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カビ取り屋の知恵袋

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通気層の役割|壁の中の湿気を外へ出す仕組み

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

前回、壁の中に水分が入ってくる経路を整理しました。入り口を絞る層として防湿層があり、出口をつくる層として通気層がある、というところまで見ました。

第12回は、その出口のほうを取り上げます。通気層は、外壁のすぐ内側にある数センチのすき間です。この数センチが何をしているのか、どんな寸法が示されているのかを、公的資料から確かめます。

先に一つ、意外に思われるかもしれない点を書いておきます。国土技術政策総合研究所のガイドライン(案)は、通気層の最も重要な役割を「一次防水層である外装材から浸入する雨水を外皮の外へ逃がすこと」と記しています。湿気を逃がすことより先に、雨水が挙がっています。

この記事で分かること

  • 通気層の最も重要な役割が、湿気ではなく「雨水を逃がすこと」とされていること
  • 外壁通気層は厚さ15mm以上の胴縁、通気層15〜21mm、入口10〜15mm程度、屋根は30mm以上
  • 通気層の入口と出口がどこにあるか
  • 通気層が果たす3つの役割(雨水の排出・湿気の排出・夏の日射熱の排出)
  • 通気層が働かなくなる原因
  • 外から確かめられること、確かめられないこと

1. 結論:第一の役割は「入ってきた雨水を逃がす」こと

図1 通気層の位置と、公的資料に示されている寸法

外装材は、雨をすべて止める前提では設計されていません。サイディングの目地、モルタルの細かなひび、シーリングの劣化部など、水が入りうる場所は複数あります。そのため、外装材は「一次防水層」と呼ばれ、その内側に「二次防水層」(透湿防水シートなど)が置かれます。

通気層は、この一次防水層と二次防水層のあいだにあります。入ってきた水が二次防水層で止まり、通気層を通って下へ落ち、外へ出ていく。この道をつくっているのが通気層です。

住宅の品質確保の促進等に関する法律では、雨水の浸入を防止する部分として屋根・外壁・開口部が10年間の瑕疵担保責任の対象に挙げられています。外壁が対象に入っているのは、この部分が水の入り口になりうるためと読めます。

表1 通気層について示されている寸法
箇所 示されている寸法 出典
外壁の通気層(胴縁) 厚さ15mm以上 国土技術政策総合研究所ガイドライン(案)
外壁の通気層 15〜21mm 同上
通気層の入口(土台水切り部) 10〜15mm程度 同上
通気層の出口 小屋裏換気孔または軒天見切り縁に通気させる 同上
屋根の通気層 厚さ30mm以上 同上
床下換気孔(参考) 有効換気面積300cm²以上を間隔4m以内ごと 同上

表1の最下段は床下の数値です。本連載の第5回で扱いました。床下も壁も、「覆う層」と「通す層」を組み合わせるという考えかたは同じです。

2. 通気層はどのように作られているか

外壁の通気層は、多くの場合「胴縁」と呼ばれる細い木材を並べることでつくられます。二次防水層の上に胴縁を留め、その上に外装材を張る。胴縁の厚さがそのまま通気層の厚さになります。ガイドライン(案)が示す厚さ15mm以上という数値は、この胴縁の厚さを指しています。

表2 通気層をつくる要素
要素 役割 確認したいこと
胴縁 外装材と二次防水層のあいだにすき間をつくる 厚さが確保されているか
二次防水層 通気層に入った水を室内側へ通さない 施工されているか、重ねしろが取れているか
土台水切り 通気層の入口をつくり、水を外へ落とす ふさがれていないか
軒天見切り縁・換気部材 通気層の出口をつくる 出口が設けられているか
開口部まわりの処理 窓の上下で通気が途切れないようにする 迂回する経路があるか

横胴縁と縦胴縁

胴縁を縦に流すか横に流すかで、空気の通りやすさが変わります。縦に流せば下から上へ素直に抜けますが、横に流すと胴縁が空気の流れをさえぎる形になります。そのため横胴縁の場合は、胴縁に切り欠きを設けるなどして、通気の経路をつなぐ方法が取られます。どちらの納まりかは、新築時の仕様書や図面に記載があります。

3. 入口と出口|下から入って、上へ抜ける

図2 入口は土台水切り部、出口は軒天または小屋裏へ

通気層は、下に入口があり、上に出口があります。暖まった空気は上へ動きますので、下から入った空気が上へ抜けるという流れになります。この流れが成り立つには、入口と出口の両方が開いている必要があります。

