化が原因の浸入を止める工事とは別です。塗装の前に、ひび割れの処理とシーリングの打ち替えを行う工程が組まれることがあります。見積りの内訳で、下地処理とシーリングがどう扱われているかを確認してください。

Q. 雨の日だけ室内の壁にシミが出ます。

A. 雨水の浸入を疑う手がかりです。第2回の「いつ濡れるか」の切り分けでいうと、雨と連動するなら結露や配管ではない可能性が高くなります。シミの位置の真上・外側に何があるか(窓、換気フード、バルコニー、屋根の取り合い)を確かめてください。新築10年以内であれば、施工した会社にも相談できます。

Q. 通気層があれば、多少のひび割れは大丈夫ですか。

A. 通気層は、入った水を下へ逃がす仕組みです。国土技術政策総合研究所は、通気層の最も重要な役割を「一次防水層である外装材から浸入する雨水を外皮の外へ逃がすこと」としています。ただし、入る量が多ければ処理が追いつかず、二次防水を越えることがあります。また、通気層の入口・出口がふさがっていれば逃がせません(第12回)。

9. まとめ

  • 外壁は一次防水。通気層で逃がし、透湿防水シートで止める3段構え
  • 入口になるのは面ではなく、継ぎ目と開口部
  • 建築研究所の資料は、外装仕上げの改修工法選定でひび割れ幅0.2mmを閾値として示している
  • シーリングは年数より状態で見る。ふさいではいけない目地がある
  • 品確法の10年の対象に、屋根・外壁・開口部が含まれる
  • 晴れた日と雨の翌日に、同じ順番で一周して記録する。屋根には上らない

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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回

全体像(第1〜3回)

床下・基礎(第4〜10回)

壁の中・外壁(第11〜18回)

小屋裏・屋根(第19〜22回)

開口部・水まわり(第23〜27回)

  • 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
  • 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
  • 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
  • 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
  • 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)

点検と改修(第28〜31回)

  • 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
  • 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
  • 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
  • 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)

参考資料(一次情報)

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