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カビ取り屋の知恵袋

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断熱材の種類とカビ|繊維系・発泡系で水分の振る舞いが違う

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

「断熱材は何がいいですか」というご質問をいただくことがあります。カビの相談をきっかけに、壁の中の話へ進んだときです。

第15回は断熱材を扱います。ただし先にお断りしておくと、この記事は特定の断熱材をすすめる記事ではありません。公的資料で確認できることと、確認できていないことを分けて示します。

結論から書くと、公的資料ではっきり示されているのは熱伝導率の区分と、透湿抵抗の低い断熱材を寒冷地で使う場合の注意までです。材料ごとの水分の振る舞いを数値で比べた公的資料は、作成時点では確認できていません(要追加調査)。

この記事で分かること

  • 国土交通省が示す断熱材の区分と熱伝導率(A-1からFまで)
  • 熱伝導率の数値が、材料によってどれだけ違うか
  • 繊維系と発泡系で、形のつくりがどう違うか
  • 透湿抵抗という考えかたと、寒冷地での注意
  • 断熱材そのものより、施工の連続性が関わる場面
  • 公的資料で確認できていないこと(要追加調査として示します)

1. 断熱材の区分と熱伝導率

図1 国土交通省の資料による区分。数値が小さいほど熱を通しにくい

国土交通省の資料(別添2)は、断熱材を熱伝導率で区分しています。数値が小さいほど熱を通しにくいという関係です。

表1 断熱材の区分と熱伝導率(国土交通省の資料より)
区分 熱伝導率[W/(m・K)]
A-1 0.052〜0.051
A-2 0.050〜0.046
B 0.045〜0.041
C 0.040〜0.035
D 0.034〜0.029
E 0.028〜0.023
F 0.022以下

同じ厚さでも、区分が違えば熱の通しやすさが変わります。逆にいえば、区分が下のほうの材料を使えば、同じ性能をより薄い厚さで得られるという関係になります。ただしこれは熱の話であって、水分の話ではありません。ここは分けて読む必要があります。

ほかの材料と並べてみる

国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、材料の熱伝導率として次の値を挙げています。断熱材の区分(0.022〜0.052)と比べると、桁の違いが見えてきます。

表2 参考:材料の熱伝導率(国土技術政策総合研究所「省エネと結露」)
材料 熱伝導率[W/(m・K)] 備考
アルミ 200 金属。熱を伝えやすい
ガラス 1 ―
樹脂(PVC) 0.17 サッシの材料として使われる
ヒノキ・スギ 0.12 木材
断熱材 0.022〜0.052 国土交通省の区分A-1〜F
空気 0.0241 動かない空気
アルゴン 0.0164 複層ガラスに封入されることがある

表2の下2行に注目してください。動かない空気は、どの断熱材よりも熱を通しにくいという値になっています。多くの断熱材が「空気を動かないように閉じ込める」つくりになっているのは、この性質を利用しているためと読めます。

そしてこの点が、カビの話につながります。空気を閉じ込める形をしているということは、水分も留まりやすい形をしているという見かたができるためです。

2. 繊維系と発泡系|形のつくりが違う

図2 閉じ込めかたの違い。細い繊維のあいだか、独立した泡の中か

住宅用の断熱材は、形のつくりで大きく2つに分けられます。繊維系と発泡系です。どちらも空気を動かないようにするという目的は同じですが、閉じ込めかたが違います。

表3 形のつくりの違い
繊維系 発泡系
閉じ込めかた 細い繊維のあいだに空気を留める 樹脂の中に細かい泡をつくる
形 マット状・ボード状・吹き込み ボード状・吹き付け
主な例 グラスウール、ロックウール、セルロースファイバーなど 硬質ウレタンフォーム、押出法ポリスチレンフォームなど
施工のしかた 柱のあいだに充填する、天井に敷き込むなど ボードを張る、現場で吹き付けるなど
熱伝導率 国土交通省の区分で示される 同左

この記事で書かないこと

材料ごとの吸水量や透湿抵抗を数値で比べた公的資料は、作成時点では確認できていません。そのため「どちらがカビに強いか」という比較は、この記事では示しません。メーカーの試験値は各社の資料にありますので、検討の際はそちらを確認してください。

