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カビ取り屋の知恵袋

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壁の中で何が起きているのか|内部結露という現象

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

ここまで10回、床下を見てきました。第11回からは壁の中に入ります。

壁の中は、床下よりもさらに見えにくい場所です。点検口もなく、開けるには内装か外装を壊すことになります。それでも、この場所で起きていることを知っておく理由があります。国土技術政策総合研究所のメンテナンスガイドラインは、部位内結露について「発見が遅れるうえに乾燥しにくく、最も厄介な水分供給現象の一つ」と記しています。

この記事では、内部結露という現象を分解します。水蒸気がどこから来て、どこで冷えて、どう抜けていくのか。建物側にどんな仕組みが用意されているのか。公的資料に書かれていることだけを並べます。

この記事で分かること

  • 表面結露と内部結露が、見つかりかたの点でどう違うか
  • 壁の中に水蒸気が入ってくる経路
  • 壁の層構成と、どこで温度が下がるのか
  • 気密・防湿・通気という3つの役割分担(国土技術政策総合研究所)
  • 外壁通気層の厚さ15mm以上、防湿層のJIS A 6930という具体的な数値
  • 内部結露を疑うサインと、室内の湿度・温度について公的基準が示す範囲

1. 結論:内部結露は「見えない」「乾きにくい」

図1 壁の層を室内側から外側へ。通気層は外装材の内側にある

先に結論を書きます。壁の中の結露がやっかいなのは、水の量が多いからではなく、見えないうえに乾きにくいからです。窓ガラスの結露は目に入りますし、拭けば減ります。壁の中はどちらもできません。

もう一つ。壁の中の水分は、断熱材や木部と接しています。官庁営繕部の資料は、腐朽菌についてセルロース等の栄養源・20〜35℃・水分・酸素、カビについて25〜30℃・木材表面が濡れること・塵埃を条件として挙げています。壁の中は、このうち温度と栄養がもともとそろっている場所です。足りないのは水分だけ、という見かたもできます。

表1 表面結露と内部結露の違い
表面結露 内部結露
起きる場所 窓ガラス、サッシ、壁の室内側表面 断熱材の中、下地材の裏、通気層の内側
気づきかた 目で見える。触ると濡れている 直接は見えない
乾きかた 拭く、換気する、暖房で乾く 外へ抜ける経路がなければ残りやすい
影響が出る場所 壁紙・カーテン・サッシまわり 構造材・断熱材・下地材
気づくまでの時間 当日 長い場合がある

表1の最下段が、この現象の性質を表しています。内部結露は、起きていること自体が伝わりにくい現象です。だからこそ、起きた後に対処するより、起きにくい仕組みを確かめるほうが現実的という順番になります。

2. 壁の中に、水蒸気はどこから来るのか

図2 室内側から入る経路と、外装側から入る経路

壁の中の水分には、いくつかの出所があります。国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、気密の役割について「室内の水蒸気を換気部分以外の屋外側の外皮へ侵入させないようにして内部結露を防ぎ」と記しています。この一文は、室内の水蒸気が壁の中へ入りうることを前提にしています。

表2 壁の中に水分が入ってくる経路
経路 何が入るか 関係する仕組み
室内から(透湿) 水蒸気 防湿層
室内から(漏気) 水蒸気を含んだ空気 気密層
外装材から(雨水) 液体の水 通気層・二次防水層
外気から(透湿) 水蒸気 通気層
配管・設備から 液体の水 配管まわりの処理
施工時の残留水分 建材が含んでいた水 乾燥期間

同じ資料は、灯油の燃焼について「灯油1Lの燃焼で水蒸気1.13kg」という数値を示しています。開放型の暖房器具を使うと、それだけの水蒸気が室内に加わる計算になります。室内で発生した水蒸気が、壁の中へ向かう分が出てくるという話です。

雨水は「入らないようにする」だけではない

国土技術政策総合研究所のガイドライン(案)は、通気層について「最も重要な役割は一次防水層である外装材から浸入する雨水を外皮の外へ逃がすこと」と述べています。ここは読みかたが分かれるところです。外装材は雨をすべて止める前提ではなく、入ってきた分を逃がす道をつくっておくという設計思想です。

住宅の品質確保の促進等に関する法律では、雨水の浸入を防止する部分として屋根・外壁・開口部が10年間の瑕疵担保責任の対象に挙げられています。外壁が対象に入っているのは、この部分を通って水が入りうるためと読めます。

