執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。
第19回で、小屋裏には夏と冬の両方から条件が来ると書きました。第20回は、その空気を動かすための換気孔の基準です。
床下の換気孔には「300cm²以上を4m以内ごと」という数字がありました(第5回)。小屋裏にも数字があります。ただし、床下と違って方式によって必要な面積が変わるのが特徴です。
この記事では、国土技術政策総合研究所のガイドライン(案)が示す方式別の比率を整理し、自分の家の換気孔をどう確かめるかを見ていきます。
この記事で分かること
- 小屋裏換気の方式が4通りあること
- 方式ごとに必要な換気孔の面積の比率
- 【フラット35】の耐久性基準が示していること
- 換気孔を外から確かめる方法
- 換気孔がふさがる原因
1. 結論:方式で必要な面積が変わる
国土技術政策総合研究所の「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」は、小屋裏換気孔の有効面積を天井面積に対する比率で示しています。
| 方式 | 必要な有効面積(天井面積に対する比率) |
|---|---|
| 妻壁の両側に設ける(吸排気両用) | 天井面積の1/300 |
| 軒裏に設ける(吸排気両用) | 天井面積の1/250 |
| 軒裏に吸気+妻壁に排気 | 各々1/900 |
| 軒裏に吸気+棟(または排気筒)に排気 | 吸気1/900、排気1/1,600 |
用語のたしかめ
比率の数字は、小さいほど必要な面積が小さいという意味です。1/1,600は1/250より小さな面積で済みます。吸気と排気を離して配置し、空気の通り道を長くとると、少ない開口でも流れがつくれるという考え方です。
2. 計算してみる
比率だけでは分かりにくいので、天井面積を50m²として計算してみます。実際の設計は建物ごとに異なります。ここでは比率の意味を掴むための例です。
| 方式 | 計算 | 必要な有効面積の目安 |
|---|---|---|
| 妻壁両側(吸排気両用) | 50m² ÷ 300 | 約0.167m²(=約1,670cm²) |
| 軒裏(吸排気両用) | 50m² ÷ 250 | 約0.200m²(=約2,000cm²) |
| 軒裏吸気+妻壁排気 | 50m² ÷ 900(各々) | 各々 約0.056m²(=約556cm²) |
| 軒裏吸気+棟排気 | 吸気 50÷900/排気 50÷1,600 | 吸気 約556cm²/排気 約313cm² |
「有効面積」であることに注意
- 換気孔には、虫の侵入を防ぐ網や、雨の吹き込みを防ぐ部材が組み合わされます
- 網や部材でふさがれる分を差し引いた面積が有効面積です。開口の見かけの寸法ではありません
- 第5回で見た床下換気孔も、同じく「有効換気面積」で示されています
- 設計の確認は、図面と施工した会社に依頼してください
3. 【フラット35】が示していること
住宅金融支援機構の【フラット35】在来木造の耐久性基準は、小屋裏換気について次のように示しています。
| 項目 | 示されていること |
|---|---|
| 小屋裏換気 | 独立した小屋裏ごとに、換気上有効な位置に2か所以上の換気孔を設ける |
| 床下換気(参考・第5回) | 有効換気面積300cm²以上を間隔4m以下ごと、または1mあたり有効面積75cm²以上 |
| 基礎の高さ(参考) | 地面から基礎の上端または土台下端まで40cm以上 |
| 防腐・防蟻(参考・第10回) | 地面からの高さ1m以内の部分。軒の出90cm以上という選択肢もある |
ここで大事なのは「独立した小屋裏ごとに」という部分です。増築や複雑な屋根形状で小屋裏が分かれている場合、それぞれに換気孔が要るという考え方になります。
4. 換気孔を外から確かめる
| 位置 | 名称 | 見え方 | 確かめかた |
|---|---|---|---|
| 屋根の三角の壁面 | 妻換気(つまかんき) | 三角の壁に格子状の開口 | 離れて見上げる。両側にあるか |
| 軒の裏側 | 軒裏換気(のきうらかんき) | 軒天に細長い有孔の部材 | 真下から見上げる |
| 屋根の頂部 | 棟換気(むねかんき) | 棟に沿った部材 | 離れた場所から。上らない |
| 屋根面の途中 | 排気筒・換気棟 | 突き出た部材 | 同上 |
| 小屋裏の内側 | 換気孔の裏側 | 点検口から光が入るか | 昼間に点検口を開けて見る |
点検口から見て、換気孔の方向から光が入っていれば、開口が通じている手がかりになります。真っ暗で光が入らない場合、開口がないか、ふさがっている可能性があります。
5. 換気孔がふさがる原因