なお、国土交通省 大臣官房官庁営繕部の資料は、カビについて25〜30℃、木材表面が濡れること、塵埃を条件として挙げています。この条件は、断熱材の種類を問いません。水分があるかどうかが分かれ目になります。

3. 透湿抵抗という考えかた

熱の通しにくさが「熱伝導率」であるのに対し、水蒸気の通しにくさを表すのが透湿抵抗です。国土技術政策総合研究所「省エネと結露」は、この語を使って次のように記しています。

寒冷地での注意(国土技術政策総合研究所「省エネと結露」)

「特に寒冷地で透湿抵抗の低い断熱材を使用する場合は…別張りとなる防湿シートを設置することが推奨されます」

読みかたを整理します。透湿抵抗が低い=水蒸気を通しやすいということです。そういう材料を使う場合、入り口を絞る層(防湿シート)を別に用意するという考えかたが示されています。

つまり、材料そのものの善し悪しという話ではなく、材料の性質に応じて、組み合わせる層を変えるという設計の話です。防湿層の位置と役割は第13回で扱いました。

表4 公的資料で確認できること/確認できていないこと
項目 状況 出典・備考
断熱材の熱伝導率の区分 確認できる 国土交通省の資料(A-1〜F)
主な材料の熱伝導率 確認できる 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」
透湿抵抗が低い場合の注意 確認できる 同上(寒冷地で別張り防湿シートが推奨)
防湿層の材料規格 確認できる JIS A 6930(ガイドライン(案))
材料ごとの吸水量の比較 確認できていない 要追加調査
材料ごとの透湿抵抗の数値 確認できていない 要追加調査
どの断熱材がカビに強いか 確認できていない 要追加調査

4. 材料より、連続しているかどうか

図3 材料の種類より、切れ目のほうが条件をつくりやすい

ここまで材料の話をしてきましたが、実際に相談を受ける場面で関わることが多いのは断熱材が連続しているかどうかです。

断熱材が途切れると、そこだけ温度が変わります。温度が変わる面ができれば、水蒸気を含んだ空気が触れたときに結露が起きうる条件になります。結露の条件は第14回で整理しました。

表5 断熱が切れやすい場所と、出やすい手がかり
場所 状態 室内側に出る手がかり
柱・間柱の位置 柱は断熱材より熱を伝えやすい 柱の位置に沿って線状に出る
天井と外壁の取り合い 天井の断熱と壁の断熱がつながっていない 天井際に沿って出る
床と外壁の取り合い 同上 巾木の上に沿って出る
間仕切壁が外壁に取り付く位置 断熱材が途切れる つけ根に出る
充填の隙間・垂れ下がり 袋入りの断熱材が下がる、詰まっていない 壁の上部に出る
設備の貫通部 配管・配線まわりで欠ける 貫通部の周辺に出る
バルコニー・庇の取り付け部 外部の部材が構造とつながる 室内側の対応する位置に出る

表2で見たとおり、ヒノキ・スギは0.12、断熱材は0.022〜0.052です。木は断熱材より熱を伝えやすい材料です。そのため柱や梁の位置は、周囲と温度が変わりやすい場所になります。

「壁の一部だけが、縦の線状に黒ずむ」という出かたは、この構図と重なります。ただしこれは可能性の話であって、これだけで原因を特定できるものではありません。室内側の手がかりの見かたは第11回にまとめています。

5. 制度の側から見ると

住宅の品質確保の促進等に関する法律にもとづく日本住宅性能表示基準は、10分野33項目で構成されています。このうち劣化対策等級(構造躯体等)は必須評価項目とされています。

表6 住宅性能表示基準に関わる事項
項目 内容 出典
分野・項目数 10分野33項目 国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」
必須評価項目 劣化対策等級(構造躯体等)を含む 同上
断熱に関わる分野 ⑤温熱環境・エネルギー消費量 同上
空気に関わる分野 ⑥空気環境 同上
劣化対策等級3の目安 3世代(1世代25〜30年) 住宅性能評価・表示協会
瑕疵担保責任の対象 構造耐力上主要な部分/雨水の浸入を防止する部分(10年間) 国土交通省