3. 壁の層を、室内側から外側へ

在来木造の外壁を室内側から順に並べると、おおよそ次のようになります。構成は工法によって変わりますが、役割の並びかたはおおむね共通しています。

表3 外壁の層と役割(室内側から外側へ)
順 層 役割
1 内装材(石膏ボード・壁紙など) 室内の仕上げ
2 防湿層(防湿フィルム) 室内の水蒸気が壁の中へ入る量を抑える
3 断熱材 熱の移動を抑える
4 構造用面材・柱・間柱 構造
5 二次防水層(透湿防水シートなど) 入ってきた雨水を止める
6 通気層(胴縁) 湿気と雨水を外へ逃がす
7 外装材(サイディング・モルタルなど) 一次防水層

温度は、この並びのどこかで下がります。冬であれば外側ほど冷たく、夏に冷房をしていれば室内側ほど冷たくなります。水蒸気を含んだ空気が、露点より冷たい面に触れたときに結露が起きます。つまり、壁のどのあたりが冷えているかで、結露が起きうる位置が変わります。冬と夏で向きが逆になる話は、本連載の第14回で扱います。

断熱材の性能は区分で示されている

国土交通省の資料(別添2)は、断熱材を熱伝導率で区分しています。同じ厚さでも、区分が違えば熱の通しやすさが変わります。

表4 断熱材の区分と熱伝導率(国土交通省の資料より)
区分 熱伝導率[W/(m・K)]
A-1 0.052〜0.051
A-2 0.050〜0.046
B 0.045〜0.041
C 0.040〜0.035
D 0.034〜0.029
E 0.028〜0.023
F 0.022以下

参考までに、国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は材料の熱伝導率としてアルミ200、樹脂(PVC)0.17、ヒノキ・スギ0.12、ガラス1、空気0.0241、アルゴン0.0164 W/mKを挙げています。空気が小さい値であることが、通気層や中空層が効く理由の一端を説明しています。

4. 気密・防湿・通気の役割分担

図3 3つの仕組みは、それぞれ別の役割を持っている

国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、気密・換気・通気は、いずれかが欠けても耐久性に影響するという趣旨の整理をしています。同じ資料から、それぞれの役割を引くと次のようになります。

表5 3つの仕組みと、示されている数値
仕組み 役割(公的資料の記載) 関係する数値・規格
気密層 室内の水蒸気を、換気部分以外から屋外側の外皮へ侵入させないようにする C値は床面積1m²当たりの隙間(cm²/m²)。実測値
防湿層 室内で発生した水蒸気の壁内への流入量を抑制させる 断熱材の室内側。JIS A 6930 に適合する住宅用プラスチック系防湿フィルム
通気層(外壁) 壁内の湿気を排出し、雨水の浸入を防止する。夏季は日射熱を排出させる効果もある 厚さ15mm以上の胴縁。通気層15〜21mm、入口(土台水切り部)10〜15mm程度
通気層(屋根) 屋根内の湿気を排出する 厚さ30mm以上
24時間換気 室内の空気を入れ替える 建築基準法施行令20条の8により0.5回/時

防湿層が室内側にある理由

防湿層は断熱材の室内側、内装材と断熱材の間に置かれます。国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、防湿層について「室内で発生した水蒸気の壁内への流入量を抑制させることが可能となり、内部結露が発生しにくくなります」と記しています。また「特に寒冷地で透湿抵抗の低い断熱材を使用する場合は…別張りとなる防湿シートを設置することが推奨されます」とも述べています。

なぜ室内側なのかという理屈は、本連載の第13回で改めて扱います。ここでは、入り口を絞る層(防湿層)と、出口をつくる層(通気層)が、壁の内側と外側に分かれて置かれているという配置だけを押さえておきます。

この配置は、床下で見てきた考えかたと同じ形をしています。地面を覆って入り口を絞り、換気孔で出口をつくる。床下の例は第6回と第5回にあります。

5. 内部結露を疑うサインと、確認できること

壁の中は開けられません。そのため、室内側に出てくる手がかりから推測することになります。以下はサインであって、それだけで内部結露と判断できるものではありません。

表6 室内側に出てくる手がかり
手がかり 見かた 別の原因として考えられること
壁の一部だけが黒ずむ 柱や間柱の位置と一致していないか 家具の裏で空気が動いていない
壁紙の継ぎ目が浮く 面の広がりかたを見る 施工後の乾燥収縮
同じ場所に繰り返し出る 季節との関係を記録する 結露以外の水の出所
コンセント周辺が湿る 気密の処理と関係することがある 配管の漏れ
冷房時と暖房時で場所が違う 向きが逆になる現象と整合するか 使いかたの違い
においだけがする 床下・小屋裏からの可能性も考える 換気不足

