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カビ取り屋の知恵袋

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屋根の雨漏りとカビ|「滴る」前に起きていること

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

雨漏りというと、天井から水が滴る場面を思い浮かべます。ただし、滴るのは、かなり進んだ段階です。

その前に、野地板が濡れ、断熱材が水を含み、木部が湿った状態が続いています。滴る前の段階で気づければ、範囲は小さくて済みます。

第21回では、屋根から入った水がどこを通るか、滴る前にどんなサインが出るかを整理します。

この記事で分かること

  • 屋根から入った水が通る経路
  • 「滴る」までに起きている段階
  • 雨漏りと結露の切り分けかた
  • 天井のシミから読み取れること
  • 品確法で10年間の責任が定められている部分

1. 結論:滴るのは最後の段階

図1 入る→溜まる→伝う→滴る
表1 雨漏りが滴るまでの段階
段階 起きていること 外から分かるか
①入る 屋根材の下、または取り合いから水が入る 分からない
②溜まる 野地板・垂木・断熱材が水を含む 分からない
③広がる 含んだ水が周囲へ広がり、カビ・腐朽の条件になる においで気づくことがある
④伝う 重力に従って低いほうへ移動する 天井のシミとして出る
⑤滴る 天井材を通り抜けて落ちる 見える

④の時点で気づくことが目標です。天井のシミは、入った場所の真下とは限りません。伝って移動しているためです。

2. 屋根から入る経路

図2 面ではなく、取り合いと貫通部
表2 屋根で水が入りやすい場所
場所 どこか 入りやすい理由
谷(たに) 2つの屋根面が谷状に交わる線 水が集まる。落ち葉が溜まりやすい
棟(むね) 屋根のいちばん高い線 部材の継ぎ目。風で吹き上げられる
けらば・軒先 屋根の端 風雨が回り込む
壁との取り合い 屋根が外壁にぶつかる部分(雨押え) 納まりが複雑。シーリングに頼る部分がある
天窓(トップライト) 屋根に開けた開口 四周の納まり
屋根の貫通部 換気扇のフード、アンテナの支柱、太陽光の架台 穴を開けた部分
雨樋 詰まると溢れて壁・軒へ回る 落ち葉、泥

第17回の外壁と同じで、面よりも取り合いと貫通部が入口になります。屋根材そのものが割れていなくても、取り合いから入ることがあります。

屋根には上らないでください

  • 屋根の上での確認は、転落の危険があります。とくに雨のあとは滑ります
  • 地上から、また2階の窓から見える範囲にとどめてください
  • 望遠で撮った写真、または脚立を使わずに撮れる範囲の写真で十分な情報が得られます
  • 高所の確認が必要な場合は、専門の事業者に依頼してください

3. 雨漏りと結露を切り分ける

天井のシミは、雨漏りでも結露でも出ます。第14回で見た「いつ出るか」で切り分けます。

表3 雨漏りと結露の切り分け
手がかり 雨水の浸入を疑う 結露を疑う
出るタイミング 雨の日、雨の翌日 寒い時期の朝、季節で決まる
雨との連動 大雨のあとに広がる 雨と関係なく出る
風との関係 特定の風向きの雨で出る 関係しない
シミの形 輪郭がはっきりし、外側に濃い縁ができる ぼんやり広がる、点状に散る
場所 取り合い・貫通部の下 外気に接する面、断熱の切れ目
季節 梅雨・台風の時期 冬(または夏型結露:第14回)

用語のたしかめ

両方が同時に起きていることもあります。雨で入った水が断熱材を湿らせ、そこが冬に冷えて結露する、という重なり方です。片方だけと決めつけず、記録を積んでください。

4. 天井のシミから読み取る

表4 天井のシミの見え方
シミの見え方 考えられること 次に見るところ
天井の中央に円形 上から落ちた水が広がった 真上の小屋裏。ただし入口は別の場所の可能性
壁際に沿って線状 壁と天井の取り合いを伝った 外壁との取り合い、屋根と壁の取り合い
照明器具のまわり 器具の穴から落ちた 器具の真上。感電の危険があるため触らない
天井の隅(角) 2面が交わる場所に集まった 外壁の角、軒先
以前のシミが濃くなる 再発、または進行 前回との写真の比較
シミの縁が茶色く濃い 水が乾いたときに成分が縁に残った 雨水の浸入の手がかり

照明器具のまわりが濡れている場合

  • すぐに、その回路のブレーカーを落としてください。感電・漏電の危険があります
  • 濡れた器具に触れないでください
  • 電気工事の資格を持つ事業者、または電力会社に連絡してください
  • 写真は、安全な距離から撮ってください

