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カビ取り屋の知恵袋

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防湿層はなぜ室内側にあるのか

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

前回は通気層――壁の中の水分を外へ出す層を扱いました。今回はその反対側、水分が入ってくる量を減らす層を見ます。

防湿層は、断熱材の室内側に置かれます。外側ではなく、内側です。なぜその位置なのか。ここには理由があり、理由が分かると「防湿層が切れやすい場所」も見当がつくようになります。

この記事は施工の手順書ではありません。公的資料に書かれていることを並べ、住んでいる側から見て何が関係するのかを整理します。

この記事で分かること

  • 水蒸気がどちら向きに動くのか、という基本的な考えかた
  • 防湿層が断熱材の室内側に置かれる理由
  • JIS A 6930 に適合する住宅用プラスチック系防湿フィルムという規定
  • 「入り口を絞る層」と「出口をつくる層」が、壁の内と外に分かれて置かれていること
  • 防湿層が切れやすい場所
  • 寒冷地で別張りの防湿シートが推奨される場合があること

1. 結論:水蒸気は湿った側から乾いた側へ動く

図1 冬、室内側のほうが水蒸気が多い。だから入口を絞る層は室内側に置かれる

先に結論です。水蒸気は、多いところから少ないところへ移ろうとします。空気の中に含まれる水蒸気の量に差があれば、その差を埋める向きに動きます。

冬の日本の住宅を考えます。室内では、調理・入浴・洗濯・人の呼気・暖房器具などから水蒸気が出ています。外は気温が低く、空気が含める水蒸気の量も少なくなります。つまり冬は、室内側のほうが水蒸気が多い状態です。

水蒸気が室内側から壁の中へ向かうのであれば、止めるなら入口、つまり室内側ということになります。国土技術政策総合研究所のガイドライン(案)は、防湿層を断熱材の室内側(内装材と断熱材の間)に置くものとして示しています。

表1 3つの層の位置と役割
層 位置 役割
気密層 外皮のすき間をふさぐ位置 室内の水蒸気を、換気部分以外から屋外側の外皮へ侵入させないようにする
防湿層 断熱材の室内側(内装材との間) 室内で発生した水蒸気の壁内への流入量を抑制させる
断熱材 壁の中 熱の移動を抑える
通気層 二次防水層と外装材のあいだ(屋外側) 壁内の湿気を排出し、外装材から入った雨水を外へ逃がす

表1を上から下へ読むと、室内側から屋外側へ向かって並んでいることが分かります。入口を絞る層が内側に、出口をつくる層が外側にある。これが配置の基本です。

2. 防湿層は何をする層なのか

国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、防湿層について次のように記しています。

防湿層の役割(国土技術政策総合研究所「省エネと結露」)

「室内で発生した水蒸気の壁内への流入量を抑制させることが可能となり、内部結露が発生しにくくなります」

注目したいのは「抑制」という語です。ゼロにする、という書きかたではありません。入ってくる量を減らす層である、という位置づけです。だからこそ、出口をつくる通気層と組み合わせる前提になります。

材料には規格がある

ガイドライン(案)は、防湿層に使う材料としてJIS A 6930 に適合する住宅用プラスチック系防湿フィルムを示しています。透湿抵抗(水蒸気の通しにくさ)が規格で定められた材料を使う、という考えかたです。

表2 防湿層について示されている事項
項目 示されている内容 出典
位置 断熱材の室内側(内装材と断熱材の間) 国土技術政策総合研究所ガイドライン(案)
材料 JIS A 6930 に適合する住宅用プラスチック系防湿フィルム 同上
役割 室内で発生した水蒸気の壁内への流入量を抑制させる 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」
寒冷地での注意 透湿抵抗の低い断熱材を使用する場合は、別張りとなる防湿シートの設置が推奨される 同上
気密との関係 気密は室内の水蒸気を換気部分以外から屋外側の外皮へ侵入させないようにする 同上

防湿と気密は同じではない

混同されやすいところです。防湿は「材料を透って入る水蒸気」を減らす話、気密は「すき間から空気ごと入る」のを減らす話です。同じシートが両方を兼ねる納まりもありますが、狙っているものは別です。材料をいくら透しにくくしても、横にすき間が空いていれば空気はそこを通ります。

3. 室内で水蒸気はどれくらい出ているか

防湿層の話をする前に、そもそも室内にどれだけ水蒸気が加わっているかを見ておきます。国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、灯油1Lの燃焼で水蒸気1.13kgという数値を示しています。開放型の石油ストーブやファンヒーターを使うと、燃やした分だけ水蒸気が室内に加わる計算です。