壁の中を直接見るには、内視鏡(ファイバースコープ)を使う、含水率計で木部の水分を測る、サーモグラフィで表面温度の分布を見る、といった方法があります。それぞれ分かることと分からないことがありますので、本連載の第30回でまとめて扱います。

室内の湿度と温度について、公的基準が示す範囲

壁の中の話をする前に、室内側でできることがあります。室内の水蒸気量が減れば、壁の中へ向かう分も減ると考えられるためです。

表7 室内環境について公的資料が示す範囲
資料 項目 示されている値
厚生労働省 建築物環境衛生管理基準 相対湿度 40%以上70%以下
厚生労働省 建築物環境衛生管理基準 温度 18℃以上28℃以下
文部科学省 カビ対策マニュアル カビ対策としての湿度 相対湿度60%以下
文部科学省 カビ対策マニュアル 水分活性 Aw 0.6以下
建築基準法施行令 第20条の8 住宅居室の換気回数 0.5回/時

室内側でできること

  • 24時間換気の電源を切らない(国土技術政策総合研究所「省エネと結露」)
  • 開放型の暖房器具を使う場合は、換気とあわせて考える(灯油1Lの燃焼で水蒸気1.13kg)
  • 家具を壁から少し離し、空気が動く隙間をつくる
  • 同じ場所に繰り返し出るなら、日付と場所を記録しておく

6. よくある質問

Q. 壁の中の結露は、どうすれば確かめられますか。

A. 外から確かめる方法として、含水率計による木部の測定、サーモグラフィによる表面温度の確認、点検口や配管の開口部からの内視鏡による確認などが挙げられます。ただし、いずれも分かる範囲に限りがあります。室内側の手がかり(表6)と、季節との関係を記録しておくことが、調査の出発点になります。

Q. 断熱材を厚くすれば、内部結露は起きにくくなりますか。

A. 断熱材の厚さだけで決まる現象ではありません。国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、気密・換気・通気のいずれかが欠けても耐久性に影響するという趣旨を示しています。断熱材とあわせて、防湿層・気密層・通気層がどう構成されているかが関わります。また同資料は、寒冷地で透湿抵抗の低い断熱材を使う場合に、別張りの防湿シートの設置が推奨されると記しています。

Q. 壁紙の裏にカビが出ました。壁の中まで入っていますか。

A. 壁紙の裏で止まっている場合と、石膏ボードの先まで進んでいる場合があります。見た目だけでは分かりにくいところです。石膏ボードと壁紙の関係は本連載の第16回で扱います。

Q. 通気層があるかどうかは、どこで分かりますか。

A. 新築時の図面や仕様書に記載があります。外観では、外壁の下端にある水切りの部分や、軒天の見切り縁のあたりに通気の経路が設けられていることがあります。国土技術政策総合研究所のガイドライン(案)は、通気層の入口を土台水切り部で10〜15mm程度、出口を小屋裏換気孔または軒天見切り縁に通気させると記しています。

Q. 結露は冬だけの問題ではないのですか。

A. 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、夏型結露について冷房で温度の低い床下で屋外の水分が水滴になる場合、雨で水分を含んだ外装材が日射で焙られて外壁内で水滴になる場合を挙げています。冬と夏で、水蒸気が向かう向きが逆になるという整理です。詳しくは第14回で扱います。

7. まとめ

  • 内部結露は「見えない」「乾きにくい」。国土技術政策総合研究所は最も厄介な水分供給現象の一つと記している
  • 壁の中に入る水分には、室内からの透湿・漏気、外装材からの雨水、外気からの透湿などの経路がある
  • 通気層の最も重要な役割は、外装材から浸入する雨水を外皮の外へ逃がすこと
  • 外壁通気層は厚さ15mm以上の胴縁、通気層15〜21mm、入口10〜15mm程度。屋根は30mm以上
  • 防湿層は断熱材の室内側。JIS A 6930 に適合する住宅用プラスチック系防湿フィルム
  • 気密・換気・通気は、いずれかが欠けても耐久性に影響するとされる
  • 室内側では、相対湿度40〜70%(厚労省)、カビ対策としては60%以下(文科省)が示されている
  • 壁の中は直接見えないため、室内側の手がかりと季節の記録が調査の出発点になる

次回は、通気層そのものを取り上げます。壁の中の湿気を外へ出す仕組みが、どういう形で用意されているのかを見ていきます。

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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回

全体像(第1〜3回)

床下・基礎(第4〜10回)

壁の中・外壁(第11〜18回)

小屋裏・屋根(第19〜22回)

開口部・水まわり(第23〜27回)

  • 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
  • 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
  • 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
  • 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
  • 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)

判断・点検・改修(第28〜31回)

  • 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
  • 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
  • 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
  • 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)

参考資料(一次情報)

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