5. 滴る前に気づくためのサイン

図3 におい・音・建具・小屋裏
表5 滴る前のサイン
サイン 見かた・聞きかた 関連する回
こもったにおい 2階の部屋、押入れ、階段の上部 第28回
天井の色むら 明るいときに、斜めから見る この回
クロスの浮き・つなぎ目の開き 天井面の壁紙 第16回
雨のときだけ音がする ぽたぽた、ぴちゃ、という音 この回
建具の動きが変わる 2階の扉が閉まりにくい 第28回
小屋裏の野地板の裏 黒いシミ、白い跡、垂れた跡 第19回
雨樋から溢れる 雨のときに、樋の途中から水が落ちる この回

とくに小屋裏の点検(第19回)は、滴る前に気づける数少ない手段です。年1〜2回、点検口からのぞいて、野地板の裏の状態を写真に残してください。

6. 品確法と相談先

国土交通省の資料によれば、住宅品質確保法により、新築住宅の基本構造部分について10年間の瑕疵担保責任が定められています。

表6 10年間の瑕疵担保責任の対象(国土交通省資料より)
区分 木造戸建(在来軸組)の場合の対象
雨水の浸入を防止する部分 屋根・外壁・開口部
構造耐力上主要な部分 基礎・壁・柱・小屋組・土台・斜材・床版・屋根版・横架材
期間 引渡しから10年間
表7 状況別の相談先
状況 相談先
新築10年以内 まず施工した会社へ。記録(日付・天気・場所・写真)を添えて
10年を超えている 屋根工事の事業者、またはリフォーム事業者
どこから入っているか分からない 雨漏り調査を行う事業者。散水調査等の方法がある
カビが広がっている カビの調査・除去を行う事業者。ただし水の出所を先に止める
照明器具・配線が濡れている ブレーカーを落として、電気工事の事業者へ
火災保険の適用を検討する 契約している保険会社へ。風災等の扱いは契約による

費用は、屋根の形状・面積・足場の要否・原因の特定に要する調査で変わります。現地調査のうえでの見積りが前提になり、現地を見ずに出る金額は目安にとどまります。

7. よくある質問

Q. 天井のシミの真上が雨漏りの場所ですか。

A. 限りません。入った水は垂木や野地板を伝い、低いほうへ移動してから落ちます。入口とシミの位置が数メートル離れていることもあります。小屋裏から野地板の裏を見て、濡れた跡の広がりをたどるのが、位置を絞る手がかりになります。

Q. 雨漏りを自分で補修してもよいですか。

A. 屋根の上での作業は転落の危険があるため、おすすめしません。また、原因の場所が分からないままシーリングで埋めると、水の逃げ道をふさいで別の場所から出ることがあります(第17回)。応急として室内側で受ける(バケツ、養生)ところまでにして、原因の特定は専門の事業者に依頼してください。

Q. 雨漏りが止まれば、カビも止まりますか。

A. 水の供給が止まれば、条件は減ります。ただし、すでに濡れた断熱材や木部が乾くまでには時間がかかります。また、文部科学省のカビ対策マニュアルは、色素の除去は困難としています。濡れた材料の扱い(乾かすか、交換するか)は、範囲と状態で判断が変わります。

Q. 屋根を葺き替えれば安心ですか。

A. 屋根材を新しくすることは、一次防水を更新することにあたります。ただし、取り合いや貫通部の納まり、下葺き材(ルーフィング)の施工、小屋裏換気の扱い(第20回)もあわせて確認してください。工事の際には、棟換気を残す(または設ける)かどうかも伝えてください。

Q. 雨漏りしているかどうか、雨の日に確かめるべきですか。

A. 雨の最中と、雨の翌日の両方で見ると情報が増えます。雨の最中は音と滴りが分かり、翌日はシミの形と乾き方が分かります。ただし、雨の日に屋根や高所に近づかないでください。室内側と、地上・窓からの観察にとどめてください。

8. まとめ

  • 滴るのは最後の段階。入る→溜まる→広がる→伝う→滴る、と進む
  • 入口は面ではなく、谷・棟・けらば・壁との取り合い・天窓・貫通部
  • 雨漏りと結露は「いつ出るか」で切り分ける。両方が重なることもある
  • 天井のシミの真上が入口とは限らない。伝って移動する
  • 照明器具のまわりが濡れていたら、ブレーカーを落として電気工事の事業者へ
  • 品確法の10年の対象に、屋根・外壁・開口部が含まれる
  • 滴る前に気づくには、小屋裏の点検が有効。屋根には上らない

手に負えないカビは、お近くのカビバスターズへ

自分で試して2回落ちない、面積が広い、壁や床の内側から出ている、においが消えない――そうしたカビは、原因調査から入る専門業者の領域です。MIST工法®カビバスターズは全国に加盟店があります。まずはお近くの店舗、または本部にご相談ください。

連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回

全体像(第1〜3回)

床下・基礎(第4〜10回)

壁の中・外壁(第11〜18回)

小屋裏・屋根(第19〜22回)

開口部・水まわり(第23〜27回)

  • 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
  • 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
  • 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
  • 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
  • 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)

点検と改修(第28〜31回)

  • 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
  • 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
  • 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
  • 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)

参考資料(一次情報)

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