表3 入口と出口の位置
位置 示されている寸法・仕様
入口 外壁の下端、土台水切りの部分 10〜15mm程度
通気の経路 胴縁のあいだ 厚さ15mm以上、通気層15〜21mm
出口(軒がある場合) 軒天の見切り縁 通気させる
出口(小屋裏へ抜ける場合) 小屋裏換気孔 方式ごとに有効面積の比率が示されている
屋根側の通気層 野地板の下 厚さ30mm以上

出口が小屋裏につながっている場合、小屋裏側の換気がそのまま通気層の出口の条件になります。ガイドライン(案)は小屋裏換気孔の有効面積について、妻壁(吸排気両用)1/300、軒裏(吸排気両用)1/250、軒裏(吸気)+妻壁(排気)で各1/900、軒裏(吸気)+棟または排気筒(排気)で軒裏1/900・棟1/1,600という比率(天井面積に対する比率)を示しています。小屋裏側の話は、本連載の第20回で扱います。

4. 通気層が果たす3つの役割

国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、通気層について「壁内や屋根内などの湿気を排出したり、雨水の浸入を防止したり」する働きを挙げ、夏季には「外装からの日射熱を排出させる効果もあります」と記しています。ガイドライン(案)の記述とあわせると、次の3つに整理できます。

表4 通気層の3つの役割
役割 内容 公的資料の記載
① 雨水を逃がす 外装材から浸入した雨水を、外皮の外へ排出する 「最も重要な役割は一次防水層である外装材から浸入する雨水を外皮の外へ逃がすこと」(ガイドライン(案))
② 湿気を逃がす 壁内や屋根内の湿気を外気へ排出する 「壁内や屋根内などの湿気を排出したり」(省エネと結露)
③ 熱を逃がす 夏季に外装材が受けた日射熱を排出する 「夏季は外装からの日射熱を排出させる効果もあります」(省エネと結露)

③は、夏型結露と関わります。同資料は夏型結露について、雨で水分を含んだ外装材が日射で焙られ、外壁内で水滴になる場合を挙げています。外装材が受けた熱と水分が、そのまま壁の中へ向かうのを減らす、という位置づけです。夏型結露そのものは、本連載の第14回で扱います。

通気層だけでは成り立たない

同じ資料は、気密・換気・通気は、いずれかが欠けても耐久性に影響するという趣旨を示しています。通気層は出口をつくる仕組みであって、入ってくる量そのものを減らす仕組みではありません。入り口を絞る防湿層・気密層と組み合わせて働く、という前提です。3つの役割分担は第11回にまとめています。

5. 通気層が働かなくなるとき

図3 入口がふさがれる、経路が途切れる、出口がない

通気層は、空気の道です。道のどこかが切れていれば、下から上への流れは成り立ちません。起こりうる状態を並べます。

表5 通気層が働かなくなる原因と、起こりうること
原因 状態 起こりうること
入口がふさがれる 外構の土やコンクリートが水切りまで上がっている 空気が入らない。水も落ちにくい
入口がふさがれる 植栽や物置が外壁下端に接している 同上
経路が途切れる 横胴縁に切り欠きがない 窓の上や胴縁の位置で流れが止まる
経路が途切れる 開口部まわりで通気を迂回させていない 窓の上下で滞留する
出口がない 軒天に通気部材が入っていない 上へ抜けない
出口がない 小屋裏換気孔がふさがれている 同上
そもそも通気層がない 直張り工法などで胴縁がない 入った水の逃げ道がない

外まわりで確かめやすいこと

  • 外壁の下端(土台水切り)に、土や砂利、コンクリートが接していないか
  • 外壁と地面のあいだに、すき間が確保されているか
  • 軒天に通気部材(有孔ボードや見切り縁)が入っているか
  • 物置・エアコン室外機・植栽が、外壁の下端をふさいでいないか

なお、外装材のひび割れについては、建築研究所の資料がひび割れ幅0.2mm以上またははく落の有無で改修工法を分岐するという考えかたを示しています。外壁のひび割れとシーリングは、本連載の第17回で扱います。

6. 通気層の有無や状態は、どこまで確かめられるか

表6 確かめられること/確かめにくいこと
確かめかた 分かること 限界
新築時の図面・仕様書 通気層の有無、胴縁の向きと厚さ 施工が図面どおりとは限らない
外壁下端の目視 入口がふさがれていないか 層の内部までは見えない
軒天の目視 出口の部材があるか 経路が通じているかは分からない
外壁と窓の取り合いの目視 シーリングの状態 内部の納まりは見えない
赤外線サーモグラフィ 表面温度の分布 温度差の原因までは特定できない
打診法 外装材の浮き 通気層の通気状態は分からない