温熱環境と空気環境が、別の分野として並んでいる点は押さえておきたいところです。断熱性能が高いことと、空気環境が良いことは、制度の上でも別の項目として扱われています。

6. よくある質問

Q. グラスウールはカビやすいと聞きました。本当ですか。

A. 材料ごとのカビの起こりやすさを比較した公的資料は、作成時点では確認できていません(要追加調査)。官庁営繕部の資料が挙げるカビの条件は25〜30℃、木材表面が濡れること、塵埃です。材料の種類ではなく、濡れるかどうかが条件として示されています。施工時の雨がかり、壁の中への水の浸入、施工の隙間など、水がどこから来ているかを先に確かめるほうが順番として先になります。

Q. 断熱材を厚くすれば、カビは減りますか。

A. 断熱材が厚くなれば、冷たい面ができにくくなるという方向にはなります。ただし国土技術政策総合研究所は、気密・換気・通気は、いずれかが欠けても耐久性に影響するという趣旨を示しています。断熱だけを強化して、入り口を絞る層や出口をつくる層が伴わない場合、条件が変わらないことも考えられます。

Q. 断熱材が濡れてしまいました。乾けば大丈夫ですか。

A. 乾くかどうかは、水の出所が止まっているか、乾く経路があるかによります。国土技術政策総合研究所のメンテナンスガイドラインは、部位内結露について「発見が遅れるうえに乾燥しにくく、最も厄介な水分供給現象の一つ」と記しています。壁の中で濡れた場合、乾きにくいという前提で考えるほうが安全側です。状態の確認から入ることをおすすめします。

Q. 断熱リフォームでカビが出ることはありますか。

A. 断熱の状態が変われば、温度の分布も変わります。国土技術政策総合研究所は、気密・換気・通気の組み合わせで考えることを示しています。断熱改修については本連載の第31回で扱います。

Q. どの断熱材を選べばよいですか。

A. この記事では特定の材料をすすめません。公的資料で確認できるのは熱伝導率の区分と、透湿抵抗が低い場合に別張りの防湿シートが推奨されるという記述までです。選ぶ際には、材料単体ではなく、防湿層・気密層・通気層とあわせた構成で設計者に確認するのが確実です。

7. まとめ

  • 国土交通省の資料は断熱材をA-1(0.052〜0.051)からF(0.022以下)まで熱伝導率で区分している
  • 動かない空気は0.0241 W/mK。多くの断熱材は空気を動かないように閉じ込めるつくりをしている
  • 繊維系は繊維のあいだ、発泡系は樹脂の中の泡に空気を留める
  • 材料ごとの吸水量や透湿抵抗を比較した公的資料は確認できていない(要追加調査)
  • 国土技術政策総合研究所は、寒冷地で透湿抵抗の低い断熱材を使う場合に別張りの防湿シートを推奨している
  • カビの条件として挙げられているのは25〜30℃・木材表面が濡れること・塵埃。材料の種類ではない
  • 木材0.12に対し断熱材0.022〜0.052。柱の位置は周囲と温度が変わりやすい
  • 住宅性能表示基準は10分野33項目。劣化対策等級(構造躯体等)は必須評価項目

次回は、石膏ボードと壁紙を扱います。室内側の仕上げにカビが出たとき、どこまで入っているのかという話です。

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自分で試して2回落ちない、面積が広い、壁や床の内側から出ている、においが消えない――そうしたカビは、原因調査から入る専門業者の領域です。MIST工法®カビバスターズは全国に加盟店があります。まずはお近くの店舗、または本部にご相談ください。

連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回

全体像(第1〜3回)

床下・基礎(第4〜10回)

壁の中・外壁(第11〜18回)

小屋裏・屋根(第19〜22回)

開口部・水まわり(第23〜27回)

  • 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
  • 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
  • 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
  • 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
  • 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)

判断・点検・改修(第28〜31回)

  • 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
  • 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
  • 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
  • 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)

参考資料(一次情報)

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