| 原因 | 起きること | 見るところ |
|---|---|---|
| 外壁の塗装 | 軒裏の有孔部材が塗料で埋まる | 軒天を見上げて、穴が残っているか |
| 屋根の葺き替え | 棟換気の納まりが変わる | 工事の前後で写真を比べる |
| 鳥・虫の巣 | 開口がふさがる | 軒裏、妻壁の開口 |
| 埃・断熱材 | 内側からふさがる | 点検口から見える範囲で |
| 断熱材の吹き込み | 軒裏の吸気口まで断熱材が来る | 断熱材と軒の関係 |
| 増築 | 独立した小屋裏ができ、換気孔がない区画が生まれる | 屋根の形と、点検口の数 |
| 太陽光パネルの設置 | 棟換気や屋根面の納まりが変わる場合がある | 設置前に確認する |
工事のときに伝えること
- 外壁塗装のときは、軒裏の換気口を塗りつぶさないでほしいと伝えてください
- 屋根の工事のときは、棟換気を残す(または設ける)かどうかを確認してください
- 断熱材を吹き込む工事のときは、軒の吸気口をふさがないかを確認してください
- 同じ理由で、通気層の入口(第12回)と床下換気口(第5回)もふさがないでください
6. 屋根断熱の場合
| 天井断熱 | 屋根断熱 | |
|---|---|---|
| 断熱材の位置 | 天井面 | 屋根面(垂木のあいだなど) |
| 小屋裏の扱い | 外として扱う | 室内側として扱う |
| 換気の考え方 | 小屋裏換気(この記事の比率) | 屋根の通気層で抜く |
| 屋根の通気層 | — | ガイドライン(案)は厚さ30mm以上を示している |
| 夏の小屋裏の温度 | 外気に近い。高温になる | 室温に近づく |
| 見分けかた | 点検口から見て、天井面に断熱材がある | 屋根面(勾配なり)に断熱材がある |
第7回で見た床断熱と基礎断熱の関係と同じ構図です。小屋裏を外として扱うか、室内として扱うかで、換気の考え方が変わります。自分の家がどちらかを、点検口から確かめてください。
7. よくある質問
Q. 自分の家の換気孔が足りているか、自分で計算できますか。
A. 天井面積と換気孔の有効面積が分かれば、比率の計算はできます。ただし、有効面積は網や部材でふさがれる分を差し引いた値であり、外から見た開口の寸法とは違います。また、方式の判定(吸排気両用か、吸気と排気を分けているか)も要ります。目安として比率を知っておき、正確な確認は図面と施工した会社に依頼してください。
Q. 換気孔が片側にしかありません。
A. 【フラット35】在来木造の耐久性基準は、独立した小屋裏ごとに換気上有効な位置に2か所以上の換気孔を設けるとしています。片側だけでは空気の通り道ができにくくなります。ただし、別の位置(軒裏や棟)に開口がある場合もあります。まず、妻壁・軒裏・棟の3か所を一通り確認してください。
Q. 棟換気は後から取り付けられますか。
A. 屋根の工事として施工されることがあります。ただし、屋根材の種類と納まり、既存の防水層の扱いによって方法が変わります。屋根の上の工事になるため、専門の事業者に依頼してください。費用は屋根の形状・面積・既存の状態で変わるため、現地調査のうえでの見積りが前提になります。
Q. 小屋裏換気を増やせば、夏の2階の暑さは改善しますか。
A. 小屋裏の熱がこもりにくくなる方向には働きます。ただし、2階の室温は、天井の断熱、屋根材、窓からの日射、間取りなど複数の要因で決まります。小屋裏換気だけで決まるものではありません。また、梅雨から夏の外気は湿っているため(東京の平年値で6月75%、7月76%)、湿気の面では入れたぶんの水蒸気が入ります。
Q. 屋根断熱の家に、小屋裏換気は要りませんか。
A. 屋根断熱は小屋裏を室内側として扱う設計です。この場合、屋根の通気層で湿気を抜く考え方になります。国土技術政策総合研究所のガイドライン(案)は、屋根の通気層について厚さ30mm以上を示しています。設計の前提が違うため、天井断熱の家の基準をそのまま当てはめることはできません。第7回の床断熱・基礎断熱と同じ考え方です。
8. まとめ
- 小屋裏換気孔の面積は、天井面積に対する比率で示される
- 妻壁両側1/300、軒裏1/250、軒裏吸気+妻壁排気は各々1/900、軒裏吸気+棟排気は1/900と1/1,600
- 「有効面積」は、網や部材でふさがれる分を差し引いた値
- 【フラット35】は、独立した小屋裏ごとに換気上有効な位置に2か所以上としている
- 妻壁・軒裏・棟の3か所を外から確かめる。点検口から光が入るかも手がかり
- 塗装・葺き替え・断熱工事のときに、換気孔をふさがないよう伝える
- 屋根断熱の家は小屋裏を室内として扱う。屋根の通気層は厚さ30mm以上