表3 室内で水蒸気が加わる場面
場面 内容 対応の方向
開放型暖房器具 灯油1Lの燃焼で水蒸気1.13kg(国土技術政策総合研究所) 換気とあわせて考える
調理 加熱・煮炊きで水蒸気が出る レンジフードを使う
入浴 浴室から水蒸気が広がる 入浴後に浴室の換気を続ける
洗濯物の室内干し 干した分の水分が室内へ 除湿または換気とあわせる
人の呼気・発汗 在室人数に応じて増える 24時間換気を止めない
加湿器 意図して水蒸気を加える 湿度計で確認しながら使う

24時間換気の電源は切らない

国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、24時間換気の電源を切らないことを求めています。建築基準法施行令 第20条の8は、住宅の居室について換気回数0.5回/時を定めています。入り口を絞る防湿層があっても、室内の水蒸気そのものが増え続ければ条件は変わります。

4. 入り口を絞る層と、出口をつくる層

図2 内側で絞り、外側で逃がす。床下でも壁でも同じ組み合わせ

この連載を通して繰り返し出てくる形があります。入ってくる量を減らす仕組みを内側に、出ていく道をつくる仕組みを外側に置くという組み合わせです。

表4 同じ組み合わせが、場所を変えて出てくる
場所 入り口を絞る(覆う) 出口をつくる(通す) 本連載
床下 防湿コンクリート・防湿フィルム 床下換気孔(300cm²以上を4m以内ごと) 第6回・第5回
壁 防湿層(JIS A 6930)・気密層 通気層(厚さ15mm以上の胴縁) この回・第12回
屋根・小屋裏 天井面の防湿・気密 屋根通気層(30mm以上)・小屋裏換気孔 第19〜20回
室内全体 発生する水蒸気を減らす 24時間換気(0.5回/時) この回・第27回

国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、気密・換気・通気は、いずれかが欠けても耐久性に影響するという趣旨を示しています。防湿層だけを強化しても、出口がなければ入った分は残ります。逆に通気層だけを確保しても、入ってくる量が多ければ追いつかないことがあります。組み合わせで見る、というのがこの整理の要点です。

5. 防湿層が切れやすい場所

図3 面ではなく「点」と「線」で切れる

防湿層はフィルムです。面としてはつながっていても、何かを貫通させるところ、端部、他の部材と取り合うところで切れます。住んでいる側から直接確かめることは難しい部分ですが、室内側に出てくる手がかりと結びつけて考えるときの材料になります。

表5 切れやすい場所と、そこで起きること
場所 状態 室内側に出る手がかり
コンセント・スイッチのボックス 壁を貫通する部材のまわり 周辺だけ冷たい、湿る
配管・配線の貫通部 穴を開けた部分の処理 同上
フィルムの重ね 重ねしろが足りない、留めが甘い 特定の線状に出る
天井と壁の取り合い 層が連続していない 天井際に沿って出る
床と壁の取り合い 同上 巾木の上に沿って出る
間仕切壁との取り合い 外壁の防湿層が途切れる 間仕切のつけ根に出る
照明・換気扇の開口 天井面の防湿が切れる 開口まわりに出る

表5の右列は、「面ではなく、線や点で出る」という共通点を持っています。壁一面が均一に黒ずむのではなく、コンセントのまわりだけ、天井際の一本だけ、という出かたをすることがあります。室内側の手がかりの見かたは第11回にまとめています。

リフォームのときに関わること

  • 壁に穴を開ける工事(エアコンの配管、換気扇の増設、コンセントの増設)は、防湿層を貫通します
  • 内装のはがし替えでは、防湿層が現れることがあります。状態を写真に残しておくと後で役に立ちます
  • 断熱改修では、防湿層・気密層をどう扱うかが設計の一部になります(第31回で扱います)

6. 夏はどうなるのか、寒冷地ではどうか

ここまでは冬を前提に書いてきました。夏はどうなるのか、という疑問が出てきます。

国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、夏型結露について冷房で温度の低い床下で屋外の水分が水滴になる場合、雨で水分を含んだ外装材が日射で焙られて外壁内で水滴になる場合を挙げています。冷房をしていれば、室内側のほうが温度が低くなります。冬とは向きが変わる、という整理です。