建築研究所の資料は、外壁タイル張りやセメントモルタル下地の調査方法として打診法と赤外線サーモグラフィ法を挙げ、浮き代については1.0mmという区分を示しています。外装材の状態と、通気層が通じているかどうかは別の話ですが、外壁の調査ではこの2つが一緒に扱われることがあります。

結局のところ、通気層が設計どおり働いているかを外から断定することは難しいというのが実際です。そのため、確かめられるところ(入口と出口)を押さえ、室内側に出てきた手がかりと合わせて考えるという進めかたになります。室内側の手がかりは第11回の表にまとめています。

7. よくある質問

Q. 通気層があれば、壁の中のカビは起きませんか。

A. 通気層は出口をつくる仕組みです。入ってくる水分の量、断熱や気密の状態、雨水の浸入など、他の条件も関わります。国土技術政策総合研究所は、気密・換気・通気のいずれかが欠けても耐久性に影響するという趣旨を示しています。通気層ひとつで決まる話ではない、という位置づけになります。

Q. 古い家には通気層がないと聞きました。

A. 外装材を下地に直接張る納まりの場合、通気層がないことがあります。通気層の有無は、新築時の図面や仕様書で確認するのが確実です。通気層がない場合でも、室内側の水蒸気を減らす、雨水の入り口を減らすという方向は残ります。改修で通気を確保する方法もありますが、外装の張り替えを伴うことが多くなります。

Q. 外壁の下に土を盛ってしまいました。問題がありますか。

A. 土台水切りの部分は通気層の入口にあたります。ガイドライン(案)は入口を10〜15mm程度としています。ここが土やコンクリートでふさがれると、空気が入らないだけでなく、通気層に入った水が下へ落ちにくくなります。あわせて、建築基準法施行令 第49条第2項は地面から1m以内の柱・筋かい・土台に防腐・防蟻の措置を求めています。地面が上がると、この範囲の考えかたにも影響します。

Q. 通気層に断熱材を詰めたほうが暖かくなりませんか。

A. 通気層は空気を通すためのすき間です。ここを埋めると、雨水と湿気の出口がなくなります。ガイドライン(案)が通気層の最も重要な役割として挙げているのは、外装材から浸入する雨水を外へ逃がすことです。断熱を強化する場合は、通気層とは別の層で考えることになります。断熱改修については本連載の第31回で扱います。

Q. 軒のない家は不利ですか。

A. 軒の出については、住宅金融支援機構【フラット35】の耐久性基準が、防腐・防蟻の措置の選択肢のひとつとして軒の出90cm以上を挙げています。軒は外壁にかかる雨の量に関わります。ただし軒が短い場合でも、通気層・二次防水層・開口部まわりの処理で対応する考えかたがあります。軒がないこと自体が結論になるわけではありません。

8. まとめ

  • 通気層の最も重要な役割は「外装材から浸入する雨水を外皮の外へ逃がすこと」とされている
  • 外壁の通気層は厚さ15mm以上の胴縁、通気層15〜21mm、入口(土台水切り部)10〜15mm程度
  • 屋根の通気層は厚さ30mm以上。出口は軒天見切り縁または小屋裏換気孔
  • 通気層の役割は3つ。雨水の排出、湿気の排出、夏季の日射熱の排出
  • 通気層は出口をつくる仕組み。入り口を絞る防湿層・気密層と組み合わせて働く
  • 入口がふさがれる、経路が途切れる、出口がない――このいずれでも流れは止まる
  • 外から確かめやすいのは入口(土台水切り)と出口(軒天)。層の内部は見えない
  • 外構で土や砂利を外壁の下端まで上げると、入口がふさがれることがある

次回は、防湿層がなぜ室内側にあるのかを扱います。入り口を絞る層の位置には、理由があります。

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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回

全体像(第1〜3回)

床下・基礎(第4〜10回)

壁の中・外壁(第11〜18回)

小屋裏・屋根(第19〜22回)

開口部・水まわり(第23〜27回)

  • 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
  • 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
  • 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
  • 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
  • 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)

判断・点検・改修(第28〜31回)

  • 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
  • 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
  • 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
  • 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)

参考資料(一次情報)

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