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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回
全体像(第1〜3回)
- 第1回(10/1)家のカビは見えている場所だけではない|床下・壁の中・小屋裏で起きていること
- 第2回(10/2)建物に水が来る4つの出所|雨・地面・室内・配管
- 第3回(10/3)家の断面で見るカビ|基礎から屋根まで、湿気が通る道
床下・基礎(第4〜10回)
- 第4回(10/4)床下のカビはなぜ起きるのか|地面からの水蒸気と床下の温度
- 第5回(10/5)床下換気の基準|施行令22条の換気孔と、ベタ基礎の考え方
- 第6回(10/6)防湿コンクリート・防湿フィルム|「地面を覆う」とは何をしていることか
- 第7回(10/7)床断熱と基礎断熱、カビ目線でどう違うか
- 第8回(10/8)床下の点検で何を見るか|におい・白い粉・土台の色・水の跡
- 第9回(10/9)床下調湿材・床下換気扇は効くのか|公的資料で確認できること
- 第10回(10/10)シロアリとカビ|同じ水分条件で起きる2つの被害
壁の中・外壁(第11〜18回)
- 第11回(10/11)壁の中で何が起きているのか|内部結露という現象
- 第12回(10/12)通気層の役割|壁の中の湿気を外へ出す仕組み
- 第13回(10/13)防湿層はなぜ室内側にあるのか
- 第14回(10/14)冬型結露と夏型結露|壁の中で逆向きに起きる
- 第15回(10/15)断熱材の種類とカビ|繊維系・発泡系で水分の振る舞いが違う
- 第16回(10/16)石膏ボードと壁紙|下地までカビが入るとき
- 第17回(10/17)外壁のひび割れ・シーリング|雨が壁の中に入る経路
- 第18回(10/18)サイディングとモルタル|外壁材で変わる水の逃げ方
小屋裏・屋根(第19〜22回)
- 第19回(10/19)小屋裏のカビ|なぜ夏と冬の両方で起きるのか
- 第20回(10/20)小屋裏換気の基準|方式で変わる換気孔の面積(この記事)
- 第21回(10/21)屋根の雨漏りとカビ|「滴る」前に起きていること
- 第22回(10/22)天井裏の配管・ダクト|結露する場所が決まっている理由
開口部・水まわり(第23〜27回)
- 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
- 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
- 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
- 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
- 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)
点検と改修(第28〜31回)
- 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
- 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
- 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
- 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)
参考資料(一次情報)
- 国土技術政策総合研究所「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」 小屋裏換気孔の有効面積、外壁通気層15mm以上、床下換気孔300cm²/4m以内
- 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」 夏型結露の定義、気密・換気・通気の役割分担、材料の熱伝導率
- 住宅金融支援機構【フラット35】在来木造の耐久性基準 基礎高さ40cm以上、防湿コンクリート6cm以上、防湿フィルム0.1mm以上
- 国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」 10年間の瑕疵担保責任の対象部分、住宅性能表示基準10分野33項目
- 文部科学省「カビ対策マニュアル」基礎編 水分活性Aw0.6以下、相対湿度60%以下、色素の除去は困難
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」 相対湿度40〜70%、温度18〜28℃
- 気象庁 東京の月別平年値(1991〜2020年) 6月の平均相対湿度75%、7月76%