表6 冬と夏で変わること(概略)
冬(暖房時) 夏(冷房時)
温度が高い側 室内側 屋外側
水蒸気が多い側 室内側になりやすい 屋外側になりやすい
冷える面の位置 壁の外側寄り 壁の室内側寄り
関係する仕組み 防湿層・気密層 通気層・外装材の日射熱の排出
詳しく扱う回 この回 第14回

寒冷地では別張りが推奨される場合がある

国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、「特に寒冷地で透湿抵抗の低い断熱材を使用する場合は…別張りとなる防湿シートを設置することが推奨されます」と記しています。断熱材そのものに防湿の機能が備わっている製品もありますが、材料の種類と地域の条件によって、別に防湿シートを張るという考えかたが示されています。

断熱材の種類による違いは、本連載の第15回で扱います。国土交通省の資料は、断熱材を熱伝導率でA-1(0.052〜0.051)からF(0.022以下)まで[W/(m・K)]に区分しています。ただしこの区分は熱の通しやすさの区分であって、水分の振る舞いの区分ではありません。そこは分けて読む必要があります。

7. よくある質問

Q. 防湿層があるかどうかは、住んでいる側から分かりますか。

A. 新築時の図面や仕様書に記載があります。現物を見るには内装をはがすことになりますので、リフォームで壁を開ける機会があれば、そのときに写真を残しておくのが現実的です。築年数によっては、防湿層が設けられていない場合もあります。

Q. 防湿層がない家は、どうすればよいですか。

A. 入り口を絞る層がない場合、室内の水蒸気そのものを減らす方向と、出口(通気層・換気)を確保する方向が残ります。厚生労働省の建築物環境衛生管理基準は相対湿度40%以上70%以下、文部科学省のカビ対策マニュアルはカビ対策として相対湿度60%以下を示しています。湿度計を置いて、数値で見るところから始められます。

Q. 壁紙の上からビニールを貼れば、防湿層の代わりになりますか。

A. 防湿層は断熱材の室内側、内装材の裏に連続して設けられる層です。仕上げの上に貼るものとは位置も納まりも違います。また、仕上げ面を透しにくくすると、そこに入った水分が乾きにくくなるという別の問題が出る場合があります。自己流の対応は避け、状態の確認から入るほうが確実です。

Q. 内窓をつけたら、壁の結露は減りますか。

A. 内窓は窓まわりの断熱性能に関わるもので、壁の中の防湿層とは別の話です。窓の表面結露が減る一方、室内の水蒸気量そのものは変わりません。国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、材料の熱伝導率としてアルミ200、樹脂(PVC)0.17、ガラス1、空気0.0241、アルゴン0.0164 W/mKを挙げています。窓まわりの話は本連載の第23回で扱います。

Q. コンセントのまわりだけ黒ずんでいます。防湿層の問題ですか。

A. コンセントボックスは壁を貫通する部材で、防湿層や気密層の連続が切れやすい場所のひとつに挙げられます。ただし、家具の裏で空気が動いていない、配管が近くを通っている、といった別の原因も考えられます。季節との関係(冷房時か暖房時か)を記録しておくと、原因を絞る手がかりになります。

8. まとめ

  • 水蒸気は多いところから少ないところへ動く。冬は室内側のほうが多くなりやすい
  • だから入り口を絞る防湿層は、断熱材の室内側(内装材との間)に置かれる
  • 材料は JIS A 6930 に適合する住宅用プラスチック系防湿フィルムが示されている
  • 防湿層の役割は「流入量を抑制させる」こと。ゼロにする層ではない
  • 防湿は材料を透る水蒸気の話、気密はすき間から入る空気の話。狙いが違う
  • 入り口を絞る層(内側)と出口をつくる層(外側)の組み合わせは、床下でも壁でも同じ
  • 防湿層は面ではなく、貫通部・重ね・取り合いという点と線で切れやすい
  • 寒冷地で透湿抵抗の低い断熱材を使う場合、別張りの防湿シートの設置が推奨されている
  • 室内側では、24時間換気を止めない、相対湿度40〜70%(カビ対策としては60%以下)が目安

次回は、冬型結露と夏型結露を取り上げます。同じ壁の中で、季節によって向きが逆になる現象です。

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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回

全体像(第1〜3回)

床下・基礎(第4〜10回)

壁の中・外壁(第11〜18回)

小屋裏・屋根(第19〜22回)

開口部・水まわり(第23〜27回)

  • 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
  • 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
  • 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
  • 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
  • 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)

判断・点検・改修(第28〜31回)

  • 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
  • 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
  • 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
  • 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)

参考資料(一次情報)

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